エリアの守護神~THE GUARDIAN DEITY in THE AREA~ 作:フリュード
漸く昂輝の高校が決まります!
第2話です!
くっつけましたよ!
ー染谷家。
「ただいまぁ・・・」
くたくたになった昂輝はげっそりとした表情をしながらゾンビのような歩き方で家の中に入った。
「あら、お帰りコウ」
最初に笑顔で迎えた人はババ・・・ゲフン、昂輝の母・
「何か言ったコウ?」
「いえ、何も言っていません。決して何も言っていません。ですから右腕を逆方向に曲げないでくれぇぇぇぇぇ!」
気のせいか黒い笑いをした直子が昂輝の腕を折ろうとしている。
「すいませんすいません!!!!」
「言葉には気を付けなさいコウ」
昂輝は謝ると直子は関節技を解いてくれた。昂輝は右腕をおさえてその場で座ってしまった。
(クッ、オレとしたことが途中から口に出ていたとは・・・しかしこっちもくたくたなのに、失言一つで関節技キメるのはやめてほしい。)
右腕を押さえながら昂輝は直子を睨む。
「まだ何か言いたそうね?コウ」
直子は笑うが目が笑ってない。これはヤバいと昂輝の直感がそう叫んだ!
「いやなにも無いよ母さん!あっ!オレスゲー汗かいた からシャワー浴びるね!」
昂輝は汗をかきながら笑顔でそう言ってその場から逃げるように直子の横をすり抜けて、玄関のすぐ横の和室に行き荷物を置いて、 シャワーを浴びる準備をする。
所要時間5秒。
(フッ、我ながら早いな・・・・)
額の汗をぬぐいくだらない事を考え昂輝は一人ほくそえむ。
「何ブツブツ言ってるの昂輝?きもっ!そしてお帰り」
「やかましいわ理奈!・・・・ただいま」
後ろから聞こえてきた悪口(とおかえり)に反応し、声の主の方を向きながら昂輝は言い返す。
案の定悪口を言ったのは、昂輝の双子の妹・理奈
こうやって双子で軽口(?)を言い合うのは昔から変わらないことである。
「ふぅん・・あ、後で父さんから話があるって」
明らかに面白くなさそうな顔をした後、思い出したように理奈が言った。
「そうか、じゃあシャワー浴びたら話聞くわ。そう言っておいてくれない?」
面白く無さそうな顔はスルーして昂輝はそう言うと理奈は2階にある父さんの部屋へと向かっていった。
「・・・たく、口が悪くなかったら普通に良い女なのによ」
昂輝はそう愚痴りながら、シャワーを浴びに浴室へと向かった。
理奈は流石に双子なだけあって、顔はそっくりだが理奈は肩にかかるくらいの黒のロングヘアーなのでそれで見極められることが多い。
それに普通にしていれば双子の兄から見てもかわいいとは思うし、性格は明るく中学校でも皆に人気がなのだが、
お陰で生まれてこのかた喧嘩をしない日などありもしない。
そんな理奈だが、実を言うと駆と付き合っているのだ。 何でも中1の時、神奈川の逢沢家へ泊まりに行った時、近くの公園に駆を呼び出し、告白していたのを隠れながら見ていた。2人とも両思いだったらしく(特に駆から顔を真っ赤にして理奈について教えてほしいと小学生の時に言っていたので駆が理奈の事が好きなのは知っていた。)、駆も顔を真っ赤にしながらもOKをだし、付き合い始めたのだ。(この光景は家族の皆が見ていたみたいで、 皆にはやしたてられ、家族公認カップルとなったのだが )今でも電話で話しているらしく、理奈の笑い声などが聞こえてくることが多い。
「・・・(羨ましいな。いつかあいつと・・)・・・ハッ!!?」
シャワー中、昂輝はボーっとしていたのだがすぐに我に返りシャワーを済ませた。
シャワーを浴び終えてから着替えた後、すでにご飯の準備ができており、昂輝を除く3人は椅子に座っていた(父、理奈、直子)。
染谷も空いている椅子に座った。
「・・・さて、全員揃ったとこでお前ら2人に聞きたい事があるんだ」
座った後、昂輝の前に座っている親父・
「進学先の高校の事?」
染谷がそう言うと、「そうだ」と昂太郎は頷きながら言った。
「それで、お前らはどこの高校に決めたんだ?決めてないようだが・・・」
親父はそう言って子供たちの方をみた。いつもは優しいのにここぞと言うときの親父の目が怖い。
「私は昂輝と一緒の高校ならどこでも良いよ!高校決めるの面倒くさいし」
