Gate/beyond the moon(旧題:異世界と日本は繋がったようです) 作:五十川タカシ
これほど反響があるとは思わず正直驚いています。
正直プレッシャーを感じますが、何とか書き続けたいと思います。
キャラが多いので、何かと展開が遅くなると思いますがご容赦して頂けるとありがたいです。
そして、なろう投稿用の作品はまだまだ書けてません。
ただいま絶賛迷走中、
これという作品が出来たら投稿すると思うので、その時は報告したいと思います。
それと注意。
この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。
あしからず。
で――――、
銀座事件の後、何がどうなったかと云えば……、
三人の青年が同じ部屋の中で携帯ゲーム機、3TS(この世界における3DS)のソフト、モンスターバスター3Gをプレイしている。
彼等は名をそれぞれ、加納慎一、紫竹海苔緒、平賀才人といった。
「紫竹さん! 火竜がそっちいきましたよ」
「マジかよ。
「おう、任せとけ。見てろ! 俺の太刀の錆にしてやるぜ」
彼等は協力して画面上のモンスターと戦い、激戦の末にやがて討伐に成功した。
「手こずらせやがって。おっと、手に入った素材は……ちっ、しけてやがる」
画面に表示される入手素材を見て、顔を顰めるのは海苔緒。
髪染めもカラーコンタクトもしてはいないが……相変わらず長い髪は後ろで一本に纏められ、伊達眼鏡をかけている。
目の色については蒼と金のオッドアイだったのが、空色と金の双眸に変化していた。
この中で一応海苔緒が一番の年長者なのだが、中学生程度の外見のため、はっきりいって三人の中では一番幼く見える。
その横顔を眺める慎一は心の内で密かに『この人やっぱり、男の人に見えない』と思っている。
慎一のアミュテックの同僚である綾崎光流も同様な感じなのだが、海苔緒の場合は輪にかけて女装に違和感がない。
見た目はどう見ても外人の美少女であるし、黙っていれば、西洋人形のようなヒラヒラな服を苦もなく着こなすだろう。
実際慎一は海苔緒が銀座のど真ん中で白ゴス魔法少女に変身した動画を既に視聴していた。
慎一からみれば、海苔緒は(エルダントの人々以上に)色々と現実離れした存在なのだが、話してみると意外と気さくで、オタク話の普通に通じる人種(というか話している分には普通のオタク)だった。
その辺りに慎一は未だにギャップを感じざるを得ないが……今はそれよりも、
「ねぇ、紫竹さん。平賀さん」
「あん?」
「どうした、慎一?」
若干目付きの悪い顔を慎一に向ける海苔緒と、気さくな様子で応じる才人。
慎一は才人にシンパシーを感じる面もあるのだが、ゼロ戦に乗って竜騎士の軍団を蹴散らしたとか、一人で七万の軍の進軍を止めたとか、出鱈目な経歴に対しては『どこのラノベ主人公ですか、それ?』とツッコミたくなる。
けれど自覚がないだけ慎一も五十歩百歩、同じ穴のムジナ、つまりはラノベ主人公である。
ただ、海苔緒と才人の戦闘能力を知って、自分は一般人と勝手に線引きしているが、慎一も傍から見れば一般人ではなく、立派なIPPANJINなのだ。
そんな慎一が何を質問したかと云えば、
「どうして、僕たち。ここで3TSしてるんでしょう?」
根本的な問題だった。
海苔緒と才人は己の握った3TSから視線を外すと、顔を見合わせる。
海苔緒は眉間に皺をよせ、才人は苦笑を浮かべる。
「そりゃ……、軟禁されて、やることが他にないからだろ?」
海苔緒は頭に手を当てて、溜息を付く。
「だな、この状況、一体いつまで続くんだ?」
「さぁな? 少なくとも政府の解散総選挙が終わって一段落するまでは続くんじゃねぇか。俺たちはその間ずっとここでじっとしてるか、尋問されてるかのどっちかだろ」
3TSを机に置き、椅子に座ったまま天井に向かって背筋を伸ばす才人に、海苔緒は気怠そうな口調で答えた。
海苔緒は内心で、自分の尋問を担当する某二重橋の功労者を思い浮かべ、表情を複雑に変化させる。
現在――慎一、海苔緒、才人など他にも関係者多数が政府の某施設に集められ、監視を受けている。
海苔緒は炎龍を倒してからしばらくして倒れ、アストルフォに運ばれ病院へ、そして病院からそのまま政府施設に移送された。
才人とルイズはハルケギニアから日本へ再び戻り、平賀宅へ戻る所で任意同行を求められ、政府施設へ、
慎一たちはエルダントにおける日本の顔役たる的場甚三郎の要請で、この政府施設に待機している。
つまり三者三様の理由でここに居るわけだ。
門から侵攻してきた『謎の武装勢力』に関しては、本隊が早々に門の内側に撤退したものの、各方向に展開した武装勢力の部隊が猛威を振るい、原作に比べ多少小規模ながら二重橋での攻防は発生していた。
