エリアの守護神~THE GUARDIAN DEITY in THE AREA~   作:フリュード

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お待たせしました!かなり不自然だとは思いますがどうぞ!


第7話

「ふーん・・・・」

 

「どうしたのコウキ?新聞なんか読んで」

インターハイ予選も後2週間にひかえたある日の教室でスポーツ新聞を読んでいた染谷が珍しかったのか霧島が声を掛けてきた。

 

「ん?いやちょっとな。おっ、倉知さん昨日の試合で活躍したんだ!」

 

「えっ?どこどこ?あっ!ホントだ。でも凄いよね倉知さん」

霧島が興奮しながら言っている。ちなみに倉知さんとは今ヨーロッパのブンデスリーガのフランクフルトで活躍しているMF倉知 快人のことで、サッカー選手の憧れの存在である。

 

「だよな!フランクフルトでしっかりと成績をあげてるからな。そこんところは尊敬するな」

 

「だよね!良いなぁ~僕もヨーロッパで活躍したいなぁ~」

 

「頑張らないと無理だな」

 

「むむむ!今に見とけよ!」

 

「はっはっは、期待しておくよ」

霧島にそう言いながら染谷はふと思った。

 

『・・・・いつかオレたちもヨーロッパで活躍していく事も考えないといけなくなるんだろう』

 

まだプロにも入っていない16歳のガキがそんなことについて考えるのはどうかとは思うが、染谷の近くには今すぐにでもヨーロッパのサッカーリーグに通用できる人たちってのは見てきた。

 

シルバや傑、さらには世良や鷹匠・飛鳥など日本や世界の次世代を担う選手なのはその類いである。世良やシルバに至っては外国のクラブチームで活躍していた経験がある。

 

世良は海外でプレーしたいと言うのを聞いたことはあった。そういう人もいる一方日本で言うJリーグとかの国内リーグで結果を出してから海外にわたる選手もいる。

 

どちらも一概に駄目や良いとか無いし、実際海外でプレーしたいと言う世良にたいしては凄いなと染谷は思う。

つまりは・・・・

 

「気持ち次第なんだろうな」

染谷はそう結論付けた。

 

「何が気持ち次第なの?」

霧島はよく分からないので不思議そうに聞いてきた。

 

「そうだ、リュウにきいてみようか。実はな・・・・」

染谷は霧島にさっきまで考えていたことを話していた。気づけば、さっきからクラスメイトが染谷の席に近付き、染谷の話を聞いている。

 

「んーー実際そうだと思うよ。まぁ、まだそういう選択に迫られた訳じゃないから分からないと言うのが本音かな」

話を聞いた霧島は難しい顔をしながらそう答えた。

 

(まぁそうだよな・・・)

染谷は当たり前の反応に苦笑する。まだ16歳の子供にはまだ早い話だったのだ。

 

「けどコウキ達の実力ならヨーロッパでも通用できるくらいの実力はあると思うよ」

 

「よしてくれよ。それにオレはプロに入りたいとは思うけどそのあとはまだ考えていない」

 

「えええ!?それは買い被りすぎだよっ!!」

クラスメイトの発言に染谷と霧島はそう言い返した。

 

「それならばお前らはプロに行きたいとは思わないのか」

お返しと言わんばかりに霧島はそう言い返した。するとクラスメイトはおとなしくなった。

 

「う~ん。まだ控えにも入れないオレたちだからなぁ・・・・」

 

「そうだよなぁ。だからお前ら二人が羨ましいんだよな」

 

「ジュニアでも有名だった2人だからな。暫くは応援する側かな。ははは・・・・」

皆口々にそう言うが染谷はその発言に腹が立った。

 

皆そうは言っているがそう言ったクラスメイトの中には横浜や浦和・千葉などの有名なクラブのジュニアでプレーしていた人もいるのを染谷は知っていた。戦った相手だから知っているやつが沢山いるのだ...

