凪のあすから ~変わりゆく時の中で~   作:黒樹

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お待たせしました。


第五十七話 待ち焦がれて

 

 

戻ってきた楓ちゃんは案の定、看護師に連れられ不機嫌そうにしていた。対して看護師さんは何とも言えないような表情で、固まったまま俺を見る。

 

「ねえ、誠君、これ何かな。楓ちゃんが持っていたんだけど……いくら美海ちゃんと結ばれたからってねぇ。いきなり浮気に走るのはどうかと思うけど」

 

「誤解ですよ。それ、狭山が持ってきた見舞いの品というやつです。それも、彼女の母親と共謀ですよ」

 

「……まぁ、だろうとは思ったけど、まさか相手方の母親と共謀って……信頼?されてるのかな」

 

看護師がニヤニヤしながら取り出したのは狭山が持ってきた“見舞いの品”。

しかし、それは別として。

看護師の間ではもう既に噂は伝達されているようだ。俺に彼女が出来たという噂。だが、美海ちゃんということは知っているわけで、美海という人物を理解しているということになる。どこの誰か、誰の子か、情報は拡散し看護師たちはお互いに共有した。……女の人の情報網って怖い。

 

「さっきの間はなんですか」

 

「誠君ってロリコンじゃなかったっけ?」

 

「断じて違います」

 

ロリコンではない、子供好きだ。いや、世話焼きか。

ともかく、不純な動機で年下を可愛がっているわけではなく、恋愛感情も向けては……。と、ここで美海の昔の顔が出てくるのは何故だろうか?

自覚がなかったから、セーフだと思う。

 

「どうしたの顔真っ赤にしちゃって。珍しいわね」

 

「いえ、何でもないです」

 

顔は水が沸騰したように熱く、赤みを帯びていた。

それを冷まそうと一旦心を落ち着かせるも、美海の顔が頭から離れなくなり、脳裏から消そうとするも逆に意識してしまっている。

しかし、これが相手に自分の隙を与えることとなり、次に放たれた言葉が厄介だった。

 

「それで、誠君はどこまでいくつもり?」

 

「どこまでとは?」

 

「それは決まってるじゃない。付き合うだけでデートとか行ったりして、今の現状をいつか来る日まで続けるのか。それとも、結婚を前提に付き合って結婚するのかよ。もしくは彼女さんとはお遊びで済ませるのか」

 

ここで答えて良いのだろうか。看護師さんは楽しそうに口元を歪めながら、俺をまっすぐに見る。

 

――答えは決まっている。

 

「相手次第ですが、俺は遊びで終わらせるつもりは無いですよ」

 

「へぇー、妬けるわねなんだか。それとも、彼氏いない歴=年齢の私に喧嘩売ってる?」

 

若干、恨みがましい口調で発せられた言葉は驚愕とともに呆れを生じさせる。先に聞いたのはどっちか。

聞くことを放棄して、頬をポリポリとかくと気まずそうに言う。

 

「……将来、いい人が現れますよ」

 

「お兄ちゃん無責任だね」

 

無責任、とは痛い言葉だ。グサリと刺さる言葉に引け目を感じつつも今までいることを忘れていた楓ちゃんからも目を逸らした。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

お昼時になって昼食を食べ、アカリさんのお見舞いに四苦八苦し、時間を過ごすこと数時間。見舞いに来る元クラスメイト達は居らず、一つだけ心配していたことがあった。

美海は同じく土砂崩れに巻き込まれて軽傷だったものの、軽い検査を受けると学校に行ってしまった。そういえば事の発端である『峰岸』なる人物はどうなったのか、学校にいたらと思うと少しゾッとするが、美空がいれば酷いことにはならないだろう。

そう、思案していた時、ガラッと扉が開けられた。

 

「誠君、大丈夫?」

 

「美和さん、今日は夜勤と聞きましたが」

 

「ん。ちゃんと寝るから大丈夫だよ」

 

