メロンインベスと戦った呉島光実は逃走し、レデュエは駆紋戒斗、そしてバナナインベスと戦っている。
そして葛葉紘汰は、フレズベルグを追い詰めつつある。
「やあぁッ!」
紘汰が召喚したモーニングスター"マンゴパニッシャー"を力強く振り抜くと、フレズベルグは吹き飛ばされ、転げた。
―――レデュエの観察の通り、フレズベルグは狼狽しきっていて、適切な処理能力を失っていた。
さながら、生まれて初めての恐怖に怯える、子供のように。
『戦意喪失まで追い込んでから、身柄を拘束しろ!話し合うのはそれからでも遅くない!』
紘汰の頭の中、かつて、ヘルヘイムの森でデェムシュと戦った際に、貴虎の言っていた言葉が甦る。
紘汰は、起き上がれなくなった様子のフレズベルグを見やり、攻撃の手を止めて、対話を試みた。
「お前は何者だ!オーバーロードの仲間か!」
フレズベルグは、その声には応じない。
しばしの沈黙。
―――命を賭けた戦いの場においても、可能な限り、和解の道を探る。
紘汰のそういった一面は、間違いなく彼の美徳ではあるのだが、同時に、付け入られがちな欠点の一つでもあった。
それが、フレズベルグに、幾ばくかの冷静さを、取り戻させることになってしまった。
―――ここで、フレズベルグの脳内に、ラタトスクの声が聴こえ始める。
「何をしている」
ラタトスクはフレズベルグであり、また、フレズベルグはラタトスクだ。
異なる個性を持つわけではない。
だが、ラタトスクは、煉獄の樹から、フレズベルグの目を通して見て、フレズベルグの耳を通して聞いていた。
"天敵"との物理的、または精神的な距離が、この場において二者の判断能力に差を付け、つまり、ラタトスクは、フレズベルグよりは冷静でいられたのだ。
フレズベルグは、呼び掛け続けていたその声に、気付くことが出来なかったのだ。
「正面から挑むな、フレズベルグ」
「死ぬのはお前ではない、ラタトスク」
―――フレズベルグは、ラタトスクの力を分割し、生まれた存在だ。
今この場でフレズベルグが倒れたとて、ラタトスクは、その力の幾らかを失うだけで、存在の消滅には至らない。
それはラタトスクにとって損失ではあるのだが、ただ、今ここにいるフレズベルグだけは、間違いなく消滅する。
戦いへの危機感もまた、段違いではあるのだ。
言うなれば、フレズベルグもまた、ラタトスクの偽物なのだ。
ある意味、高みの見物を決め込んでいる本物に対し、反感を持つのも不思議ではない。
だが、フレズベルグの言い回しが、ラタトスクにそれを感じさせたかというと、否。
ラタトスクには、それが理解できない。
何故なら、ラタトスクにとって、フレズベルグはラタトスクだったから。
それを非合理的、無駄な口答えと捉えたラタトスクは、続ける。
「死にたくなければ思い出せ。戦法を再確認」
「…死にたくない。戦法を、再確認」
フレズベルグは、応じる。
"当初の策"を、頭の中に呼び戻し、そのための準備を始めた。
「おい、どうなんだ、答えろ!」
紘汰は、己の問い掛けを無視したフレズベルグに、苛立ちを隠さずに言う。
こいつも、やはり、デェムシュと同類か。
わけもなく他者を傷付ける、理由の無い悪意なのか。
紘汰は、戦極ドライバーに手をかけ、必殺技の発動準備を整える。
―――ここで、フレズベルグが、立ち上がる。
「…違う。オーバーロードではない」
「なんだと?」
フレズベルグの言葉に、紘汰は戸惑う。
見た目は、確かに、今まで見てきた二人のオーバーロードとは、少し毛色が違うようにも見えた。
だが、喋る怪物というと、他に心当たりが―――
「あ!地下帝国バダンか!それともハカイダーの一種か!」
「それも違う」
「それならあれか!