 

「そんなこと言うな!そんな弱気ならレギュラー取るぐらい勢いで行かないと、この先後輩にもポジション取られてずっとこんな感じだぞ!」

染谷は皆に怒鳴った。皆は怒るかもしれないがそれでも溢れてくる感情を染谷は押さえることはできなかった。

 

「こ、コウキ・・・・」

霧島は突然の怒鳴りにすこし青ざめている。

 

「・・・・・」

クラスメイトは染谷の怒りに口を閉ざしたままだ。

 

染谷は怒鳴った後少し落ち着いたのでもう一回口を開いた。

 

「・・・・怒鳴ってごめん。自分で言うのもなんだけど確かにオレ達が今は上手いから控えに入っているのもあるとは思う。けど、お前らもこの学校に来ているということはスカウトに発掘されたやつか自分のプレーに自信を持っている奴らだってことだ」

 

「たしかにそうだけど・・・・」

染谷の話を聞いてクラスメイトは弱々しく言った。

 

「なら自分のプレーを信じて戦っていこうぜ!」

 

「コウキ・・・・」

 

「コウキ・・」

クラスメイトと霧島はそう呟くように言った。

 

「オレはお前らと一緒にプレーしたいし、国立に行きたい!応援としてじゃなくてプレーヤーとして皆と戦いたい」

 

「・・・・・」

染谷の話をクラスメイトは黙って聞いていた。

 

(・・・こういう熱い所があるからコウキは良いんだよね)

霧島は熱く話す染谷の姿を見てそう思った。

 

(日本代表で一緒に戦った時もどんなときでも声を出し続けていたし、毎日残って自主練習もしていた姿は本当にスゴいなと思った。

コウキは最初から才能を持っていたわけではないと言ってた。小学校は背も低くてキーパーとしては大成しないと言われてたらしいけど、血のにじむような努力と身長がぐんぐん伸びるのも相まって日本の次世代を担うGKと言われるようになった。そんな努力をしてきたからこそ今の皆が許せないんだろうね)

霧島はそう思い染谷とクラスメイトの方を見た。

 

「よっしゃあああ!!!頑張っていこうぜ!」

 

『オオ!!』

いつの間にかクラスメイトの顔もやってやろう感満載の顔になって染谷と一緒に盛り上がっていた。

 

「フフフ・・・こうでなきゃね」

霧島はそう呟き、皆のもとへ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

コウキたちが教室で盛り上がっている頃、教室の外では会話を聞いていたものがいた。

「・・・・・」

ペドロ監督だった。会話を聞き終えた彼は職員室へと戻っていった。

 

 

「・・・サッカーが好きなら、ネェ」

戻る最中、ペドロはそう呟いた。

 

 

『ここまでサッカーをやって来たのはサッカーが好きだから、もしくは楽しいからだと思う。なら好きなら好きなことのように自分の可能性を広めていこうぜ!そして楽しくサッカーをしていこうぜ!』

コウキがそう言った後、クラスメイトは今までにない盛り上がりを見せ、雰囲気もよくなった。

 

「やはり彼は蹴学に必要なやつだ。それにワタシはどんな思いでやっていたとしてもチームが優勝すればなにも言わない。それが私や彼らのプレーヤーとしての価値を高めるのに必要なことだからな。クックック・・・・」

ペドロは笑いながらそう言い職員室へと戻っていったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の練習はここまで!」

インターハイ予選を一週間に控えた今日の夕方、練習が終わると選手たちはいつものように寮へと帰っていった。

 

流石蹴学へスカウト・入学する選手だけあって練習が終わってもまだ練習できるだけのスタミナが残っているようだ。何故ようだという表現にしたかというと、その中にはもうへとへとだと顔に出ている選手がいるからである。

 

「だぁ~疲れた」

染谷もそのうちの一人である。

 

染谷は練習が終わるとその場で倒れ込んでしまうのだ。

 

この光景が毎日続くので最初のほうは引き気味に見ていた選手たちは今じゃその光景に笑いながら帰っていくというのが練習が終わった後の名物(?)になっているのだ。

 

この間染谷が倒れている時に風巻さんや坂東さんにプロレス技かけられており天国に逝きそうになったから倒れこむのはやめようと染谷は思っているのだが、一日の練習の疲れがどっと来るのでやめたくてもやめられないと言うのが現状である。

 

「また倒れ込んでる。いい加減やめないとまた風巻さんたちにやられるよ?」

 