現れたのは美和さんだった。バッグをひとつ抱えているだけで他は何もなし、目には薄らと寝不足の跡がある。

その原因である俺は、本を置いて出迎えた。

膝の上に乗っていた楓ちゃんは本を読まれるとすぐに眠ってしまい、いまだ腕の中、彼女をゆっくりと動かしベッドに寝かせると布団をかぶせる。

 

「さっき寝たの?」

 

「はい。よく寝る子ですよ。寝顔を見ていると飽きませんし、可愛いですから、苦にはなりません」

 

その代わり、夜になって元気に遊び出さないか心配だが疲れている上で起きておけというのも苦だ。

寝息を立てる楓ちゃんから離れ、自分のベッドに戻ると腰を下ろし、美和さんを見る。

いつもだが、ふわふわした雰囲気。しかし、今日は妙にふらふらと危なっかしい足でその場に立っていた。

 

「横になったらどうですか」

 

ポンポンとベッドを叩き、誘導してみる。

美和さんはああ見えて実は警戒心が高く、人に懐くことはあまりない。他人とは仲良く見えても、心のどこかで閉ざしている節があった。

仮眠室を使ってみては? ――そう、提案しても、彼女は使わないことは容易に想像できる。

 

「……いいの?」

 

「ええ、俺はもう寝ましたから」

 

パァーっと表情を柔らかくし、喜ぶ美和さんは足早に駆け寄るとベッドに入ってくる。脱いだヒールは揃えられることもなく、散らばったままだ。

 

「えへへ、誠君から誘ってくれるなんて初めてだね」

 

「それは夜勤の人を寝かせずに仕事に行かせるなんてできませんから」

 

「えー、そこは嘘でも『君と寝たかった』とかいうところじゃない?」

 

「そんなことを言えば、俺はあの人に枕元に立たれて死後の世界で引きずり回されます」

 

「あの人、って……美海ちゃんのお母さん?」

 

ミヲリさん、話の内容からして相手が誰だかわかった美和さんは納得してころんと横になると、こちらに視線を向けて微笑んでくる。

答えなくてもいいようだ。

それよりもと、美和さんは気を引き締めたような顔で俺を見ると両頬に手を当ててきた。

 

「……夜勤ってね、気を抜けないんだ。もし看護師さんが寝ちゃうとナースコールにもでられなくてね、緊急事態になってしまって死んじゃったら」

 

自分に言い聞かせるように美和さんは呟く。

次の言葉は――哀しそうだった。

 

「眠くても気をしっかりしないとね。仮眠室はあまり使いたくなかったから、受け入れてくれてありがと。今まで事情があって一度も夜勤したことがないけど、初めてで緊張してるけど。私は……何があっても頑張ってみせるから安心して寝ててね。部屋から出ちゃダメだよ」

 

「手を貸さないで、ということですか。確かに仕事に口出しは出来ませんが……。俺は病院の規則を守れない問題児なんで、ナースコール鳴らすかも知れませんよ」

 

「ふふっ♪ その時は寝かしつけに来ようかな」

 

彼女の本当に言いたいことは言葉の一部に隠れていた。冗談に笑う美和さんはおやすみと言って寝てしまう。

すぐに寝息を立て始める美和さん。

俺はそっと本を手に取り、また読み始めた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

夕暮れ時、寂しげな空気が病室に流れ込む。ナース達は丁度入れ替わりの時間帯になり、耳を済ませれば聞こえてくる筈の声もなくなっている。

美和さんは夜勤へと赴き、交代をして、今では引き継ぎ等に追われているのだろう。

 

ただ、なんだか……。

予想以上に、心の中にはポッカリと何かが空いたように寂しい、寂しいと何かを求めている。

こんなにも弱かったのか、俺は初めて寂しいと感じてしまったのかも知れない。

 

