東方帽子屋   作:納豆チーズV

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 今話で本編完結です。


一二.Alice②

 霊夢や魔理沙等の人間によると、冬の空は風が万遍なく当たってきて非常に寒いらしいのだが、前世と違って吸血鬼の俺にはその感覚はわからない。ただ、わからないにしても味わいたいとして、いつも通り冬にはマフラーを着用するようにしている。

 狐の仮面は外し、上空からひたすらそこら辺をうろうろしていた。林や森、玄武の沢の近くまで行ってみたりと、とにかく目的の妖怪を探す。

 そろそろ夕暮れに差しかかるという時間、ようやっと俺はそれを見つけることができた。一切の光を取り入れない小さな真っ黒い球体が、林の中でうろうろとしているのが眼下に映っていた。

 光のない場所ならば影の魔法が役に立つ。暗闇の中になにがあるのかを察知し、動く人型が二つあることにちょっと驚く。とりあえずその二つのうち目的の妖怪だと思われる小さい方の肩をちょんちょんとつつくと、黒い球体がほんの少し光を取り入れたのがわかった。

 その中に飛び込んでみると、視界の中に辛うじて二人の妖怪の姿が映る。あちらもこちらに気づいたようで、歓迎の笑顔を浮かべてくれた。

 

「こんにちわです、ルーミア。それとそちらは……」

「こんな昼間から私のところに来るなんて、珍しいなー」

「こいしだよー!」

 

 今回はルーミアを探しに来たのだが、どうやら一緒に捜索していたこいしも一緒なようだった。ちょっと驚きつつも、まぁ、二人なら気が合うかもしれないと思う。同じく目的もなくそこらを放浪するのが趣味の妖怪だし。

 

「こんにちわ、こいし。二人はどこで知り合ったんですか? これまでも結構一緒に遊んだりしてたんです?」

「いやー? 今日が初めてよ。歩いてたらなにかにぶつかって、いつもみたいな木の感触と違ったからなにかと思ってみれば、それがこいしだっただけ」

「変な面白そうなものが動いてたから入ってみたら、ちょっと前に見たような顔がいたから。それでなにか楽しそうなことやってたから、私も混ぜてもらったの」

 

 容易にその時のことが想像できる。二人とも能天気というかマイペースだから、きっと赤の他人には理解できないような不思議な会話が為されていたに違いない。

 それにしても、ちょっと前、というのは間違いなく俺が起こした異変の一件だろう。それよりも前にも宴会で顔くらいは見ていたはずだが、実際にそれを個人として認識したのは異変の際というわけか。自分が起こしたことで周りの関係が確実に変わっているのを意識すると、なんというか、ちょっと変な気分になる。

 ちょっと前まではこういうことが怖かった。自分のせいでどんどん歴史が正史からずれていって、そうなると原作知識なんて当てにならなくなる。死ななくてもいい誰かが死に、不幸になるべきじゃない誰かが不幸になるのではないかと、ずっと怯えていた。まだ心を入れ替えるように決意してからちょっとしか経っていないので、未だ不安になることはあるが、それでも今はもう俺はその責任を負う覚悟を決めたつもりでいる。

 俺は原作知識があるせいで過剰に周りへの影響を危惧してしまうだけで、本来ならば、そんな責任は誰もが意図せずとも覚悟して受け入れているものなのだ。存在するということは、少なからず他のなんらかの影響を与えること。五〇〇年も生きてきたのだから、俺が広げてきた波紋も実は目に見えない範囲に結構広がっているはずだった。散々しておきながら今更それから逃げようだなんて、おこがましいにもほどがある。

 そもそもとして、もしも霊夢がいなければ誰が不幸にならなかっただろう、なんてことはIFであろうとも誰も考えようとはしない。それをすることは霊夢への最大の侮辱であると同時に、霊夢に影響を受けた者たちの否定にも繋がるし、そんなことを考えているくらいなら霊夢のおかげでどんな面白いことが起こったかと想像する方が有意義だ。

 そして、俺には俺自身が世界の異物に見えていようとも、周りにとっては決してそうではなく、もしもいなければ、というIFは想像ができない相手だということも、先日の件で身をもって教えられた。まだ心のどこかで完全には納得できていない部分があるのはわかるが、少しずつそれも解消できればと思っている。レミリアにも、これからは自分がいなければなんてことは絶対に考えないようにときつくお灸を据えられたし。

 レミリアに叱られた時のことを思い出していると、ルーミアとこいしの二人が不思議そうにこちらを覗き込んで来ているのに気がついた。そろそろ時間が迫ってきていることもあり、用事を手早く済まさなければ。

 菓子折りを倉庫から取り出し、二人に手渡す。二人ともなんだこれと言わんばかりに首を傾げていたが、中身がお菓子であることと先日の件のお礼だと告げると、嬉々として受け取ってくれた。

 

