エリアの守護神~THE GUARDIAN DEITY in THE AREA~   作:フリュード

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4か月ぶりの投稿です。ここまで遅くなってしまい申し訳ありませんでした!それではどうぞ!


第13話

一次予選を通過した染谷たち蹴学は続けて行われる二次予選、つまり決勝トーナメントに向けて練習をしていた。ただひとつ違うのは・・・

 

ドカッ!!

 

「うおっ!?」

 

ビシィ!!!

 

顔面に向けて飛んで来たシュートをかろうじて止める染谷。そのシュートを打ったのはジェンバだった。

 

ジェンバはフリーの状態だったにもかかわらず、染谷の顔面めがけて打って来た。

 

「ちっ」

 

ジェンバは染谷の顔面に当たらなかったのが不快なのか舌打ちをした。

 

「・・・・・」

 

明らかに不快そうな顔のジェンバを見た染谷は見てもなお、何食わぬ顔で立ち上がり定位置に戻る。

 

 

 

 

――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

 

 

しかし、染谷の雰囲気が明らかに怒っているのが分かる。

 

『あ~あ・・・冷え切っているよ二人とも』

 

霧島はその光景を見て苦笑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから染谷とジェンバの関係は悪化してしまい、口を聞かない状態になっていた。

 

霧島も他の皆も仲直りをしようとするも上手くいかず、お手上げ状態となっていた。

 

「ん~・・・ダイジョウブだと良いんだけど・・・」

 

ペドロ監督もさすがにまずいと思ったのか考えている状態だ。

 

ましてやチームの正GKとストライカーなので何とかチームに支障をきたさないようにしてほしい所であるが、今のままだと少々まずい所である。

 

「・・・・・あっ。良い考えが」

 

シルバも何か考えた後、何か思いついたのかペドロ監督に耳元で何かを話した。

 

「・・・それで直ルノか?そもそもそんなに変わったら逆ニ心配スルト思うンダガ」

 

シルバの考えを聞いたとき、ペドロ監督は半信半疑になった。それほど怪しいものであった。

 

「うーん、完全とはいかないけど何とかなるんじゃない?大丈夫!ボクがしっかりサポートするから!」

 

「やりたくナイだけじゃ・・・マァイイ」

 

シルバが笑顔でそう言うのでペドロ監督がしぶしぶ了解し、何かが決まったようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土曜日、等々力スタジアム

 

 

 

 

『さぁ!インターハイ東京都予選 二次予選第一試合、多摩丘陵対我らが東京蹴球学園の試合を伝えていくぜぇ!!』

 

後藤がそう言うと観客の蹴学サポーターは「おおおお!!!」とわき上がる。

 

舞衣ちゃんは日本代表で用事があり、今日は来ていない。

 

次の土曜日、蹴学は二次予選の会場である等々力スタジアムに来ていた。

 

両チームの各選手アップも済ませてユニフォームに着替えた後、もう一度フィールドに出てこれから試合が始まろうとしているところだった。

 

しかしなぜか染谷が何故?見たいな腑に落ちない顔をしていた。

 

『さぁ、今から選手を紹介していきたい所だが今回は今までの試合と違う!!なんと、今回は1年GK染谷がキャプテンマークを付けてプレーをすることになった!!!何があったかは知らないが1年がキャプテンマークを付けるのは異例の事態だ!!』

 

事前に連絡が来ていた後藤も興奮して長い実況を見事かまずに説明した。

 

そう、先ほども後藤が行ったが今回の試合は染谷がキャプテンマークをつけることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベンチ前

 

「・・・・・なんで俺がキャプテンしないといけないんだよ、レオ?」

 

染谷はぶすくれた表情で本当のキャプテンであるシルバに聞いた。

 

「ふふっ。ジュニアユースでもキャプテンしていたから大丈夫でしょ」

 

「いや、俺が聞きたいのは・・・もう」

 

のらりくらりとかわすシルバに染谷は頭を抱えた。

 

 

染谷がキャプテンに任命されたのは昨夜のことだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~昨夜~

 

「えっ!?県総体の間俺がキャプテン!?」

 

いつものようにミーティングを行った後、ペドロが皆の前でそのことが発表され当の染谷はビックリした。

 

「ソウダ。とはいえいろいろなことはレオがフォローするからよろしく」

 

「いや、それ以前にそうなったのか理由を・・・・」

 

 

「ふぅ~頼むぜ染谷キャプテン!!」

 

「頼むぜ!」

 

『頑張れよ!!!』

 

ペドロ監督が勝手に話を進めたので染谷はまず、何故こうなったのか理由を聞こうとしたら風巻・板東を中心に部員から次々に声が上がる。

 

これには理由があり、染谷が皆から親しまれているのもあるのだが、シルバから実際に話がありこのようになったのである。

 

因みにこのことは染谷・ジェンバがいないときに話したので2人はこのことを知らない。

 

「涼さん!板東さん、皆まで・・・はぁ、分かりましたよ」

 

染谷は反対しようとしたが皆の盛り上がり様にため息を吐きながら渋々OKの返事をした。

 

「・・・・・」

 

染谷とともになにも知らなかったジェンバは染谷の主将決定に少し驚いた表情をしていた。そこにレオが来た。

 

「ふふっ。コウがキャプテンになったら少なくは君と喋るかもね」

 

「!!!・・・ふん。そうだとしても僕には関係ない」

 

そう言いジェンバはミーティングルームから出て行った。

 

「・・・いまは、ね」

 

ジェンバが出て行った扉を見ながらシルバはそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・このような事があったわけで染谷は県総体の間キャプテンをすることになったのだが、今ひとつ何故なったのか分からないままここまで来てしまったのだった。

