東方帽子屋   作:納豆チーズV

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 Sie hat eine ältere Schwester geliebt.
 ――彼女はただ、姉のことが大好きだった――――。


一〇.Selbstsucht

 □ □ □ Standpunkt verändert sich zu Frandre Scarlet □ □ □

 

 

 

 

 

 呆気ない。

 どこまでも冷めた感情で、私は世界を眺めていた。

 新しく置かれた人形を見る。なんの変哲もない、館の外に住むという動物の人形。

 手に取った。ただそれだけで、綿をまき散らして飛び散った。

 呆気ない。

 少しだけ遠く、手が届かない位置に今の人形の頭が飛んで行っていた。

 いちいち動くのもめんどうだ。

 右手をただ、握り締める。ただそれだけで、人形の頭は原型を留めぬほど細切れに爆散した。

 呆気ない。

 なんて、脆い。

 手を下ろす。破片となり散らばったモノの中で、ぼーっと宙空を見つめる。

 そうして漠然と、ただただ不思議に思っていた。

 こんな世界に、いったいどんな意味があるというのだろう。

 こんな世界に、いったいどんな価値があるというのだろう。

 落胆ではない。失望でもない。それは、なにもかもが脆すぎるがゆえに、どこまでも純粋な疑問。

 どんなものも、私が触れるだけで壊れてしまう。どんなものも、私が右手を握り込むだけで潰れてしまう。

 望む望まないにかかわらず、いつだって。

 だとすれば、私にとっての世界とはいったいなんなの? 世界にとっての私とはいったいなんなの?

 きっとその気になれば、気に入らないものなんて全部破壊し尽くして、すべてを屈服させることだってできる。

 きっとその気になれば、世界に在るものを片っ端から破壊し尽くして、この世の生き物を絶滅させることだってできる。

 それは可能性の話ではなく、確信などという生易しいものではなく、決して変えようのない絶対的な真理だった。

 強さなんて関係ない。弱点なんて関係ない。生きた年月なんて関係ない。

 どんなものも、どうせ私が右手を握り締めれば破壊されてしまう。

 ああ、なんてつまらない世界だ。

 

 ――フラン、今日はなにして遊びましょうか。

 

 一人の吸血鬼が、私の姉だという少女が部屋に入ってきた。

 姉は二人いるが、その二人は少しだけ特別だ。彼女たちはそこらの道具と違って、私が触れても壊れることはない。私が望まなければ、ずっとそこで形を保っている。

 でも、結局は同じだ。

 右手の上を意識する。そうしてそこに、私の方にやってきた少女の物質としての目があることを把握する。

 ほんの少し丈夫だから、私が触れても壊れないから、だからなんだというのだろう。

 どうせ壊れる。どうせ壊せる。

 この手を握れば、そこらの道具と変わらず呆気なくその命を散らしてしまう。

 等しく無価値だ。

 さっき壊した人形も、触れては原型を留めずに破壊されていく道具も、この少女の命も、この世界そのものも。

 私に破壊できないものはない。なにもかも、望めば、必ず壊れる。

 

 ――また壊しちゃったんですか。

 

 周囲の影が操られ、散らばった綿が取り込まれていく。

 この姉がそれを行っているらしい。私が壊したものの残骸の後処理を、いつもこうやってこなしてくれる。

 それから。

 

 ――はい、片づけ終わりです。なにして遊びます?

 

 ほら、これだ。

 なんにもなかったみたいに、こうやって話しかけてくる。最初から問題なんてなにもないかのごとく、こうやって語りかけてくる。

 同じくせに。どうせ他のなにもかもと一緒で、私が望めばすぐに壊れちゃうくせに。

 怖がれよ。

 もう一人の姉は、少なからず私の力を恐れている。私という存在そのものは忌避してはいないみたいだけど、なんとなくわかってしまうのだ。

 どこまでも心が冷めている時。機嫌が悪い時。不意となにかを壊したくなった時。そういう都合の悪い時に限って、もう一人の姉は私のそばにはいない。まるで私に誤って壊されてしまう偶然を支配しているかのように、壊してみようかと少しでも考えてみる時は絶対にいないのだ。

 だからきっと、私にはもう一人の姉を壊すことはできないのだろう。

 けれど、そんなことはどうでもいい。

 いくら偶然を操作しようと、私が右手を握り締めれば壊れてしまうという事実は変わらないのだから。

 彼女もまた、無価値だ。

 

 ――これで、遊ぶ。

 

 今日はちょうど、そういう『なにかを壊したくなる時』の気分だった。

 だからもう一人の姉が来ない。だから、いつも無表情な方のおかしな姉が来た。

 単なる気まぐれだった。

 特にキッカケもなく、なんとなくやってみようかと考えただけ。でも他にすることがなかったから、そうする。

 近づいてきた姉を押し倒した。そしてその上に馬乗りになる。

 こんなことをしても表情を変えない少女の首に、手を添えた。

 力を込める。人形なら呆気なく飛び散ってしまうくらいの力で、その首を床に押しつける。

 

 ――お姉さまで、遊んであげる。

 

 望まなければ壊れない存在は、どうせ二人いるんだ。片方だけいなくなったって、構わないだろう?