その後、遅れに遅れた政府のコード【6666】の発動により、自衛隊や警察などが大量投入され、武装勢力は劇的な勢いで鎮圧および拿捕される。
残った武装勢力の本体が、何とか編成を立て直し、再度門を潜って銀座に侵攻しようとした時には門の周りは完全に自衛隊に包囲されており、武装勢力を押し返して日本はそのまま門の向こう側(つまりアルヌスの丘)周辺を占拠した。
原作と比べ死傷者の数は大分減ってはいるが、それでも少ないなどとは決して云えない規模の被害が出ており、その批難は初動の遅れた政府に集中した。
野党から念願の与党に上り詰めていた某政党は最初、ダラダラと云い訳を並べ立てて責任をのらりくらりと回避し、最悪でも内閣総辞職でことを済まそうとしていたが、非公式なアメリカからの強い圧力(というか脅迫)により、解散総選挙へと追い込まれる。
手口は原作のディレル大統領と同じく不正や汚職、裏献金などの証拠資料を突きつけられて小突かれただけだが、某政党にはすこぶる有効で、完全に首根っこを押さえられた形となる。
こちらの世界では某トラスト総理から始まり、アメリカは既に某政党から散々煮え湯を飲まされ続けてきた。
もはや付き合いきれないと、某政党は梯子を下ろされたという訳だ。
遠からず自由な民主主義を掲げる某政党が政権に返り咲くだろう。
ただ問題として自由民主主義的某政党は、エルダントについて何も聞かされていなかったし、才人やルイズのことも知らなかった。
極め付けに、当然ながら銀座に現れた門や、竜を真っ二つした某人物なども全く事情を把握出来ていない。
そのため、可及的速やかに事態を把握しようと各関係者や信頼できる人間を各署から招集し、情報収集に当たっている。
そんな中、政府関係者が頭を悩ませることとなったのは紫竹海苔緒とアストルフォの存在である。
銀座事件後、複数の動画が投稿サイトにアップされ、既にネット界隈では祭りが繰り広げられていた。
【銀座に舞い降りた】リアル魔法少女について語るスレ1xx【天使】
117 :名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
どう見ても担ぎのアンジェリカです
本当にありがとうございました
118 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
いや、カードキ●プターだろ
ドラゴンと戦う時に使ったステッキ、どう見ても星の杖の色違いだったし
カードも使ってる
119 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
いや……Fateのホロウに出てきたカレイドステッキの色違い
という可能性も微レ存
120 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
>>119
うわ、また月厨が出て来たよ
オマエラ別のスレでもピンク髪のグリフォンに乗ってる女の子はサーヴァント
とか勝手に断定してるし
気持ち悪い
121: 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
いや、現実に魔法少女の時点で……
122 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
奇跡も魔法もあったんだよ!
123 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
>>122
レンタル☆まどか乙
124 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
>>120
下半身が馬だからグリフォンではなくヒッポグリフ
にわか乙
125 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
ツイ●ターの複数の書き込みであのピンク髪のおんにゃの子の名前がアストルフォなのは
確定してる
それにあの金の穂先が付いたランスに腰に下げた笛、ヒッポグリフ
つまりあの子の正体はシャルルマーニュ十二勇士の一人
アストルフォだったんだよ!!
126 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
な、なんだってー!
127 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
>>126
MMR乙です
128 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
ま た 女 体 化 か ! !