戦国時代の」
「違う」
今度こそ、心当たりが無くなった紘汰は、混乱する。
「じゃあ、お前は何なんだよッ!」
「―――お前は、重ねてきた罪を、覚えているか」
「はあっ?」
突然の逆質問に、紘汰は、気の抜けた声を出してしまう。
「その手で奪ってきた命の数を、覚えているか」
「………!」
その声を聞き、紘汰の脳内、フラッシュバックする、記憶。
『オレンジって、俺?!』
忘れもしない。
初めて、アーマードライダーの力を使った日。
10/6。
その日、紘汰は、アーマードライダー鎧武としての、初めての戦いで、
―――インベスと化した親友の命を、その手で奪った。
「うっ…」
紘汰の頭の中、苦いものが走る。
貴虎から聞いた、真実。
インベスは、ヘルヘイム果実を食べた生物が変化したもの。
森のインベスもまた、以前、その世界に栄えた者たちの成れの果てを含む、ということ。
紘汰は、町を守るため、何度もその剣を振るい、多くのインベスを、殺害してきた。
初瀬が、果実を口にする瞬間を見た。
それに至った詳しい経緯を、紘汰は知らない。
だが、もしもあのとき、初瀬の戦極ドライバーが壊れていなかったら、腰に戦極ドライバーを巻いていたら、と思ったことは、ある。
そして、初瀬の戦極ドライバーが壊れたのは、いつのことだったか。
―――自分達が、初瀬を半分騙すような形で開催した、クリスマスゲームの時ではなかったか。
「そ…それは…!」
そのことは、もう、あまり考えないようにしていたのだ。
考えてしまえば、迷う。
迷っていれば、守れない。
それは、紘汰が、森との戦いの中で、痛いほど学んできたことだったから。
自分が迷っている間に、誰かが傷付くくらいなら、
―――紘汰は、そう考えて、剣を振るってきた。
なぜ、それを、今、目の前にいる怪物が、問い質すのか。
動揺を誘っているのか。
―――駄目だ、気持ちを切り替えろ。
こいつは、仲間たちをあんなにも傷付けた、悪だ。
相手にするな。
必殺技を放て。
それで、全ておしまいだ。
紘汰は、改めて、戦極ドライバーに手を掛ける。
ぽつり。
滴が一滴、落ちる音がする。
雨だ。
雨が、降り始めたらしい。
「…おまえには、関係ない!
もしおまえが、何の理由もなく、俺の仲間を傷付けたなら」
「理由なら、ある」
フレズベルグが、紘汰の言葉を遮る。
紘汰は、思わずたじろいだ。
またも、沈黙。
雨足が、急に強くなる。
アスファルトを打ち付ける音は、そのスピードを、どんどん上げてゆく。
「り、理由って、何だよ」
「復讐だ」
フレズベルグは、ただ一言そう言うと、紘汰に向けて、一歩、歩を進める。
「復讐?な、何のだよ!」
「おまえは、罪を犯した」
「インベスのことか!だから、それが、おまえに何の関係が―――」
「"俺"は」
フレズベルグの体が、発光を始める。
「おまえに命を奪われた」
紘汰には、フレズベルグの言っている意味がわからなかった。
「い、意味わかんねえよ!なんだよ、おまえ!」
「10/6」
「ッ!」
ずきん。
10/6、その言葉を聞いて、紘汰の脳内に、痛みが走る。
フレズベルグは、続ける。
「果実を食べて、インベスになった俺を、お前は、殺したんだ」
「う、嘘だ、おまえが」
「嘘じゃない。
果実を食べて、インベスになった俺を、お前は、殺したんだ」
「ち、違う!