 力を強める。強くして、強くして、強くして。そうしていくと、少女の顔が段々と青くなっていく。血が回らなくなったから?

 なんでもいい。

 壊れろ。壊れろ。さぁ、壊れてしまえ。

 そう望んだ。私が望んだ。その時点で、この少女の運命は決まっている。

 あぁ、丈夫だな。まだ形を保っていられるんだ。さすが私と同じ種族だ。

 でも、あとどれくらいで壊れるのかしら。

 一秒後、五秒後、一〇秒後? それとも、もっと後?

 楽しみだなぁ。

 

 ――こう、いうのが……好み、なん……ですか?

 ――ええ。だから、壊れてよ。

 

 ぐちゃぐちゃに。原型がわからなくなるくらい、滅茶苦茶に。

 少女はまったく抵抗をしなかった。なにもしようともせず、どこまでもぼんやりと自分の首を締める私の手を見つめている。

 そんな反応を見て、少しだけ、胸の内から変な感情が溢れてきた。

 自然に目元がぴくりとしてしまうような、腕に込める力を無意識に強めてしまうような、どうして思うようにならないと暴れたくなるような。

 苛立ちだった。

 もっと怖がってくれると思っていた。もっと抵抗してくれると思ってた。

 そうして私は、そうやって泣き叫ぶ姉を壊そうと考えていたのだ。

 それなのに、なんだこれは。なんなんだ、この反応は。

 

 ――じゃあ……しかた、ない……ですね。

 

 イラつく。どうしようもないくらい、胸の内に苛立ちが溢れ返る。

 どうして受け入れる? どうして怖がらない?

 どうしてそんな優しい目線で私を見つめるんだ。どうしてそんな、わがままを言う子どもの願いを聞き入れたような。

 怖がれよ。痛がれよ。私を、忌み嫌えよ。

 両手で首を絞めていたから、そのうちの左手を離す。でも、右手の力は緩めない。むしろ一層強めたまま、左手で目の前の少女の右翼を掴んだ。

 翼膜がない、骨組みしかない未完成で不格好な翼。

 ニヤリと笑って、それを引きちぎってみせた。

 血が溢れ出る。押しつけられた背中側から大量の赤い液体が流れ出て、その青と白の姉の服を染め上げていく。

 さぁ、どうだ? 今度こそ、恐がってくれる?

 そんな風に思いながら少女の顔を見つめた。けれどそれは、ただただイラつきを増させるだけ。

 変わらぬ無表情で、変わらぬ慈しみが込められた優しげな瞳で、彼女は私を見据えている。

 なんなんだよ。わけがわからない。

 恐ろしいはずだろう? とてつもなく痛いはずだろう?

 拒絶しろよ。私ごと死を忌んで、嫌って、憎んで、苦痛に顔を歪めろよ。

 やめろよ。やめてくれ。お願いだから。

 そんな目で、私を見つめないでよ。

 

 ――フ、ランが……わた、しを……本当に、壊したいなら……しかた、ありません。

 ――なによ、それ。

 

 イラつく。イラつく。ああ、どうしてこんなに胸の内で暴れ狂う。

 こんなつもりじゃなかったのに。もっと私は、諦観にも似た気持ちで。

 諦観?

 なにを諦めていた? 元々私はなにを、望んでいた?

 知らない。知りたくない。

 こんなの、全部嘘だ。

 さっさと壊してしまえ。きっとそうすれば、楽になれる。

 

 ――わ……たしには……それ、だけのことを……される、過失を……犯し、て、きました。

 

 そんなことを言われて、ギリッと、無意識のうちに歯ぎしりをしていた。

 嘘だ。やっぱり全部、嘘じゃないか。

 過失だって?

 違う。なにもかも違う。

 こんなことをされるくらい、私なんかに破壊されるくらい、あなたの価値は低くないじゃないか。

 無価値なんかじゃない。

 私が、なにもかもが自身の心の持ちようで壊れてしまうと知った時、喜びも悲しみも壊れ失せて無に浸りかけた時、いつもあなたがそばにいてくれた。

 何度だって私はあなたを壊そうとした。何度だって右手を握り締めようと、その一歩手前までやってきた。

 あなたが持ってきた遊び道具は全部壊した。もらった人形も全部壊した。

 あなたはいつも、そんなこと欠片も気にしないで私の隣にいてくれた。

 ――本当は、あなたの備える能力なら、私の破壊を無効化できるんだろう?