「それから、今日の夜は紅魔館で水遊びと宴会があるんです。そちらの方もできたら来てくださいね」

「そーなのかー。じゃあ、暗くなったら向かってみようかしら」

「ぜひお願いします。こいしも宴会の方、どうですか?」

 

 ちょっと気まずそうな笑いを浮かべているこいしに問いかけてみると、彼女は小さく首を横に振る。

 

「でも、ほら、レーチェルってもう能力ないんだよね。それだとお姉ちゃんは来そうにないし、私も今日はいいかなーって」

「レーツェルです。あ、いえ、さとりは宴会に来ますよ? ちょっと前に誘ったら快く引き受けてくれました」

 

 目をしばたたかせるこいしに、その時の様子を掻い摘んで説明する。さとりが当たり前のように引き受けてくれたこと、心を読む能力に関する自分の態度に気を遣おうとしていたこと。それを聞き終えて、こいしは放心したように口を開けていた。

 どうしたのだろうとルーミアと一緒になって首を傾げていると、急にこいしが笑い出した。面白そうに、というのとはまた違う、なにかを慈しむような穏やかな微笑みだった。

 

「そっかぁ……それなら、私も宴会に出ようかな。お姉ちゃんだけ楽しむっていうのもずるいもんね」

 

 参加してくれるならぜひもない。一も二もなく頷く俺を、こいしはじーっと見つめていた。

 なんだろう、と疑問を抱いていると、瞬きの合間に距離を詰めてきたこいしが、すっと手を伸ばしてくる。半ば反射的な思考で避けようかとも悩んだが、なにをするのかということにも興味があったので、すんでのところで体を止めた。

 すると、つんっと頬をつつかれた。

 俺はただ、小首を傾げた。

 

「なんていうか、雰囲気は前のままなんだけど、すっごくわかりやすくなったなーって」

「わかりやすい、ですか?」

「心なんて読まなくてもなにを考えてるのか大体わかっちゃうくらい表情が豊かだから。考えること感じること片っ端から出てる感じー?」

 

 それはつまり、表情のコントロールがまるでできていないということだろうか。かつて表情をなくす前も感情がすぐ顔に出てしまっていた気がするし、長らく無理矢理無表情を装ってきた俺では、表情を操作することなんて欠片たりともかなわないことは容易に想像がつく。

 自分を一切誤魔化すことができない。ちょっと思うところはあるが、数秒もすれば別にいいかという結論にたどりついた。ずっと自分に嘘を吐き続けた罰だとして素直に受け入れることにしよう。そもそも感情が常に顔に出てしまうなんて、心を読まれることに比べれば大分生易しい。心を読まれるにしたって、自分を騙し続けていたからか俺はどうやら無意識に自分をわかってくれる存在を求めていたようであるし、たとえ能力を失った今でも、第三の目で見抜かれることを気にしたりはしない。それに、別に表情が豊かなのは悪いことではないのだから。

 こいしがなぜかどこか満足そうに笑顔を浮かべているのを見ながら、ふと思う。

 俺は身勝手に周りの思いを振り回し、"答えのない存在"などと嘯き、いろんな人妖にたくさんの迷惑をかけた。そしてその結果として、俺が"この世界にとって"どういうものであるかではなく、"俺と親しくなってくれた人妖にとって"俺がどういうものかが重要なことを教えられた。

 結局、この世界に"答えのない存在"なんて一人たりともいやしないのだ。魂を持って産まれ落ち、誰かにその存在を認識された時点で、その者が在ることに意味や意義がないことなどあり得ない。それは世界の外側からやってきた俺であろうとも例外ではなかったのだから、心を閉ざしてしまったこいしであろうとも、彼女が"意味のない存在"であることも絶対にあり得ないのだろう。

 俺も彼女もきっと、ただ目の前に立ちはだかる壁から逃げたかっただけだ。越え方がまるでわからなくて、立ち向かって怪我をしてしまうことが本当に恐くて、両目をぎゅっと閉じて世界から目を逸らしていた。立ち向かわなくちゃ変われないなんてことはわかっていたくせに、今のままでいいと世界と一緒に自分を否定して、必死に満足しようと心の奥底で四苦八苦して――。

 かつての俺のように、未だ逃げ続けているこいし。俺の痛みが俺だけのものだったように、彼女の痛みのクオリアを完全に理解することは俺にはできない。

 けれど、一つだけ知っておいてほしいことがあった。心に嘘を吐き続けていた時にはずっと気づけなかった、今だからこそわかる本当に当たり前のことを。壁に立ち向かわなくちゃいけなくなって、ようやっとその壊し方がわかり始めた今だからこそ。

 

「こいし、私はあなたのことを大事に思ってますよ。きっとさとりもフランも、なんだかんだで霊夢や魔理沙だってそう思ってます」

「うん? 急にどうしたの?」

「友達や家族が困っていたら、助けたいって思います。友達や家族が泣いていたら、どうにかしてあげたいって強く感じます。だから……どんなことでも、助けがほしいと思ったなら私たちを頼ってください。もしも泣きたくなったなら私たちに泣きついてください。遠慮はいりません」