129 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
つーか
アストルフォって誰だよ? お菓子のアルファートの親戚?
スレ違なんでそろそろ他でやっくれませんかね
130: 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
それより天使ちゃんの特定はよ!
まだ『ノリ』って名前しか分かってないぞ!
特定班、仕事はよ!!
131 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
二人とも前日にデ●ズニーランドで目撃されてる
腕組んでイチャイチャしていたそうな
百合デートだった可能性が微レ存
132 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
夢の国にキマシタワー建造か
胸が熱くなるな……ハハッ
133: 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
>>132
おい、お前ん家に白黒ネズミが向かってったぞ
134 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
>>130
ノリってのは多分あだ名だろ
本名はミノリか、イノリか
それとも……
135: 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
ノリコかも
136 : 名無しに代わりまして淫Q●がお送り致します
>>135
ガンバ●ター乙
等々……似た内容のスレッドが数え切れぬほど製作され、頭の悪い書き込みも多数。
唯一の救いは未だ身バレしていないことだが、もはや後のカーニバル状態に海苔緒は頭を抱えるしかない。
加えて才人やルイズに関するスレッドも多数存在する。
特に才人は失踪していた関係でメディアに露出しており、不特定多数の人間に顔が知れ渡っていた。
それ故、平賀宅にはメディアが殺到しており、政府の人間が平賀夫妻の安全を確保するため常駐している。
サイトの活躍についてネット上では『実は失踪していた間、勇者として異世界召還されていたんじゃね?』『じゃ、ピンク髪の子たち(ルイズとアストルフォ)や天使ちゃん(海苔緒のネット上でのニックネーム)がヒロインかな?』といったコメントが多数見られる。
事実は小説より奇なりというが、あながち間違っていないのがおそろしい。
その他にも数ヶ月前に流出したリアルイナ●マイレブン動画(エルダントでの魔法ありのサッカー御前試合のこと、原作3巻相当)がやはり映画のプロモーションではなく、ガチの流出映像だったのではないか? といった意見も盛んに討論されている。
そして事態はもはや日本一国の問題ではない。
事件当時、銀座には海外からの観光客が多数混在しており、その場に居た外国人もまた門を潜り抜けてきた異邦の軍隊だけではなく、海苔緒やアストルフォ、才人とルイズの活躍も目撃している。
海苔緒などは複数の海外メディアで『Real Mahou shoujo』として取り上げられていた。
これで男だとバレた日には、『Real Mahou shoujo』が『Real Trap』……つまり男の娘となり、全世界規模での晒し者になる訳だ。
海苔緒は本格的に頭が痛くなってくる。
しかし頭が痛いのは、海苔緒だけはなく政府も同じ。
何度も云うが、政府関係者は紫竹海苔緒とアストルフォの存在に頭を悩ませていた。
海苔緒が眠っている間、政府関係者がアストルフォに事情聴取した所、
『え、ボクたちが何者かって? こっちのノリがマスターで、ボクはサーヴァントだよ』
『マスターのノリは……魔術師というか魔法使いかな?』
『え、ボク自身? ボクはアストルフォ。シャルルマーニュ十二勇士のひとりさ』
といった具合に饒舌に語ってくれたのだが、もはやそれはファンタジーの域を超え、どこかの某ゲームの設定にそっくりだった。
本来ならば『何を出鱈目を……』と云うのだろうが、アストルフォは霊体化したり、甲冑を実体化してみせたりしたため、信じる他に道はなく、
加えて海苔緒も肉体の一部が英霊化したことにより、身体機能が人間を逸脱し、検査結果を見た医者たちは『本当に人間なのか?』と揃って驚愕を露わにしていた。