 知っていた。だからこそ、こんなにイラついている。

 お願いだから、抵抗してよ。恐がってよ。力を使ってよ。

 そうすれば、私はきっと涙を流すことはなくなるのに。涙を枯らすことができるのに。

 物だけじゃなくて、人の心だって、私の右手の上にあるって証明できてしまうのに。

 否定してよ。私のことなんか、認めないでよ。

 私には無価値にしか見えない世界で、きっと私自身が一番無価値だっていうのに。

 なんにも創ることなんてできなくて、なにかを壊すことしかできないような私が、この世で一番余計なものだっていうのは。

 そんなこと、本当は最初から全部わかってたのに。

 

 ――おねえ、さまは……。

 

 もうなぜか、手に力が入らない。

 体を動かす気も起きなくて、少女に馬乗りになったまま、呆然と口を開いていた。

 

 ――どうしていつも、こんなどうしようもない私に、こんなに優しくしてくれるの?

 

 気づいた時には、雫が頬を伝っていた。その理由はわからない。それを拭う気も起きない。

 もうなにもかも、どうでもよくなってしまった。

 姉の破壊も、荒れ狂っていた苛立ちも、救いようのない私自身への思いも。

 無価値だ。

 なにもかも、どこまでも。

 

 ――それは、ですね。

 

 私の頬に、なにか温かいものが触れた。

 私に首を絞められていたからだろう。少女の手は力も入らず、震えている。

 それでもそれを伸ばし、私の代わりに、私の涙を拭ってくれた。

 代わりに血がついてしまう。引きちぎった翼の根元から流れ出て、少女の手についた血が、私の頬についてしまう。

 この少女は、そのことに気がついているのだろうか。

 いや、きっとわかっていない。この少女が進んで私を汚したりなんて考えるわけがない。

 少女の意識が朦朧としているのが見るだけでわかった。きっと、首を長く強く絞めすぎたのだろう。

 それでも彼女は直感で私を泣いているのだと悟って、それを拭ってあげたいと、必死に手を伸ばしてくる。

 そんな少女から目を離せず、じっとその顔を見つめていた。

 ゆっくりと彼女の口が開き、変わらぬ優しげな声音で、私に質問の『答え』を告げる。

 

 ――私が、あなたの姉で……あなたが、私の妹……だからです。

 

 その時、少女の口元が少しだけ微笑んだように見えたのは私の気のせいだったのだろうか。

 姉の手が落ちる。私の頬を流れる雫を拭っていたそれは、ばちゃりと音を立てて大量の血の中に沈んでいく。

 完全に意識を失ってしまったようで、目は閉じられ、その顔はどこか穏やかに眠っていた。

 わけがわからなかった。なにもかも理解できなくて、だから、さきほど以上に涙が瞳から零れ出る。

 自分が姉だから。私が妹だから。

 わかんないよ。なによ、それ。たかがそれだけの理由で、あなたはずっと私の隣にいてくれてたの?

 さっきまで殺されかけてたっていうのに、たかがそれだけの理由で、そんな心の底から安心したような顔で眠ることができるの?

 涙が止まらない。嗚咽が止められない。

 頬に手を添える。そこには、少女の手から移った血がついていた。

 口に含んでみる。

 どうしようもなく、温かい味がした。

 その瞬間、なんとなく、なにもかもが脆く呆気ないと塞ぎ込んでいたはずの心が、すっと澄み渡っていくような気がした。

 どうせ手に入らないと諦めていながらも、これまでずっと望んでいたなにかが、胸の内から全身へ染み渡っていくような感覚がした。

 もう大丈夫だ、と。

 ずっと不安だったはずの思いが、温かく優しい別の思いに包み込まれていく。

 

 ――うぅ、ひっぐ……ごめ、ごめん……なざい……。

 

 血まみれな少女に縋りついて、泣きわめいた。

 壊したくない。

 初めて、そう思った。

 壊されないための手段がありながら、それをせず。たくさん怨んでもいいことをしたはずなのに、姉だからって、私が妹だからって、いつだって全部を簡単に受け入れてくる。

 こんなどうしようもない私の頭を撫でてくれる。いつだって寂しい時はそばにいてくれる。

 壊したくない。私にも、他の誰にも、壊されたくない。

 この世のすべてのものの目は私の右手の上にある。私が望む望まないにかかわらず、なにもかもはいずれ壊れゆく。

 それはこの少女も、そして私もまた、きっと例外ではない。

 だったら、もしかしたらだけど、本当に低い可能性だけれど――ほんの少しくらいは私にも価値があったりするのかな。壊すことしかできない私でも、誰かに受け入れてもらえる価値くらいはあるのかな。