おまえが、祐也な筈は」
「違わない。
果実を食べて、インベスになった俺を、お前は、殺したんだ」
光が、強くなる。
雨の音。
紘汰の思考は、繰り返されるその言葉に掻き乱され、混迷を極める。
フレズベルグが、言った。
「俺は」
―――紘汰の眼前、光を放ち、フレズベルグが、その姿を変えてゆく。
繰り返しになるが、フレズベルグは、ラタトスクの力の一部を分け与えられ、生まれた存在だ。
その"力"の中には、ラタトスクの苗床であるところの、インベスとなった死者の魂もまた、含まれている。
それが、今この場において何を意味するか。
ラタトスクの言うところの"当初の策"が、何を意味するか。
紘汰の目の前に広がった、
―――残酷極まりない光景が、その答えになる。
「―――俺は、角居祐也だ」
フレズベルグは、紘汰の記憶の中の親友と、全く同じ姿をしていた。
「祐也」
がしゃん。
手に持ったマンゴパニッシャーが、音を立てて、落ちる。
「紘汰、よくも俺を、殺してくれたな」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
亡き親友の口から飛び出した言葉に、紘汰は、耐えきれず、絶叫した。
「信じていたのに!」
フレズベルグは、その右腕だけを、インベスの形にして、紘汰に襲い掛かる。
紘汰は、避けることなどできず、それを、まともに受ける。
「おまえなら、気付いてくれると、信じていたのに!」
「ゆ、祐也っ、ぐああっ!」
火花。
極アームズの装甲に、爪痕を付ける。
「何度も、何度も呼び掛けたッ!
俺だ、俺だ、やめてくれって、何度も呼び掛けたッ!
なのに、お前は、お前は!」
「ぐっ、祐也ッ!待ってくれ、祐也ッ!」
「そうだ!そういう風にだ!
何度も叫んだ!でも、無駄だった!
お前は、遊び半分みたいな調子で、ゲームでもするみたいに、俺を、俺を!」
紘汰の脳内、フラッシュバック。
『行けるぞおおおおお!』
『逃げんじゃねえー!』
『待ってろよー!』
『待たせたなあああ!』
『弾切れ?嘘だろ!』
『くっつく~!』
「違う、祐也、違う!俺は、」
「知らなかったと言うんだろ!?」
フレズベルグは、その左腕もインベスに変化させ、追撃を加える。
「それが問題だって言ってんだよ!
俺は、制御が効かなくなった体で、必死に抵抗した!
おまえを逃がそうとした!
なのに、おまえは、気付かなかった!」
「ぐうっ!がああっ!」
「第一、あの日、おまえがもっと早く来ていたら!」
フレズベルグは、顔だけを残し、他の全ての部位を、インベスに変化させる。
「こんな姿に、ならなくて済んだんだ」
「祐也ッ…」
「紘汰ァァァァァァッ!」
残された顔も、インベスになった。
その姿は、紘汰が初めて戦った、ユグドラシルの付けたコードネームで言うと、"ビャッコインベス"と同じものだった。
―――返せ、返せよ!
そのベルト!
俺のだっただろ!
なんで、なんでおまえが付けてるんだよ!
返せよ!
俺の毎日を!
人生を!
命を!
親友だっただろ!
なんでおまえが俺を殺すんだよ!
信じていたのに!
信じていたのに!
紘汰!
俺が死んだあとも、ぜんぜん、俺のことなんか気にしちゃいなかった!
平気で、インベスゲームで遊んで、楽しそうに笑って、まともに探そうともしなかった!
俺が死んだのを知ってからも、ひとしきり悩むだけ悩んだら、簡単に吹っ切りやがって!
ふざけんなよ!
それでも、それでも親友かよ!
返せよ!
命を、返せよ!
なんで俺が死ぬんだよ!
死ぬべきなのは、お前だろ、紘汰!
憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、おまえが、おまえが死ね、紘汰、死ね、死ねし死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね紘汰!
信じていたのに!
おまえなら、おまえなら、気付いてくれるって、死ね、死ね、紘汰ァァァアアアァァァァァァッ!