「……レーチェル?」

「こいしが私を助けてくれたように、こいしが私を助けたいって思ってくれたのと同じように、私たちもこいしが困っているなら手を貸してあげたいんです。まだ怖いなら、強制したりはしません。でもこのことだけは、どうか忘れないでいてくれると嬉しいです」

 

 自然と顔が笑みを浮かべるのを自覚しつつ、いきなりすぎて戸惑っているこいしにそれだけ告げた。

 俺はレミリアやさとりのことを信頼していたはずなのにもかかわらず、それらを守るなんてほざいて異変を起こした。それは彼女たちをどこか見下していた、信じ切れていなかったからこその行動なのだと、異変を止められた後になって遅まきながらに理解したのだった。嬉しさや悲しさがその者だけのものであるように、俺が俺だけの意志で、他人の立ち向かうべきなにかを奪うことはひどい傲慢なのだ、と。

 もちろんそれに関しても、昨日の今日で完璧には納得し切れてはいなかった。だけどそう思うようにしている。たくさんの人妖に心配されて、なんとなく、そうでなくてはならないという風な気がしていた。

 

「変なこと言っちゃいましたね。すみません。それじゃ、私はそろそろ行かなくちゃいけないので」

 

 二人に背を向け、立ち去ろうとする。そんな俺の服の袖を誰かが引いてきた。

 顔だけで振り返ると、そこではこいしが満面の笑みを浮かべていた。

 

「ありがとう、レーツェル」

「……はい」

「あ、間違えた。レーチェル」

「レーツェルで合ってます」

 

 そういえばこの二人って、二人とも俺をレーチェルと呼ぶクセがあった。やっぱり気が合うんだろうな、なんて思いながら二人に手を振って、今度こそこの場から飛び立った。

 日が沈んできた。回るべきところは回ることができたし、紅魔館へと帰ろう。異変を起こしたからとメイドたちに無理を言って準備を手伝わせてもらうことにしているから、できるだけ早めに戻らなければいけない。

 影の魔法は楽ができてしまうので、敢えて使わないで準備をしようと思う。

 異変の後には大団円。これもまた幻想郷での風流なのかもしれないなんて思いつつ、実際に起こした張本人が吐くセリフではないなと苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

 今日は別に満月ではないし、目を見張るほどの美しい花が咲いているわけでもない。普通の人妖にとっては宴会なんて開かないような、そこらにありふれているなんの変哲もない普通の日だ。

 なのになぜそんな日に宴会や水遊びを開催することになったのかと言えば、主に俺の懇願のせいだった。レミリアとパチュリーは月へ行く手伝いをしてくれた霊夢へのお礼の一環で大図書館に海を作っていたのだが、俺のせいでお披露目が中止になってしまった。それを改めて行いたくて、ダメもとで霊夢たちに頭を下げたのだった。紫もまた、それに強い賛成の意を示していたのを覚えている。

 なぜ紫がそんなに賛同するのかは聞いてみたが、要領の得ない回答しか返ってこなかった。吸血鬼が作った海とやらに興味があるだとか、宇宙人に渡したいものがあるだとか、変なことばかり言ってくる。なんにせよ水遊びと宴会を開くのは本望だったので、それ以上追及するのはやめることにした。

 

「……なぁ、一つだけいいか?」

「なによ」

「今は冬だって言うのに、やっぱり水遊びはおかしいって!」

 

 大図書館に本物の海を作るのには、やっぱり無理があった。そもそも面積が圧倒的に足りなさ過ぎて、プールにしかなっていない。というか、自ら上がる梯子等もある関係で、丸っきりプールである。

 図書館はそこら中水浸しで――すべての本は魔法で防水が完璧なので、そちらは問題ない――、なけなし程度の海の雰囲気を出すためにそこらにシダ植物等が置かれていた。天井には真夏の太陽をイメージしたらしい明るいランプが設置されており、元々はかなり暗かったと言うそれは、俺の心の中で見た太陽を参考にした結果、そこそこそれっぽく仕上がったと言う。

 大声に目を向けてみれば、全身に水を滴らせながら、レミリアに文句を投げる魔理沙の姿が目に入る。レミリアのもとだけにカラフルなパラソルとビーチチェアがあり、満足そうに寝転がっていた。魔理沙の隣には霊夢の姿も見え、二人とも両腕で体を抱えながらぷるぷると震えていた。

 一応、プールは海らしく冷たい水なので、冬とは絶対的に相性が悪い。一切塩なんて含まれていないので、その時点で海らしいもなにもないのだが。

 

「レーチェルー、泳ぎ勝負しようよー!」

「あ、すみません。吸血鬼なので流水はちょっと苦手でして。私はここできちんとこいしの活躍を見てますから。あとレーツェルです」

「そう? じゃあ、ちゃんと見ててねっ!」

 