 私にはわからない。でも、そうなりたいと思った。

 焦がれたんだ。

 どんな時でも姉だからなんてバカげた理由で変わらぬ気持ちで私に接してくれる、小さな少女に焦がれたんだ。

 強く、憧れた。

 明日からはもっと自分に正直になってみよう。いつも私に構ってくれる小さな女の子に、心の底から謝ろう。

 それから、目一杯遊んでもらうんだ。

 泣いて。それから、笑う。

 笑みを忘れたわけではなかった。でもなんとなく、心の底から嬉しさが溢れ出たような笑顔は、本当に久しぶりに浮かべることができた気がした。

 

 

 

 

 

 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □

 

 

 

 

 

 天蓋つきのベッド、ベッドサイドテーブル、ぬいぐるみや人形などが飾った扉つきの棚に、小さな机とイス。それらから少し離れたところに、魔法の研究用に巨大なテーブルとイスが用意されている。

 一人で過ごすぶんには大きすぎる部屋を照らすため、シャンデリアはかなり大きいものが採用されている。それでカバーし切れないところを明るくするためにも、壁にもランプが設置されていた。

 紫に突然わけのわからない灰色の世界――お姉さまの心の世界とやらに連れて行かれてから、しばらく。お姉さまの前世だというトーキョーとの対話を終え、私の部屋に戻ってきた。

 

「か、っ……は、ぁ……!」

 

 呻くような声に顔を上げる。水色の宝石の破片が散らかる中、壁に背を預けたまま、お姉さまが苦しげに胸を押さえていた。

 息ができないのか、酸素を求めるように口を大きく開く。胸を力強く掻き毟る。それでも苦しみは治まらないらしい。苦痛を押さえるように丸くなり、縮こまり、目を力一杯に閉じていた。

 

「ったく、ようやく戻ってきたのね!」

 

 そんな声に目線をさらに上へ移動させると、空を飛んでいる霊夢が息を荒くしながらも札を構えている姿が目に入る。

 辺りを見渡してみれば、あちら側の世界に行く直前に見た光景と同じく、軽く一〇〇は越えるだろう数のお姉さまの形をした人形で部屋中が敷き詰められていた。霊夢以外の面々はすべて床に体を押しつけられ捕らえられているようで、満足に霊力や妖力などの行使もできないようである。

 だが、本体である本物のお姉さまに異常が発生した影響か、すべての人形の動きに鈍りが見え始めた。

 その隙を突いて、紫やレミリアお姉さま、さとりとこいしとともに捕らわれていた人妖を解放する。魔理沙、咲夜、鈴仙、ルーミア、パチェ、美鈴。誰も一切怪我をしていないところから、お姉さまに私たちを害する意思がないことが改めて窺える。

 

「霊夢、私たちがいなくなってからどれくらい経っているの?」

 

 紫の質問に、霊夢が考え込むように顎に手を添える。

 

「……三分ってところかしら」

「なるほど、やっぱりね」

「やっぱりって?」

「あの子も、早く誰かが自分を助けてくれることを望んでるってことよ」

 

 お姉さまの心の世界で過ごした時間は間違いなく数時間ほどはあった。意味不明なことに、こいしがトーキョーに頼み込んで心の中の世界を巡り始めたからだ。

 ただそれでも、こいしのおかげで核を見つけることができたことは間違いないのだから、文句を言うことはできない。というか現実世界では三分しか経っていないみたいだから、あれくらいは誤差の範囲として処理できるだろう。

 紫が、私の方に視線を送ってくる。準備はいいか、と。

 彼女はトーキョーに言われた通り、お姉さまの心における精神と物質の境界を操るつもりなのだろう。そしてその後のことはすべて私次第。だから私に任せてもいいか、と、そう問いかけている。

 迷う理由はない。お姉さまを救うためなら、なんだってする。そう決めたのだから。

 頷いてみせた私に、紫もまた満足そうに首を縦に振った。

 

「霊夢、これからレーツェルを救うための策の最終段階に入るわ」

「最終段階? 戦うってこと?」

「そうですが、違います。あなたは他の皆と一緒に、レーツェル・スカーレットの人形から私とフランドール・スカーレットを守りなさい。そうすれば全部こちら側で解決してあげる。時間はほんの数分で構わないわ」

「軽く言ってくれるわね。たった三分で私一人しか残らなかったって言うのに」

「心が割れて、あの子自身が苦しんでる今なら人形どももかなり弱体化しているはずよ。きっと全力でやればそう難しいことではない」

「はぁ、そうかしらね。ま、やるだけやってやるわよ。ここまで来たら、あいつを連れ戻すために最後まで全力を尽くしてやるわ」

 