フレズベルグは、呪詛の言葉を吐きながら、紘汰を、何度も何度も、攻撃する。
紘汰は、何もできない。
反撃も、受けることもできず、ただ、されるがままになっている。
紘汰の心は、もう、壊れる寸前だった。
ただでさえ、親友殺しの罪は、紘汰の心に深く突き刺さった、刺であった。
その親友の声で、姿で、罪を糾弾される。
憎しみをぶつけられる。
死ねと言われる。
紘汰は、ただ、叫ぶことしか出来なかった。
フレズベルグが、絶叫と共に放った一撃は、ついに、極アームズの装甲を打ち砕いた。
変身を解かれた、紘汰は、血を吐きながら、地に伏した。
フレズベルグは、再び、祐也の姿に戻り、倒れた紘汰に跨がるようにして、その首に、手を掛ける。
「ゆう………や………」
傷だらけの紘汰は、息も絶え絶えに、親友の名を呼ぶ。
「死ね、紘汰」
紘汰の目からは、涙が溢れていた。
それは、降りしきる雨と混じり、紘汰の頬を伝って、アスファルトに零れ落ちてゆく。
―――当然の罰だ。
紘汰は、そう思っていた。
そうだ、祐也の言うことは、間違ってない。
俺が気付けば、それだけで良かったんだ。
なにか、方法はあったのかもしれない。
祐也は、死ななくて済んだのかもしれない。
だから、祐也に殺されるなら、それは、俺の死に、最も相応しい。
何よりも、もし、俺の命を奪って、今ここにいる祐也の気が少しでも晴れるなら、それで、いい。
何より、紘汰は、嬉しかったのだ。
だって、死んだはずの祐也が今、ここにいる。
殺してしまったけど、祐也は、ここにこうして、存在しているのだ。
理由はわからないが、祐也が、生き返ったんだ。
だったら、代わりに、俺が命を差し出してもいい。
それを、祐也が望むなら。
首にかかる力が強くなり、意識は遠退いてゆく。
視界には、怒りに歪んだ、親友の顔。
―――でも、俺が望むには、あまりにおこがましいかもしれないけど、
紘汰は、ゆっくりと、目を閉じる。
―――最後には、笑ってるところが、見たかったなあ
フレズベルグの手が、緩んだ。
紘汰は、咳き込みながら、再び、目を開ける。
「祐也…?」
祐也の姿をしたフレズベルグは、涙を流していた。
ラタトスクの声が、その脳内に、響く。
「葛葉紘汰はまだ生きている。
殺せ、フレズベルグ」
ラタトスクは、既に勝利を確信していた。
どれだけ強い力を持とうと、心は、弱い人間。
そこに付け入ることが出来れば、勝機はある、それが、ラタトスクの作戦だった。
フレズベルグは、紘汰からゆっくり離れてゆく。
紘汰の視界に、青い光が映る。
光は、ドライバーに付けたままの、"極"のロックシードから、放たれていた。
―――知恵の実の欠片から生まれた極ロックシードは、鍵だ。
人の力の限界、その扉を開くための、鍵の形をしている。
紘汰は、その力を無意識に行使して、心の中の後悔故に、これもまた無意識に煉獄に干渉、もうひとつの沢芽市を創りだした。
そして、世界の管理者である、己のアバター、偽の葛葉紘汰―――オレンジインベスに、極ロックシードの、"合鍵"を託した。
偽物の幸せな世界を、内側から守れるように、と。
フレズベルグは、よろめいて、膝を付く。
極光に当てられ、祐也の形を保てなくなったのか、もとの、鷲の巨人のような姿に、戻る。
―――そして、オレンジインベスの死によって、合鍵を管理する者がいなくなり、偽物の沢芽市は、崩壊。
ラタトスクを抑えきれず、煉獄の姿に、戻った。
だが、合鍵そのものが無くなったわけではない。
現に、煉獄が消えた後も、合鍵の力によって、バナナインベスたちはその存在を保っていた。
「ぐ、ぐおおおおおおっ!」
「祐也ッ!」
フレズベルグの体が、再び、発光を始める。
だが、先程フレズベルグが放ったのとは、また違う、光。
それは、極ロックシードが放つそれと同じ、青い光だった。
「まさか…!」
ここでラタトスクは、一つの可能性に思い至り、その対処のため、フレズベルグにアクセスを試みる。
だが、不可能。
―――同じだ、あのときと。
煉獄が創り変えられた、あのときと!
