今回は真名さんです。
では、どうぞ。
Side アリア
『桜通りの吸血鬼』の噂もすっかり廃れ、次の修学旅行先がハワイなのか京都なのかという話で校内は持ちきりです。
そして今日は久しぶりの休日。
たまには研究も止めて、ゆっくり一人の時間を楽しむとしましょう。
というかエヴァさんの好意で別荘内に研究所を間借りしてから、これまでの倍以上のスピードで研究進んでますし。
エヴァさんの知識半端ないですよ。
少なくとも、この世界の魔法をエヴァさんほど高いレベルで習得している人はいないでしょうね。
「ん? ・・・やぁ、アリア先生じゃないか」
「真名さん」
オープンカフェでお茶をしていると、我が3-Aの生徒、龍宮真名さんと出会いました。
黒いマントに身を包み、その手には・・・ギターケースでしょうか? それを持っています。
「お出かけですか?」
「仕事だよ」
クールにそう言う真名さん、かっこよすぎです。
仕事・・・こんな昼間から仕事ですか。
学園長あたりですかね、依頼人は。
「そうですか、お仕事がんばってくださいね」
他の生徒の方なら注意するところですが、まぁ真名さんなら問題ないでしょう。
純粋な実戦経験でいえば私よりも上の方ですから、注意するのも筋違いでしょうし。
「キミは、私の仕事に対して何も言わないのか?」
「別に何も?」
強いて言うなら、中学生の本業である学業を犠牲にさせる勢いで仕事を依頼する側にこそ、言いたいことはありますね。
その依頼人が教師となれば、特にね。
「というか、その口ぶりだと、最近誰かに何か言われたんですか?」
Side 真名
顔の右半分に包帯を巻いているその先生は、なにくわぬ顔で紅茶を飲んでいる。
以前、偶然とはいえ仕事を共にしてから興味があった。
もう一人の方と比べて、嫌に裏の匂いをさせるこの女の子に。
「・・・いや、ネギ先生が私の事を心配しているようだから」
ちらりと後ろを見れば、電柱に隠れるようにしてこちらをうかがっているネギ先生・・・と、オコジョ妖精。
最近仕事が多くて、休みがちだったからだと思うが・・・しつこいな。
アリア先生は左眼でそれを見つけると、深いため息をついた。
「・・・どうも、愚兄が迷惑をかけているようで・・・」
「いや、アリア先生が謝ることじゃない」
・・・おっと、そろそろ時間か。
「それじゃ、また」
「ええ、くれぐれもお気をつけて」
Side ネギ
うう、龍宮さんの仕事が何か気になってついてきたはいいけど、神社でも上手く話せなかったし、どうしたら・・・。
「兄貴、龍宮の姐御が路地裏に入っていきやしたぜ!」
「う、うん!」
慌てて追いかける。
それにしても・・・。
ちらり、と、カフェで紅茶を飲んでるアリアを見る。
「あ、兄貴、こいつぁ援助交際って奴じゃねぇか!?」
「え、ええええええええぇぇぇっ!?」
どうしてアリアは、龍宮さんに何も言わなかったんだろう・・・?
Side アリア
さて、おいしいお茶もいただいたことですし、ショッピングなど行きましょうか。
あれからネギ兄様は私の方に来なかったので、今日はかなり平和な休日を過ごせていますよ。
「・・・あら、あのお店は初めて見ま」
ガァンッ!
・・・・・・・・・私の目の前を何かが高速で通過し、反対側の道に着弾しました。
着弾した跡に、かすかな魔力の残り香。
「・・・暗殺・・・にしては、堂々としすぎていますね」
左眼をいつでも起動できる状態にしつつ、発生源を探せば・・・。
「・・・真名さん?」
さきほど別れたばかりの真名さんが、路地裏の奥からこちらを見ていました。
片手には、ライフルらしき銃。
・・・普通なら真名さんが私に差し向けられた刺客かと、疑う所ですが。
「・・・外した時点で、ありえないですね」
真名さんが本気で私を殺そうとするなら、一撃、それも姿を見せるなどありえない。
なら、私を狙っているわけではないのでしょう。
「・・・ネギ兄様」
背中を向けて歩き出した真名さんに、ちょこちょこついて回っているのは・・・兄様。
・・・・・・・・・ふむ。
Side 真名
撃つ。
それだけの作業をひたすら続ける。
一発撃つたびに、敵がひとつ消える。
「12」
「ひ、ひえ~」
ネギ先生はさきほどから呆気にとられた顔で私を見ている。
こう言うところは、まだ子供だな。
まぁこの年齢で闇なるモノが見えるなら、才能はあるのだろうが。
「・・・そして、もうひとつ」
背後に出現したそれに、照準を合わせた時。
「はぁっ!」
突然、刹那が現れてそれを斬り伏せてしまった。
「今の、私の獲物だぞ刹那」
「悪いが私にも依頼人がいるものでな」
悪びれもせずにそう言ってくるあたりは、流石というところか。
ネギ先生は刹那の出現に驚いているようだが、どうやら話をしている暇はないようだ。
「か、囲まれた!?」
ネギ先生の魔力にひかれたのか、大量の闇なるものが現れた。
しかもそれは固まって・・・一体の巨人に変貌した。
「な、なんですかこれ~っ!?」
「これは、大きいな・・・」
「依頼内容と大幅にずれる獲物だな。報酬ははずんでもらうぞ学園長」
じゃかっ・・・と弾倉を入れ替えた時点で、戦闘開始だ。
デカブツはがむしゃらに向かってくるが、体が大きい分、隙も大きい。
とどめだっ・・・!