 相談するまでもなく、霊夢の意志に反対する人妖はいないらしい。少しでも可能性があるのならと、私と紫にすべてを委ねてくれるようだった。

 人間も妖怪も関係なく、ただ一人の少女のために。

 中級妖怪程度は軽く超えるものの、吸血鬼としてはずいぶんと鈍い素早さでお姉さまの形をした人形が襲いかかってくる。数は何百といるらしいそれも、今は一気に動くことができる数が限られているみたいだった。

 これくらいなら余裕だと言わんばかりに、霊夢や魔理沙が霊力や魔力の弾幕で応戦する。しばらくは本当に大丈夫そうだ。

 

「ゆ、かりん……あな、たは……いったい……なに、を……!」

 

 胸を強く押さえながらのお姉さまの問いに、紫はすっと片手を彼女の方へ向け、答えた。

 

「あなたが誤魔化し続けてきた本心に、助けてって言われた。ただそれだけよ」

 

 紫の力が行使される。莫大なまでの妖力が溢れ、一つの現象を為そうと集い、発揮する。

 境界の妖怪。隙間さえあれば、他人の心の中にさえ入ってしまえる大妖怪の強力なまじないが、お姉さまにかけられた。

 その途端、理解する。

 私の右手の上に新たな目が二つ現れたことを理解する。

 紫が確認の視線を向けてくるので、こくりと、準備の時と同じように頷いてみせた。

 一つ、深呼吸を。

 そうして、ゆったりと右手を顔の前まで持ってきた。

 新たに追加された二つの目。そしてその二つのうち、『前世の記憶』に当たるものを選別する。

 生まれ持って、ずっと付き合ってきた能力だ。どれがどの目なのかは、すぐにわかった。

 他の目はどけた。だからあとは、この手を握り締めるだけ。

 

「……お姉さま」

 

 うずくまり、心の痛みに喘ぐお姉さまを見ていると、なぜか唐突に、これまで彼女と過ごしてきた記憶が頭の中によみがえってきた。

 お父さまと義理のお母さまを壊してしまった時のこと。いっぱい遊んでくれるって指切りげんまんしたこと。

 なにもかもが嫌になって、なにもかも価値がないって塞ぎ込んで拗ねてた私の隣に、いつまでもいてくれたこと。

 卓球っていう遊びをやろうとしたこと。そのせいで"弾幕合戦"っていう、弾を当て合うだけの遊戯が生まれたこと。

 魔法を教えてもらったこと。ものを壊さないようにするために、私から頼み込んで力加減の特訓を始めたこと。

 特訓で目に見える成果が出た時のこと。クマのぬいぐるみをプレゼントしてもらったこと。

 あのぬいぐるみは今でもベッドの脇において、私の宝物になっている。

 幻想郷に来て、館を保護する魔法を一緒に起動させたこと。スペルカードルールを教えてもらって、真っ先に一緒に遊んでみたこと。

 とっても可愛らしい服をプレゼントされたこと。お姉さまの血を飲んでみて、いつまでも変わらない温かい味が嬉しかったこと。

 霊夢や魔理沙と邂逅した時のこと。魔理沙に私の至らないところを指摘されて、お姉さまに恩返しがしたいって強く思ったこと。

 館の外に出たいって、わがままを言ったこと。

 一緒に初めて博麗神社にお邪魔した時のこと。霊夢と魔理沙の異変退治についていった時のこと。

 異変の最中、お姉さまの心配を蔑ろにした魔理沙にすっごくムカついたこと。その時のお姉さま、すっごく困った顔してたから、ちょっと申しわけなく思っちゃったことを覚えてる。

