次の日、俺は母さんに起こされると、何時ものように朝食を食べ始める。何時も朝は7時に起きて、朝食を食べるのだが、今日は9時くらい・・・・・・。
「もう、毎回毎回起こすの大変なんだから、自分で起きなさい。小学校に通うときになってからそうしてたんじゃ、みんなに笑われるわよ。」
「その頃には起きれるようになってるから、大丈夫。ごちそうさま・・・・・・。」
俺は食べ終えると、食器を片付けてリビングのソファーに座り、テレビを付けて番組をアサリ始める。そうしていると、母さんが聞いてきた。
「あら、誠・・・・・・今日は光君達と遊ばないの?」
「うん・・・・・・昨日の探検で疲れたし、今日は家でゆっくりとしてる~。」
俺は床にソファーにべたっとへばりつき、そう答えると、ゴロゴロとソファーの上を転がり始める。毎回、光の遊びに付き合わせられると、次の日は決まってゴロゴロしていた方がいい。それに、毎日遊ぶのも面倒だしね。
「じゃあ、誠も一緒に鷲大師に行く? 家でゴロゴロとしてるより楽しいわよ~。それに、
毎回子供のうちからゴロゴロしてるより、外に遊びに出た方がいいわ。あ、でも鷲大師から電車で都市の方に向かうから、そこで買い物よ。」
「うん! 行く!」
俺は母さんの提案に即答し、外について行くことにした。このまま家にいても、ゲームをするか、テレビを見るかの二択しかない・・・・・・。それに、毎回母さんと一緒に陸で買い物をするのは楽しみだった。何時も、新鮮なものが見られて楽しい。
「じゃあ、早く着替えないとおいてくわよ。」
「あ、待ってよ母さん! それはずるいよ。」
それから、俺は自分の部屋に凄いスピードで向かい、タンスから服を引っ張り出して、今着ているパジャマから普通の服に着替える。そうして、脱いだパジャマは洗濯機に放り込んで、母さんのところに向かう。
「誠、ちゃんとパジャマは洗濯機に入れた? まさか、脱いだらそのまま床に置きっぱなしじゃないでしょうね? そうだと、連れて行かないわよ?」
「もう、ちゃんとするに決まってるじゃないか。母さんは心配しすぎだよ・・・・・・それくらいは自分で出来る。それに、早く行こうよ。」
「はいはい、あんたはいつもお利口さんね? じゃあ、早く靴を履いて外に出なさい。電車の時間もすぐに来るんだから。急ぐわよ。」
「あ、待ってよ母さん!」
せかされて靴を履き、俺は母さんの後を追って家を飛び出す。毎回、母さんは意地悪して先に家を出るんだから、もうすっかり、なれてしまっている・・・・・・。でも、毎回母さんに陸に連れて行って貰うのが嬉しくて、笑顔で母さんを追いかける。母さんはもう、先の方まで行っており、点にしか見えない・・・・・・。俺の泳ぎの早さは、母さん譲りだろうか? お父さんはそこまで早くない。
それから、俺は母さんを追いかけて海の上に出ると、太陽が眩しくて、目をふさいでしまう。何時も思うが、すごくまぶしい。太陽がはっきりと、海の中では見えない形で見える。
そんな事を考えていると、母さんはもう陸に上がっており、こっちを見ながら座っている。
「遅い! 誠、あんたはもうちょっと早く泳げるようになりなさい。そうじゃないと、何時かは光君達に追い越されるわよ。」
「母さんがフライングしたのが悪いんだろ・・・・・・。それに、母さんと並んで泳いだら、俺の方が早いよ。絶対に負けない。」
俺は文句を言いながら、陸に上がる。母さんの泳ぎは俺と同じスピードなんだが、先に行かれると追いつけないので、困っている。というか、大人気ない・・・・・・。
「今、あんたは大人気ないとか思わなかった?」
「イエ、メッソウモゴザイマセン・・・・・・。」
親子だからか、すぐに思っていることを当てられる・・・・・・。これじゃあ、悪口どころか、心の中でも文句は言えない・・・・・・。
「まあ、それは置いといて行くわよ。電車・・・・・・もうすぐなんだから。これを逃すと、待たなきゃいけないから。早く行くわよ。」
「は~い。今日は何するの?」
「よくぞ聞いてくれました。今日は、買い物と映画館に行こうか? お母さん、凄く見たい映画があるんだ~。」
