穢れた聖杯《改訂版》   作:後藤陸将

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悪魔の城

 7騎の英霊の降臨が確認され、監督役たる言峰璃正が第四次聖杯戦争の開幕を告げたその翌日、早くも事態は参加者の誰もが予想しえない事態を迎えていた。

 

 

 冬木の地のセカンドオーナーたる遠坂の屋敷の地下に設けられた工房では、工房の主である遠坂家頭首、遠坂時臣がティーカップを片手に魔道通信機の前で険しい表情を浮かべている。

「……それは本当かね?綺礼」

 時臣は平静を保つように努めながら自身の弟子に問いかける。

『事実です。アサシンの報告によりますと、バーサーカーとそのマスターは本日9時深山小学校を襲撃したとのことです。バーサーカーが宝具を展開したのか、小学校は現在、謎の霧に閉ざされて中の様子を窺うことはできません。マスターはおそらく、今世間を騒がせている連続殺人犯と同一人物ではないかと』

 遠坂時臣はその報告を聞いて紅茶の入ったカップを床に叩き付けたい衝動に駆られた。まさか、このような人物が聖杯戦争に参戦するなど予想外もいいところだ。

『彼らは何の配慮もなく街中で宝具を展開し、その痕跡の秘匿も一切行っておりません。もはや聖杯戦争そのものが全く眼中にないものと思われます』

「錯乱して暴走したサーヴァントと、それを律することのないマスターか……バーサーカーは元々理性がないとはいえ、いったいどうしてそんな連中が聖杯戦争に参加しているのだ……」

『いくらなんでもこれは容認できんでしょう時臣君』

 通信機ごしに綺礼の父――璃正の厳とした声が響く。

『白昼堂々と学校を襲撃するとは、神秘の秘匿どころの話ではない。聖堂教会のスタッフが何とか誤魔化しているが、人手が足りない。既に魔術協会にも応援を要請しているが、あまり長くは誤魔化せないそうだ。被害が明らかになれば冬木で聖杯戦争を続けることは不可能になりかねん。バーサーカーたちの行動は明らかにルールを逸脱して余りある』

 学校一つが魔術の餌食となり、更に魔術の隠匿もなしにそんなことをされたとなれば、冬木の地を管理する時臣はこれを放置するわけにはいかない。神秘の秘匿という魔術師の最低限のルールすら守れなければ、時臣の名声は地に墜ちることとなるだろう。

「無論です。私は魔術の秘匿に責任を負うものとして、このような蛮行は断じて許せない」

『うむ……バーサーカーとそのマスターは排除するほかあるまいな』

『しかし問題としてサーヴァントにはサーヴァントを持て抗するしか手段はありません。私のアサシンを差し向けましょうか?』

 綺礼からの提案を受け、時臣は考える。確かに、ここでこちらが動かせる駒はアサシンしかない。ただ、アサシンの能力を明かすわけにはいかないため、もしも小学校に突入させるとなると、動員できるのはアサシンの一体だけだ。

 分裂して弱体化したアサシン一体でバーサーカーのマスターを仕留められるかという問いには疑問符がつく。分裂したアサシン一体の戦闘力はお世辞にも高いとは言えず、時臣でも時間稼ぎが可能な程度の戦闘力しかない。

 正面からサーヴァントと戦わず、マスターの殺害に限定すれば弱体化したアサシンでも十分に勝算があるはずだが、生憎バーサーカーのマスターはサーヴァント共々あの霧の中だ。あの霧の中が宝具なのか、あの霧自体が宝具なのかはわからないが、敵の宝具の中に突入するというのは危険が高い。アサシンを無駄死にさせることになりかねず、その場合は時臣が出陣せざるをえなくなるだろう。

 どのみち明日にはアサシンはアーチャーに殺される予定であったから、そのうちの一体を失ったところで戦略上はあまり痛くはないのだが、さりとて無駄遣いするというのもどうか。時臣は悩み、ついに頭を横にふった。

