前半が幻想郷縁起、後半がグリモワールオブマリサとなります。
一〇〇話目記念とは言っていますが、原作でも作品内時間でのちょうどこの時期に幻想郷縁起が完成しているはずなので、タイミング的にはばっちりです。うまく調整できました。
なお、読まなくとも物語にはなんら支障のない小ネタなので、興味のある方だけ見ていただければ幸いです。
□ □ □ Ghost illustrierte Buch □ □ □
光翼の悪魔
レーツェル・スカーレット
能力 答えをなくす程度の能力
危険度 極高
人間友好度 高
主な活動場所 何処でも
❁
紅魔館に棲むスカーレット家の三姉妹のうち、次女に当たるのがこのレーツェル・スカーレットだ。
レーツェルだけが三姉妹の中で唯一人間に対して友好的な態度を示し、遭遇しても比較的危険が少ない吸血鬼と言える(*1)。
翼膜がない骨組みだけの奇妙な翼を持ち(*2)、髪は銀の中に幾房か金色が混じった色合いをしていて、背丈や年齢は姉や妹と然程変わりない。背中に備えた一対の翼は一見、飛ぶことに適していないように見えるが、翼の根元から吸血鬼として元々持っている莫大な力を噴出することで、音を軽く置き去りにするほどの速度を出せるという(*3)。
物腰は柔らかく、三姉妹の中では一番大人びている。しかし常に無表情であるという特徴を備えており、初対面の際、人によってはその様に不気味さを覚えることもある。態度や声音から多少は内心を察せられると言えど、本心で何を考えているかが他の妖怪より遥かに判りにくいため、相対しても人当たりのよさに騙され、警戒を怠ってはならない。
✾能力✾
答えをなくす能力は、全ての物事の本質の片割れ、結果を失くしてしまう恐ろしい能力である。
この世のありとあらゆる現象は始まりと終わり、原因と結果から成り立っている。生まれる始まりがあっても老いることがなければ、寿命は終わりを迎えない。燃えるという結果がなければ、炎が在ることに意義はないだろう。幻想郷の大結界が常識と非常識を分けていないとなれば、幻想郷は成立せず、大結界の有意性は失われる。もし現象に因果関係が紐づけられていないとなれば、世界の全てがただ存在しているだけの、何の意味もない空虚であるという事に他ならない。
つまり、答えをなくす能力は、因果の繋がりを断ち切ることにより物事の存在意義を否定する能力なのである。あらゆる存在が為すべき役割を無へと帰すことで、終わりとともに始まりさえも否定する。始まりと終わりの間である過程のみをそこに残し、この世の法則に虚ろを作り出す。妖怪のみならず、もしかすれば神様の力さえ及ばぬ領域の、全ての存在を冒涜する禁忌の能力である。
幸いなことに、この能力は発動者自身に関わる現象以外は触れていなければ干渉することができない。干渉したとしても、肌を離せば因果関係は元に戻る。それでもこの妖怪とすれ違ったりする際は、むやみに触れてしまわないように心がけよう。
他にも、深く魔導に通じており、習得している中でも代表的な魔法が、影を操る魔法と己を強化する魔法である。
特に己を強化する魔法は幅が広く、猫などの動物から鬼などの妖怪まで、様々な生物を基に自身の力を高めることが可能だという。また、人間を基にすることで半人半妖に化けることもできる。
✾この妖怪に纏わる逸話✾
・吸血鬼異変
幻想郷に初めて吸血鬼が現れた際、縦横無尽に暴れ回った異変である。詳しくは英雄伝、博麗霊夢(後述)の異変解決例を参考にしてほしい(*4)。
この妖怪はこの騒動に乗り気ではなく、紅魔館で大人しくしていた。ところが終幕の直前となったところで妖怪の山まで姉を迎えに行き、吸血鬼を叩きのめして回っていた最強の妖怪を逆にこてんぱんに叩きのめしたという。真偽のほどは定かではないが、こうして私の耳に伝わってきている以上、完全には嘘と言い切れない。
・第一一九季の地震騒動