どうやら、俺がいなかったら、黙って1人で行く気らしかった・・・・・・。本当に自由な親だと思うよ。それに、父さんは毎回知っているのだろうか? 俺は早歩きで歩いていく母さんのあとを追いかけて、その後ろを歩く。そうして、駅についたら切符を買って電車に乗り込んで、大きなデパートのある町に向かう。
それから数十分後、母さんと俺は電車から降りていた。俺は毎回、鷲大師にはつれてってもらっているが、此処には来たことがない。
「ほら、あんたは初めてでしょ? 此処にくるのは・・・・・・。」
「わぁ~。凄い、こんなところあったんだ・・・・・・。」
俺は見るものすべてが新鮮で、周りを見渡すと、凄く活気に溢れている街だというのがわかる。周りには、沢山の人が歩いていた・・・・・・。
「じゃあ、まずは映画を見に行くわよ。」
「うん!」
俺は返事をして、母さんの横を歩きながらついて行く・・・・・・。周りは色々と面白そうなものに溢れていて、好奇心が膨らんでいく。そして、母さんと数分ぐらい歩くと一つの映画館についた。
「母さん、何をみるの?」
「え? ああ、それはこれよ。このラブストーリーが一回見てみたかったの。あんたも、意外とドラマとか好きでしょ?」
「うん、面白そうだね。」
俺はそう言うと、受付に向かう母さんを追いかけて、後ろにつく・・・・・・。此処じゃ離れそうなので、後ろにピッタリくっついていないと、迷子になりそうだ・・・・・・。そして、母さんが程なくして、受付を終えて歩き出す。
それから2時間くらいがたち、映画も終わって外に出た母さんと俺は泣いていた。俺と母さんの趣味は、意外と似ているのかもしれない・・・・・・。いや、俺は意外と母さんの方に似ているから、趣味まで似てしまったのだろう。
「すごく良い話だったわ。誠もそう思うでしょ?」
「うん、最初っから最後まで良い話だった・・・・・・。」
俺と母さんは同じ動作で目から涙を拭き取り、歩き出す・・・・・・。時刻は12時くらいになっており、丁度お昼の時間だ。俺と母さんはデパートに向かう。
「もうお昼ね・・・・・・じゃあ、ご飯はお父さんに内緒で外で食べましょうか? 誠、先に言っておくけど、父さんには内緒よ? 昨日も外で食べたのに、今日も食べたのがばれるのはまずいわ。『俺をおいて、二人で外食なんて酷いじゃないか!」って、きっとお父さんが泣いちゃうわよ。」
「うん、これは絶対秘密だね。お父さん、結構涙もろいから、すぐに泣いちゃうよ。」
俺と母さんはデパートに入り、中にある食事用のお店に立ち寄ると、お父さんの事を思い出しながら席に案内される。俺の父さんは、今日は仕事中なのだ。つまり、俺と母さんは父さんに内緒で外に来ている。
「じゃあ、私はオムライスにしようかな? 誠は何が良い? なんでも好きなものを頼んで良いわよ。別に、黙っていればばれないんだし。」
「俺も母さんと同じオムライス・・・・・・それでいいや。」
俺は母さんの考えは、父さんには結構悪いと思うが、俺も共犯者なのでとやかく言えない立場にある・・・・・・。それに、毎回、母さんと出掛けるときは母さんと同じものを食べる。別に自分の好きな食べ物が無いわけではないが、嫌いな食べ物もないのだ。
「お待たせしました。こちら、当店自慢のふわとろオムライスでございます。では、ごゆっくりどうぞ。」
そう言って、ウェイトレスが運んできた料理を置いて、厨房の方に下がっていく。俺と母さんはほぼ同時に食べ始めた・・・・・・。
「そうだ、誠、あんた欲しいものはないの?」
「何? 急にどうしたの? 俺は欲しいものなんて無い・・・・・・。あ、あるとしたらバタピーにスルメに枝豆・・・・・・あとはプリンかな?」
「あんた、思考がお父さんみたいよ? そうじゃなくて、あんたは光君やまなかちゃんたちと違って、遠慮して物を欲しがらないから、何か買ってやろうと思ったの。」
「う~ん、特にない・・・・・・。」
俺はそう答えると、オムライスを食べ進める。実際、俺には欲しいと思えるものが無かったのだ・・・・・・。欲しいもの・・・・・・それは、考えたこともない。何か食べたいとは考えるが、
欲しいもの・・・・・・それが形の残るものとなると、別に思いつくものもない。
