凪のあすから ~変わりゆく時の中で~   作:黒樹

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オリキャラさん登場です。
なんとなく、早めました。



第十八話  血は兄妹を・・・・・・

 

 

 

 side《アカリ》

 

 

 私は美和さんと二人、一軒の家の前に立っていた。私と美和さんの前に建つ一軒家は立派で、何時かは至さんと美海、3人で一緒にこんな家に住みたいと思う。───おっと、未来予想図なんて頭の中で描いてる場合じゃないや。

 

 

 ───私が此処に来た理由

 

 

 それは、誠君の家族に関することだ。

 

 現在は誠君の実の父、誠哉さん・・・・・・元は海に住んでいたけど、元妻が死んでからは陸の人と結ばれて今は幸せに暮らしている。

 

 それが私の認識だ。これは誠君から聞いた話であり、実際に自分の目で見た話ではないがそれはそれでいいだろう。誠君も、本当に気にしてないし。寧ろ、今の生活に何の疑問も浮かべることはなく生活しているが、私の気にすることじゃない。

 

 ───それはわかっている

 

 ───でも、私は誠君が心配

 

 だからこそ、私は此処に来た。今日は休日で、予想通りなら誠哉さんも家にいて、運が良ければ会えるはずなのだ。

 

 

「ほら、アカリさん、遠慮しないでいいよ。家には、夫と娘が居るけどね」

 

「えっ? もう子供居るの!?」

 

 いきなりの娘発言に、私はビックリした。働いているのに、育児はどうしているのか気になるところだけど、聞いて良いことじゃない。

 

「いるよ、確か17で産んだかな?」

 

「ええ!? 早すぎない!?」

 

 また発掘される驚愕の真実。更に私の聞きたいという心が刺激され、質問の一つに入れることにした。・・・・・・いや、気になるでしょ?

 

 そんなことを思っている間にも、美和さんは家の中に入っていった。私もそれに続いて、『お邪魔します』と言って入っていく。

 

 玄関で靴を脱ぎ、揃えてからは美和さんの後に続き、眠そうな美和さんの後をゆっくりとついて行くのだが、本当に眠そう・・・・・・。

 

「ほら、この部屋だけど・・・・・・ちょっと待ってて、家の娘とか連れてくるから」

 

「あっ、うん・・・・・・」

 

 そう言った美和さんは何処かに消えて、私は居間で一人座布団を用意して座る。設計は何処か誠君の家に似てるのは、気のせいだろうか?

 

 そんな事を思っていると、襖が開いて見覚えのある男の人、美海と同じくらいの女の子、お盆にお茶と茶菓子を乗せた美和さんが来る。

 

 女の子は茶髪に、美海と同じようなグラデーションの瞳を持っている。それが、海と陸の子だとでも言うように見えた。

 

「やあ、アカリちゃん・・・・・・久しぶりだね」

 

「お久しぶりです、誠哉さん・・・・・・」

 

 美和さんは驚く様子もなく、ただお茶を用意する。少し変わった誠哉さんは、何処か罪悪感と心配事、両方を瞳に宿している。

 

 ───誠君の事は忘れていない

 

 それが読み取れただけで、誠哉さんを殴る必要は無くなった。本当は忘れてお気楽な顔をしてたらしてたで、殴ろうとも思っていたけど、その必要はないようだ。

 

「誠は・・・・・・元気かい?」

 

「はい、元気です。誰よりも大人ですよ、誠君は」

 

 途切れる会話、聞きたいことは山ほどあるのだろうが今はそれは問題じゃない。

 

「聞きたいことがあります。誠君になんで会わないんですか? 今では誠君、お金を送ってくれるだけでなに不自由なく生活しています。普通に考えたら異常ですけど、それも誠哉さんがこっちに来てからずっと誰にも頼りませんでした」

 

「えっ? ・・・・・・あの子、誰にも頼ってないの!?」

 

 私の誠君の今までの現状報告に、誠哉さんではなく美和さんは驚く。その顔は本当に心配そうで、

血が繋がっていないのにまるで本当の母親みたいに心配する。

 

「はい、寧ろ逆に隠してましたよ。私が気付いたのも誠哉さんが出て行ってから結構な日が経っていましたし、相変わらず誠君は凄いとしか言えません」

 

