Side アリア
その日の仕事を終えた私は、エヴァさん、茶々丸さんと学校近くのカフェでお茶をしています。
普段ならエヴァさんの家で茶々丸さんの美味しいお茶をいただくのですが、たまには外でお茶を楽しみたい時もあるのです。
「茶々丸さんも、いかがですか?」
「いえ、私は・・・」
「いいじゃないですか。一緒にお茶しましょう? ねぇ、エヴァさん」
「む・・・そうだな。茶々丸、お前も付き合え」
「しかし、私はガイノイドで・・・」
「すいませーん、追加注文お願いできます?」
「あ、あの・・・」
途中、エヴァさんの後ろに控えていた茶々丸さんを強制参加させました。
あわあわする茶々丸さんを見るのが、最近の趣味です。
「・・・・・・あ」
む、ネギ兄様と明日菜さんですか。
大停電の夜以来、どうもよそよそしい感じがしますね。
ネギ兄様とは職員室で隣なんですけど、なんだかちらちらこっち見てきますし。
・・・あ、そういえば『複写眼(アルファ・スティグマ)』見せちゃいました。それですかね?
右目の視力は未だに回復していません・・・。
「こ、こんにちはエヴァンジェリンさん」
私と茶々丸さんは無視ですか兄様。そしてちら見してくるのやめてください。
「きやすく挨拶などしてくるな」
「こんにちは、ネギ先生」
「茶々丸も挨拶を返さんでいい!」
茶々丸さんは挨拶されていませんしね。
と、心の中で突っ込みつつ、優雅にお茶を楽しむ私。
あ、これおいしいです。
すると、エヴァさんのことをじーっと見ていた明日菜さんが・・・。
「・・・エヴァンジェリンって、意外と良い人?」
「ぶふぅあっ!?」
・・・エヴァさんの吹いたお茶が、私に思い切りかかりました。
明日菜さんのにやにや笑いが、ひどくむかつきます。
茶々丸さんが優しく拭いてくれていなければ、キレているところです。
「エヴァンジェリンって、意外と面白い人?」
「やかましぃわっ!」
「あ、あの、エヴァンジェリンさん!」
さすがは空気を読まないネギ兄様、急に話しかけられて、エヴァさんもびっくりしています。
そしてそのあくまでも私をちら見するの、やめていただけますか。
茶々丸さんがつけ合わせのクッキーを「あーん」してくれていなければ、キレているところです。
「ぼ、僕が勝ったら、父さんの情報を教えてくれるって・・・」
「勝ってないだろう! よくて引き分けだ!」
「そ、そんなぁ~・・・」
「何よ! 負けたくせにずるいわよ!」
「だから、負けとらんというに!」
騒がしいです、お茶は静かに楽しむものだと言うのに。
茶々丸さんが膝に乗せてくれていなければ、キレているところですよ。
・・・エヴァさんたちの言い争いはヒートアップする一方です。
仕方ありませんね。
「・・・・・・京都です」
「え?」
「京都に、<紅き翼>の隠れ家の一つがあると、聞いたことがあります」
「・・・ああ、京都か。そういえばあったな・・・ってアリア、なぜお前は茶々丸の膝の上で頭を撫でられているんだ? そして茶々丸、お前も何故・・・?」
「・・・アリア先生がどうしてもと」
茶々丸さんの膝の上は最高です。
「き、京都って、あの有名な古都の・・・」
「へぇ、ちょうど良かったじゃない、ネギ」
「確かにそうだな」
「今度の修学旅行先は京都です。ネギ先生」
なぜ担任の兄様が知らないんでしょう?
しかも、なぜか騒がしさがエスカレートしていますし・・・。
ああ、しかし本当に茶々丸さんはいい人ですね。
「茶々丸さん、私をお嫁にもらってください」
「え、あの、その・・・・・・はぅ(ぷしゅー)」
思わず口走ったその言葉に、茶々丸さんが真っ赤になって煙をふいてしまいました。
あ、服越しにもかなりの熱量です。
・・・マズイかもしれません、これ。
「茶々丸―――っ!」
従者の姿に慌てふためくエヴァさん。
ああ、楽しいですね。これぞまさに平和。
「楽しいのはお前だけだろうが!」
「え、そうなんですか!?」
「そこでとぼけるなっ 話がややこしくなるだろうがっ!」
ふと見てみると兄様と明日菜さんがぽかん、とした表情をしていました。
エヴァさんの様子に、驚いているようです。
「な、なんだか本当に仲が良いわね・・・」
明日菜さんの言葉に、兄様もこくこくと頷いていました。
「ええ、毎日が楽しいです」
「お前だけだっ!」
「えー・・・エヴァさんは私と一緒じゃ楽しくないんですね・・・」
地味にショックです・・・くすん。
「な、何も泣かんでもいいだろ・・・」
「ああ、アリア先生、よしよしです」
いつのまにか復活した茶々丸さんが私の頭を撫でつつ、マスターであるはずのエヴァさんを冷たい目で見ていました。
「マスター、あまりアリア先生をいじめないでください」
「茶々丸!?」
・・・
「・・・やっぱり、仲いいわ・・・」
「(こくこく)」
平和なひと時。
こういう時間があるから生きていけます。
ねぇ、シンシア姉様。
いつか、本当の平和が来るといいなぁ、と、アリアは思います。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
今回は主人公たちの平和な日常を描きたかったんです。
この平穏を守るために、主人公は頑張ります。