第3話「決戦!ユグドラシル」
戒斗に戦極ドライバーを175000円で売り付けた俺は、ホクホク顔で帰宅していた。
鎧武のメンバーへの連絡は明日でいいや。
舞がリーダーを引き継いでくれることだろう。
鼻唄を歌い、さっきの紘汰とシドを思い出しつつ日課の自家発電に励もうと思った矢先に、俺のスマホ(スマートフォン)が振動した。
戒斗からの電話だ。
「もしもし?金なら返さんぞ」
「貴様。一向に変身出来ないぞ。どうしてくれる」
「え?やり方教えただろ。ロックシード付けてズバッだけだよ」
「軽く100回は試したが駄目だった。貴様、騙したな」
「ええ?集中力の問題じゃないの?」
「集中力の問題か」
電話が切れた。
気を取り直して、さっきの紘汰とシドを思い出しつつ日課の自家発電に励んでいたところ、俺のスマホ(スマートフォン)が再び振動した。
戒斗からの電話だ。
「もしもし?金なら絶対返さんぞ」
「瞑想してからやったが駄目だった。どうしてくれる」
「ちゃんと"変身!"って叫んだ?」
電話が切れた。
気を取り直して、さっきの紘汰とシドを思い出しつつ日課の自家発電を終えた頃、俺のスマホ(スマートフォン)がまたも振動した。
戒斗からの電話だ。
「もしもし?何とは言わんが返さんぞ。断じて」
「大家から苦情が来るくらい大声で叫んだが駄目だった。どうしてくれる」
「あ、アパート住みなんだ」
「どうしてくれる。俺が貯めに貯めた金だぞ。ザックから25000円借りたんだ」
150000円で全財産だったのか。
「お宅も苦労してるのな」
「ふざけるな!」
「でも、本当に騙してないぞ。俺は変身出来たじゃんか。何なら明日シドに訊きに行ってみるか」
「うん」
「じゃあ17:00にドルーパーズで」
「昼はバイトか何かか?夕方からチームのミーティングがある」
「いや、寝てようと思って」
「このダメ人間!13:00集合だ、わかったな」
「戒斗!」
「なんだ!」
「お前のダンス、脚上がってないから」
電話を切った。そのあとも携帯はしばしば鳴っていたが、俺は寝ることにした。
酷い一日だった。おやすみ。
翌日、14:00に目覚めた俺は、ドルーパーズに向かっていた。
戒斗からのラインがすごいことになっていた。
そのせいで寝起きから相当気分を害したので、口直しに一時間ほど家で漫画を読んでいた。
「遅いぞ!このダメ人間!」
「ごめんって」
「それと、俺の脚は上がっている」
俺の脚は上がっているとしきりに繰り返す戒斗を尻目に、俺は店内を見渡した。
「シドならいない。連絡を取ってはみたが、既読も付かない」
「あ、シド、ラインやってるの?」
「アイコンがサクランボだ」
「つまりそういうことなのかな」
「うん」
シドの悲しき半生に想いを馳せつつ、俺はパフェを頼んだ。
「ここにいないってなると、まだ森にいんのかな」
「森?」
「ああ。うちの紘汰ってやつと一緒にいると思うんだ。紘汰に連絡してみるよ」
「そうしろ」
紘汰に電話をしてみた。すぐ出た。
「もしもし?紘汰?」
「おう、裕也か」
「今大丈夫?なんかそっちすごい音するけど。どこにいんの?」
「ああ、今ユグドラシルにカチコミかけてるとこなんだ」
「え?なんで?」
「昨日シドが言ってただろ?なんかすげー悪巧みしてるらしいじゃん。許せねえと思って」
「シドは?」
「ああ、尻に果実を入れ続けたんだけど、17個目で動かなくなったから森に置いてきた」
シド…。
「今、変な白いメロンみたいなやつと戦ってんだ。折り返しまた連絡するよ」
「そうか。愛してるよ」
「ああ。愛してるよ」
電話を切った。戒斗がすごい顔でこっちを見つめている。ホモなんだろうか。
「シドは死んだらしい」
「そうか。そういうことならとにかく金を返せ」
「絶対に返さない。ところで今、紘汰はユグドラシルにカチコミかけてるらしい」
「なんだと!ユグドラシル!」
戒斗は、ユグドラシルに実家の製作所を潰されたような顔で叫んだ。
「どうした。実家の製作所を潰されたような顔して」
「ユグドラシル…俺は絶対に奴らを…」
ここから戒斗の語りが数分続いたが、滑舌が悪くて聞き取りづらかったため、割愛する。
「つまり、実家の製作所を潰されたんだな」
「ああ。ユグドラシルに俺は復讐する」
「じゃあ、ちょっと紘汰に助太刀しに行く?戦極ドライバー、たぶんユグドラシル製だし、行けば手に入るかも」
「なんだと!証拠はあるのか」
「うん。動画がある。見る?」
俺は、昨日撮影した動画を戒斗に見せた。
紘汰に尻からヘルヘイム果実を入れられつつ、すごい長台詞を一息で言い切ったシドの勇姿を。
「…この化け物たちは何だ?」
「入れてる方が紘汰で、入れられてる方がシド」
「どうしてこうなった?」
「尻から果実を摂取したらこうなったんだ」
「いや、そういうことじゃ…まあいい。とにかく行くぞ。ユグドラシルを倒すのは俺だ」
「よし!」
そういってドルーパーズを出た俺たちは、ユグドラシルタワーを見据えた。
次の瞬間、ユグドラシルタワーからロケットのようなものが射出され、「私の計画がぁぁぁ!」という叫び声が聴こえたかと思ったら、タワー上部で謎の大爆発が起こったわけだが、それはまた次回のお話
つづく