魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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第9話「カモ、来日」

Side  アリア

 

「・・・あら」

 

 

ネギ兄様がエヴァさんと接触した翌朝、郵便受けにエアメールが入っていました。

差出人は、ネカネ姉様。

どうやら普通の手紙のようですね、気を使ってくれたのでしょうか?

後ほど読んで、明日中には返事を出しましょうか。

きっと兄様の方にも届いていることでしょう。

 

 

ネカネ姉様からお手紙が届くなんて、今日は何か良いことがあるかもしれません。

そんなことを思いながら、学園へ向かいます。

 

 

「エヴァさん?・・・・・・と、ネギ兄様?」

 

 

すると下駄箱の所で、ネギ兄様とエヴァさんが何やら怪しい雰囲気で睨み合っているのを見つけました。

ネギ兄様が一方的に怯えているので、睨み合う、と言うのは少し違うような気もしますが。

 

 

「おはようございます」

「おはようございます、アリア先生」

「・・・おはよう」

 

 

近くの明日菜さんと茶々丸さんに先に声をかけます。

こちらも友好的な雰囲気ではありませんね。

するとエヴァさんに何か囁かれた兄様が、何やら叫びながら走り去りました。

 

 

「あっ、ネギ!」

 

 

明日菜さんがそれを追います。

・・・やはり関わってしまいましたか、明日菜さん。

 

 

「くっくっくっ・・・・・・む、アリアか」

「おはようございます、エヴァさん」

 

 

楽しそうで何よりです。

 

 

「ふふん、まぁな・・・・・・しかしお前の兄、あの無様はなんだ? 貴様の兄と言うからどれ程かと思えば・・・期待はずれにもほどがある」

「・・・・・・まぁ、まだ子供ですし」

「お前と同い年だろうが」

 

 

それを言われると困りますね。

まぁ、この世界で「子供だから」で許されたり加減されたりすることはありませんから、どの道意味のないものですが。

 

 

「・・・まぁ、英雄の子としてチヤホヤされていましたし・・・」

「お前もだろ」

 

 

私はチヤホヤなどされていませんよ。

魔法使えませんし。

 

 

「・・・・・・まぁ、私が規格外ということですかね」

「結局そこに落ち着くのか」

「流石です、アリア先生」

 

 

たぶん死にはしないでしょうから、大丈夫でしょう。

・・・む?

 

 

「・・・誰か」

「ああ、結界内に侵入してきたな」

「どうしましょう?」

「放っておけ、こんな距離で気付かれるようでは大したことはない」

 

 

その後私は仕事に、エヴァさんはサボりに屋上へ行きました。

何だか理不尽なものを感じますが、事情が事情だけに強く言えません。

ちゃんと授業に出る茶々丸さんは、撫でてあげました。

・・・頭から煙が出ていましたが、大丈夫でしょうか。

 

 

 

 

 

Side 茶々丸

 

マスターとアリア先生と別れて教室に向かうと、ネギ先生が神楽坂さんに手を引かれて入ってきました。

相当怖がっていますが、マスターがいないとわかると安心したようです。

 

 

五分ほどして、アリア先生もやってきました。

アリア先生を見ていると、なぜでしょう。

放課後によく餌をあげる猫たちを撫でたくなるのと、同じような衝動が起きます。

ハカセにメンテナンスをお願いするべきでしょうか?

 

 

その後授業が始まり、ネギ先生、アリア先生が所定の位置につきます。

しかしネギ先生は昨日の事が気になって、集中できないようです。

アリア先生がたびたび注意しますが、それすらも耳に入っていないようです。

 

 

ネギ先生は生徒のみなさんを見てはため息をつくという、不可解な行動を繰り返しています。

その熱い視線に、クラスの方々は思わず居住まいを正しています。

そして突然。

 

 

「・・・・・・あの、みなさんはパ、パートナーを選ぶとして、10歳の年下の男の子なんて嫌ですよね・・・?」

「「「「えええええぇっ!?」」」」

 

 

大胆ですね、ネギ先生。

授業中に生徒を口説き始めるとは恐れ入りました。

 

 

「バカなこと言ってないで真面目に授業しなさい!」

 

 

とうとうアリア先生が怒りを爆発させたようです。

その後の授業はアリア先生によるネギ先生への教育的指導によって費やされました。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

まさか自分の生徒に堂々とパートナー募集中ですと宣言するとは、さすが兄様、常に私の予想の斜め上を行ってくれますね。

そんなことを考えながら仕事を終わらせ、今は管理人室で夜のティータイムです。

 

 

「アリア先生、今ええ?」

 

 

そんな時に、木乃香さんが来ました。

せっかくですので、お茶を出します。

 

 

「それで、何か問題でもありましたか?」

「問題はないよ、ただネギ君がペット飼いたいみたいなんよ」

「ペット?」

 

 

なら自分で言いに来れば良いでしょうに・・・なぜ木乃香さんが?