「祐也!」
―――合鍵は、どこへ行ったか。
今、合鍵は、誰が管理しているのか。
合鍵は、極ロックシードと同じ形をしていたが、ただひとつ、色が違った。
―――その色は、青。
死んだオレンジインベスの体内から現れたそのロックシードを受け取った男は、それを大事に持ったまま、ラタトスクに取り込まれた。
そして、フレズベルグの一部として、ラタトスクから切り離された。
その男は、フレズベルグの内側から、その合鍵で、扉をこじ開けようとする。
フレズベルグは、ラタトスクだ。
ラタトスクは、全であり、一である、インベスとなって死んだものの魂を包括する存在。
苗床たちに、個としての存在理由を許さない。
だが、知恵の実の欠片、その更に断片を持った者が、その中にいるのなら―――!
「ぐああああああああああッ!」
フレズベルグは、叫び声を上げ、光の中に、消える。
そして、男は、完全に、個を取り戻す。
―――なあ、言っただろ、ラタトスク。
アーマードライダー鎧武が、お前を倒すと。
俺だって、アーマードライダー鎧武なんだよ。
雨を、体に感じる。
俺は今、大地に立っている。
俺には、今、俺の体と、心がある。
眩しい。
青くて、綺麗な、光だ。
青は、俺の一番好きな色だ。
たぶん、紘汰にとっても。
ああ。
俺は、ちゃんと、
―――角居祐也だ。
光が、消える。
目の前には、踞る、フレズベルグの姿。
―――さっきまで、あの中にいたんだな。
ブッサイクだな、しかし。
後ろを、振り返る。
血塗れになった顔で、紘汰が、俺を見ている。
なにがなんだかわからない、と言った顔だ。
俺は、紘汰に駆け寄り、苦しそうに起こした体を、支える。
「大丈夫か、紘汰、ごめんな」
「ゆ、祐也、どうして…」
「わりい、今は、話してる時間が無い。
…でも、これだけは言っとくわ」
俺は、自然と笑みが零れてくるのを感じながら、
「実を食ったのは、食いしん坊な俺の自己責任だ。
おまえは、なーんも、悪くねえよ。
…舞を守ってくれて、ありがとうな」
「祐也………!」
紘汰が、また泣き出した。
泣き虫だな、全く。
記憶の中と全然変わんねえや。
「き、貴様…!」
フレズベルグが、立ち上がる。
俺は、そっちに向き直って、
「俺のモノマネならもっと上手くやれよ、フレズベルグ。
勉強が足んねえなあ!」
俺は、戦極ドライバーを取り出す。
―――良かった、ちゃんと持ってた。
「それは…!」
紘汰が、目を見開く。
「ああ。戦極ドライバーだ。
お前とお揃いのやつだな」
フレズベルグが、構える。
「苗床の分際で、私の邪魔をするな、角居祐也」
「誰が苗床だ、ふざけんな!
このビビリ共が。
まずはお前からぶっ潰してやるよ、フレズベルグッ!」
俺は戦極ドライバーを装着し、
―――ロックシードを手に取る。
また振り返って、
「紘汰、ちょっと休んでな。
俺があいつを倒す!」
「…ああ!」
紘汰が、やっと笑った。
俺の後ろには、命を賭けて俺の心を守ってくれた、俺の、親友がいる。
絶対に負けない。
―――オルタネイティヴオレンジ!
雨の支配する空を切り裂いて、俺の鎧が現れる。
俺は、呼吸を整えて、勢いよく、戦極ドライバーの刃を降り下ろした。
「変身!」
―――オルタネイティヴオレンジアームズ!
花道アナザーステージ!
俺は、アーマードライダー鎧武。
本物も偽物も関係ない。
沢芽市を守る、最高にカッコイイ、ヒーローなんだ。
「来いよ、フレズベルグ。ここからは俺のステージだ」
俺は、左手の青い刀を、フレズベルグに向けた。
つづく