仮面ライダー鎧武オルタネイティヴ   作:瀬久乃進

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第8話「衝撃!ライバルがバナナ変身!?」

その翌日、俺、紘汰(インベス)、戒斗、ミッチ(インベス)、貴虎(インベス)は、揃って貴虎のオフィスにいた。

昨日は自家発電が捗ったため、少し寝不足だ。

時計の針は正午過ぎを指している。

 

「ヘルヘイム果実を一日あたり50万…それなら、僕に良い考えがあります」

 

ミッチが立ち上がり言った。

 

「なんだ?言ってみろ、光実」

「うん、兄さん」

 

貴虎はコーヒーを一啜り、まるでミッチを試すように、重々しい響きを伴わせて答えた。

 

「一日につき50万必要なら、それを24で割ると、一時間に、役2万と少し収穫できればいいことがわかるよね。

それを更に60で割ると、一分につき350程度収穫できればいいこともわかる」

「ふむ、そうだな」

「それで?つまりどういうことなんだ、ミッチ!」

 

紘汰も加わり、ミッチへの注目はピークを迎える。

ミッチは、つまりね、と前置きし、咳払いを一つすると、こう続けた。

 

「350人単位の収穫班を朝番、昼番、夜番と組織すれば、一人につき一分に1つ収穫するだけで、一日で50万は果実が集まるはずです。

見たところ、果実はわりともっさり生えてるようですし、一分に2つ以上収穫することも難しくはないでしょう。

そうなれば、必要以上の数が集まるくらいです」

「ウッホワアアア!スッゲエエエ」

「完璧な計画だ…光実、成長したな」

「おい、よくわからなかったぞ、もう一度説明しろ」

 

戒斗がよくわかっていなかったので、俺がもう一度説明してあげた。

それでも何か腑に落ちない顔をしていたところを見るに、たぶんこいつは頭が悪いんだろう。

 

「さっそく、収穫班の編成にあたろう。忙しくなるな!」

「待って兄さん!一つ問題があるんだ」

「何?」

「森のインベスだよ。収穫班が襲撃される可能性がある。果実は奴らの食糧だしね」

「む、そうか…」

 

貴虎は顎に手を当てて考え始めた。

 

「それなら心配しないでくれ、ミッチ!」

 

と、ここでまた紘汰が助け船を出した。

 

「何か考えがあるのか?葛葉」

「ああ。俺は、知性を持たないインベスを自在に操ることができるようになったんだ。

収穫班が襲われないように、森の隅っこにでもまとめておくよ」

「葛葉!いつの間にそんな力を!」

 

戒斗が食い気味にリアクションを取った。

紘汰は十八番のインベススマイルを戒斗に向けて、それに応じる。

 

「いつの間にかできるようになってた。

とにかく、この力があれば、その問題は解決だろ?」

「そうですね。さすが紘汰さんです」

「ああ。さすがだ、葛葉」

「おう!俺に任せろ!」

 

俺も安心していたところ、戒斗は、ひとり何か複雑な顔をしていた。

お腹でも痛いのだろうか。

 

「どうした、戒斗。お腹でも痛いのか」

「いや…少し、散歩に出てくる」

 

戒斗はそう言い残すと、オフィスから出ていってしまった。

俺は少し様子が気になったので、三人のインベスを残し、戒斗の後を追った。

 

「戒斗ー」

「ついてくるな」

「どうしたんだよ、いつにも増して変だぞ」

「なんでもない。とにかくついてくるな」

「俺もこっちに用があるんだよ」

「ちっ、勝手にしろ」

 

戒斗が向かった先は、寂しげな更地だった。

 

「なんだここは」

「ここには昔、神社と神木があった。それをユグドラシルがアレしたわけだが、それはもうどうでもいい。

ここなら、人目に付かないかと思っただけだ」

「戒斗、何をするつもりだ?」

「俺もインベスになる」

 

戒斗は、ポケットからおもむろにバナナのロックシードを取り出した。

 

「それはロックシードだろう」

「元を正せば同じものだ。昨日、見ただろう」

「いや、あれは紘汰が果実に戻したからであって」

「黙れ!俺には力が要る」

 

戒斗の目に迷いは無かった。

 

「葛葉はどんどん強くなっている。

俺も、今より強くなる必要がある。

そのためには、手段を選ばない!」

「わかった。じゃあがんばれ」

「うん」

 

それから、戒斗の激闘が始まった。

ヘルヘイム果実と違い、ロックシードは、まあ固いんだわ。

それを肛門に入れる苦しみは想像に難くない。

 

「うおおおおお!」

「がんばれ!がんばれ戒斗!」

「俺は強者!」

「そうだ!お前は強い!がんばれ戒斗!気を強く持つんだ」

 

がんばれ戒斗!

戦いは30分に及んだ。

しかし、その果てに、戒斗はついにやりおおした。

戒斗が勝ったのだ。

 

「はあ…はあ…」

「戒斗!大丈夫か!」

「俺は…どうなった…?」

「元気なインベスの男の子です!」

 

戒斗は、なんというかバナナのようなインベスになっていた。

バナナとしか言いようがなかった。

良いとか悪いとかは別にして、バナナのようなインベスになっていた。

 

それからしばらく休憩した戒斗は、おもむろに立ち上がった。

 

「見ていろ、角居!」

「ああ!俺は見ているぞ」

 

戒斗がそう叫ぶと、殺風景だった更地は、大量のバナナで埋め尽くされていった。

バナナを操る能力。

これこそが、戒斗が痛みと引き換えに手に入れた―いや、尻に入れたものだった。

 

「これが俺の力…」

 

戒斗はバナナに囲まれてうっとりしていた。

俺はなんだか疲れてしまったのでその日はそのまま帰宅することにした。

 

つづく


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