 

 

「・・・あ」

「アリア先生?」

 

 

昼間に読んだネカネ姉様の手紙を思い出します。

兄様にも手紙を送ったと言うので、大丈夫だろうとタカをくくっていたのですが・・・。

 

 

「・・・木乃香さん、申し訳ありませんが、そのペットを見せていただけませんか?」

「ええよ~」

 

 

木乃香さんに伴われ、明日菜さんと木乃香さんの部屋へ。

ノックすると、明日菜さんが出てきました。

 

 

「アリア先生?」

「・・・兄様がペットを飼いたいと言うので」

「ああ、アリア先生って寮の管理人もしてるんだっけ」

 

 

部屋の中に入ると、床に座り込んで2-Aの名簿らしきものとにらめっこした兄様と・・・その肩に、見覚えのあるオコジョ・・・いえ、下等生物がいました。

 

 

「兄様・・・何をしておいでなのでしょうか?」

「あ、アリア?」

「・・・明日菜さん、木乃香さん、少し兄様をお借りしますね」

 

 

そう断ってから、兄様とオコジョを管理人室へ引きずっていきます。

・・・なぜか、問題が起こるとここが使用されていますね。

結界張ってあるからでしょうけど。

 

 

「・・・さて」

 

 

兄様を座らせた後、私はオコジョを睨みつけます。

 

 

「・・・久しぶりですね、アルベール・カモミール」

「へっへぇ! アリアの姐さんもお元気そ「誰が名前を呼んでいいと言いましたか?」ひぃぃっ!?」

 

 

ガタガタと震えるアルベール・カモミール・・・通称、カモ。

ウェールズでのお仕置きの日々を忘れてはいなかったようですね。

このオコジョ、ウェールズで女性の下着2000枚を盗み投獄されていたはずなのですが、脱獄したらしいのです。

ネカネ姉様の手紙に書いてありました。

 

 

「・・・兄様、なぜ彼がここにいるのです? ネカネ姉様の手紙は読んでないのですか?」

「え・・・そんなの来ていないけど」

「・・・アルベール・カモミール」

 

 

怒気を孕んで睨むも、口笛吹いて横をむく下等生物。

本気で殺したいです。

でもここで殺すと後でどんな影響が出るかわかりませんし・・・・・・面倒ですね。

 

 

「・・・それで、先ほどは何を?」

「そ、それ「旦那のパートナー探しでさぁ!」カモ君!?」

「・・・・・・従者のことですか」

 

 

授業中に突然言い出すから、どうしたのかと訝しんではいましたが・・・吹き込まれたんですね。

 

 

「旦那の事情を考えれば、パートナーは早めに見つけといた方がいいぜっ!」

 

 

一理なくはない意見ですね。しかし致命的な点がひとつ。

 

 

「一般人の、しかも無関係な生徒からパートナーを選んでどうしますか・・・」

「でもよぉ、手駒は多い方がいいんじゃねぇか? 特に旦那のんばっ!?」

「・・・手駒?」

 

 

握り潰さんほどの握力でカモの首をしめつける。

兄様があわあわ言っていますが、関係ありません。

 

 

「アルベール・カモミール」

「へ、へぇ」

「今後兄様に余計なことを吹き込み、無関係な・・・私の生徒の人生を狂わせたら、生きてウェールズの土を踏めるとは思わないことです」

「く、狂わせるなんておれっちはただぐぅえ!?」

 

 

まだ何事か言おうとしたようですが、握力を強めて締めあげます。

 

 

「あ、アリア! カモ君が死んじゃうよ!?」

「死ねばいいじゃないですか」

「そ、そんなぁ!」

 

 

泣きそうな兄様・・・というか、兄様はなぜこんな犯罪者をかばうのでしょう?

正義の魔法使いを目指すにしては矛盾してますね・・・口車に乗せられたんでしょうけど。

・・・まぁ、いいでしょう。

 

 

「ぐえっ」

「か、カモ君!」

 

 

私はカモをネギ兄様に投げつけ、カモの目前に指を突きつけます。

 

 

「・・・いいですね?」

「わ、わかった・・・」

「兄様も、生徒からパートナーを探さないでください」

「で、でも」

「兄様の都合は聞いていません」

 

 

知ってますけどね。というか、知ってるからこそ許容できないのですが。

そんな私の言葉に、兄様はしぶしぶながらも頷きました。

だいたいなんでそんな簡単に生徒と仮契約したがるのか・・・・・・主人公だから?

まだ心配ですが・・・まぁ、よしとしますか。

 

 

 

 

しかしその後、カモのセクハラ行為の数々に怒り心頭の明日菜さんがたびたびやってくるようになり、少しこの選択を後悔することになりました。

・・・やはり殺しておくべきでしたかね、シンシア姉様。

 

 

 

 

アリアは、動物は嫌いです。

 




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

主人公はカモが嫌いですが、原作の流れを重視して排除はしていません。

基本関わりあいたくないと思っていますが、女子寮という環境上、おそらく関わらざるを得ないでしょう。

ある意味、主人公の我慢ゲージを試しているかのような生物です。

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