 こいしは寒さなど無視してばしゃばしゃと水を叩いてはしゃいでいた。俺が断ると、次は鈴仙に目をつけたようで、こいしは「え、ちょ」と戸惑う鈴仙の話を一切聞かず引きずっていった。鈴仙は能力を使って逃げようとしたみたいだが、無意識を操るこいしからはそう簡単には逃れられないようだ。

 無理矢理勝負をさせられる鈴仙を眺めていると、自然と苦笑いが顔に浮かぶ。なんとなく、ご愁傷さまと手を合わせてみた。

 この大図書館にはそれなりの数の人妖が集まってきている。

 紅魔館の住民であるレミリアやフラン、咲夜やパチュリー、美鈴や一部の妖精メイドと言った面々は当然揃っている。次に霊夢や魔理沙、紫、俺が呼んださとりやこいし、ルーミアや鈴仙、永琳。どうやら永琳は輝夜を、紫は幽々子と妖夢も一緒に連れて来ているみたいだった。あとは呼んでいないのに文が来ている。

 水遊びと聞いて、紫や幽々子、咲夜と言った大人っぽい雰囲気の人妖以外は水着を身に纏っている。泳いでいるこいしはもちろんとして、霊夢や魔理沙、さとりやルーミア等々。ちなみに美鈴は普通に水着で寒そうながらも楽しそうにやっている。

 

「お姉さまぁ、なに見てるの?」

「フラン。こいしが鈴仙と泳ぎ勝負してるので、それを見てます」

 

 そろそろ終わりそうだけれど。

 結局、こいしが圧勝していた。途中までは案外いい勝負だったのだが、鈴仙は美鈴とぶつかったりルーミアの生み出す暗闇に巻き込まれたりとトラブルに遭遇しているうちに、いつの間にか大分引き離されていた。

 さとり等、勝ったこいしを褒める人妖はいるが、負けた鈴仙をなぐさめる人妖がまったくいない。永琳や輝夜がそんなことをするはずもないし、霊夢や魔理沙等も同様だ。妖夢は幽々子についているので鈴仙には構ってやれず、ルーミアも美鈴もトラブルを起こした側なので逆効果だろう。

 俺が行こうかなと考えたりもしたが、なんやかんやで突っぱねられて終わりだと思ったので、やっぱりそっとしておくことにする。ただ、とりあえず影の魔法でぽんぽんと鈴仙の頭を撫でるくらいはやっておいた。

 

「レーツェル、フランドール、一緒にどう?」

 

 紫が片手に酒を持って俺たちを呼んできたので、フランと顔を合わせ、そちらに向かう。

 霊夢や魔理沙もちょっと前まではビート板を持って泳ぎに興じていたのだが、さすがに寒さに耐え切れなくなったようだった。すでに猪口を片手にして幸せそうに飲んでいる。

 不思議なのは、紫の対面にいた永琳が猪口を片手にひどく微妙な表情で顔を引きつらせていたことか。

 

「どうかしたんですか?」

「い、いえ……別に」

 

 いつも一歩引いた立ち位置ですべての物事を眺めているような雰囲気があったので、永琳がここまであからさまに動揺しているのは珍しいと感じた。

 どういうことかと紫に目を向けてみれば、彼女はなぜかとても満足そうに笑っている。

 

「うふふ、月の都をイメージしたお酒の席を用意してみせただけですわ」

 

 そう言って、紫はずいぶんと古めかしい見た目の酒瓶を掲げた。それで大体のことを把握する。

 俺たちは紫の謀略で自力で月へ行くように誘導された。おそらくはそれがうまく機能して、紫のよくわからない策が成功を期し、月の都に忍び込んでお酒を盗むことに成功したという具合だろう。そしてそれをかつての月の住民である永琳に振舞ってみた、と。

 もしも月旅行の紫の目的が永琳のこの反応だとすれば、なんともまぁしょうもないものに付き合わされたというものだ。ただ、月旅行は狭いところに閉じ込められたりと散々だったが、それでもやっぱり転生してからの初めての旅行ということでめいっぱいに楽しめたのでよしとしよう。狭い幻想郷では旅行なんて滅多にできるものではないので、いろいろと新鮮に感じたことが多かったのは記憶に新しい。

 紫にコップを渡され、酌をされる。お礼を一つ言って、口に運んでみた。

 ……おいしい。おいしいのだけど、どこまでも純粋なお酒というか、なにから作られているのかがまったくわからない。これが月の都のお酒らしい。まぁ、おいしいならなんでもいい。

 

「あ、そういえば」

「ん」

「あ」

「あら、ありがとう」

 

 倉庫から菓子折りを三つ取り出し、霊夢と魔理沙と紫に手渡す。紫は普通に、そして霊夢と魔理沙はなぜか呆れたように俺を見つめた後、それを受け取ってくれた。

 

