角居裕也/アーマードライダー鎧武
葛葉紘汰/オレンジインベス
駆紋戒斗/バナナインベス
呉島光実/ブドウインベス
呉島貴虎/メロンインベス
シド(故)/チェリーインベス
戦極凌馬/レモンインベス
翌日、出社した俺は貴虎に昨日の無断帰宅について小言を言われたが、俺の知ったことではない。
オフィスには、件の貴虎をはじめとして、紘汰、戒斗、ミッチの四体のインベスがいた。
もはやスーツ着てるの俺だけだ。
遂に俺以外全員インベスだ。
「遂に俺以外全員インベスだな」
「裕也さんはならないんですか?」
「んー」
光実にそう訊かれたが、少し返答に困った。
尻から果実を入れることに、特に抵抗はない。
むしろ気持ち良さそうで、興味がある。
「なんか、やめろって声がするんだよな」
「え?」
「インベスになったら死ぬような気がして」
「インベスにならないと、それこそ死ぬような気がするんですけど…」
「ミッチ」
紘汰がミッチを制した。
「裕也がこう言ってるんだ。裕也は戦極ドライバー使えるし、インベスにならなくてもあまり問題ないだろ。な、裕也」
「尻から果実を入れることに抵抗はないんだけどな」
何度も言うようだが、尻から果実を入れることに、特に抵抗はない。
むしろ気持ち良さそうで、興味がある。
「ところで、新たな問題を発見した」
仕切り直すように、貴虎が告げた。
「というと?」
「凌馬の手記、そして例の動画(※ロックオープン!謎の怪物がイケメンヤクザの肛門フルーツバスケット!ゲテモノの極みアッー!)でシドが言っていたことを総合すると、ヘルヘイムの森には、知性を持つインベス―オーバーロードが存在するらしい」
「ああ、そんなこと言ってたな、シド」
「知性を持つインベス…厄介ですね…」
知性を持つインベス・光実は自らの鉤爪を研ぎながら言う。
「ああ。俺たちはこれから、いわば奴らの世界を荒らすようなことを始めるわけだ。
知性を持たないインベスは葛葉が何とかしてくれるが、オーバーロードが黙っているとも思えない。
最悪の場合、報復としてこちらの世界に侵攻をかけるかもしれない」
「マジかよ!オーバーロード許さねえ!」
「ああ!許せないな」
「オーバーロード許さねえ!」
紘汰はその辺にクラックを生成すると、その向こう側へ飛び込んだ。
「葛葉!どこへ行く!」
戒斗が叫んだ。
「オーバーロードを全て倒す!そうすりゃ問題ねえだろ!」
「確かに!」
俺たちの心が一つになった。
俺は戦極ドライバーとオレンジロックシードで変身し、四人のインベスと共にヘルヘイムの森を走り出した。
「どこだ!どこにいる、オーバーロード!
絶対に許さねえ!」
紘汰が走った跡には、ヘルヘイム植物がすごい勢いで生い茂ってゆく。
「紘汰さん!これだと効率が良くないので、手分けして探しませんか」
「そうだな!行くぞ、裕也!」
「ああ!」
「では、俺たちはこっちだ。着いてこい、光実!」
「うん、兄さん!」
必然的にバナナの人が余ったわけだ。
俺と紘汰は、ヘルヘイムの森を突き進んでいった。
―――戒斗視点―――
葛葉たちと別れてから一時間以上立つが、一向にオーバーロードは見付からない。
葛葉が制御しているのか、通常のインベスにさえ遭遇しない。
だが、一人というのは気が楽でいい。
うるさい奴がそばにいると気が散るからな。
まるで俺が余ったようになったが、俺はいずれにせよ単独行動を選んだ。
余っていない。
そんなことを気にするやつは、弱者だ。
俺は強者だから、そんなことは気にしない。
なんで余ったんだろ。
その時、何やら物音がしたので、俺は木陰に身を隠しつつ、音の聞こえた方向の様子を伺った。
なんか、赤いやつがいる。
俺くらいの強者になると、一目見ただけでわかる。
あいつは、強い。
そして、俺とは似た者同士だ。
力こそ全て、その信念が、まるでオーラのように体から立ち上っている。
あれが、オーバーロードインベス。
この森の支配者にして、知性を持つインベス。
何か言葉を話しているようだが、聞き取れない。
滑舌が悪いのだろうか。
いや、そもそも使っている言語が違うのか。
俺は頭がいいから、その可能性にすぐに思い当たる。
強い者を前にした時、俺は、自分の中の闘争本能を抑えることができなくなる。
これは、力、強さを求める者の宿命だ。
正直、奴は格上の相手だろう。
一人で戦うのは分が悪いかもしれない。
だが、それでも、俺はこの闘争本能を抑えられない。
たとえ、その結果、この命が燃え尽きようとも―
だが、やはり命は大事だと思う。
命あってこその力だ。
死んだら元も子もない。
ここで無闇に命を捨てるようなやつは弱者だ。
俺は強者だし、頭も良いから、そんなことはしない。
歩き疲れているせいで、100%の力が発揮できないことも目に見えている。
今の疲れだと、恐らく実力の80%、いや30%も発揮できないだろう。
今日はもう帰って寝ることにする。
オーバーロード、首を洗って待っているがいい。
この俺、駆紋戒斗がそのうちお前を倒す。
俺は威風堂々と、足音を殺しつつクラックを目指して歩きだした。
つづく