「るせっ!やめたいけどやめられないんだよぉ・・・」

倒れている染谷に近付いてそう言った霧島に染谷は起き上がった後そう言った。

 

「ハハ。それって中毒?」

 

「ちゃうちゃう!決してそんなのではない!」

霧島と一緒に来たシルバの発言に染谷は全力で否定する。

 

(くっ…これが同級生だったら消してやりたいのに…)

染谷は何やら物騒な考えを持ち始めている。

 

「でもコウキって何で倒れこむまで練習とかやるの?」

 

「それはなリュウ。オレのスタイルはいつでも全力でやることなんだ!練習で全力のプレーをしないと試合でそのプレーが出来ないからね」

霧島の発言に染谷は胸を張りながら言った。

 

「練習で全力を出さなければ試合では出せない」・・・それが染谷の信念である。

 

常日頃から全力を出さないといざ試合の際に最大のパフォーマンスを出す事はできない。そう思った染谷はジュニアユース時代からその信念のもと練習にも全力を注いだ。しかし、染谷はGKとしての身長が無いため、全身のばねを最大限に使ってのセーブとなるため、体に溜まる疲労が他の選手よりも多くなってしまうのだ。

 

「ハハ。コウキらしいや。けどたまには流すことも大切だと思うよ」

 

「まぁそうなんだけどね・・・やろうと思ってもジュニアユースの時からこのスタイルでやってきたからなかなか出来なくてね」

 

染谷の説明を聞いたシルバの発言に今度は染谷が苦笑しながらそう答えた。

 

「まぁコウキらしいね。そういや今日ってインターハイ予選のメンバー発表の日じゃない?」

 

「えっ!?マジで!」

霧島が今日がメンバー発表の日だと思いだしそう言うと染谷はすぐに立ち上がり目を輝かせながら言った。

 

「落ち着こうコウキ・・・」

 

「あっ、うん・・・ならオレたちも行こうか」

ハイテンションになった染谷をシルバはなだめ、いつものテンションに戻った染谷。あたりも少し暗くなったので、3人で寮に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよか」

 

「だね・・・・」

 

「ふふっ。緊張しないのリュウ」

緊張している霧島にシルバはそう声をかけた。

 

夕食・お風呂と一通りやることをやった染谷たちは寮の中にあるミーティングルームに集まっていた。

 

「そうだぜリュウ。絶対選ばれるから」

 

「だといいけど・・・」

心配そうな霧島に染谷がそう言っているとペドロ監督が来た。

 

「集まったね。それでは今からインターハイ予選のメンバー20人の発表と対戦相手の研究をする。まずはメンバーの発表をしていきます。呼ばれたものからゼッケンを取りにくるように」

ペドロ監督がそう言った瞬間、染谷はゴクッと生唾をのみこんだ。

 

『やべぇ。緊張してきた。頼む・・・レギュラーになっていますように!親には・・・ううっ・・』

霧島にはああ言ったが染谷も実際緊張していた。1番とレギュラーをとらないと親に・・・・・思うだけでも寒気がしてきた染谷。

 

 

 

 

 

「「へっくしょん!!」」

一方神奈川の染谷家では両親がくしゃみをしていた。

 

「大丈夫母さんと父さん?」

 

「大丈夫だ理奈。そういや今日コウキのメンバー発表だって言ってたな」

理奈が心配そうに両親に言うと昂太郎はそう答えた。すると、昂太郎は思い出したように言った。

 

「ふふっ、そうでしたね。さて、あの約束は果たせるでしょうか・・・さもないとね・・ふふっ」

直子はそう言い、笑っていた。・・・が笑っているが目は笑っていなかった。明らかに目で殺せるくらいの迫力だった。

 

「はは。ソウダネー(絶対取れよコウキ。)」

昂太郎は顔を引きつりながらわらい、内心コウキを心配していた。理奈は母の笑みに顔を真っ青にしたが一体兄は難の約束をしたのだろうと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミーティングルーム

 

これからメンバーが発表されようとしていた。

 

「まずはGKから。呼ばれたものから取りに来てください」

ペドロ監督がそう言うと染谷は両手を握り祈っていた。

 

「1年染谷光輝、3年大場栄吉」

 