「あんたもあいかわらずねぇ。私たちが勝手にやったことなんだから、こんなもの配らなくたっていいのに」

「だなぁ。そうじゃないと、私たちはレミリアとか幽々子とか萃香とか、そこの宇宙人どもからもなにかもらわなくちゃいけなくなっちゃうぜ」

 

 ちらちらと物欲しげな魔理沙の視線に、レミリアは鼻を鳴らし、幽々子は無意味に微笑み、永琳と輝夜は無反応。共通していることは誰もがなにも差し出すつもりがないということだろう。わかり切っていたことだと、魔理沙が小さく肩を竦めた。

 

「紫、そういえば萃香はいないんですか? 誘おうと思ったんですけど、見当たらなくて」

「あぁ、今日は地底でサッカーの試合があるとかなんとか言ってたわよ。流行ってるわね」

 

 じとっとした紫の目線を受けて、さっと目を逸らす。サッカーの本をお願いした時に俺は「大きく広めるつもりはありません」なんて宣言した記憶がかすかにあり、紫もそれを覚えているらしい。

 

「はぁ、ま、いいわよ別に。でも、あなたに伝言を預かってきたわ」

「伝言? 私にですか?」

「ええ。『実はレーツェルが起こした日が本当の試合をやる日だったんだ。レーツェルのせいで先延ばしになったんだから、もちろん埋め合わせしてくれるよね?』ですって。大変ね」

「うぐぅ」

 

 萃香のことだ。埋め合わせ、と言って菓子折りを渡したところで満足してくれないだろう。当然のごとく以前のような全力の喧嘩を求めてくるに決まっている。それも地上では迷惑がかかるので、地底の外れの方で。

 よほど嫌そうな顔をしていたのだろう。霊夢は苦笑いをし、魔理沙がドンマイと背中を優しく叩いてくる。こんなことになるんだったら、異変を起こすのはさらに次の日にしておけばよかった。過去の自分を無性に殴りたくなってくる。

 

「いやぁ、しかし新鮮ねぇ」

 

 霊夢が感慨深そうに呟く。なんのことかと首を傾げれば、どうしてか指を差された。

 

「ほら、あんたと出会ってから無表情ばっかり見てたから。ここまで表情豊かなところを見てると、ギャップ? がすごいというか……」

「別人みたい、ですか?」

「いや、むしろもっと『らしく』なったわよ。わかりやすいしね」

 

 きっと褒められているのだろう。ありがとうございます、とお礼を言っておく。

 

「そうね。生き生きして見えるわ」

 

 紫からも言われ、そちらに目を向ける。

 

「今の方が断然魅力的よ。誇ってもいいくらい」

「えぇと、ありがとうございます……ところで紫、少し変わりました?」

「なにがかしら?」

「なんだか私への態度がちょっと違うような気がして。前と違って、なんというか……親戚の親みたいな印象を受けるんですけど」

 

 紫はくすくすと笑うと、再び俺に酌をしてくれた。

 

「私もまたあなたのクオリアを体感させていただいた一人ですから。あなたの性質の根本を知ったのですから、多少の対応の変化はお流しくださいな」

「そ、そうですか。でも子ども扱いは……まぁ、紫から見れば皆子どもなのかもしれませんけど」

 

 当たり前のように頭を撫でてくる紫を見て、おそらく俺は仏頂面になっていることだろう。

 紫は声を殺すようにして笑っていた。

 

「あら、ひどいですわ。それではまるで私がお年寄りみたいな言い方じゃないの」

「そこまでは言ってないですが」

「さすがにあなたほど若くはないと思うけど」

「そこまでも否定してないです」

 

 プールの方が騒がしいので視線を向けてみれば、今度はこいしと妖夢が泳ぎの勝負をしているようであった。幽々子はお酒を嗜みながら、面白そうにそれを眺めている。

 楽しそうにしているこいしやら真剣に泳ぐ妖夢やら、それぞれを応援している面々を見ながら、ふいと、俺は思う。

 俺は異変で負の感情の痛みをすべてなくそうとした。でも、勝負で負けたくないと思う心が正か負なのか、目的を成すための努力で発生する苦労は正か負なのか――どちらであろうと、両方が混ざっているのが真実であろうと、当人たちはそんなこといちいち気にしない。実際に考えるにしても正直どうでもいい。

 俺がしようとしていたことは誰かを救うことではなく、目の前で繰り広げられている勝負そのものをなかったことにしてしまうことだったのだろう。人々が行っている努力そのものを無に帰してしまう失礼なことだったのだろう。

 肩を竦める。異変が終わってからいくらも思い知らされる、自分の愚かさ加減。

 でも。

 向き合って、少しずつ変わっていければいい。知って、刻んで、前に足を踏み出していけばいい。

 大好きな姉と妹にそう教えてもらった。道を間違えて、泣いて、本当に辛い時は誰かを頼って、乗り越えられた時はたくさん笑えばいいと。

 

「明日は、新しいスペルカードでも作りましょうか」

 

