エリアの守護神~THE GUARDIAN DEITY in THE AREA~ 作:フリュード
「うはぁ・・・・すげえ」
翌日、染谷は青の長袖練習着(名古屋ジュニアの時に着ていた赤い練習着もあるが、目立つのでやめた。)と白のゲームパンツに着替え、昨日行った芝のグラウンドへ行くと軽く30人はいるであろうたくさんの1年がいたので染谷は感嘆の声を上げた。
そんな1年の中にはジュニアユースの時に着ていたであろうクラブの練習着を着ているものがちらほらいた。
(広島のジュニアユースや大阪のジュニアユースもいるな・・・全員大会であったやつばかりだ)
その1年は多分染谷と一緒に来年度入ってくる奴である。当然その中には染谷も知っている奴もいた。
「上級生のほうには・・・うおっ!千葉の坂東さんに大阪の幸村さんだ!おぉ~こんなすごい人たちとやるんだ!」
ジュニアユースで有名だった人を見つけては騒いでいた染谷。すると。
『おい。あいつ名古屋の染谷じゃ?』
誰かが言ったのを皮切りに周りは染谷を見てはひそひそ話をし始める。
『ほんとだ。でも何故アイツがここに』
『何でも監督が口説いたらしい』
『マジかよ。あっ!だから俺らの他のジュニアや中学サッカーのGKは口説かなかったのか』
(うわぁ・・・噂してるよ。こっちとしてはイヤなんだよなぁ・・・てかこんな時にレオが来たら!!)
「ヘイコウキ!おはよう!」
そのひそひそが染谷にまで聞こえてきた。こんな時に来たら・・・そう思った矢先、シルバが来てしまった。するとさっきよりもヒソヒソする人が多くなってしまった。
『えっ!レオナルド・シルバだと!?いやそれよりも!』
『染谷と知り合いだと!?』
『流石U-15日本代表正GKはちがうな』
「・・・・」
シルバが声を掛けてきたために余計目立ったので染谷は元凶であるシルバを少し睨んだ。
「なんかコウキのことすごい噂してるね」
シルバは染谷に睨まれてもどこ吹く風な感じでそう言った。
「レオの所為だよ」
「はは!気にしない気にしない!」
シルバはそう言うが、染谷の気持ちは目立った所為で沈んだままだった。
「皆揃ったようですネ。それでは集合!」
するとペドロ監督が現れたので皆一斉に集合する。
「えー今回は新入生もいるので軽く自己紹介をしてもらおうと思います。それでは新入生の方マエに出テキテ下さい」
そう言われたので、染谷は前に出てくる。シルバも前に出てくる。
「それではアナタからお願いしますネ。ビックマウス期待してますヨ。あ、前に出てきてくださいネ」
するとペドロ監督は染谷を指差した。
(まじかよ・・・・)
目立ちたくない染谷は苦い顔をする。
「僕も期待してるよ(笑)」
シルバも染谷が苦い顔をしているのを気付きながらもそうはやし立ててくる。
「・・・フウ」
染谷は一呼吸して皆の前に出てくる。
「始めまして!名古屋フローリアスジュニアユース出身の染谷昂輝です。ポジションはGKです。オレGKと言うポジションにおいてここにいる誰にも負けないと言う自信があります!」
『ざわ・・・・』
染谷がそう言うと周りがざわつき始める。ちなみに後ろではシルバが腹を抱えて笑いをこらえていた。
「さ・・・3年間がんばっていくのでよろしくお願いします」
染谷はそう言い終えると顔を真っ赤にして、そそくさと元いた場所であるシルバの隣に戻る。シルバはまだ腹を抱えて笑っていた。
「くっくっく・・・笑わせてもらったよコウキ」
「笑わないでよぉ・・・けど言いたいことは言えたからいいや」
シルバの発言染谷は顔を真っ赤にしながらもすぐ落ち着きを取り戻してそう言った。
「(・・・ふっ、そうでなきゃなソメヤ君)つぎ!」
ペドロは笑いながらも、自己紹介を再開した。
「さテ、新入生が入ってくるのデ今年度から当初のとおり・・・・」
(ふーん・・・今年からインターハイ予選に出るのね)
自己紹介が終わったあと、ペドロ監督の説明を聞いていた。聞いていると染谷達が入ってくる来年度からインターハイ予選に出るらしい。でも2・3年のメンバーだけでもいいところまで行くと思うと染谷は思う。
「もしかしたら僕たちが来るのを待つためにインターハイ予選でなかったとか?」
するとシルバが小声で染谷に言ってきた。
「それはないと思いますよレオさん?」
「だから『さん』はいらないって・・・・でも今の戦力じゃインターハイに出ても優勝は出来ないって感じているじゃない?」
「まぁ、それもあるとは「以上でワタシカラの伝達は以上デス」おっ、終わりそうだな」
「だね」
二人は会話を終えて監督のほうを見た。
「それでは練習に入りマス。アップした後練習に入ってください。解散」
ペドロがそう言ったら皆解散して各自アップをし始めたので、染谷とシルバもアップを始めた。
「そういや、後2人留学生が来るんだ。春休み中には来るって」
「え?そうなの?」
「うん。来たらコウキにも紹介するね。僕の知り合いだから」
「はは。それは楽しみにしてるよ」
2人は楽しく会話をしながらアップをした。
シルバ視点
バシィ!!!!