とある満月の日の深夜、幻想郷中が震撼した事件である。その実態はレーツェルと鬼の伊吹萃香(後述)の喧嘩の余波であったのだが、原因を知る術がなかった人間の里ではしばらくの間、厳戒態勢が敷かれた。
二人は互角の戦いを繰り広げていたが、最終的には八雲紫(前述)の手によって鎮圧された。最強の妖怪である鬼とまともにやり合えるほどとなると、前述の吸血鬼異変での噂も真実味を帯びてくる。
✾目撃報告例✾
・あいつから貰った炬燵のおかげで冬が温かくなったわ (博麗霊夢)
魔道具作りにも通じているようだ。外の世界の道具を象った物を作ることが多いらしい。
・偶に魔法で猫耳を生やすんだが、そこが弱点だぜ (霧雨魔理沙)
黒白の魔法使いの前では二度と生やさないと言っていた。
・何だか気が向いたから神社に参拝しに行ってみたら吸血鬼がいて驚いた。すぐ逃げ帰ってきたけど、やっぱりあの神社はもう妖怪に乗っ取られているんだな (匿名)
嘆かわしいことに博麗の巫女は完全にこの妖怪を信用してしまっているようで、偶に留守番を任せることさえあるそうだ。
・夜に里を出歩いてて突然声をかけられたと思ったら、落し物だと財布を渡された。中身はまったく減ってなかったし、見た目は幼くて可愛くて女の子だし、さっき吸血鬼だってことを知ったけど危険は全然なさそうに見えた (匿名)
この妖怪は人間に対し非常に友好的なため、次に会った時のためになにかお礼の品を用意して、そのまま交友関係を築いていくのもありかもしれない。義理堅い彼女なら相応のお返しをしてくれるはずである。
✾対策✾
この妖怪が人間を襲ったという報告は無い。むしろ助けられたという報告さえ挙がっている。
妖怪にも人間にも分け隔てなく友好的なため、悪魔と言えど必要以上に恐れる必要はない。その気があれば世間話に花を咲かせることもでき、仮に不愛想な返事しかしなかったとしても牙を向くことはない(*5)。
ただし、彼女と交友関係がある人間や妖怪に手出しをしようとすると、自分が危害を加えられた時以上に本気で襲いかかってくる。うまくよき関係を築くことができれば吸血鬼の庇護を得たも同然となるが、下手をするとこちらに敵対する意思がなくともあちらにはあるという最悪の状況に陥るため、十分な注意が必要だ。
どれほど実力に自信があろうとも、この妖怪を倒そうなどとする事は止めた方がよい。余程悪質な戦闘でない限りは快く引き受け、死なない程度に相手をしてくれるが、本気で退治しようとするとなると話は別である。吸血鬼の持つ超人的な身体能力、音さえも越えることを可能とする推進力を得る翼、何百年と磨いてきた数多くの魔法、この世の法則を根底から否定する恐ろしい能力などを相手にしては、どんなに優れた策を講じようとも勝負にならないだろう。
認識した現象の因果関係を断ち切るということがどういうことなのか、今一度その真意を見つめ直し、立ち向かう事の無謀さと無為さを理解する必要がある。
また、この妖怪が狂った帽子屋を名乗っている時は近寄らない方がいいとの情報がある(*6)。用心するに越したことはないだろう。
*1 あくまで比較的。悪魔だけに。うまいこと言った。
*2 本人いわく「デスティニーガンダムみたいな感じ」とのことだが、意味が判らない。
*3 単純な速さだけなら鴉天狗をも越えてしまっているかもしれない。
*4 別に博麗霊夢が解決したわけではないのだが。
*5 代わりにひどく落ち込む。
*6 水銀という毒を使った帽子素材を作る帽子屋が、その作用によって己を見失っていく様から取っているらしい。彼女自身が帽子を売っているわけではない。
□ □ □ The Grimoire of Marisa □ □ □
☸童話「赤ずきん」
・使用者 レーツェル・スカーレット
・備考 単なる小手調べ、演劇&奴隷タイプ
・参考度 ★★★
人一人どころか五人は軽く飲み込めそうなほど巨大な狼を召喚するスペルカード。魔法というよりも魔力の集合体に近いらしいが、なぜだかレーツェルの意思とは独立して動くし、どうにも真似できそうにない。