 記念に切り札級のものを一枚作っておきたい。異変を失敗した記念というのもおかしな話だけれど、せっかくいろいろなことの見方が変わり始めてきた時期なのだ。

 めいっぱいに美しい弾幕がいい。新しいスペルカードに思いを馳せながら、お酒を口元に傾ける。

 おいしい。

 楽しげな空気を肴にしたそんな思いに、自然と頬が緩むのを抑えられなかった。

 

 

 

 

 

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 水遊びと宴会が終わり、人妖たちが退散した後で、俺はあくびをしながら自室へと向かって歩いていた。

 結構楽しんでもらえたようでなによりである。終わりが近づいてきた時、後日風邪を引いていないかと永琳と鈴仙が一人一人の様子を見て回っていたので、お礼を言ったりもした。永琳によれば「バカは風邪を引かないのよねぇ」とのことだから、きっと皆大丈夫だったのだろう。

 

「……楽しかったなぁ」

 

 今日のことを振り返っていると、気づいた時には自分の部屋の前までたどりついていた。

 扉を開け、電気をつける。

 天蓋つきのベッド、ベッドサイドテーブル、照明、鏡台、机やイス。ここまではレミリアやフランの部屋と同じようなものなのだが、隅の方にはテレビやらコタツやら、外の世界から流れてきたものや参考にして作ったものも置いている。座布団等と合わせ、洋風なこの館に合っているとは言いがたかったが、マッチしていない変なものが転がっているこの部屋にもいろいろと愛着が湧いてしまっていた。

 鼻をすんすんと動かし、なんとなく、大体のことを察する。

 さて。

 ベッドの毛布の部分が妙に膨らんで見えたので、ちょっと剥いでみた。

 

「あ」

「えへへ」

「……まぁ、わかってましたけどね」

 

 見つからないようにするためか、丸まって小さくなっていたレミリアとフランがそこにいた。二人とも気恥ずかしそうに、目を逸らしたり笑ったりとそれぞれの反応を見せる。

 そんな二人を横目に、俺は机の方へと足を進めた。イスに座り、置いてあったペンを手に取る。

 

「お姉さま、なにするの?」

「日記を書きます」

 

 前からずっと続けていることだ。今更やめようとは思わない。

 俺が書いてるのを覗き込もうとしたのか、フランがベッドから這い出ようとして、しかしレミリアに肩を掴まれて止められているのが視界の端に映った。

 別に見られてもいいのだけど、気を遣ってくれたレミリアに心の中でお礼を言っておく。

 

「ねぇ、レーツェル」

 

 映姫に叱られたこと、永遠亭で永琳と鈴仙にジトっとした目で見られたこと、さとりがちょっと変だったこと。そこまで書いたところで、レミリアに声をかけられた。

 

「あなた、敬語はやめたりしないの? もうあなたはあなたでしかないんだから、普通にしゃべってくれてもいいのよ」

 

 腕が止まる。それから少し考えて、書くのを再開するのと一緒に口を開いた。

 

「確かに、最初はお母さまの真似事でした。お母さまの口調を真似することで、お母さまたちのことを絶対に忘れないようにするための、単なる戒めにしていました」

「だったら」

「けど、今はもう違います」

 

 こいしとルーミアが一緒に遊んでいたこと。こいしにお礼を言われたこと。

 紅魔館に戻って、妖精メイドたちと一緒にいろいろと準備をしたこと。

 

「"狂った帽子屋"は死にました。でも、確かに私は、見知らぬ世界に迷い込んでしまったアリスは、帽子屋を装おうと必死になっていました」

 

 水遊びと宴会で、とにかく騒いだこと。楽しんだこと。

 

「……それから、いろんな人たちに助けられたんです。あなたはこれだけのことをやってきた、あなたがいることでこれだけ楽しく過ごせた、そういうたくさんのことを証明された。私もこの場所にいていいんだって、皆が、お姉さまたちが優しく諭してくれた」

 

 自室に戻ってみたらレミリアとフランがいて驚いたこと。レミリアとしている今の会話のこと。

 

「あの時の気持ちを味わえたのは、ほんの少しかもしれないですけど……帽子屋のおかげかもしれない、って思うんです。本当にバカなことをやっていたのはわかっているんですが、でもそれでも、そのおかげでいろんなことに気づくことができたから」

 

 レミリアとフランの方に向き直る。二人とも、真剣な顔で俺の方を見つめていた。

 そんなに大した話じゃないんだけどな、とちょっとだけ苦笑する。

 

「帽子屋として経験したいろいろなことも、きっと私にとって大切なことなんです。だから、このしゃべり方も……その一部、なんでしょうか。なんとなく続けたいと思っているのを変に言葉にしただけなので、言ってること滅茶苦茶かもしれませんが……」

「いえ、十分伝わったわ」

「そうですか?」

 

 レミリアもフランも、まっすぐと俺を見つめていた。

 