「それはできない……あの霧か、霧の発生源は間違いなくバーサーカーの宝具だ。いくらアサシンとはいえ、敵の宝具に正面から挑んで勝ち目があるとは言い難い」

『では、全てのマスターをバーサーカー討伐に動員できませんか?若干のルール変更は監督役の権限のうちのはずです』

『それは無理だろう、綺礼』

 璃正が綺礼の提案を即座に否定する。

『バーサーカーが小学校を襲撃して1時間が経過した。今からマスター達を収拾したとしても、さらに1時間はかかる。だが、これ以上時間をかければ事件が警察やマスコミに漏れてしまいかねない。このような事態が公になれば、冬木はとても聖杯戦争が続行できる状況ではなくなってしまうだろう。我々がこの案件に介入するとすれば、残された手は……もはや、アーチャーの出陣しかない』

 そして通信機が沈黙する。これは、璃正からの問いかけだ。アーチャーを出すか、出さないか。つまりはバーサーカーの暴走に介入するか否かの判断を時臣に委ねたのである。

 

 時臣は通信機の前でしばし黙考する。聖杯戦争も未だ序盤だ。こちらの手の内を曝すにしても、最低限度で済ませたい。ただ、敵の正体も、宝具の能力も分からない以上は迂闊なことはできない。また、バーサーカーがこれだけ派手にやっていれば、バーサーカーの首を求めてやってきた他のサーヴァントと遭遇戦になる可能性もある。

 聖杯を獲得し、根源への道を開くという遠坂家5代に亘る悲願の成就のためには、聖杯戦争において一切妥協をしてはならない。万全を期し、確実に聖杯戦争に勝利することが最優先されるべきなのだ。もしもアーチャーをもってバーサーカーを討ち取るとなると、完璧なはずの計画に綻びが生まれかねない。

 敢えて静観するというのも一つの手だ。バーサーカーという餌に釣られた他のサーヴァントやマスターの戦いを観察し、そこから対策を練るというのは戦略としては悪くないだろう。他のどのマスターも同じことを考えて尻込みし、その間に被害が拡大する可能性がある点を除けば、悪くない選択肢だろう。

 しかし、時臣はこの土地のセカンドオーナーだ。彼には神秘の秘匿、冬木の地の管理の義務がある。ここでバーサーカーの蛮行を見逃すということは、自身が背負っている高貴なる義務を放棄することに他ならない。

 誇りか、一族の悲願が――どちらも時臣が何よりも優先しなければならないものだ。だが、ここで時臣は甲乙つけなければならなくなった。

 

 そして黙考を止めた時臣は結論を出した。

「……アーチャーを出します」

『しかし、時臣君、いいのかね?それでは計画に支障をきたす。一から練り直しとなるぞ。他のサーヴァントに任せるという手もある』

 璃正が翻意を促す。彼の目的は時臣の確実な勝利であり、このような想定外の出来事は好ましくなかったのである。だが、時臣の決意は揺るがない。

「確かにここで私が出なくとも、他のサーヴァントが対応してくれるかもしれません。しかし、そのような正しい参加者が他の6人の――いや、5人の中にどれほどいるのか。戦略を考えるのであれば、ここで他のサーヴァントに討伐をやらせて敵の手の内を探るという手が最良である以上、普通のマスターであればここで敢えて自身の情報のリスクを背負いながらも出陣するマスターはいないでしょう。ですが、魔術協会からこの冬木の霊地の管理を任されている私がこれを放置して大きな損害と神秘の漏洩を防ぎきれなかったとなると、私は先祖代々の誇りに泥を塗ることになる。……それは断じてできません。孫子曰く、戦いとは正を以て合い、奇を持て勝つ。計画は状況に応じて臨機応変に変更すればいいのです。常に正に拘る必要はありますまい」

 時臣は静かにティーカップを置き、アンティークのチェアから立ち上がる。

『……ご武運を』

 時臣は愛用する礼装のステッキを片手に、工房を後にした。目的はただ一つ、『冬木』(遠坂の地)を荒らすものへの誅罰だ。

 

 

 

 