理奈はあっけんからんとした感じでそう言った。
「おい!進路一つでお前の未来が決まるんだぞ!?進路先くらい自分で「そうか、分かった」ってオイィィィィ!納得するな親父!」
昂輝はテーブルを叩き昂太郎に文句を言った。
「まぁ静かにしろ。それでコウは何処へ行きたいんだ」
親父は昂輝の方を見て言った。横から安堵した声に昂輝は顔がゆがむ。
(・・・まぁ、理奈は中学校の時もサッカー部のマネージャーだったし、マネージャーが出来る所も選んで考えていると奴は思うのだが・・・やめてほしい)
理奈を睨みながら昂輝はため息を吐いた。
「まだ決まってないけど、候補は3つあるかな」
頭をガシガシと掻いた昂輝はそう言った。
候補の3つの高校とは神奈川の雄として名高い鎌倉学館と葉蔭学院、そしてこの前駆に電話で聞いたとき、駆と奈々が行くといっていた江ノ島高校だ。でも、もうひとつ気になる高校があるのだがそれはまた・・・・
3つの高校の名前を昂太郎に言うと昂太郎は「そうか」 とまた頷きながら言った。
「江ノ島って駆くんと奈々ちゃんが通うって言ってた高校じゃない」
すると、昂太郎の横に座っていた直子が昂輝に言ってきた。気のせいか目が輝いている。
「う、うん・・・そうだけど・・」
昂輝はそう言うが嫌な予感しかしない。特に直子があの状態だと尚更だ。
そしてその予感が的中してしまった。
「そう!なら2人とも江ノ島に入りなさい!」
直子が目を輝かせながらそう言ってきた。その発言に3人は目を丸くさせた。
「ちょ!?母さん勝手に「良いじゃない別に!それにサッカー部あるんでしょ?」あ、あるけど・・・でm「じゃあ良いじゃない!それに駆くんとサッカー出来るし!決定!」・・はい」
「でも!「何?理奈は昂輝とはならどこでもいいんでしょ?昂輝が江ノ島行くって決めたから良いじゃない! それに駆くんがいるからこれから毎日ラブラブ出来るじゃない」・・うん」
「でもな直k「あなたは黙ってて」・・・・」
3人とも撃沈(理奈は赤面状態、父はどこぞのボクサーのように真っ白になっている)。
母は強し。その言葉に限る。
(・・・・けどまぁ、駆と出来るからそれで良いか。けど・・・・)
昂輝はそう思いながら、すっかり冷めてしまった晩飯にありつけた。
かくして昂輝は江ノ島高校に(強制的に)入学することが決まったが心にはまだモヤモヤしたものが残っていた。
「・・・・」
昂輝は食べた後、すぐに自分の部屋に行った。 ・・・・が、ベットにダイブせずに机に置いてある高校のパンフレットを見た。
東京蹴球学園のパンフレット。
「・・・・はぁ」
染谷はそれを見て、少しため息をはいた。
ここの監督、ペドロ監督にもこの前電話がかかってきて、ここでやらないかと言われたのだ。
『コウキ君。君が神奈川に引っ越すト聞いてネ。どうだ。蹴学でやる気はナイか?』
(どこからその情報が出てくるんだよ・・・)
ペドロ監督の言葉を思い出し昂輝は溜息を吐く。
東京蹴球学園、通称蹴学はサッカーのための、いわば プロサッカー選手養成学校みたいなものなのだ。
寮もあるし、設備も整っている。しかも来る人達は皆、ユース昇格を蹴って来る人や中学時代名を馳せた人達ばかり来いてる。
噂では有名なレオナルド・シルバも入学することが決まったらしい。 シルバさんとは傑さん関係で仲良くなり、今ではレオさんとアダ名で呼ぶようにはなった。 レオさんにも「コウキ、蹴学に来ないカ?」と誘われたのだがまだ保留にしてあるのだ。
(あ・・・レオさんだな?あの人に引っ越すこと伝えたからなぁ)
ふと昂輝はシルバに引っ越す事を教えたのを思い出し、ようやくなぜペドロ監督がアタックを仕掛けてくるのか分かった。
(神奈川に越すことが決まったのに、1人寮に入るのは親不孝ものだ。それに駆と同じ学校でやりたいのもある。けどユースレベルの設備、強力な助っ人・レオさんに加えすごい人達がいるなかでやるのも良いのかもしれない)
昂輝は駆と一緒にやるのと更なるレベルを目指す・・・2つの感情に板挟みになっていた。
(・・・もう提出期限も迫ってる。駆と戦うのも良いのかもしれない。友達である前に、ライバルでもあるんだ!)