それに、だ。

なんだか、美海と恋人になった事が、嘘のようだ。

消えてしまいそうな事実に、夢現だと、不安にさせられている。

安らぎ、安定、不安、不安、不安。僅かな幸せが心を満たしてくれている。でも、それだけでは飽き足らずやはり美海の顔が見たかった。

 

「……相当依存してるよな」

 

溺愛とか言われてもいい。事実だ。

麻薬や脱法ハーブ、あるいはアルコール中毒者にヘビースモーカーのように、彼女がいないと生きられなくなってきている。一度手にしてしまえばあとは容易くどんどん美海の魅力に惹かれていく。

 

捨てられたら……死ぬんだろうなぁ。

 

そう思った。一度、禁断の果実を手にし味を占めた中毒者は抜けられなくなり、精神的に、あるいは肉体的に死んでしまう。抜ける方法はあるのだが、やはりその特効薬は要員よりは大きくなければ薬になり得ない。中毒者もまた幻覚や幻聴に悩まされる。

 

だから、俺の耳はおかしいのだろうか。美海が病院の玄関を足早に通り抜けた気がした。ゆっくりと開く自動ドアに焦らされながら、すり抜けていく。すり抜けると俺の病室を知るためにナースステーションで入院患者の場所を聞くとエレベーターを待つのももどかしく、階段を駆け上がり気味に登っていく。フロアを抜ける事に美海の心臓の音がこちらにも感じられるようにドントン大きくなっていった気がした。廊下を走り夜勤のために出勤している美和さんに走りながら微笑み注意され『走ると危ないよー』と言われてもその早足は止めない。『ごめんなさい』と一言だけ謝るとまた足はどんどん速くなっていく。

 

足音が扉の外で止んだ気がした。ハァハァと学校から全力疾走してきたかのような荒い息づかいが聞こえ、深呼吸する音も聞こえた。コンコンと扉がノックされ、俺はその音に苦笑する。若干焦りを抑えたそれはゆっくりと叩こうとしているのにも関わらず、気持ちが早ってどうしようもなく急いでしまっている。

 

「誠……!」

 

どうぞ、と言葉をかけようとする前に扉が開かれ大切な人が入ってきた。制服は乱れ若干肩で息をしながらその娘は俺の座るベッドに駆け寄り、その勢いのせいかもどかしそうに一定の距離で止まる。

 

距離感がわからないのだろうか。昨日まではタダのとは言い難いが、赤の他人とまではいかないまでも兄妹のような関係だった。

故に初めて恋人同士で離れて、再会すればどうすればいいのかもわからない。昔のように抱き着いて頭を撫でたり、とは別の話、初めての距離感で戸惑ってしまうのだ。

 

「だ、大丈夫だった?」

 

「ああ、大丈夫だよ、美海」

 

その事とは別に彼女自身も心配してくれていたのだろう。ほっと息をつくと、肩の力を抜いて倒れかかる。腰の力までも抜けたのか倒れかかってきた美海を優しく抱き留めると……自然と顔が近くなって、彼女の顔はみるみるうちに赤くなった。

 

「なに赤くなってるんだ、これくらいの事で」

 

この状況よりももっと凄い事になったことだってある。思い返すように、頭の中でいろいろな光景がリフレインしていく。昔の無邪気で純粋な子供の頃の美海、一緒にお風呂に入ったり、同じ布団で寝たり、ご飯を食べたり、時々俺が理由もなく怒られたり(可愛いわがまま)。

そして、少し大人になった美海の裸や見るだけでなく事故的に胸を揉んでしまったり……キスも。その事を思い出したのだろうか、美海の体は熱かった。走ってきたのもあるのだろうが、

 

「……だって、私…キス、したんだよね」

 

恥じらい、視線をどこに向けていいかわからずに足下を見つめた。

俺は優しく首を痛めないように美海の頬に当てると、そのまま顔を上げさせる。上気し頬は僅かに赤く染まり、表情は色っぽく唇が艶のある輝きを魅せる。

 

「いまさらだな。キスよりも……もっと恥ずかしいことあっただろ。……裸を見たり、触ったり」

 