狼の出現と同時に水の性質を持った魔力が周囲を漂い、狼はそれを足場にして空中を縦横無尽に駆け回る。飛び散る水滴にも当たっちゃいけないから、早めに狼を撃破しないとどんどん難しくなっていく。
なんと使用者と狼で疑似的に勝負することもできるらしい。最早使い魔だな。
☸童話「長靴をはいた猫」
・使用者 レーツェル・スカーレット
・備考 猫耳を攻めると一瞬で陥落する、ドーピングタイプ
・愛嬌度 ★★★★★★
妖術で猫の妖獣に化け、その特性を魔法で手に入れる技。吸血鬼が猫並みの機敏さを手に入れたらもう手に負えない。
以前宴会の際に耳をくすぐったら、それ以来私の前では使ってくれなくなった。小動物みたいで結構可愛かったんだけどな。
☸童話「北風と太陽」
・使用者 レーツェル・スカーレット
・備考 弾幕の竜巻、演劇&バグ&移動型ストレスタイプ
・密度 ★★★★★★★
とにかく大量の弾幕を作り出した後、そのすべてを自分を中心に回らせるスペルカード。
まさしく弾幕の竜巻だ。攻略するには超火力で打ち抜くか、竜巻から離れつつちまちまと削るしかない。
☸光弓「デア・ボーゲン・フォン・シェキナー」
・使用者 レーツェル・スカーレット
・備考 なんちゃって悪魔の太陽、演劇タイプ
・参考度 ★★★★★★
矢を真上に撃ち放ったかと思えば、それが太陽と化して大量の光線が落ちてくるスペルカード。上にばかり注意を向けているとレーツェルが直接放つ矢の形をした弾幕にやられてしまう。
使用者と上空の両方に注意を向けなければならず、視界的に上を向くとレーツェルが見えず、レーツェルを向くと太陽を確認できないという、なかなかにいやらしい作りをしている。片方だけなら避けるなんてわけないが、両方が揃うと脅威と化す。
こういう、視界の偏りを利用した弾幕は結構参考になるな。
☸神刃「ジャブダ・ベディ」
・使用者 レーツェル・スカーレット
・備考 圧倒的スピード違反、バグ&私自らタイプ
・速度 ★★★★★★★★
残像すら見えない超速度で相手を囲むように飛び回るという天狗の真似事みたいなスペルカード。真似事とは言うが、正直なところ天狗より速いかもしれん。
最後にはレーツェル自らが突っ込んでくる。それまでの四方八方からの弾幕で消耗しているところに突貫してくるから、大体それで勝負が決まる。
☸影絵「無形の落とし子」
・使用者 レーツェル・スカーレット
・備考 キモい
・参考度 ★
空間中の影を操るスペルカード。昼には使ってこない。
夜なんてどこもかしこも暗闇ばかりなんだから実質的に空間を支配する技だ。一度避けたら基本的におしまいな弾幕と違ってリアルタイムで影を操ってくるから、回避し続けるのはとても難しい。そのうえ闇に紛れて見にくいし、うねうねと蠢く黒い触手を見ると背筋がぞわっとする。
弾幕じゃないし、なんかおぞましいし、あんまり参考にしたくはない。
☸童謡「ハンプティ・ダンプティ」
・使用者 レーツェル・スカーレット
・備考 紅魔館にて見た、引きこもり奴隷タイプ
・ストレス度 ★★★★★★★
レーツェルの姿が消え、代わりに卵の形をした力の塊が一つだけ残るスペルカード。その卵が完全に地面に落ち切るまで、どこからか生み出される弾幕を避け続けなければいけない。ちなみに卵の落下速度はとてつもなく遅い。
相手の姿が消えていると攻撃される方向が判断しにくいうえ、終わる時間を自分の目で確認できるといういやらしさ。卵が全然落ちていないとまだまだ続くことに絶望し、あと少しだと油断すればすぐにやられてしまう。
もう卵を先に潰してしまった方がいいかもしれない。レーツェルの方で別に時間を計っているとのことだから、卵が壊れてなくなったとしても、卵が落ち切った頃の時間にスペルカードが終わってレーツェルが現れる。
ちなみにどこに行っていたかと言えば、仙術を参考に魔法で作った自前の空間らしい。私もそんな便利な魔法が欲しいな。