『おおおっ!!!』
練習が始まり、キッカーが放つシュートをコウキが止めるたびに周りから歓声が上がる。それはフィールドプレーヤーのみならずキーパーからも感嘆の声が上がる(特に3年生の大場は正キーパーを奪われるのではと言う思いから微妙な顔をしていた)。
「すごいなあいつ」
コウキを見ていた僕に話しかけてきたのは僕と同い年の
さっきも話しかけてきてコウキ以外の最初の友達になったばかりだ。と言うよりさっきからみんな気さくに話しかけてくるので全員と友達になったと言ってもいいか。
「ふふ。リョウ。コウキならあれぐらいのことは当然だと思うけどね」
「そうなのかレオ?」
リョウが驚きながらそう言うが、驚くのも分かるかもしれない。
何せさっきからゴールの四スミに打ってくるシュートをコウキは止めているのだから(正面や中途半端なコースはしっかりと止めている)。
それに厳しいコースのシュートは無理につかまずにはじき、誰もいないところ(特に敵のプレーヤーがいないところ)にはじいているのだから驚くのも無理はない(因みにこのプレースタイルはコウキが尊敬する名古屋のトップチームの守護神のプレースタイルと自分のスタイルを融合したものらしい)。
「クスクス。それに一回U-15で一緒のチームになった事あるから分かるんじゃない?」
「それはそうだがあの時とは比べもんにならん位に上手くなっている」
僕の問いかけにリョウはそう言った。
コウキは中2のときに飛び級でU-15に選ばれたことがあるのだが、コウキの上の代にはコウキのユースの先輩で背が高いキーパーがいたから結局出場機会もなしのまま終わったって悔しそうに言ってたから覚えている。多分あのときからすごい練習を重ねてきたのだろう。
僕がそう言うとリョウは「でなきゃあんなに上手くならんからな」と納得したらしい。
それに僕もコウキのことをこれでもすごく認めている。さすが傑が認めたGKだ。技術から見ても他のGKより突出しているし、既にトップクラスの位置にいる。
「次!レオと涼!」
すると僕たちの番になったので準備をしてから練習をやり始めた。
シルバ視点 終了
「よーし!今日の練習はここまで!」
夕方。長い練習が終わり、皆寮に引き上げる中で染谷は一人座り込んでいた(ちなみにシルバは先に帰っていった)。
「終わったああ~~~疲れた」
練習が終わると染谷はいつかで見たように仰向けで倒れていた。
「流石名古屋の守護神。止めまくってたね」
すると、後ろから声が聞こえたので振り向くと染谷がジュニアユース時代と日本代表時に会った事のある選手がいた。
「おう霧島。久し振りだな」
染谷がそう言うとその選手、
霧島は大阪のジュニアでセンターバックをしていた選手でありで、運動量も豊富でかつボールを奪うなどディフェンスの心得を知っており、染谷がU-15のときも一緒にプレーをしている。
「てかお前もここに?やっぱり幸村さんか」
「うん。そうだね」
染谷はそう言うと霧島は染谷の隣に座りながらそう返す。
先ほど言った幸村というのは蹴学のレギュラーである
「それにしても幸村さんだけでなく皆上手いし流石全国・世界から有望選手を集めてきたってとこだね」
「どっちみち、オレは全員蹴散らして正キーパーの座を勝ち取るだけだがな」
霧島の発言に染谷は頷きつつも自信満々に言い放った染谷の発言に霧島は笑いながらも「そうだね」と言った。
「僕はセンターバックの層が厚いし、ベンチに入るかどうかも分からないけどレギュラー取れるようにがんばろうかな」
「ははは!その意気だぜ!んじゃ、帰るか!」
「だね」
そう言い、染谷たちはその後も話をしながら寮へと戻った。
「こんにゃろ~~~自己紹介であんな事言いやがって~~~」
「いたた!やめてくださいよ板東さん!それに風巻さんも!!」
その夜、新入生の歓迎会があり染谷は先輩たちに今回の自己紹介についていじられていた。
「ふふっ。コウキいじられてるよ」
「助けには行かないのか?」
そんな染谷を笑いながら見ていたシルバに川崎はそう言ったのだが、「見てて面白いもん♪」とシカトをかました。
(く・・・あいつめ)
シカトを決め込んだシルバに染谷は睨む事しかできない。
「ははは・・・楽しそうですねタクさん」
「何が楽しそうや。それじゃあリュウもあの中に入るか?」
「それは勘弁です」
そんな光景を見て霧島と幸村の大阪コンビは苦笑しながら見ていた。
「うりうりうり~~~」
「ぎゃああああ~~~」
全然イジりの手は止まってはくれず、歓迎会が終わるまで終わることがなかった。
でも嫌な気もしなかったし、それに漸く染谷も蹴学の一員になったかなと思った。
そして良い雰囲気のまま練習を続け、そして新学期および新年度を迎えた・・・
感想・批評共々覚悟で待っております。