仮面ライダー鎧武オルタネイティヴ   作:瀬久乃進

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第2話「さらばビートライダーズ」

とりあえずその日は疲れたので解散ということになった。

紘汰とシドは物足りなかったらしく、シドが持っていたバイクみたいなロックシードで再び森へ向かっていった。

俺はというと、とりあえずチーム鎧武のガレージに向かうことにした。

 

「裕也さん!」

 

ガレージでは、メンバーのミッチが出迎えてくれた。

こいつは本当は進学校に通っている。路上で着替えているところを見た。

紘汰と舞のことが大好きで、俺のことはいまいち慕ってないように見える。

この間、舞さん、舞さん、紘汰さん(2:1の割合)言いながら抜いているところを路上で見かけた。

学歴社会になって久しいが、こういう奴が偉くなっていくと考えると、正直ゾッとする。

 

「おう。調子はどうだ?」

「バロンの勢力は拡大する一方です」

「ふむ」

 

バロン、というのは、駆紋戒斗という男がリーダーを務めるダンスチームだ。

金に物を言わせてロックシードを買い漁り、今この街で最強の勢力を誇るチーム。

リーダーの戒斗のダンスはというと、全体的に脚が上がっていない。

なんでダンスやってるんだろう。辞めたらいいのに。

 

「だけど、もう大丈夫だ。俺たちはこれから先、インベスゲームでは負けない」

「え?どういうことですか」

「こういうことさ。変身!」

 

オレンジアームズ!花道オンステージ!

 

俺は変身した。

ミッチ他鎧武のメンバーたちは驚いていた。

 

「ウッホワァァァ!スッゲエエエ」

「裕也さんスッゲエエエ!」

「だろ?」

 

ミッチたちは、俺の変身へのリアクションもそこそこに、ダンスの練習を始めた。

そういえば舞がいない。生理だろうか。

「1、2、3、4」

ミッチがカウントを取る。その直後からもうテンポが違う。

それなりに長いことやってるはずだが、未だにこいつら基本がなってない。

自分のチームにこんなこと言うのはアレだが、なんでこいつらダンスやってるんだろう。辞めたらいいのに。

 

「そんなわけで俺、バロンと戦ってくるよ」

「行ってらっしゃい裕也さん!」

「頑張ってくださいね!」

「おう!」

 

俺はガレージを出た。

応援に来ない辺り、さすが俺のチームメイトだ。辞めたらいいのに。

俺は戒斗に電話を掛けた。

 

「もしもし、戒斗か」

「弱小チームのリーダーが、俺に何の用だ?」

「インベスゲームしようぜ」

「うん」

 

この男、話が早くて助かる。

俺は早速、指定された西のステージへ向かった。

 

西のステージには、チームバロンと戒斗の顔ファンたちが集まっていた。

 

「なんだ?一人か」

「ああ。いいからさっさとやろう」

「うん」

 

戒斗は、ロックシードを三つ出すと、インベスを三体召喚した。

高等技術らしいが、今の俺に勝てると思うなよ。

変身!花道オンステージ!

チョチョイのチョイで三体のインベスを蹴散らしてやった。

ロックシード三つゲットだぜ。ヒマワリ、ヒマワリ、アンドヒマワリ。

 

「なんだと…」

 

戒斗が苦い顔をしている。

 

「おい!それをどこで手に入れた!」

「シドから貰った!」

「シドだな!」

 

戒斗は走り去っていった。途中で脚を挫いていた。

ただでさえ上がらない脚なのに!

 

「待て戒斗!シドなら今この街にいないぞ!」

 

紘汰と森でハッスルしてるからな。

 

「何…?!」

 

戒斗は立ち止まり、脚を引きずりながらこちらに歩いてきた。

 

「じゃあ俺はどうすればいい!」

「そう言われてもな…」

 

この人、いつもこんな喋り方なのかな。バイト先とかで苦労しないんだろうか。

そもそもバイトしてないのかもしれない。

俺はこんなに金に困っているというのに。

いくら稼いでも、チーム鎧武のロックシード代に消えてゆく。

そもそもうちのメンバー、誰も金を出しやしない。

黙ってれば俺が金を用意すると思ってやがる。

ミッチなんか明らかに金持ってるのに。

段々腹が立ってきたぞ。

そのくせダンスができれば幸せだの何だの、大人の世界をなめるなよ。

俺だってそろそろ親の目が痛いんだ。

ああ、本当に腹が立ってきた。

「俺、鎧武やめる」

「は?」

 

戒斗はキョトン顔だ。

 

「ダンスやめる。就活する」

「え?お、おう…そうか」

「だからこれ、売ってあげるよ」

「いくら?」

「20でどう?」

「ふざけるな!高すぎる」

「18」

「15は?」

「17.5」

「わかったよ。今か?」

「今」

「ザック!持ってこい!」

 

交渉成立だ。とりあえずこの金で資格でも取ろうかな。俺の就活は始まったばかりだ!

 

つづく


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