「そうか・・・・・・まあ、誠の性格なら当然か・・・・・・アカリちゃん、俺は美和に頼んで病院に来る度に誠の様子を見てくれるように頼んだんだ。幸い、誠には結婚した当時の写真を渡したから気付いていないみたいだけど、それでも俺はまだ誠の事を考えてる」

 

「私も、誠君が此処に住んでくれるなら嬉しいよ。アカリさん、私は自分が誠哉さんと結婚した事を誠君に隠してきたから言えないかもしれないけど、私は一緒に住みたいと思ってる。血が繋がっていなくても、私の子供なの。・・・・・・アカリさんなら、わかるよね・・・・・・?」

 

 私には、美和さんの言っている言葉の意味が分かった。美海のことを言っているのであろう、だいたいの予想はつく。

 

 ───でも、美和さんの娘が受け入れるのだろうか?

 

 ───それに、今までなんで隠してきたの?

 

 疑問が浮かび、私は美和さんと誠哉さんの座っている場所の間に座っている女の子に視線を向けるのだが、目を伏せてしまった。恥ずかしいのか・・・・・・そう言えば、名前すらも聞いてなかった。

 

「あの・・・・・・何の話をしてるんですか?」

 

「・・・・・・誠哉さん、美和さん・・・・・・教えてないんですか?」

 

「「あぅ・・・・・・」」

 

 女の子の問に、私はビックリした。誠君と一緒に住みたいとか言ってる割に、自分の娘には何も話していないのだ。これじゃあ、亀裂が生まれても可笑しくない。

 

「えっと・・・・・・美和さん、そう言えばこの娘の名前を知らないんだけど?」

 

「あっ、自己紹介をしてなかったね! この娘は美空。小学3年生で、美海ちゃんと同じかな?」

 

「美空です。あの・・・・・・」

 

「ああ、私は先島 アカリ」

 

 驚いたことに、美海と同じだ。でも、見た目からほとんど予想できていたから驚くことでもないんだけど、なんか誠君と同じで大人びている。

 

「美海ちゃんのお姉さん、ですか・・・・・・?」

 

「えっ? えっと・・・・・・美海の、新しいお母さん、かな?」

 

 美海を知っていることに驚き、私は曖昧な答えを返す。正直に言うと、親にはなると言ったものの実感がない。なんかギクシャクしてるし、美海との会話も二人じゃ成り立たないからだ。

 

「そうですか!? 美海ちゃん、凄く楽しそうに話してましたよ。アカちゃんって凄く良い人だって言って、それにお兄さんじゃない兄さんがいるって」

 

 どうしよう・・・・・・美和さん達、誠君のこと切り出せるのかな? 美空ちゃんも友達の義兄が自分の腹違いの兄って、相当な覚悟がいるだろう。主に、この子達が生活の変化に対する覚悟が必要になるんだけど。

 

「あれ? さゆちゃんとは遊んでいるところを見るけど、美空ちゃんって家に来たこと

あったっけ?」

 

「アハハ・・・・・・私は読書とか、1人でいることが好きなので・・・・・・美海ちゃんとは、学校でしか話をしませんよ? でも、今度見に行ってみたいです! 美海ちゃんのお兄さんが、どんな人なのか知りたいです!」

 

 

 ───性格、誠君に似てるよ・・・・・・

 

 

 1人って、誠君と一緒だよ。しかも、話す前に会っちゃったらもっと話が拗れる・・・・・・やっぱりまだ誠君に話しちゃいけないよね。話したとしても、美海が怒りそうだけど。

 

「誠哉さん、美和さん、私はコレで失礼します。誠君を引き取るなら、誠君の同意と美空ちゃんの同意の元にして下さい。親じゃないですけど、今までずっと見て来た。至さんだって、誠君の親のつもりなんです。誠君がもう傷つかないようにして下さい」

 

 私は美和さん達にそう伝え、美和さんの家から出て行った。

 

 

 

 

 

 side《長瀬 美空》

 

 

 今日は凄い日です。なんと、美海ちゃんの新しいお母さんが家に来ました。パパもママも何かを覚悟したような表情でしたけど、アカリさんの言葉に撃沈。見た感じ優しい感じでしたし、学校で美海ちゃんが自慢するのも頷けます。

 

 私は基本、読書とか料理とか、家事全般が得意です。美海ちゃんも料理は出来るようですし、たまに親の作る料理の話をしたりもします。

 