 妖精や美鈴が豆まきしてるのを横目に太巻きを食べたこと。レミリアお姉さまに山葵がたっぷり入った太巻きを渡してみたりしたっけ。

 お姉さまが月が変だからってその調査に出かけようとしてた時、留守番を申し出たこと。褒められたのがすっごく嬉しくて、ちょっとだけ血を飲んじゃったこと。

 美鈴と人間の武闘家の勝負を観戦したこと。号外らしくない号外の新聞を読んだこと。

 こいしと初めて会って、いきなり見知らぬ妖怪がお姉さまと手を繋いでたから、なんだかムッとして私ももう片方の手を握ったこと。

 幻想郷に来る前と来てからのお姉さまの違いについて話したこと。博麗神社で霊夢とか魔理沙とか、レミリアお姉さまとかと一緒にお昼寝したこと。

 原因不明の流れ星を右手で壊したこと。その後日、天狗に喧嘩を売るような発言をしちゃって、お姉さまにちょっとだけ怒られたこと。

 お姉さまに勝つための魔法を編み出して、久しぶりに全力で弾幕ごっこで戦ったこと。結局それも引き分けに終わっちゃったけれど。

 カードゲームを教えてもらったこと。鷽替神事とやらで私もお姉さまもつつかれたこと。

 藍から月へ攻め込む話を持ちかけられたこと。それに応じないで次の日は博麗神社に行って、変な兎と話したこと。

 パチェたちが作ったロケットで月に行ったこと。ロケットの中は本当に狭くて、退屈だったこと。

 桃がすごく美味しかったこと。それを一緒に集めたこと。霊夢たちが殺されるのが嫌になって、力を行使してみせたこと。

 目を閉じれば、どの記憶も昨日のことのように鮮明に思い出すことができる。その時の気持ちを思い返すことができる。

 なにをするにもお姉さまと一緒だった。お姉さまに褒められるのが好きだった。いつか、そんなお姉さまに私がなにかしてあげたいって思ってた。

 大好きなんだ。誰よりも、なによりも。

 たとえお姉さまが本当に好きなのがレミリアお姉さまでも、お姉さまが今までずっとがんばってきたのが、全部レミリアお姉さまのためだとしても。

 私にとってはお姉さまが一番だから。私が今までずっとがんばってきたのは、全部お姉さまのためだから。

 助けたいって思う。助けになりたいって思う。その気持ちには一切迷いがないと、自信を持って言える。

 でも。

 ――君の破壊が、大好きな姉を救うんだ。

 この手を握り締めて、お姉さまの中にある『前世の記憶』を消すことが、本当に正しいことなのか?

 

「……私は」

 

 手が震える。右手を、うまく制御できない。

 トーキョーと名乗った少年が、お姉さまの前世だっていう人間が『一番大事な思い出』を解放した時、そのクオリアが私の中にも流れ込んできた。

 きっと誰もが同じだったのだろう。お姉さまも、さとりも、こいしも、紫も。

 それでも私だけが本当の意味で知っている。彼女が覚えたクオリアに、私だけが共感することができる。

 自分が果てしなく無価値なものに思えた。いっそなにもかもが最初からなければ楽になれるんじゃないかって、何度も思い続けていた。

 自分の存在なんて、むしろ害にしかならないんじゃないか。そもそも生まれてさえこなければよかったんじゃないか。そうやって、何度も自分の心を自分で傷つけ続けた。

 痛くて、痛くて、それでも自分じゃどうしようもなくて。

 私とお姉さまの違いなんて、本当にちっぽけなものだ。

 お姉さまの心を救ったのは、レミリアお姉さまだった。ただ姉だから、あなたが妹だから。それだけの理屈で、だけどそれだけのことだったから、お姉さまは救われることができた。

 私の心を救ったのは、お姉さまだった。ただレミリアお姉さまのやってみせた見栄に憧れて、自分が姉だから、あなたが妹だから。それだけの理屈のために自分を殺しかけた妹だって心の底から大事にして、だけどそれだけにまっすぐな思いだったから、私は救われることができた。

 私がやろうとしていることは、そんなお姉さまの思い出の否定――私を助けてくれたお姉さまの思いの否定。すべての始まりの拒絶。

 それを理解して、だからこそ、思う。

 やっぱり、違う。

 こんなのはしちゃいけない。

 なにが正しいとか、なにが間違ってるとか、なにが『答え』だとか、私にはよくわからないけど。

 嫌なことを全部忘れて前を向くことがダメだとか、偉そうなことは言えないけど。

 お姉さまが感じたことは私も感じたことだった。だから、わかる。

 これだけは、記憶を消すなんてことだけは絶対にしちゃいけない。お姉さまをずっと支え続けてきた、ずっと遠い世界の大切な思い出をなかったことにすることだけは、しちゃいけないことのはずなんだ。

 人間も妖怪も、いくらだって道を踏み外す。私だって何度も間違えた。お姉さまだって何度も間違えた。でも、それをなかったことにする権利なんてきっと誰にもない。

 嬉しさも、楽しさも、悲しさも、苦しみも、すべてがすべて抱いた本人のもの。

 確かにこの世界にとっては。お姉さまの前世なんて欠片も意味がないものだったのかもしれない。心に悲痛を抱えさせるだけの辛い要素だったかもしれない。帽子屋なんて狂気をかぶるためだけの単なる繋ぎだったのかもしれない。

 それでも、その世界で抱いた数え切れないくらいの思いは本物だったはずだ。その世界で受けた家族の愛や、友達との付き合いや、その時に感じた思い出は絶対になくしちゃいけないもののはずだ。

 それを全部否定しようだなんて、それだけはしちゃいけないことのはずだろう。

 すべてをなかったことにしてしまうなんて、それだけはしちゃいけないことのはずだろう。

 だって、そうじゃないと。

 もしも私が生まれ変わったりしちゃった時、お姉さまは私に『この世界での思い出は全部忘れろ』だなんて言えるの?