あの時の美海は必死だったから。わかっている。

その思いとは離反し光景が蘇り、手は感触を思い出し、沸騰するように胸は熱くなり、医学を覚える過程で覚えた性知識が色情だけを増幅させていく。

もっと可愛い美海が見たい。恥ずかしがる美海が見たい。美海に触れていたい。もっともっと君の体と心を奪いさってしまいたい。

 

だから、ついイジメたくなってそんなことを呟いた。両頬を挟まれた美海は顔を真っ赤にし、目を逸らそうにも両頬を挟まれたままでは無理だった。目の端だけで俺を捉えてしまうのか、目を閉じる彼女はフルフルと小さく震えて肩を揺らす。

 

俺にはいたずら心と欲求が勝ってしまい、キスをせがんでいるようにも見えた。――否、これは俺自身の欲求だ。脳内では恥ずかしくて震えているためだとわかっていても、そうしたくなってしまう。

 

欲が制御に打ち勝ち――理性の何処かで恋人同士だからいいだろうと、思ってしまった。何より思い出した美海の唇の柔らかさと味がもう一度、味わいたかった。

美海の顔に自身の顔を近づける。彼女の顔が近くなると少し恥ずかしくなった。その半ばで、俺は美海の唇を強引に奪うようにキスをする。

 

「……ふぁぁ♡」

 

突然のキスに驚いた、というよりも少しだけ期待していたのか美海は甘い声を漏らす。反射的にパッと瞼から瞳を覗かせると、恍惚とした表情で再び目を閉じてその身を任せるようにキスに応じた。

 

きっと、彼女の脳内ではここが病院だということも切り取られたように忘れられているんだろう。

 

柔らかくほんのりとしたピンク色の薄い唇。

恥ずかしそうに紅く上気した頬に、俺の心までもが奪われてしまう。心地よい感覚。呼吸することすら忘れて永遠に続く時間に、ずっと留まっていたくなる。

 

「……ねぇ、誠」

 

「なに?」

 

「……大人の、キス……がしてみたい」

 

キスを終えて顔から耳の先まで真っ赤にした美海がそう言った。強請るように、媚びるように、彼女は潤んだ瞳で上目づかいにこちらを見上げ、恥ずかしそうに顔を隠す。

 

「なんでそんなもの知ってるんだよ……」

 

「み、美空がしたって、言ったんだよ。それにお母さんもお父さんとやってるし……」

 

問い詰めたら出てくる妹の名前に俺は戦慄を覚える。どうしてこうも情報が漏洩しているのか。アカリさんと至さんに至ってはうまく隠れて欲しかった。

 

――そんなこと、どうでもよかった。

 

ただ、少しこのままでは物足りないと思っていた。

 

「してもいいのか?」

 

「う、ん……」

 

控えめに答えた美海の唇は、肩は少し震えている。

未だ見ぬ行為が怖いのか、羞恥で何も言えないのか、はたまた両方か。

 

――ここで引き下がったら、失礼だよな

 

“据え膳食わぬは男の恥”という言葉もある。

とは言い訳してみたものの、やはり目の前でねだってきた女の子には勝てなかった。

 

「ひゃっ……ん」

 

催促するように目を閉じた美海の唇にもう一度、唇を合わせる。重ねあった唇の熱に酔いながらも先程とは違い、唇を舌で舐める。

ビクリ、と跳ねる体。

同時に堅く結ばれていた口を美海が驚いて力を緩めた隙に俺は彼女の口内に舌を差し込んだ。

 

「あっ……んふぅ……ちゅ…ちゅぷ……ぁぁ♡」

 

反射的に逃れようとした美海の舌を舌で弄り、弄ぶように蹂躙していく。苦しそうに空気を求めながら、ただ受身の体制の美海はされるがままになった。

 

次第に薄れていく抵抗。

力も抜けていき、美海の体はガックリと崩れ落ちる。

 

 