 アカリさんのことは美海ちゃんから知っていましたし、お兄ちゃんというのも興味があります。私は一人っ子ですし、一度は兄が欲しいとも思いました。でも、それは無理なんですよね・・・・・・私が生まれる前にその人は生まれなければいけませんし、弟や妹なら何とかなりますけどその願いはどう考えても叶えられません。

 

 ですから、私は無理は言いませんでした。美海ちゃんの話で羨ましいとも思いましたけど、私には無理です。そんな知り合いいませんし、知り合ってそんな関係にはなれません。

 

 

 ───アカリさんが帰って行った。

 

 

 その後、パパとママは難しそうな顔でこっちをチラチラと見てきました。お互いに目を合わせては逸らし、どうするかという話をしています。

 

「パパ、ママ、どうしたんですか?」

 

「ええ、あぁ、うん・・・・・・何でもないよ」

 

 パパはそう返し、しょんぼりとします。私が居ては出来ない話なのか、そう感じ取れました。だからこそ私は、座っている場所から立って・・・・・・

 

「パパ、ママ、私、少しお菓子でも買ってきます」

 

「うん、気をつけてね」

 

 元気のないママがそう返し、私は居間から出て行きます。財布を持って、サヤマートまで歩いて五分です。

 

 

 

──────

 

 

 

 サヤマートへは5分でつき、私はアイスを食べながらプリンを袋に入れて帰り道を歩いていた。アイスはソーダ味、プリンは百円で私の好きな食べものです。

 

 道路を歩いて、海岸沿いの道を歩く。学校には近いし、文句はありませんけど逆に近すぎると違和感があります。

 

 海岸沿いの道を歩いていると、見慣れた女の子が少し大きな人たちと、砂浜で何かしているのが見えました。遠目ですけど、間違いなくあれは美海ちゃん。休日ですし、友達? 確か、お船引きのオジョシサマを作っていると聞きました。その人たちでしょう。

 

 私はアイスのゴミをもう一つの袋に入れると、美海ちゃん達が何しているのか気になって近づいていく。話しかけるのは緊張しますが、気になります。

 

「美海ちゃん、なにしてるんですか?」

 

「あっ、美空。買い物の・・・・・・帰り?」

 

 美海ちゃんは質問に答えず、逆に私の持っている袋を見て質問してきました。それに、周りにいるお姉さんやお兄さんたちも集まってきます。

 

「ん? その娘、誰だよ美海?」

 

「あれ? 美海ちゃんお友達?」

 

 見るからにヤバそうなお兄さんと、凄く優しそうなお姉さん。二人が話しかけてきたんですが、正直言うとお兄さん、怖いです。

 

「えっと、美空だよ。私と同じクラスで、親友?」

 

「初めまして、美空と言います・・・・・・」

 

 美海ちゃんが私の紹介をして、私も自己紹介をする。でも、なんかチクチクした髪のお兄さんは凄い睨んできて、本当に怖いです。

 

 何時の間にか他のお兄さんも寄ってきて、周りには5人のお兄さんお姉さん。お兄さん3人に、お姉さん2人。 

 

 だけど、何故か1人だけ雰囲気が違う。普通の人が見ただけではわからないけど、凄く1人だけ違う。まるで大人の雰囲気と言いますか、この中で1人だけ雰囲気が異常に落ち着いている。

 

「ほら、光は小さな娘を睨むな。少し怖がっているだろ」

 

「うっ・・・・・・悪かったよ」

 

 その人が注意しただけで、目つきの悪いお兄さんは目を逸らす。もしかしたら、この人がこの集まりのリーダーなのだろう。でも、雰囲気は弱々しい。今にも、海の中に溶けてしまいそうな程の静かな雰囲気だ。

 

「悪いね、こいつは生まれつき目つきと性格が悪くて。・・・・・・俺の名前は長瀬 誠。好きに呼んでくれて構わないが、この目つきの悪い奴は先島 光な?」

 

「私は向井戸 マナカだよ! よろしくね、美空ちゃん!」

 

「私は比良平 チサキ。ごめんね、光が怖くて」

 

「僕は伊佐木 要・・・・・・まあ、要でいいから」

 