 私はそんなの、絶対に嫌だよ。

 

「なら、どうするつもり?」

 

 すぐ隣から声がした。今は皆、お姉さまの人形の相手で忙しいはずなのに。

 驚いて目を向けると、そこにはレミリアお姉さまが立っていた。

 どこまでも強い意志が窺える瞳で、じっと私を見つめてくる。

 

「今提示されている方法は二つ。あの子を殺すか、あの子の記憶を壊すか。あなたならきっと、どちらでもできるでしょう。なにもかもを壊すことができる力を持ったあなたなら、どちらでも好きに選択することができるでしょう」

「……嫌だよ」

「選ぶことから逃げるのかしら。どちらかを選ぶことがあの子を救うことに繋がる。でも、どちらも選ばないということは、あの子を見捨てることに繋がる」

 

 わかっている。

 そんなこと、理解している。

 だからこんなにも、手が震えているんだ。

 

「あなたは選ばなければならない。今決めるべきは、その覚悟じゃないの?」

「…………覚悟?」

「ええ」

 

 お姉さまにとってのかけがえのないはずのものを壊してしまうか、お姉さまの感じている悲痛もろともすべてを壊してしまうか。

 前者はお姉さまが生き残る。後者はもしかしたら、本当の意味でお姉さまが救われる。

 でも、私にとっては、どちらも結局は同じことなのかもしれない。

 どちらを選んでもお姉さまを失う。それが心か、体か。ただそれだけの違い。

 目の前に二つ、目がある。

 大好きな人の心か、大好きな人の体か。

 どちらにしても、絶対に私は後悔をする。

 そのくせして、好きな方を壊せだなんて。

 胸の内で世界が選択を迫ってきていた。ふざけた選択肢を提示してきていた。

 

「覚悟、なんて」

 

 ギリッ、と歯を鳴らす。こんなどうしようもない世界の仕組みに、心底腹が立つ。

 違うだろ。

 こんなくだらない選択をするために、私はここまで来たんじゃない。

 私が救いたいのは心も体も、全部を正しく備えたお姉さまだ。私の記憶に残る、頬を伝う涙を拭ってくれたお姉さまだ。

 それなのにその最後でどちらかを捨ててどちらかだけを手に入れるなんて、できるわけがない。そんなこと、してやるものか。

 左手を強く握り締める。

 そうして、決めた。

 両方救ってやる。

 それがたとえお姉さまを見捨てることに繋がろうと、知らない。心も体も失うことに繋がろうなんて、知ろうとも思わない。

 だって、トーキョーは――姿かたちが違うだけのお姉さまは言っていたじゃないか。

 ――気に入らないものを無理矢理ぶっ壊せ。欲望のままに、願望のままに、欲するままに。それができるのがきっと、妖怪って生き物だ。フランドールっていう悪魔なんだよ。

 だったら、いいだろう?

 世界が迫る選択が気に入らない。心と体、どちらかを捨てなきゃいけないって現状が気に入らない。

 私が欲するのは両方を備えたお姉さまだ。優しく頭を撫でてくれて、涙を拭ってくれて、抱きしめてくれる、記憶に残る本当で本物のお姉さまなんだ。

 だから――お姉さまのお望み通り、気に入らないものを壊してやる。

 

「覚悟なんて、知らないわ。どっちかを選べだなんて、知らない」

「フラン」

「どっちかしか救えないって言うんなら、そのバカげた仕組みをこの右手で壊す。それがどっちも見捨てることになるって言うんなら、それだって壊してやる。世界なんて知らない。選ぶことからの逃げなんて知らない。私が救いたいのは、私が求めてるのは、選んで手に入る程度のものじゃない」

 

 口の端を吊り上げる。イタズラが成功した時のような笑みを、意識的に浮かべてみる。

 

「ねぇ、知ってた? レミリアお姉さま。私って、すっごくわがままなんだよ」

 

 レミリアお姉さまが私を試していたことは、わかっていた。

 彼女もまた今のシナリオに満足が行っていない。『前世の記憶』を忘れさせてお姉さまを取り戻すことに納得していない。もっと別の方法を望んでいる。

 そしてそれが、たとえお姉さまを傷つけることに繋がったとしても構わない。

 そしてそれが、たとえお姉さまが本当に望む方法じゃなかったとしても構わない。

 私たちが望む形で取り戻すことができると言うのなら。

 その『答え』がお姉さまを真に連れ戻すことに繋がると言うのなら、お姉さまの意志さえ退けて欲するままそれに食らいつく。

 なんて自分勝手な考え方だろう。でも、きっとそれでいい。

 強い意志を込めた私の視線に、レミリアお姉さまがこくりと頷いた。

 

「じゃあ、やりましょうか」

 

 私の右手の震えを、レミリアお姉さまの左手が押さえ込む。

 それから一緒に、うずくまっているお姉さまへと顔を向けた。

 