その時、私の視界の端に、犬が・・・。
Side アリア
意外、一言で言えばそういうことになりますね。
よもや真名さんが見たこともない子犬を庇って危機に陥るなど、想像もしていませんでした。
「魔法具・・・『ラッツェルの糸』」
私の口には、極細の針が咥えられています。
これが今回の魔法具。
この針からは無限に糸が出ます。
そしてその糸は強靭で、切れません。
「助かったよ、アリア先生」
「いえ、教師の務めですから」
ビジネスライクな理由ですが、真名さんにはこれくらいでちょうどいいでしょう。
私は『ラッツェルの糸』で作った簡易ネットで、真名さんと子犬を受け止めています。
真名さんと子犬を適当な建物の屋上に降ろして、『糸』をしまいました。
眼下では、兄様が『雷の暴風』を放って一度は相手を消し飛ばしましたが、すぐに再生しました。
「弱点は・・・って、アリア先生!?」
「どうも」
真名さんに駆け寄ってきた刹那さんに御挨拶です。
それと、この子犬さんは私が面倒を見ましょうかね。
「この子犬さんは私が預かっておきましょう」
「助かるよ・・・そして刹那、任せろ。私の魔眼からはどんな敵も逃れられない・・・」
真名さんの左眼に、魔力が集まります。
その後敵の弱点を見抜いているところから見て、解析能力に長けた魔眼なのでしょうか?
相手は真名さんの脅威に気付いたのかそうでないのか、こちらを攻撃、私達のいた建物は半壊しました。
私と刹那さんがその場から離れる中、ただ一人残った真名さんは、そのまま落下、ネギ兄様たちが悲鳴を上げます。しかし真名さんは空中で体勢を立て直して・・・。
銃声6発。
6か所の急所を同時に撃ち抜かれた黒い化物は、あっさりと消滅してしまいました。
・・・お見事です。
「す、すごいです龍宮さん!」
兄様は素直に感嘆していますが、私としては真名さんが強すぎて恐怖すら覚えますよ。
だってこの人実弾使いますし、遠距離ですし・・・私を暗殺するためのスキルを山ほど持ってるんですもの。
エヴァさん以外に注意すべき人材がいるとすれば、間違いなくこの人。
味方にすれば心強いですが、敵に回れば・・・最大の脅威です。
その後兄様が危ないことはやめるように言うものの、あえなく失敗。
真名さんは今は亡き大切な人との絆のために、戦いの中でのみ出会えるその絆のために、仕事を辞めるつもりはないと言いました。
・・・戦う理由は人それぞれですよ、兄様。
「・・・アリア先生も、今日は助かったよ」
兄様との話を終えた真名さんが、こちらに来ました。
「・・・いえ、むしろお仕事の邪魔だったかもしれませんね」
「そんなことはない、アリア先生には借りができた」
・・・借り、ですか。
「ああ、だからあの妙な道具については聞かないことにするよ」
「・・・そうしてくれると、助かりますね」
ネギ兄様の方を見ながら、そう答えます。
本当、油断ならない方ですね。
「それと何か依頼したいことがあったら言ってくれ、安くしておこう」
そう言ってウインクしてくる真名さん。
その仕草は、中学生とは思えないほど妖艶で、思わずドキリとしてしまいました。
後日、兄様達が真名さんが学校に来てくれたと喜んでいるのを見かけました。
その中にあって、まんざらでもない表情を浮かべる真名さんは年頃の女の子そのものでした。
・・・学園長暗殺とか、依頼しちゃだめですかね。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
今回は「ネギま!?」ネタの真名さんの仕事話です。
時間軸がどうなってるのかが、ちょっと自信ないです。
あの話っていつ頃の話なんでしょう。
主人公にとってビジネスライクな真名さんは非常に付き合いやすい生徒です。
何より「大人っぽい同盟」の仲間として千鶴さんとともに仲良しです。