 驚いたことに、あの目つきの悪い人はアカリさんの弟?のようです。見た感じ面影があります、それでもこの性格の悪そうな人があの人の弟だとは思えません。

 

「悪かったな、目つき悪くて!」

 

「アハハ・・・・・・」

 

 思わず苦笑いしてしまいましたが、また睨まれました。本当に怖いです、この人。

 

 私が睨んでくる光さんに畏縮していると、突然に誠さんが私の頭を撫でてきました。その手は瞳の静けさと違って温かくて、落ち着きます。

 

「ごめんね、また光が・・・・・・光、後でちょっと家で話をしようか?」

 

「うわぁっ!? それは勘弁!」

 

 誠さんがこう言っただけで、凄い焦ったような顔の光さん。どんなお話をするのか気になりますと言うか、相当な回数を受けているのでしょうか? 流石は、リーダーです。

 

「・・・・・・兄さん」

 

「兄さん?」

 

「いえ、その・・・・・・私、お兄ちゃんに憧れていまして、すみません。家には、兄も姉も居なくて一人っ子ですので」

 

「そっか・・・・・・別にそう呼んでくれて構わないよ? 昔はチサキとか、マナカにそう呼ばれてたし問題ないよ」

 

 意外にも私の呟きが全部聞かれていました。それを聞いた誠さんは、そう呼んでいいと言いますが怖いんです。・・・・・・美海ちゃんが、何故か私を睨んでいます。もしかしたらこの人が美海ちゃんの自慢の義理のお兄さんなんでしょうが、私も分けて欲しいです。

 

 

 ───正直、凄く嬉しい

 

 

 今日から、私はこの人をお兄さん・・・・・・いいえ、兄さんと呼ぶことに決めました。美海ちゃんがなんと言おうと、私はこれを曲げる気はありません。

 

「お兄さん・・・・・・ところで、なんで此処で遊んでいるんですか? もうすぐ、日が暮れますよ? それに美海ちゃんも、アカリさんが心配してしまいます」

 

「ああ、それは大丈夫。俺が一応、面倒見るように言われてるから。・・・・・・で、質問の答えだけど俺と美海達は貝殻探ししてるんだ。プレゼント、アカリさんにね」

 

「なる程、新しいお母さんと仲良くしたいということですか・・・・・・私も手伝います!」

 

(なにこの娘、誠くらい鋭いかも・・・・・・)

 

 この会話を見ているチサキさん達はそう思い、自分がこの娘に負けているんじゃないかと思案し始める。それを知らない私は、ただ手伝いたいと思っていた。

 

 こうして私は手伝うことになり、

 

 

 

 一時間が過ぎ・・・・・・

 

 

 

 突然、私は胸が苦しくなってきた。

 

 時刻は7時くらい、当たりは暗くなって空気も冷えてきました。私が胸の苦しい理由は、喘息の発作を起こしているから。多分、冷えた空気を吸いすぎたのでしょうか。子供の頃から、何故か治らなくて困っている病気。

 

 ───辛い

 

 ───苦しい

 

 ───呼吸が

 

 ───誰か、助けて・・・・・・!

 

 私はその場に屈んで、胸を抑える。苦しいけど、息は出来る。段々と私はパニックになり、それにつれて呼吸も苦しさが増す。

 

「はぁ・・・はぁ・・・苦、しい・・・・・・」

 

 苦しさに涙が出てきて、目が熱くなる。体もどことなく熱いし、本当に苦しい。

 

「美空っ!?」

 

 美海ちゃんが私の発作に気づいて、駆け寄ってきた。周りの光さん達も、慌ててどうすればいいのか考えている。

 

 だけど、そんな中で冷静な人がいた。

 

 兄さん・・・・・・私の隣に座り、私の背中を優しく擦ってくれる。それだけで落ち着くし、呼吸もなんだか少しだけ楽な気がした。

 

「おい、お前ら落ち着け! ・・・・・・大丈夫、俺がついてるから。美空、落ち着け。光、悪いけどアカリさんが家にいるはずだから呼んできてくれ」

 

「わかった!」

 

「私は何をすればいい?」

 

「チサキはサヤマートで水を買ってきて」

 

 次々に指示を出していく兄さん。

 

 それに従い、落ち着きを取り戻す皆さん。

 

