エリアの守護神~THE GUARDIAN DEITY in THE AREA~ 作:フリュード
第5話
「ん~こんぐらいかな?」
今日は入学式。染谷は届いた制服を鏡で見ながらチェックしていた。
蹴学の制服はまさに真っ白な制服である。どこかのお金持ちの学校みたいな制服であった。
(そういや駆達は元気かな?確か江ノ島も今日入学式って言ってたな。電話していないしな・・・)
ふと思った染谷は窓の方を見た。駆とは神奈川に引っ越して以降電話をしていない・・・・そう思うと染谷は途端に寂しくなった。
プルルル・・・・
そう思っていると携帯電話が鳴ったのでなんだと思い携帯電話を取って、通話状態にする。
「もしもし?」
携帯を耳に当て染谷はそう言った。
『コウ!久し振りだね!』
「おっ!駆か!久し振りだね!」
電話の相手は駆だった。染谷は駆と久し振りに話すので笑顔になり、興奮した気持ちで話をし始めた。
「江ノ島も今日入学式だよな」
『うん!そっちも入学式なんだよね』
「そうだな。しっかしー良いよなお前と理奈。毎日デート出来るし」
『そ、そんなこと無いよ(照)~~』
「ははは(ちっ、リア充が)」
染谷の返しに駆は照れながら答えるのに染谷は笑いつつ内心で舌打ちをした。
『あれ?今舌打ちしなかった?』
「いや、してないよ。そっちもサッカー頑張れよ!」
駆に舌打ちしたのが聞こえたのかそう言ってきたので染谷は冷静にそう返した(内心染谷は凄い慌てていた)。
『うん!そっちも頑張ってね!あっ!セブンには変わらなくていいかな?』
「そ、そんなことしなくて良いよ!じゃ、切るぜ」
セブン・・・美島奈々に変わるといったときは流石に気持ちを抑えることが出来ずに慌てた感じで染谷はそう言った。
『あっ!ちょ・・・』
プッ。
通話を切って染谷はさっさと荷物をまとめる。でも染谷の顔は真っ赤になっていた。
(最悪だ。奈々に変わるってだけでこうなるとか。それ以前に入学式しょっぱなからこの感じは嫌だ)
染谷は顔を真っ赤にしながら恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。
実をいうと染谷は幼なじみの美島 奈々の事が好きなのである。だが顔を合わすだけでいつもこんな感じなのでなかなか告白できずにいた。
ピンポーン。
「はーい」
するとチャイムが鳴った。相手は知っているので制服を軽く見てからカバンを持って靴を履いた後、ドアを開けた。そこには染谷の思った通り霧島とシルバがいた。
「おはよう!リュウとレオ!」
染谷はすぐさま気持ちを切り替え、笑顔で挨拶をした。
「おはよう!コウキ」
「おは!コウ」
シルバと霧島も同じく笑顔でそう返した。
3人は挨拶を交わした後、寮を後にして学校へ向かう。学校は寮から15分のところにあるので3人は徒歩で向かった。
「おお!綺麗だね!」
「全くだ」
「フーン・・ここが学校ね」
学校についた染谷たちは校舎を見て皆それぞれの気持ちを言葉に出した。蹴学はまだ開校して3年だからか校舎は真新しく感じた。
『あっ!いたぞ!レオナルド・シルバだ!』
『染谷と霧島の世代別代表コンビもいるぞ!』
そんな時、校舎を見ていた3人の名前を呼ぶ声が聞こえた。3人は声のした方を見ると、沢山の取材陣がこっちに向かってきていた。
「「「げっ!???」」」
3人は取材陣を見た瞬間顔が引きつった。そのとき思ったことは3人とも一緒。
(((・・・逃げよう!!!)))