本当に聞けば聞くほど某ゲームや他のアニメ類にそっくりだったが、取り調べをしていた人間にはそっち関連の知識に疎く、中々理解が追い付かない。
そこである人物に白羽の矢が立つ。
『伊丹のやつなら理解出来るんじゃねぇか?』
嘉納太郎閣下の鶴の一声だった。
奇しくも伊丹耀司もまた、紫竹海苔緒たちと同じ施設に居た。二重橋の攻防で活躍し、『正体不明の武装勢力』と接敵した彼から当時の様子や状況を聞き取るためである。
こうして伊丹自身の取り調べが一通り終わった後、紫竹海苔緒から事情を聞くように命令が届く運びとなる。
『え、俺がですか?』
己を指さし困惑する伊丹、ついでに上司も困惑した。
けれど提案した人物が人物だ。結局意見は尊重されることとなる。
伊丹は海苔緒とアストルフォから意見を聞く前に、銀座で海苔緒たちと接触し、アストルフォの尋問を一部担当した古賀沼美埜里から話を聞いた。
何でも彼女は前政権により死亡扱いにされ、存在しない自衛官としてエルダントという異世界に常駐していたらしい。
伊丹もエルダントに関しては、二重橋での出来事を伝える前に基本的なことを聞かされていた。
さらに驚くべきことに伊丹と同じ特戦(特殊作戦群)所属の数名がエルダントで活動していたという(※加納慎一暗殺未遂については知らされていません)。
しかし思い返せば、いくら伊丹が布教しようと興味を示さなかった特戦の同僚数名が唐突にファンタジー系小説や漫画、解説資料などを貸してほしいと云ってきたことがあった。
そういうことだったのかと……、今さらながら伊丹は理解した。
伊丹の抱いた美埜里の印象としては……『あっ、この人、自分の妻に似てる』である。
腐ん囲気……もとい、雰囲気で分かるのだ。
学校の後輩であり、妻でもある梨紗を体育会系にしたらこんな感じかなぁ……とも伊丹は思った。
ちなみに近い内、伊丹が門の向こう側――つまり特地での任務を受けたタイミングで、梨紗から三行半を突きつけられることとなる。
その理由を伊丹は全く理解出来ないのだが、それはまた別の話。
(しかし何だったんだろうね……二重橋で出会ったあの人は?)
美埜里と言葉を交わしながらも、ある事が伊丹の頭の隅から離れない。
伊丹は正直、そのせいで上の空である。
確かに今話題沸騰中のリアル魔法少女であり、その実、成人男性であるという紫竹海苔緒や、どう考えてもF●teのサーヴァントのようなアストルフォにも伊丹は大変興味がある。
だがそれ以上に二重橋にて途中から半ば伊丹に代わって、警察や消防隊を指揮していた人物のことが頭を過る。
おそらく彼の指揮のおかげで、二重橋での被害は大分減ったように伊丹には思えた。
多分、年齢は伊丹とほぼ同い年くらい。サラリーマン風の恰好をして、娘にしては少し年齢が高い、肌が浅黒い少女を連れ添っていた。
彼は二重橋の攻防が終えるといつの間にか居なくなっていた。
上司や関係者に伊丹は報告したが、返ってきた回答は『その人物に関しては内密にし、決して語るな』という露骨な箝口令。
自分だけが二重橋の英雄と称賛される状況はひどく据わりが悪い。
故に伊丹は頭を悩ませる。
(名前は『アラタ』とか云ってたっけ?)
少女が男をそう呼んでいた。対して少女は天使のような名前だったと思うが……伊丹もあの時は非常に危険な状況に居たため、よく憶えていない。
何かエ●ゲのタイトルみたい名前だったかも……と伊丹は少女に対し、ひどく失礼なことを考えた。
(いや待てよ。中国が確かそんな名前の日本人を批難してなかったか?)
中国は、ある日本人がミャンマーで民間軍事会社を経営し、中国を攻撃していると主張していた。
だが後にその存在は否定され、架空の人物であることが判明した筈だ。
その時ネット上は祭りとなり、釣られた中国をからかうため、その架空の人物は女体化され、萌えキャラクターにされていた。
(偶然の一致か、それとも……)
現状、深く思い悩む伊丹だが、これから起こる様々な出来事に圧迫され、次第にこの件を頭の隅の隅へと追いやっていくこととなる。
そして伊丹はついぞ、彼の正体を知ることはなかった。
という訳で『ある作品』もクロス。
でも大筋には絡まないと思います、でもちょこちょここの作品のキャラクターは出てくる予定
但し、ノリオはこの作品について知らない……という設定です。
でないと、この作品のある人物に遭遇するとメタメタな状況に陥るから。
(ヒントは天使大好き)
アラタ……一体どこのマチズモニッポニーズなんだ?
では、