「時臣、貴様はこの我を使用人とでも思っているのか?このような醜悪な小屋など、庭師に解体させればよかろう」

 異様な瘴気が漂う小学校の前で黄金の鎧を着込んだ男――アーチャーのサーヴァントが実体化する。そしてそれに合わせて時臣も膝を折った。

「めっそうもありません。しかし、このような蛮行を見逃せば、他のサーヴァント達も王の庭での蛮行を躊躇なく行うことも考えられます。王の面貌を知りつつもなおこのような蛮行を繰り返す輩などまずいないでしょうが、現在は聖杯戦争の序盤です。この冬木の地に降り立った他のサーヴァントたちは互いの名も、顔すらも知りませぬ。王の存在を知らぬが故に蛮行に走るものが他にもいないとは断言できません」

 本来であれば、今宵遠坂邸にてアサシンをアーチャーの手で葬り、アサシンと綺礼を脱落したように擬装させて情報戦を有利に進めるついでに、手札をある程度隠しながらアーチャーの圧倒的な戦闘能力を見せ付ける手筈であった。

 しかし、戦闘能力を見せ付けるのであれば直接的な戦闘能力に乏しいアサシンを討つよりも他のサーヴァントを討伐したほうが効果的であることは間違いない。アサシンはまた適当な機会に乗じて脱落を擬装すればいいだろう。まだ聖杯戦争は序盤であり、アサシンを脱落させる機会には事欠かないと時臣は判断したのである。

「王の威光を知らしめる好機です。王の手づからの誅戮で害虫の末路と王の神威を知らしめることができれば、今後は二度と王の庭を争うなどという醜悪な害虫は現れないでしょう。これは今後王を些事に煩わせないためには必要なことなのです」

 アーチャーは目の前で膝を折って頭を垂れる男をじっと見つめていたが、ややあって口を開いた。

「……いいだろう、時臣。我をこの現し世に保っているお前への義理立てと思ってその口車に乗ってやろう」

 時臣は自身のサーヴァントの返答に内心でホッとする。

 このサーヴァントの性格なら、自身の提案を拒否されてもおかしくはなかったからだ。令呪という絶対命令権があるが、これを使い、意に沿わぬことをサーヴァントに強要した場合、サーヴァントとの関係は決裂してしまう。

 また、聖杯を降臨させて根源に至るとなると、七騎全てのサーヴァントの魂が聖杯に溜まらなければならない。自身のサーヴァントを自決させるためにも最低で一角の令呪を残す必要があるため、序盤で令呪を使うことは時臣には憚られたのである。

「感謝します。王の中の王、英雄王ギルガメッシュ」

 時臣のサーヴァント、ギルガメッシュは感謝を口にする時臣に鼻を鳴らし、視線を小学校を取り巻く紫がかった瘴気に向けた。

「だが露払いは時臣、お前がやれ。王たるこの我にあのような醜悪な空気を吸わせるでない」

「仰せのままに」

 時臣は自身の魔術礼装である杖を取り出し、詠唱を始める。杖の先端のルビーには光が灯り、そこから迸った焔がまるで光りが闇を明るく照らすかのように小学校を覆う霧を薙ぎ払った。

 悪霊は魔術師が工房の番犬としてよく用いる存在だ。聖杯戦争という魔術師間の抗争に参加する時臣がその対処法を知らないわけがない。宝具の力で生み出された悪霊であろうが、その本質が悪霊であることには変わりない。

 一般的な魔術師が番犬として用いる悪霊に比べて一段格上の悪霊であることは間違いないが、これまでの生涯の全てを魔導の研鑽に費やしてきた時臣が太刀打ちできないほどのものではなかった。

 

 

 

 

「ねぇ、レェ男爵……って聞いてないかぁ」

 裸になった少年と戯れている大柄の男から視線をずらし、龍之介は溜息をついた。目の前の悪魔――らしき男は龍之介の言葉には全く目もくれずに快楽に浸っているようだ。

 先程までは児童達の絶望の表情とその断末魔の音色を鑑賞していたのだが、ワンパターンすぎて既に龍之介は飽きを感じていた。

 人間を、生命を死から分かつ真っ赤な臓器は彼にとって正に生の象徴だ。人間の生ゆえにそれは美しく、千差万別で、魅力的なのだ。それを鑑賞し、触感を確認したり写生したり、ずーっとただながめてみたり、なめてみたり、嗅いでみたりとして生を理解しようとしたこともある。