「これまで操ってきた運命も、そしてこれからの運命も……すべて乗せるわ。だから、任せたわよ」

「うん。わかった」

 

 これまでのお姉さまがあったのは『前世の記憶』があったからだ。

 彼女に『前世の記憶』があったから、心に痛みを覚えて、それがレミリアお姉さまへの憧れに繋がった。人の好意にどこまでも素直な彼女ができ上がった。姉を慕い、妹を溺愛してくれる次女が完成した。

 そしてそんな彼女だからこそ、私もまた救われた。すべてを無価値に捉えるだけのつまらない生活から脱することができた。

 お姉さまが誰よりも心配性だったから、幻想郷でこれだけの人妖に好かれた。異変を差し置いて、その身と心を助けようとしてくれるような関係が築かれた。

 お姉さまがこれまでずっと抱いてきた悲痛と苦痛は、ほとんどが『前世の記憶』のせいかもしれない。

 でも。

 同時に、お姉さまがこれまでずっと作ってきた関係や思い出の始まりは、いつだって『前世の記憶』にあったんだ。

 

「フ、ラン……」

 

 お姉さまが、苦しげに私を見上げてくる。私が右手をかざしているのを見て、まるでなにかを察したかのように。

 ようやっと救われる――そんな風な感情をたたえた、どこまでも哀しげな微笑みを浮かべた。

 ごめんね、お姉さま。きっと私たちがこれからすることは、あなたが思っているようなことではないよ。あなたの痛みを取り除く行為ではないよ。

 きっと、あなたをなによりも苦しめる。

 でも、どうか乗り越えてほしい。

 いくらでも泣きわめいたっていいから。いくらでも私たちを頼ってくれてもいいから。

 最後にはどうか、笑ってみせてほしい。

 さぁ、始めよう。

 私たちがこれからするのは、お姉さまが自分の気持ちと向き合うのを邪魔してる、本当に余計なものの破壊。

 ずっと暗い海の底。お姉さまを縛っていた鎖じゃなくて、その海そのものの消失。

 それはお姉さまの本心のすべてをさらけ出す、どこまでも残酷で取り返しようのない破壊だった。

 

「ねぇ、お姉さま」

 

 三つ目の目が、右手の上に生まれたのがわかった。

 紫が心における精神と物質の境界をいじり、レミリアお姉さまが五〇〇年にわたる軌跡が込められた運命の変革を引き起こした。

 だからこその奇跡――お姉さまにこびりついた、この世の裏側の力の現出。

 きっとこの一瞬がチャンスなのだろう。もう二度と、これからこれを壊す機会は訪れはしないのだろう。

 でも、一度だけ訪れてくれた。

 笑う。

 あの時、お姉さまが私を救ってくれた時、見せることができなかった笑顔と同じものを浮かべてみせる。

 あの時に伝え損ねた思いを、もう一度。

 ただ一言。

 

「大好き」

 

 右手を握り締め、三つ目の目だけを完全に破壊した。

 周囲からはなんの変化もなく見えたかもしれない。

 けれど、確かにそれはなくなっていて。

 お姉さまが、驚愕に目を見開いた。

 

「これ、は……」

 

 お姉さまの形をした人形がすべて停止する。あまりの驚きの出来事に、もはや術式も維持していられないようだった。

 お姉さまの瞳から大粒の雫が零れる。堰を切ったかのように、何度拭っても止めようがないくらいとめどなく溢れ出る。

 お姉さまが自身の頬に手を添えた。能力を行使して、無表情だって意識して、すべてを止めようとしたのかもしれない。

 でも、無駄だ。

 もうそんな力は、彼女には備わっていないのだから。

 

「お帰り、お姉さま」

 

 ――『答えをなくす程度の能力』が壊された。

 その事実がようやく実感を伴って、お姉さまを襲ったようだった。

 これでもう、胸の痛みを無視することはできない。これでもう、悲痛や苦痛から目を背けることはできない。

 正も負も関係なく、すべての感情と平等に向き合わなければいけなくなった。

 彼女が何百年も続けてきた行為の中で溜まっていた負の程度は、私なんかでは決してわかりはしない。自分の気持ちをひたすら隠し続ける苦しみの深さなんて欠片だって理解できるはずもない。

 すべての思いを受け入れる。

 とても残酷なことながら、けれどそれは、どんな生き物にも平等に訪れる真理なのだろう。

 

「う、うぅ、あぁ……うぁあ、ぁ、ああああぁ……!」

 

 童話が終わった。

 大切なものを守るために手に入れた、自分を誤魔化し続けるためのチカラはなくなり。

 "狂った帽子屋"の仮面は破壊され。

 そこにはただ一人、悲しみに泣き崩れる少女だけが残された。

 

 

 

 

 

 □ □ □ Ein Standpunkt wird wiederhergestellt □ □ □


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