 私の所為で貝殻探しが中断されたけど、この後に私は救急車によって病院に運ばれた。そして、その時まで兄さんが私の様子を見て、心配してくれたことが嬉しかった。

 

 

 ───まるで、本当の兄妹みたいで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 病院。

 

 私は救急車に運ばれ、アカリさんと一緒に此処に来た。医師の簡単な治療も終わり、私は病院のベッドの上でアカリさんを見ている。

 

 兄さんや光さん達は、居ても役に立たないって。アカリさんが帰したのだが、その瞳は誰かと会わせたくないようだった。

 

 本当は、兄さんにいて欲しかった。でも、迷惑をかけるわけにはいかない。だって、美海ちゃんの大切な人なんだもん。私がこんな事で、独り占めはダメですよね。

 

「本当に良かった、美空ちゃん・・・・・・もうすぐ美和さん、来るからね」

 

「はい、心配かけて申し訳ありません」

 

 心配してくれているアカリさん、兄さんも心配してついてこようとしていました。まあ、兄さんも美海ちゃんの面倒を見ると言うことで帰りましたが。

 

「まあ、誠君がいる時点で心配なしだな! あれはいい医者になるぞ。大事にならないように、しかも喘息を見抜くとは流石だ! ───ハッハッハ!」

 

「慎吾さん、笑い事じゃありませんよ・・・・・・」

 

 大笑いする慎吾先生に、呆れるアカリさん。本当に笑い事じゃないし、兄さんが居ないとどうなっていたかわからない。

 

 ───本当に、温かい人だった。瞳の静けさは説明が付かないけど、それと違って心は温かくて安心する。

 

 そんな事を考えていると、大きく音を立てて病室のドアが勢いよく開かれる。そこからは、見慣れた大好きなママの姿。そして、パパも・・・・・・

 

「美空ッ!!」

 

 そう叫んだママは私に駆け寄り、抱き締めた。少し苦しいけど、落ち着く。

 

「良かった・・・・・・! ほんと、良かった!」

 

「ママ、苦しいですよ? 私は大丈夫です、助けてくれた人が居ましたから」

 

 それでも抱き締めることを止めないママ、凄く心配そうな顔です。パパも、ほっとしたような顔で私の頭を撫でてきます。

 

「アカリさん、ありがとう・・・・・・!」

 

「違いますよ、助けたのは私じゃない。助けたのは、誠君です」

 

「えっ・・・・・・?」

 

 驚くパパとママ、二人とも私に触れている手がピタリと止まり、顔は凄い驚いたような顔で、私とアカリさんを見ています。

 

「兄さ・・・・・・誠さんが、私を助けてくれたんです。美海ちゃんと砂浜で遊んでて、私も一緒に遊んでて発作が起きて・・・・・・それで」

 

「そっか・・・・・・もう、会っちゃったのか」

 

 説明する私に、ママは落ち着いたような顔で自分に言い聞かせるようにそう言いました。何か覚悟を決めたような、そんな顔です。

 

「美和さん、せめて美空ちゃんの意志と誠君の意志、両方が揃うまでは待って下さい。だから、少しの間は誠君に黙っていて下さい。せめて、お船引きが終わるまで・・・・・・まだみんな、諦めていませんから」

 

「・・・・・・わかりました、それは約束します」

 

 アカリさんはそう言って病室を出て行き、慎吾先生も病室から出て行く。残ったのは、私とパパとママの3人だけ。

 

「───美空、ママとパパは黙ってた事があるの・・・・・・」

 

 

 ───聞きたくない

 

 

 私はそう思った。何故だか、今の生活が変わってしまう気がする。でも、私は声が出せなくてそんな事は言えない。

 

 

 ───それは嬉しいかもしれない

 

 

 ───でも、何処か悲しい私がいる

 

 

 ───複雑な気持ち

 

 

 

「───美空が会った誠君はね、腹違いのお兄ちゃんなんだよ───

 

 ───だから、一緒に住みたいと思ってるんだ──」

 

 

 ママはそう言って、目を伏せる。

 

 

 お兄ちゃんが居ることに私は喜びを感じた。だけど、それと同時に何処か悲しいチクチクとした痛みに胸が痛くなる。

 

 

 ───なんで、今まで・・・・・・?




本当は5年後に出すつもりだったのに・・・・・・
今回、オリ主さんの視点なし。
主に、家庭の問題ですね。

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