染谷は苦虫を噛んだ顔をしながらそう思った。
小学生の時駆は驚くべきスピードでサッカーを上達していった。さすが傑さんの弟と感心するのと同時に戦いたいと思う気持ちも沸々と沸き上がっていた。
傑さんの弟というのもあるがアイツには"何か"がある。 兄には持っていない何かが。 そういうのを自覚した途端、戦いたいと思う気持ちが出てきた。
(・・・・かと言って親不孝なのもダメだ。親に迷惑はかけたくない・・・・)
昂輝は蹴球学園に行くことを諦めて寝ようとしたとき。
コンコン。
「コウキ」
「・・・!?親父?」
ドアを叩く音がして、同時に入ってきたのはなんと昂太郎だった。昂輝は慌てて蹴学のパンフレットを隠した。
「な、なに親父?」
昂輝は汗をかきながら言った。
「すまんがまた下へ来てくれ」
先ほどと同じような真剣な表情である昂太郎はそう言って下へ降りていった。
昂輝は昂太郎に着いていって、またリビングへ行くと直子と昂太郎が夕食時と変わらない位置の椅子に座っていた。
「とりあえず座って」
昂太郎と同じようになぜか少し微笑んでいた表情の直子に言われ、昂輝は椅子に座った。
「それで、今度はなに?」
昂輝は2人に聞いた。もう10時過ぎと夜遅くなのに呼び出すなんておかしいと思ったからだ。
「昂輝。このパンフレットは何だ」
そう言って昂太郎が見せたのは昂輝のところにあったはずの東京蹴球学園のパンフレットだった。
「!!!?ど、どこでそのパンフレットを!」
昂輝はそれを見て困惑した。さっきまで手元にあったはずなのに、何故昂輝の手元にあるのかビックリしたからだ。
「先生から昂輝くん、ここも受けたそうだと聞いていてな。今日お前が練習に行っている間に学校に行って貰ってきたんだ」
「蹴学の監督にも推薦もらっているらしいじゃない」
両親がそう言ったのに昂輝は驚いた。いやそれよりも・・・・
「母さんって江ノ島行けって言ってなかった?」
昂輝は直子に言うと直子は笑顔で舌をだして「てへっ♪あれは嘘だよ♪」とムカつく声でいった。ウゼェ。
「お前は行きたいんだろ?だったら行けば良いじゃないか!」
なんと昂太郎が蹴学に行くことを許してくれた。
「えっ!?でも・・・・」
「まさかコウ、行ったら親不孝ものだって思ってない?」
「うっ・・・」
直子に思っていたことを言われ昂輝は何も言えなくなってしまった。
「やっぱり思ってたのね・・・・良いコウ?コウが行きたいならそれで良いじゃない!それに今まででもそうしてきたじゃない。名古屋のアカデミーの時だってそうだったでしょ」
「そうだぞ。それに父さんたちはいつでもお前の味方だ!苦しくなったらいつでも帰ってきてもいいぞ!」
「親父・・・・母さん・・・・」
笑顔でそう言ってくれた両親の言葉に昂輝は俯く。
(ヤバい。目から涙が・・・・)
昂輝は目から涙が流れてくるのを感じた・・・
「・・・・でも約束が一つ。3年間ゼッケン1番&正GKを守りとおすことだな」
「・・・・・・は?」
感動しているときに出てきた昂太郎の言葉に昂輝は出そうだった涙は一瞬で引っ込んだ。
「あらそうね。サッカー留学するくらいならそれぐらいの意識の高さじゃないとね」
「いや違うぞ直子。意識の高さ云々じゃない。命令だ」
「いやいやいや何言ってるの親父。なんつー無茶な命令を!」
勝手に進んでいく話を止めるように昂輝は慌てて昂太郎に言った。
「何言ってんだはこっちの台詞だ。サッカー留学で行くくらいならこれくらいでいかんと。それに3年間控えなんていやだろう?」
「そ、そうだけど・・・・でm「つべこべ言うな。やれ」・・・分かりました」
昂太郎に説き伏せられて昂輝は蚊が鳴く様な声で承諾をした。
「頑張ってねコウ」
「あぁ、ありがとう母さん、親父」
昂輝は蹴学行きを許してくれた両親に礼を言った。
「おう!約束、絶対に守れよ!」
「言われなくても、全員蹴散らしてやらぁ!」
昂輝は叫ぶように強くそう言い、昂太郎に誓った。
こうして昂輝は東京蹴球学園へ入学することが決まった。
(待ってろよ駆!いつか決勝の舞台で戦おうぜ!)
昂輝は心の中でそう思った。
「・・・・ちなみに理奈は?」
「理奈は江ノ島よ!これだけは譲れない!駆くんとの恋愛をみたいもん!!」
昂輝は直子に聞くと直子は口に手を当て笑いながらそう言った。
「まったく、ほどほどにしとけよ直子?」
「はぁい☆」
昂太郎がため息をはきながら言うと、直子は笑顔で少女っぽく言った。
「「はぁ・・・・」」
昂輝と昂太郎は頭をがっくりとうなだれながらため息をはいた。
(正直言うとオレも見たいがな・・・・)
なんだかんだ言って野次馬根性丸出しの昂輝であった。
高校が決まりました!
今回は家族回ということで名前表記を変えました。