「よし! じゃあ、買い物を済ませて帰ろうか。」
「うん。」
俺が食べ終えると同時に、母さんが立ち上がって歩いていく。俺はそれを見て、椅子から降りて歩いてついて行く。母さんは会計を終え、店を出た。
そうして数分後、俺と母さんは歩いていると、小物を売っている店の前を通る。それをみた母さんが立ち止まると、『ちょっとよっていこうか?』と言って、その小物店の中に入っていった。
それから数分して、母さんが小さな袋を片手に店から出てくる。
「ほら、誠のものよ? これが誠を守ってくれるから持ってなさい。」
そう言って、母さんが持っていた小さな袋をあけると、中には十字架の真ん中に青い輝く何かが入っているネックレスが入っていた。
「ほら、あなたは何も欲しがらないから代わりに持ってなさい。それに、お母さんとお揃いよ?」
母さんはそう言って、首もとから似た十字架のネックレス・・・・・・真ん中には、緑色の何かがはまっている。それを取り出して見せてきた。
「母さん・・・・・・そんな事を信じてるの?」
「そんなわけ無いじゃない。でも、気分って大事なのよ。」
全く、母さんはとんだ気分屋だよ・・・・・・。でも、貰ってみると、以外と嬉しいな。俺に欲しかったものは無いが、何故か気に入った。
「じゃあ、買い物をして帰りましょう。」
「うん。ありがとう母さん・・・・・・。」
「どういたしまして。」
そうして、俺は首に勝ってもらったネックレスをかけると、母さんの後ろを歩き始める。母さんは歩幅を合わせてくれないから、すごく大変だ。
それから、俺と母さんは買い物を終えて、電車の中にいる。俺は車窓から、移りゆく街の景色を眺めながら、うとうととしていた。
《え~、次は~~、鷲大師~鷲大師です。荷物のお忘れにはご注意ください。》
アナウンスが流れ、次は俺と母さんの降りる駅・・・・・・鷲大師という事を告げる。
「ほら、誠、寝ちゃだめ。もうすぐ降りるんだから、しっかりしなさい。」
「・・・・・・うん。わかった。」
俺は眠い顔を擦って、座り直すと、駅につく前のようで、電車が速度を下げ始めた。俺はそれが完全に停止するのを待つ。電車が停止し、ドアが開くと、俺は座席から飛び降りて先を歩く母さんの後を追う。
「ほら、早くしなさい。おいてくわよ。」
母さんは先を歩いていく・・・・・・。俺は眠い頭を起こして、母さんの横まで走る。母さんは買い物袋を持ちながら、結構速いスピードで歩くが、俺はすぐに横に並ぶ。
「母さん・・・・・・今日の晩ご飯何?」
「え~と。今日はハンバーグよ。それと、お味噌汁に・・・・・・後は適当ね。」
俺と母さんはただ、何も・・・・・・いつもと変わらない事を話ながら、歩道を歩いていく。そのとき、
母さんと俺は考えていなかった・・・・・・。
ブォォォォーーー!!
俺と母さんに一つのトラックが近づく・・・・・・。俺と母さんは会話に夢中で気づかない。そして、その車は俺と母さんの目の前に迫っていた。
「・・・・・・え?」
「!? 誠、危ない!!」
俺は迫るトラックに動けず、棒立ちになる。母さんは持っていた買い物袋を投げ捨てて、俺の手をつかんで海に落とそうとする。そして、俺は海に落とされたとき、大きな音が鳴ると同時に俺は海に落ちた・・・・・・。
あれ? 母さんは?
俺はそんな疑問と共に、海の上に浮かび上がると、近くの上がれるところを見つけてのぼると、俺が落ちた場所までかける。するとそこには、血にまみれた母さんがいた。
「母さん!!」
俺はすぐに母さんのところに駆け寄ると、叫ぶ。
「・・・・・・あ・・・・・・誠・・・無事だった。・・・よかったわ。ねえ、母さんのお願いを聞いてくれる? このお母さんの持っている十字架は誠が持ってて・・・・・・それで、誠に・・・好きな人が出来たら・・・このネックレスを・・・その子に渡し・・・て欲しいな・・・・・・。」
母さんはそう言って、俺のネックレスを買ってくれたときに見せたネックレスを首からはずして、
俺の手に握らせると、目を閉じた・・・・・・。
それが・・・・・・俺と母さんの最後だった・・・・・・。
知識はアニメしかありません。