 自分で言うのも何だとは思うが、自分はあの悪魔よりもよっぽど高尚な趣味をしていると龍之介は思う。一般的な感性を持つ人間に向けて説明するのならば、自分は裸婦の絵を芸術として評価し、その中に秘められた女性のエロスと純真な美貌に見惚れるタイプの芸術家で、あの悪魔は裸婦の絵をオカズにしか使えない下賤な男といったところだろうか。

 因みに、龍之介は素知らぬことであるが、実はジル・ド・レェには芸術審美のスキルがあった。バーサーカーとなったことでそのスキルは完全に失われているが、もしも彼がキャスターとして限界していればそのスキルは失われなかっただろう。

 芸術審美のスキルを持ち、あるベクトルで狂っていながらも理性は保っていた彼とであれば、龍之介は芸術について語り合うことができたのかもしれない。まぁ、この場合も芸術に対する感性の違いのため、良好な関係は長くは続かなかっただろうが。

 

「何かすっげえ城で創作意欲も湧いてきたし、俺もちょっと楽しんでおくかなぁ。男爵は女の子には興味ないっぽいから、女の子で楽しむのはOKみたいじゃん?」

 バーサーカーは教室に侵入してきたバーサーカーを咎めた女性教師をその手に握る剣で一閃して瞬殺すると、教室にいた男子を捉えて早速お楽しみを始めた。生徒を助け出そうと立ち向かった教諭の殆どが彼に殺されていたこともあり、残った教師は震える生徒を慰めて逃亡の隙を窺うことしかできずにいる。

 そしてバーサーカーが楽しんだ少年の遺体や惨殺された教師の遺体は次々と起き上がり、生徒の中から少年だけを選んで隔離した。現在お楽しみの相手もまた少年だ。少女に手をだすつもりはないのだろうから、その分で自分が遊んでも文句は言われないだろうと考えた龍之介は立ち上がり、城の隅で震えている女の子たちに歩み寄った。

 バーサーカーに残虐に殺された学友たちの屍兵に怯え、生き残った僅かな教師に縋りながら城の隅で泣いていた彼女たちは、この凄惨な景色を作り上げた恐ろしい男の仲間に対して恐怖を抱いて悲鳴をあげる。

「こ……これ以上子供達に何をするつもりだ!!」

 少女達に縋られている男性教諭が叫んだ。精一杯の威勢のつもりなのだろうが、脚が振るえ、その瞳が恐怖に支配されていることに気がつかない龍之介ではない。

 ただ、後々血迷って抵抗されるのも面倒であるし、元々男の生にはあまり興味を抱かなかったため、龍之介はすぐに判断を下すことができた。

「ねぇねぇ、助けてあげようか?」

 人懐っこい笑みを浮かべながら提案する龍之介に対し、教諭は目を見開いた。

「た……助けてくれるのか!?」

「もっちろん!!俺はさっきまであの男の隙を窺ってたんだぜ?勝算はあるって!!」

 その言葉に勇気付けられたのだろう。教諭は希望を得たことに喜色を浮かべる。

「だからさぁ。俺の話をちょっと聞いてみない?」

「あっ……ああ!!」

 教諭は女子生徒たちにしがみつかれて立ち上げれないため、やや前傾姿勢になる。だが、この時目の前にぶら下げられた希望という餌に食いついた教諭は龍之介に対して致命的な隙を曝してしまう。

 龍之介はジャケットの内ポケットにしまっていたナイフを瞬時に引き抜き、同時に教諭の首を一閃した。頚動脈を切断された教諭は傷口から鮮血を噴出し、何が起こったのかわからないままに床に沈んだ。

「い……いやぁぁぁ!!」

自分達の拠り所となっていた教諭が殺された恐怖からか、または教諭の首から溢れた鮮血を頭から被っていながらも先程と変わらない笑みを浮かべている龍之介の異常な姿に対する畏怖からか、はたまた両方か。女子生徒たちは目の前の現実に怯え悲鳴をあげる。

 そして、物言わぬ躯となった教諭の身体を乱暴に放り投げた龍之介は、一番近くで蹲る長髪の女子学生に近づく。彼が伸ばす手を拒絶するかのように女子学生は後ずさりするが、自身の後ろにはショックで泣き崩れる同級生がいるために下がれない。ついに彼女は龍之介に手をつかまれてしまう。