「……まぁ、五〇〇年も続けてきたせいでクセになっちゃったっていうのもあるんですけどね」

 

 日記帳に残りの文字を書き、ぱたんと閉じてペンを置いた。席を立ち、二人がいるベッドの方に向かう。

 その端の方に腰かけると、フランがごろごろと転がってきては、俺の膝の上に頭を乗っけてきた。それから背中に誰かが寄りかかってきたのを感じて、少し視線を横に動かすと、俺の肩から顔を出すレミリアの顔が窺える。

 そんな二人の様子に、俺も自然と口元に笑みが浮かんだ。

 

「うん。やっぱり、あなたは笑顔が一番いいわ」

「そうですか?」

「そうよ」

 

 フランも勢いよく首を縦に振っていた。なんとはなしに自分の頬に手を持っていってみるが、笑っていることがわかる以外は特に思うところはない。吸血鬼は鏡に姿が映ったりもしないので、鏡台の前に移動してみてもわからないことだろう。

 それでもレミリアやフランが満足そうにしているのを見ていると、自分がどんな表情をしているかなんてどうでもよくなってきた。

 目を閉じてみる。

 するとどうしてか、帽子屋としての仮面を壊された直後のことが頭に浮かんできた。

 

『あぁ、うあぁあああ……』

 

 堪え切れない、一人では絶対に耐え切れない不安の念に、ただただ泣きじゃくっていた。あまりにも悲痛が大きすぎて、胸の痛みが強すぎて、自分が自分でいられなくなりそうだった。

 もうなにもかも、忘れてしまいたかった。この痛みから解放されるためなら、死んだっていいとさえ思っていた。

 もう嫌だ。なにも見たくない、なにも感じたくない。痛くて痛くてしかたがないんだ。悲しくて悲しくてしかたがないんだ。

 ヒビが入った心は、今にも壊れてしまいそうで。

 そんな時、誰かが優しく俺を抱きしめてくれたのがわかった。

 一瞬思考が止まって、でも、すぐにそこがどこなのかがわかる。

 いつか感じたことのある、柔らかくて、甘くて優しい安らかな匂い。俺が慕う大好きな姉の胸の中。

 

『大丈夫よ。苦しいなら、辛いなら、悲しいなら……いっぱい、私たちを頼りなさい。全力で手を尽くしてあげる、その痛みがなくなるまでずっとそばにいてあげる』

 

 それじゃあ、ダメなんだ。

 甘えてしまえば、また全部なくしてしまうかもしれない。救われてしまえば、気を抜いてしまえば、君さえも俺の前からいなくなってしまうかもしれない。

 だから、ダメなんだよ。幸せになんかなっちゃいけないんだ。

 突き飛ばそうとした。いつかの時のように救いを否定しようとした。

 でも、大好きな姉は俺から絶対に離れようとしない。俺を抱きしめるのをやめようとしない。

 

『あなたがそうやって必死に私たちを守ろうとしてくれるように、私たちもあなたをどうにかしてあげたいって、ずっと強く思うのよ』

『うぅぁあ、でもっ、うぅ、けどっ! ぞ、ぞれじゃあ、ぅ、守れないっ!』

『安心なさい。かつての私は弱くて、頼りなかったかもしれない。でも、もう違うから。今の私は……私たちはきっと、あなたが思っているよりもずっと強い。それにね、ここからさらに強くなろうとがんばることだってできる』

『う、うぅうぁああ!』

『ねぇ、レーツェル。何度だって言うわ』

 

 温かい手の平で頭を撫でられる。それに、一瞬だけ抵抗をやめてしまう。

 どこまでも優しげな笑みで、レミリアはまっすぐに俺を見つめてきた。

 

『大好きよ。私もあなたが、大好き』

 

 涙が止まらなかった。不安は、いつまでも消えなかった。

 でも同時に、俺を包み込んでいた優しさと温もりも消えてはくれなかった。

 次の日になって、レミリアにたくさん怒られて、泣きわめくフランに抱きつかれて。

 なんとなく、胸に空いていた穴が本当に埋まってきたような気がした。

 まだ完全には治っていないけど、痛みは残っているけれど、それでもほんの少しずつ。

 目を開いた。

 そこには、動かなくなってしまった俺の顔を心配そうにのぞき込む二人がいた。

 

「……大好きです。お姉さま、フラン」

 

 どうしても言いたくなって、胸から湧き上がってきたその言葉を、ぽつりと口から漏らす。嬉々とした思いを込めて、精一杯の笑顔を浮かべてみせる。

 結局、一番弱かったのは俺だったのだろう。周りを守るなんて口にして、本当は俺自身がなにかを失うことが誰よりも怖かっただけ。自分が一番弱かったから大事な人たちの強さだって見くびって、一人でなにもかもしなきゃいけないと思い込もうとしていた。

