番外編は主人公が休日などに一人のキャラクターと交流する話を書きたいと考えています。
楽しんでくださると、嬉しく思います。
一番手は木乃香さんです。
では、どうぞ。
Side アリア
学年末試験が無事に終わり、ネギ兄様と私(私も同じ試練だったとか)の正式な教員採用も決まりました。
現在は春休み。
教員としての仕事は一段落ですが、女子寮管理人としての仕事は増えた感があります。
とは言っても、たまには休みもあるもので、今日は特にすることがありません。
たまには街にでも繰り出してみますか・・・。
「アリア先生や~」
「・・・・・・はい?」
そんなことを思いながらとぼとぼ歩いていますと、聞き覚えのある声が。
「・・・木乃香さん?」
「そうやで~」
振り向いてみますと、綺麗な振袖に身を包んだ木乃香さんがニコニコと微笑んでいました。
長い黒髪と相まって、まさに「大和撫子」ですね。
エヴァさんとはまたタイプの異なる、絶世の美少女。
「これは、木乃香さん。こんにちは。・・・いつも兄様がお世話になっております」
「大丈夫やよ~、ネギ君ええ子やから」
「そう言っていただけると・・・ところで、その格好は・・・?」
「これはな・・・ってそうや! アリア先生、助けて~」
「は?」
木乃香さんの突然の言葉に困惑していますと、木乃香さんの後ろから木乃香さんを呼ぶ声と共に、いかにもな黒服の方々が・・・なんでしょう?
「いたぞ!」「捕まえろー!」
これまたいかにもな台詞を吐いて、私たちを取り囲む黒服のみなさん・・・本当に何ですか。
私は今日休日なんですけど。
それも兄様がなぜかまったくしない春休み中の書類仕事を片付け、女子寮の仕事を捌き続け、ようやく勝ち取った休日なんですけど・・・?
「・・・申し訳ないが、その方を引き渡していただきたい」
「と、申されましても・・・」
状況が掴めませんので何とも言えません。
木乃香さんはと言うと私の背中に張り付いて、「いやや! 絶対行かへん!」とか言ってますし・・・。
「アリア先生~」
・・・そんな泣きそうな顔されましても。
むぅ、仕方ありませんね・・・。
「あ、アリア先生?」
がしっと木乃香さんの手を掴んで、その場から逃走しました。
「・・・に、逃げたぞ――!」
はい、逃げました。
「・・・とりあえず、状況を説明していただけますか?」
「あ~、それがなぁ」
とりあえず女子寮管理人室に招き入れて、事情を聞くことにしました。
まさかとは思いますが・・・これで木乃香さんの方が悪かったりなどした場合、罪悪感が半端ありません。
結果として、それは杞憂に終わりました。
何でも今日は学園長が勝手に決めたお見合いの日だったらしく、それが嫌で逃げてきたのだとか。
お見合い相手の写真を見せてもらったが、会ったこともない人ばかりだということで・・・。
「それは逃げるのが正解ですね」
「そやろ~? うちはまだ子供なんやから、結婚とか早すぎやと思うんよ」
私の言葉に気を良くしたのか、木乃香さんが頷きます。
まだ15歳の木乃香さん、可愛らしく拳を握り力説します。
「お見合いなんかで相手決めたない」
「そうですね。勝手に決められるのは、我慢がなりませんね」
同じ女性としても、木乃香さんの味方になる私。
学園長としては、いろいろ考えてのことなんでしょうけれど・・・木乃香さんの意思を確認しないあたり、害悪でしかありません。
というか、懲りてないんですね、あの人。
「そういうことならば、喜んで協力しましょう」
「ほんま!?」
「はい。あのぬらりひょんめに目に物見せてあげましょう」
がっしりと手を握り、気持ちを確認し合う私と木乃香さん。
「さて、そうと決まれば即行動ですね」
「どないするん?」
「学園長に直接話をつけます。木乃香さんは私に適当に合わせてください」
「わかったえ」
木乃香さんを伴い、学園長室へ。
すると、部屋の前に先ほどの黒服の一団が。
「木乃香お嬢様!」
「アリア先生・・・」
「問題ありません。任せてください」
木乃香さんに微笑みかけた後、黒服のリーダー格と思わしき方と向かい合います。
私の方がはるかに背が小さいので、見上げる形ではありますが。
「学園長にお話があります。通していただけませんか?」
「・・・我々も、仕事ですので・・・」
「学園長の孫とはいえ一生徒にお見合いを強要する、これは明らかな問題行為です。運命を共にしたくなければそこをどきなさい。こんな仕事をするためにやっているわけではないでしょう?」
「・・・・・・」
静かに、下がりました。
思う所があったようですね。
「・・・行きましょう、木乃香さん」
「わ、わかったえ」
Side 学園長
今日も今日とて、孫の木乃香の見合い相手を物色するわし。
老い先短い身じゃ、早く孫娘の晴れ姿を見たいと言って、何が悪いというのか。
100人に聞けば100人がわしに賛同してくれるに違いない。
じゃというのに・・・。
「お世話になりました。お爺ちゃん」
なぜ、このようなことに・・・?
Side アリア
慌ててますね、学園長。
「・・・アリア君、説明してもらえるかのぅ・・・」
「今木乃香さんが言った通りですよ、学園長」
木乃香さんの前に立って、学園長と向かい合います。
「木乃香さんは学園長に愛想をつかして、祖父・孫の縁を切る、と言っているんです」
「な、なぜじゃ!?」
「それは学園長が本人の許可なく何度もお見合いをさせるからでしょう。誰でも嫌になりますよ」
「し、しかしそれには訳が」
「学園長の事情はこの際問題ではありません。木乃香さんがどう感じているか、これだけが重要なんです」
違いますか?
そう言うと、学園長はむぅ、と唸って黙りこみました。
もうひと押しですね。
「さて、では木乃香さんは我がスプリングフィールド家が引き取らせていただきます」
「ほ!? そ、それはどういうことじゃ!?」
「言葉の通りですよ? すでにウェールズの私の保護者には話を通してあります。今頃は養子縁組の手続きでもしてるころではないですか?」
嘘ですがね。
木乃香さんも、うんうんと頷いて。
「アリア先生と姉妹になるのも面白そうやし」
「こ、木乃香!?」
「そういうわけですので学園長、失礼します。行きましょう、木乃香・・・・・・姉様」
「せやね、アリア♪」
仲良く手など繋いで、学園長室を後にする私と木乃香さん。
それに慌てた学園長が。
「ま、待ってくれぃ!」
「・・・・・・・・・・・何か?」
「そ、その、なんじゃ・・・」
「失礼します」
「さよならや、お祖父ちゃん」
「ま、待ってくれぇぇぇぇ!」
その後、2度と見合いをセッティングしないことを誓った学園長は、なんとか木乃香さんとの復縁に成功しました。
木乃香さんも優しいですね。
「今日はありがとうなぁ、アリア先生」
「いえ、大したことはしていませんよ」
その後、寮の自室にまで木乃香さんを送り届けた際、お礼を言われました。
「でも、アリア先生のお姉さんなら、なってみたいなぁ」
「あはは・・・」
その、冗談とも本気ともいえない木乃香さんの言葉に、私は苦笑してしまう。
たとえ何があっても、それだけはしませんよ、木乃香さん。
・・・・・・何があっても、ね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
今後どの程度の頻度で番外編を作れるかはわかりませんが、定期的に投稿したいと考えています。
では、また次回。