その時、クシャリ――と何かビニール製の包みが音を立てた。

 

 

「……これって」

 

その音は美海の崩した体勢により、反射的に突いた手の下からだった。迷わずピンク色の包み紙を手に取ってまじまじと見る美海の顔が羞恥に染まる。

 

そう。あれだ。

見舞いの品、と呼ばれる迷惑品だ。

全部、看護師さんが回収したと思われていた包み紙はどうやらベッドの中にまだあったらしく、その一つを美海が拾ってしまったようだ。

 

「……誠はしたいの?」

「いや、それは……」

「こんなものまで用意してあるし…」

「それは狭山とアカリさんが――」

「正直に答えて」

 

正気なのか、美海の顔は熱を帯びてそれが余計に色っぽく感じさせた。

彼女の知識、全てはアカリさんのせいだろう。

道具について知っている、キスなど、そういう知識がついてくれたおかげで変な人にひっかけられはしないし、そこについては感謝するのだが。

俺は真剣な美海にこう答えた。

 

「……まぁ、したくない、と言ったら嘘になるかなぁ…」

 

歯切れが悪い答えに美海の顔はさらに熱を帯びた。その熱さはこちらまで届いてきそうな気がする。という俺も、顔が熱く火照りかなり恥ずかしかった。

 

「………」

 

「………」

 

お互いに無言で顔を逸らし、こちらは気まずそうに、対してあちらは恥ずかしさに耐えながら考え込むように俯き目を逸らす。

 

――健全だ。そう、これは健全な欲求だ。

 

言い聞かせて平常心を保とうとする。

曲がりなりにも男。それが美女、美少女の類にアプローチとかされて平気なわけがない。むしろ、誘われて襲わないのにこちらが苦しめられていることに疑問だった。

傷つけるのが嫌だから拒んでいるのに、それとは別に心の中はズタズタに引き裂かれていく。何度だか美海に誘われたような気もするが、やはり何処かで理性がストッパーとしての役割を果たしてくれていたのだろう。欲求とは別に。中学生で妊娠は不味いだろうと、手を出すのは不味いだろうとストッパーさんは役割を果たしてくれているのだが、それも置いておいた心はというより人間の男の部分は“求めている”。それと、もう一つ。

 

――もし襲ってしまえば妊娠させかねない。

 

自信がある。嫌な自信だ。

仮に美海にその行為を迫ったところで受け入れられたら、避妊なしにしてしまいそうだ。そのための避妊薬を入れられていたんだろうが……若さゆえの過ちとかもある。

精神だけが大きくなり、まるで大人になっていない、俺は人間としての本能だけが否定出来なかった。

 

 

「……誠、ゃ…優しく、ね」

 

やがて、俯いたまま絞り出された声が耳に響く。霞む声に俺の耳は一字一句聞き漏らすことなく捉えた。

美海は覚悟をした、ということだろうか。ふわりと倒れ込んでくると胸にすっぽり収まり、その感触が愛おしく、愛らしくて、儚い重さが胸に心地よかった。

 

「ん……」

 

そして、何故か俺が押し倒された。震えながら唇を押し付けてくる美海。キスを受け入れられると、安堵したような溜め息を漏らし、俺が腰に手を回したところで――

 

 

「わ、わわわあっ! 何やってるんだ、美海!」

 

「これはお邪魔してしまいましたね」

 

 

二人の声が響いた。我に返ったように美海が声のした方向に振り向くと、そこには美空とさゆが、とくにさゆに至っては顔を真っ赤にして狼狽えている。

 

「そう言えば兄さん、産婦人科は下の階ですよ。と言っても病院で入院する人を増やさないでくださいね」

 

ここで、俺はここが病院だということを思い出したのだ。その後、さゆは俺を危険性物として美海を守るように立ちはだかったのだ。




キスだからグレーゾーンだ。
もうこのまま二人して病院にお世話になって欲しかった、と願ってたりするのですがねぇ。

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