「は、はいっ!」

呼ばれた瞬間、染谷は立ち上がり大きな声を上げてペドロ監督のところへ行った。皆はくすくすと笑っていた。

 

「こうき~うるさいぞ~後でお仕置きな!」

 

「な、何でですか坂東さん!」

坂東がそんなことを言ってきたので染谷は顔を真っ赤にしながらそう言い返したら、今日一番といえるほどの笑いが起きた。

 

「くすくす。がんばれよ光輝。レギュラーだ」

 

「えっ?」

渡すときにペドロ監督がそう言うので染谷は渡されたユニフォームを見てみると、そこには『1』と書かれたキーパーのユニフォームが。

 

「・・・・えっ?」

つまりレギュラー。驚きのあまり染谷は言葉が出なかった。

 

「くそっ!・・・がんばれよ光輝」

すると、染谷の傍に大場が近付いてきて言葉をかけた。

 

「や、やったーーーーー!!」

嬉しいあまり喜びの声を上げた染谷だったが皆から「うるさいわ!!」と突っ込まれてしまい、顔を真っ赤にしながら染谷は元いた場所に戻った。

 

「やったじゃねェか染谷!」

 

「いででで!!!」

 

「ハハハ」

 

「もう!」

戻った染谷は1年に手荒い歓迎を受けた。シルバはそれを見て笑っていた。霧島は苦笑しながら何とか止めようとしてくれた。

 

 

その後もメンバー発表は続いた。シルバは10番(エースナンバー)とキャプテンマークを貰っていた。言い忘れていたがシルバは春からキャプテンに任命されていたのだ。霧島も控えだが見事ゼッケンを貰うことができた。

 

 

 

 

「次は研究に入っていく。初戦の相手、都立渋谷東だが・・・」

そう言って研究が始まった。蹴学は今年からインターハイ予選に入るので一次予選からである。予選初戦の相手、都渋谷東ははっきりいって弱いチームである。

 

 

『ふーん。ちょろいな』

染谷はチーム情報を見て内心と思った。

 

「それでは初戦のメンバーを発表しておく」

そう言いペドロ監督はメンバーを発表した。

 

GK 1 染谷

DF 2 唐木

   3 加藤

   4 リカルド

   5 幸村

MF 7 坂東

   6 川崎

   8 喜多川

   10 シルバ

FW 9 ジェンパ

   11 風巻

 

「よしっ」

染谷はしっかりと自分の名前も出たので今度は抑えて、ガッツポーズをした。

 

「これで終わるが、何か質問はあるかね?」

ペドロ監督はそうみんなに言ったが誰も質問はなかったのでこのまま終わりになった。

 

 

「コウキ、君はちょっと残ってくれ」

 

「あ、はい」

染谷はシルバ達と一緒に帰ろうとしたときにペドロ監督に呼び止められたので、シルバたちは先に帰って染谷はその場に残った。

 

「なんでしょうか?」

 

「コウキ、1年唯一のレギュラーだが君には期待している。しっかりと自分らしいプレーをしてくれたまえ」

染谷はペドロ監督に聞いてみると、ペドロ監督はそう言い笑顔で染谷の肩に手をポンと置いた。

 

「分かりました!」

染谷はそう言うと、ペドロ監督はくすっと笑った。

 

「それだけだ。もう消灯まで後ちょっとだ。帰りなさい。」

 

「?はい。それじゃあおやすみなさい!」

 

「おやすみ」

染谷はペドロ監督に一言言って自分の部屋に帰った。

 

 

「・・・・」

染谷が出て行った後、ペドロはクスッと笑っていた。

 

「・・・はぁ、褒めたときの顔を見たら言うこともいえなくなってしまったよ」

ペドロはそう言っていた。何を言おうとしていたのかは分からない。

 

「蹴学というチームが完成するには彼の力が必要だ。せいぜいがんばってもらわないとね・・・」

ペドロは誰もいない視聴覚室でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

「さぁ、親にはまた明日でいいだろ。寝よ。よーし、インターハイ予選かましてやるぜぇ・・・」

そう言い染谷は電気を消して、布団にもぐった後すぐに寝息が聞こえ始めた。

 

インターハイ予選もすぐそこだ!




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