「最初は、君からだねぇ。さ~て、何してあそぼっかな~」

 自分がどうなるか――それは先程先生が示してくれた通りのものとなるだろう。それを察した彼女は悲しみと恐れとが入り混じったグチャグチャな表情を浮かべながら絶望した。

 誰か、助けてほしい。警察でも、自衛隊でも、通りすがりの仮面騎士でもヒーローでもなんでもいい。ただ、誰かに助けて欲しいという思いだけが彼女の心を支配する。もう助けがくることなんてないことは分かっているはずなのに、それでも、奇跡に縋らずにはいられなかった。

 

 ――そして、彼女の祈りは届いた。城の壁に突如砲撃でも受けたかのような爆炎が噴出したのだ。突然の爆炎と爆発音に反応し、龍之介とバーサーカーは共に壁の方に向き直る。そして彼らは壁を破壊してきたものが何なのか、本能的に理解して身構えていた。

 爆発の衝撃で付近に舞い上がった埃が強風が吹きこんだかのように晴れ、この城に侵入した者たちの姿を顕にする。先頭を歩くのは金の鎧の男で、その数歩後ろには紅い服をきた顎鬚の男がいる。

 

「度し難いほど醜悪だ」

 金の鎧の男が鎧がぶつかる金属音を鳴らしながら歩を進める。

「城の趣味も、その品性も不愉快極まりない。醜悪でもそれはそれで愛でようがあるだろうが、貴様のような陰気なナメクジでは愛でようがない。王たる我にその醜悪な姿を見せることが罪だ」

 そして男はさもそれが当然であるかのように龍之介たちに言い放った。

「疾く自害せよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス:バーサーカー

 

マスター:雨生龍之介

 

真名:ジル・ド・レェ

 

性別:男性

 

身長:196cm/体重:70kg

 

属性:混沌・悪

 

 

パラメーター

 

筋力:B

耐久:C

敏捷:C

魔力:E

幸運:E-

宝具:A

 

 

クラス別能力

狂化:EX

 

パラメーターをランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。狂化を受けてもジル・ド・レェは会話を行うことができるが、彼の思考は快楽を得ることのみに固定されているため、実質的な意思の疎通は不可能。自己紹介ができたことが奇跡的である。

 

 

保有スキル

 

嗜虐の法悦:A

 

絶頂するたびに自身の快楽を魔力へと変換する能力。1回の絶頂で得られる魔力は彼の実体化を半日維持するだけの魔力に匹敵する。

 

精神汚染:A

 

精神が錯乱しているため、精神干渉系魔術が通用しない。また、同ランクの精神汚染を持つ人物でなければ意思疎通は不可能。

 

拷問技術:C

 

拷問を目的とした攻撃に対して、痛覚増加補正がかかる。

 

 

 

宝具

 

絶望讃歌の青髭魔城(フォリ・ル・シャトー・ティフォージュ)

 

ランク:A

種別:対陣宝具

レンジ:90

最大捕捉:1000人

 

 ジル・ド・レェが生前残虐非道の限りを尽くしたティフォージュ城を魔力で再現する。固有結界とは異なり、彼がもっとも愉悦に浸れる環境を世界の上に一から構築して再現するため、長時間維持が可能。保有スキルの嗜虐の法悦とあわせることで、城の内部で快楽を貪っている間は魔力が尽きることはない。そのため、長時間展開・維持が可能。

 また、展開中は城ごと霧に包まれるため、中を視認することは不可能。この霧はジル・ド・レェの犠牲となった子供達の魂の成れの果てである低級の怨霊たちであり、城の中で犠牲者が生まれるほどに強化される。そのため、宝具が破られるまで霧が晴れることはない。

 低級の怨霊なので、怨霊がサーヴァントに憑依を試みようとサーヴァントは容易く拒絶できる。あえて取り込むことで栄養分とすることも可能。だが、抵抗力の弱い一般人や三流の魔術師にとっては呪いのようなもので、憑依されればその怨念に耐えられずに発狂してしまう。