 

「キャプテンになったからってやることは変わらないからいつも通りやれば良いんだよ」

 

「う~ん・・・そうだな」

 

シルバにそう言われた染谷は右腕に付けたキャプテンマークに左手を持っていき、試合に向けて気持ちを高めていく。シルバはそれを見て微笑んでいた。

 

『さぁ!今日のスタメンは蹴学はフォーメーションが少し変わっているぞ!!!!』

 

蹴学[4-4-2]

CF   9  ジェンバ

ST  11  風巻

OMF 10  シルバ

RMF  8  喜多川

LMF  6  川崎

DMF  7  板東

RSB  3  唐木

LSB  2  加藤

CB   4  リカルド

CB   5  幸村

GK[C]1  染谷

 

多摩丘陵[4-5-1]

 

CF (C)9 笹尾

OMF  10 藤尾

RMF  11 田形

LMF   7 加美田

DMF   6 山県

DMF   4 志田

RSB  17 宋

LSB  13 小松

CB    2 笹柿

CB    5 朝井

GK    1 森尾

 

『今日はマッキーを少し下げてややワントップ気味にパティが入っているぞ!これには何か意図が!?』

 

いつもの4-4-2フォーメーションを変えてきた蹴学に後藤はそう実況した。

 

これにはペドロの意図があった。それは試合中に分かる。

 

ピー!

 

そして多摩丘陵対蹴学の試合が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前半15分

 

蹴学―多摩丘陵

  5-0

 

『さぁ、いつもの展開に持ち込んで大量リードだ蹴学!!』

 

試合が始まり15分が経過して、いつもの展開になった試合に後藤も内心ドキドキしながら実況をしていた。

 

 

ここまで蹴学はいつもの展開に持ち込んで大量リードを奪っている。しかし、いつもの攻撃とは違った。

 

小松のパスをカットした板東がフリーになっていたシルバにパスを出し、カウンターを仕掛ける。多摩丘陵の選手がボールをとりに行くが、ワールドクラスの技術を持つシルバに敵うわけもなく、多摩丘陵の選手を股抜き・シザース・ルーレットなど、鮮やかなフェイントでかわし中央を走っていく。

 

『さぁ、レオが他を寄せ付けないフェイントで中央突破を仕掛ける!』

 

後藤もそう実況している間、シルバはセンターラインを超えて少ししたところでサイドを走っていた喜多川にパスを出し、貰った喜多川はサイドを駆け抜ける。

 

多摩丘陵の大半の選手は攻撃に回っていたのでサイドが手薄になりチャンスだ。

 

 

『さぁ、絶好のチャンスだ!このままクロスを上げると前線にはパティ・風巻がいるぞ!』

 

追加点のチャンスに後藤も興奮しながら実況する。

 

サイドを走る喜多川の後ろには相手の選手が走ってきたのを見た喜多川はすばやくゴール前にアーリークロスをあげた。

 

『さぁクロスだ!追加点なるか蹴学!!』

 

喜多川のクロスに反応した風巻・ジェンバのFW2人にはマークがついていた。

 

特にワントップ気味であるジェンバにはマークが厳しかったが、クロスボールにジェンバが反応する。

 

「パティ!!」

 

風巻がDFを振り切ってボールを要求するが、マークがついていてもお構いなしにクロスボールをとったジェンバは強引にシュートを打とうとした。

 

ドカッ!!

 

しかし、DFが前に立ち進路をふさいだので、ジェンバが強引に打ったシュートはゴールの枠外に行き、チャンスが潰れてしまった。

 

『あぁ~チャンスでしたが、得点に繋がらない!強引過ぎるぞパティ!!』

 

後藤も得点に繋がらないことにがっかりしてからジェンバについて実況した。

 

「何やっているんだよ・・・そこはパスでマークがゆるい涼さんが打てば良かったじゃねえか」

 

ジェンバの強引な突破を見て染谷はぼそっと呟いた。

 

『しかし先ほどからシュートは全てFWが打っている!それもかなりの比率でパティが多い!これは作戦なのか!?』

 

後藤がそう言ったが、実はこの実況に先ほどの答えがある。

 

実はここまでのシュートは10本以上打っているが、うちMF・DF陣は一度も打っていない。シュートは全てFWが打っている。

 

それも大半がパティのシュートである。中にはDFをつけながら強引に打ったシュートも・・・当然入るわけも無く、得点の多くは風巻のシュートやごっつあんゴールである。

 

パティがワントップ気味になったのは、パティがシュートを外しまくっていく内にしっかりと仲間を使うことを覚えてほしいからだ。

 

ワントップと言うのは当然マークも厳しくなっていく。ジェンバから少し離れた1.5列目に位置するST(セカンドトップ)の風巻はそれなりに前線にいったりしてマークはついているが、ジェンバがシュートを多く打っているからか、ジェンバに多くマークがついていて、ジェンバよりかは厳しくは無い。

 

その中でどのような状況では仲間を使うかどうかを学んでほしいと言うのが監督の狙いだ。

 

高校生の年齢ともなればそういう判断はついているのだが、いかんせんジェンバにはゴールにしか目が行っていない。

 

先ほどのシーンもクロスボールを流せばマークがジェンバよりも少ない風巻に渡りシュートして、1点は取れていた。そういう判断を付ければ蹴学はレベルが上げると監督は睨んだ。ジェンバがその狙いに気づくかどうかだ。

 

ピッ、ピーーーーー!!!

 

『ここで前半終了!5-0とリードはしていますが、パティの強引なシュートで得点が潰れるというシーンが多く目立ちました!!少し心配です!』

 

後藤も心配する中、前半が終わり選手は控え室に戻った。


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