 ここから強くなろうとがんばることだってできる。そんなレミリアの言葉――それはもしかしたら、俺にも当てはまってくれているのだろうか。

 俺もまた、強くなることができるのだろうか。

 わからない。でも、なれたらいいなと感じる。

 俺も、レミリアやフランみたいに、本当の意味で誰かのために必死になれるくらい、強くなれたらいいなと思う。

 

「憧れは……まだまだ遠いですね」

 

 なぜか目を見開いて固まっている二人を適当に引き離し、ベッドに寝転がす。

 二人ともここにいるということは、久しぶりに三人で寝たいという意志表示だろう。俺もちょうどそんな気分だったのでぜひもない。

 布団を整え終え、俺も横になって三人を包み込むように布団をかけると、ごろんと二人の方に向き直った。

 

「お姉さま、フラン。今まで本当にありがとうございました。だから明日からもどうか、よろしくお願いします」

 

 そんな挨拶をしてみると、二人ともようやく再始動してくれた。

 二人ともどうしてか頬を薄っすらと赤く染めつつ、ほぼ同時に小さく首を縦に振った。

 

「も、もちろんよ。あなたは私の妹なんだから」

「……お姉さまは誰にも渡さないわ」

 

 妙に偉そうに胸を張るレミリアと、気合いを入れるように呟いているフラン。二人ともちょっとばかりおかしな反応だったので首を傾げつつ、でも芳しい返事だったのは確かなので、俺も微笑みながらこくりと頷いた。

 影の魔法でランプの光をすべて消す。暗闇に包まれた室内で、仲のいい姉妹の体温を身近に感じながら、そっと瞼を閉じる。

 おやすみなさい。ほんの小さな、そんな一言。

 眠る直前、頭の中をよぎっていたのはこれまで帽子屋として過ごしてきたたくさんの記憶だった。

 ずっと押さえ込んできたけれど、心の底ではずっと辛く感じていたと思う。幸せなくせに不幸のフリをして、罪悪感から逃げようと必死だったように思う。

 逃げていたせいで、本当なら必要がないはずの痛みさえ味わってきた。

 今だって、両親や義理の母に対する罪悪感が消えたわけじゃなかった。あの時のことを思い出すと、どうしても針で刺されたように胸がちくりと痛んでしまう。

 でも、レミリアやフランが――幻想郷に住むたくさんの人妖たちがそばにいてくれる。そのことを意識すると、そんな胸の痛みにくらい、まっすぐ向き合えるような気がした。

 辛いことはたくさんあっただろう。でもそれ以上に、嬉しくて楽しいことがいっぱいあった。

 思う。

 もしも明日、これまでのことが全部夢だとして、現代の日本のベッドで目覚めたのだとしても。

 もしも明日、かつての時のようにすべてを失い、見知らぬ世界で見知らぬ誰かとして生を受けたのだとしても。

 この世界で見たものは、感じた思い出は忘れたくない。絶対になくしたくない。

 なかったことにしたくない。

 このクオリアだけは、なによりも大事にしたかった。

 世界にとってどんなに意味のない記憶に化したとしても、大好きな人たちからもらったかけがえのないこの思いだけは、いつまでも大切にしていたかった。

 強く思う。強く感じる。

 だって。

 たくさん悲しんで、たくさん辛い思いをして。

 たくさん泣いて、でもそれから、心の底からたくさん笑った。

 忘れたくない理由なんて、きっとそれだけで十分だ。

 

「ん……ぅ……」

 

 意識が朦朧としてきた。考えごとも細かいことはできなくなってきて、心地のいい眠気に逆らうのも、そろそろ限界だった。

 明日からのことに思いを馳せ、気づかぬうちに頬を緩ませつつ。

 一人の姉と一人の妹に抱きつかれ、温もりというか、普通の人間ならむしろ暑いと感じるくらいになりつつ、ひたすら眠りにつく。

 ――たくさん、夢を見た。

 ――不可解な夢を。悲しい夢を。苦しい夢を。

 ――そして、愛おしい夢を。

 

「……大、好き……」

 

 ニヤけながら、ただ一言、誰にも聞こえないそんな寝言は。

 どこまでも厳しくも、どこまでも優しい暗闇と世界に包まれて、静かに消えていった。




今話を以て、本作「東方帽子屋」の本編は終了となります。
ここまで読んでいただき、たいへんありがとうございました。「Kapitel 10」はもう、いろいろとやりたいこと詰め込んだ感じです。
長々とここで語るのもなんですので、書き切った感想等は活動報告へとまとめさせていただきました。そちらも読んでいただける方は、①下記のURLをコピー&ペーストするか、②作者名をクリック後、左下の活動報告欄から「「東方帽子屋」【完結】の執筆感想」をご覧くださると幸いです。

http://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=64597&uid=67621

なお、本編は今話で終了となりますが、今後、気が向いたら後日談(番外編。基本的に日常)を執筆させていただくこともあるかもしれません。
投稿された際は、そちらも読んでいただけると幸いです。

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