 この宝具が展開されている間はジル・ド・レェのステータスは1段階上昇する。

 城の中でバーサーカーの犠牲となった者たちの屍は屍兵となって蘇り、バーサーカーの意のままに操ることもできる。キャスタークラスのサーヴァントが使役する竜牙兵ほどの戦闘力を有するが、所詮竜牙兵程度なので腕のいい魔術師ならば遅れをとることはない。

 犠牲者の身体は屍兵に、魂は悪霊になるため、犠牲者が多くなればなるほど攻略が難しくなる特性を備えた宝具。




バーサーカーの宝具は、簡単に言えば赤王様の劇場みたいなタイプです。
バーサーカーということで魔力消費も本来であればかなり激しいはずですが、保有スキルもあって城での宴でかなり維持コストが削減されて龍之介の負担は小さくなっています。




おまけ。ネタ予告編。
ゴジラ公開するも8月まで忙しくて見にいけないストレスと、BSプレミアムのゴジラ放送に触発されて書きました。


 都心のとあるマンションの一室、普段は部屋の借主である男とその娘の二人暮らしなのだが、この日はそこに珍しい客人が訪れていた。昨年から採用された防衛陸軍の新しい常装を着た男だ。その肩の階級章は、客人が防衛陸軍大佐の地位にいることを示していた。

「久しぶりだな、小早川少佐……いや、今は大佐か。呼び出してすまなかったな」
「こちらこそ、ご無沙汰しています。お元気そうでなによりです」
「私ももういい年だ。昔なら、このマンションの階段の上り下りだって息を切らすことはなかったが、今では息があがってしまう。衰えたものだよ、私も」
 しかし、小早川の目の前にいる男は老いたことへの愚痴とは裏腹に、齢65を過ぎた退役軍人だとは思えないほどに矍鑠としている。その眼光にも、立ち振る舞いにも衰えは全く感じられないと小早川は感じていた。

「しかし、軍を勇退した貴方が今更私に一体どういったご用件でしょうか?」
 小早川は男に問いかける。同時に、部屋の空気は昔話をするような和んだ空気から張り詰めた空気に変わった。小早川は男の凄みから10年前のあの日の会議室の緊張感を幻視した。やはり、この男は10年前から全く変わっていない。

「確か、大佐は今、防衛省直轄の特殊災害研究会議にいたはずだな。実は今日は、君に見せたいものがあって呼んだんだ」
 男は棚からタブレット端末を取り出した。そして画面を操作し、一つのファイルを開いた。
「先日、娘の由里が奈良県の南明日香で奇妙なものを見つけたと教えてくれてな」
 タブレット端末を持ち上げ、小早川はその画面に映し出されていた古文書を訝しげに見つめる。

「柳……星……張?」
「古代中国や日本で使われていた太陰暦の28宿では、南を指すそうだ。そして、星宿図を元にすると、『柳』は海蛇座の頭、『星』には海蛇座を代表する赤い星があり、それが南斗の守護神の色を表す。そして『張』はそのあとにある翼を現すそうだ。つまり、これは翼を持つ赤い守護神を意味するらしい」
 男は続ける。
「また、その村に古くからある名家に伝わる古文書からは、護国聖獣伝記との共通点がいくつか見つかったらしい。つまりは……」
 小早川は男の言葉を遮り、険しい表情を浮かべながら口を開いた
「その村にも、かつての3聖獣のような怪獣が封じられているということでしょうか?……この国にこれ以上怪獣が眠っているなんて事実は信じたくありませんね……」

「……古代の民は『くに』を護るために聖獣たちを封じ込めたという。……つまり、古代の民には怪獣の力をもって対抗しなければならない脅威が存在したのではないだろうか?」

 男――かつてゴジラをその手で抹殺した英雄である、日本国防衛海軍退役中将立花泰三は、小早川を諭すかのようにただ淡々と語った。

「そう――例えば、ゴジラのような怪獣が」



 ゴジラが護国三聖獣を滅ぼし、横浜の地を災禍に包んだあの日から10年が経っていた。しかし、戦いはまだ終わってはいない。

天地否。それ亡びなん、それ亡びなん、苞桑に繋る。

『ゴジラ・ガメラ・イリス~列島崩壊~』
20XX年X月X日公開!!



というわけで金子監督の特撮クロスネタでした。
製作は未定。というか、3本目抱えるなんて無理なんで期待しないで下さい。

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