そう思い逃げた3人だったが、結局校門前で捕まってしまった。
『シルバくん!この学校に来た理由は?』
『染谷くんや霧島くんもユースを蹴ってこの学校に来た理由を!』
「あぁ、それは・・・・」
「え、えっと~~それは・・」
「はわっ!?えっと・・」
ガンガン質問してくる取材陣にレオは慣れていたのか笑顔で答えていたが、染谷と霧島は困惑していた。
染谷と霧島は代表やジュニアユースで取材はされて来たのだが、こんなに激しく来るのは初めてだった。おかげで2人とも終始混乱していた。
「・・・今から入学式なので写真だけにしてくれませんか?」
レオはそんな2人を見かねて取材陣にそうお願いしてくれた。取材陣は渋々応じてくれて、「じゃあ3人並んでくれませんか?」とカメラマンが言ってきた。
「は?オレも入るの!?」
「つべこべ言わずにやるよ!コウキとリュウヤ!」
染谷が反論するのに対しシルバはそう言って中心で2人の肩を組んで笑った。
(はぁ・・・仕方ないか)
ため息をはき、仕方なく染谷も笑ってシルバと肩を組んだ。霧島も同様の行動をした。
その後カメラマン達による撮影会で始業ギリギリまでかかり、かなり時間を取られてしまった。
「くっ・・・・ギリギリだったよ。何だよあのクソ取材陣が」
教室に入った後、染谷は大分イライラしていた。理由はあの取材陣の所為で始業までの時間をゆっくり出来なくなったからだ。
「もうコウキ。いつまでその話をしているの?」
染谷の愚痴に霧島は苦笑していた。因みに染谷と霧島は同じクラスだった。他にも染谷の知っているやつはいた。
ギリギリでクラスに入った後、入学式となり(半分寝ていた)、その入学式が終わって現在ホームルームに入る間の休み時間だった。
「そーだぞ。てか逆に羨ましい」
「そーだそーだ!」
染谷の愚痴にクラスメイトは揃って染谷に言ってきた。
(くっ、お前らは取材受けてねえからそう言えるんだよ)
染谷はそう愚痴をこぼすが、霧島も同じ立場なのに悪い感じでは無かったので口には出さなかった。
「よーし、ホームルームだ!席につけ」
先生が入ってきたので皆は自分の席に座り、ホームルームが始まった。
「へぇ~学校ってあんな所なんだね」
「そーだよレオ。てかサッカーのために作られた学校なのに授業あるんだな」
「当たり前だよコウキ!」
放課後、染谷は霧島とシルバと一緒に寮へ向かっていた。その後グラウンドで練習をするからだ。
「しかし何で校舎の方に芝のグラウンドつけなかったんだ?」
「そりゃ体育するためでしょ!?」
「怒るなってリュウ。ははは」
「何?タイイクって?」
「ああ、それはね・・・・」
3人は楽しそうに話していると。
「へい!レオ。後コウキとリュウヤも!」
「よう!コウキ!」
「よっ、リュウ」
と、後ろから声が聞こえると共に染谷の肩を誰かがつかんだ。染谷は後ろを向くと染谷の肩をつかんだのは風巻だった。
レオは2人の留学生、リカルドとジェンバと話していた。霧島は幸村と話していた(時々リカルドを交えて話していた。このセンターバックトリオは仲が良い。)
「何スか涼さん?まさかまた練習後にまたオレに実験体になれと?」
「おっ、よくわかったな!今日は4の字固めに何のコンボが良いのか・・」
「いやいや!やめてくださいよ!身が持たないっす!」
「ハハハ!冗談だって!」
「本当ですか?」
染谷たちは楽しく喋りながら寮へ向かった。
「・・・・」
練習が終わり、後はもう寝るだけとなり染谷は消灯時間までベットで電気を消して寛いでいたが、表情はすぐれなかった。。
染谷の表情がすぐれなかった原因は練習後のペドロ監督の話だった。
『ワタシはこの一年間で君たちをインターハイ・選手権が優勝出来るように鍛えマス。そのためにワタシはキミ達に一試合毎にノルマを課します。それが例え決勝でも。そうでなけれバ到底大会には優勝出来ないしプロにもなれません。キミ達は私の言うこと聞いてくれたら必ズ優勝します』
ここまではよかったのだ。ただ最後の方は少し嫌だったが。問題はその後だった。
『優勝することやプロになるようにサッカーをしていくことがキミ達の仕事であり私の仕事でありますから』
『・・・・!!!』
仕事という言葉を聞いた瞬間、染谷は頭に血が上がったが何とか押さえていた。だが誰もその事を咎めるものはいなかった。
(仕事という言葉に誰も思わないのか・・・・)
染谷は少し悲しい気持ちになった。(実際はリュウや誰もが同じ気持ちだったが何か言えばサッカー部退部だけでは済まないと思い誰も言うことは出来なかった)。
染谷はサッカーが大好きだった。この学校に入ったのも純粋にサッカーが上手くなりたかったから入ったのであり、仕事の為に入ったのではない。だからこそ染谷はペドロ監督の発言が許せなかった。
「今に見てろよ・・・・絶対レギュラー取って間違ってないことを証明してやる!」
熱い思いを胸に秘めて染谷は翌日に備えるため、目を瞑り、眠り始めた。
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