主人公どころか登場人物皆喋りません。
セリフ、まさかの1箇所だけです。
※初投稿作品です。
正直思ってませんでした。
拙い文章ですが気に入っていただけると嬉しいです。
基本リクエストはできる限り受け付けたいと思いますので、コメントください。
コメントください。(切実)
ある日の朝、いつもの登校路で一羽の小さな雀を見かけた。
アスファルトで固められた真っ黒な道にばら撒かれていた、米粒をついばみに来たのだろう。
必死に米粒を拾い食べる姿は、雲一つない晴天に機嫌を悪くしていた私を癒してくれた。
しかしその時、突如として道端から黒い影が飛び出してきた。
それは黒猫であった。
素早く雀を捕えた黒猫は、すぐさま道端へと隠れる。
そしてそこで、鋭い爪と歯を駆使して雀を食べ始めた。
べちゃ、ぐちゃと小さな音がする。
雀は最後まで反抗したものの、自然界のルールに逆らうことはできず、その命を散らした。
私は、雀が食べ尽くされるその時まで、その様子を見守っていた。
雀が食べられていくその光景は、まさにグロテスクと言うべきだろう。
しかし、そのグロテスクな光景と反対に、私の心は昂っていた。
この光景は、ヒトの世界によく似ている。
今日も上靴がなかった。
―バケツの中で雑巾と一緒に水浸しになっていたから、来賓用のスリッパを使った。
今日も机に落書きがされていた。
―油性ペンで書かれていたから、とりあえず壊れてガタガタの予備机を使った。
今日もロッカーにゴミが詰められていた。
―腐臭が酷かったから、ビニール袋に入れて焼却場に持っていった。
今日もいつもと何ら変わりない日々、人はこれをいじめと言う。
私は焼却炉の中で燃え尽きていくゴミを見つめながら、ここに飛び込んだ時のことを考える。
所詮この世は、どこも弱肉強食の世界なんだ。
私という弱者は、クラスメイトという強者に食われる運命にあるのだ。
だから私はあきらめた。
これが普通なのだとあきらめて、淡々と毎日を過ごしてきた。
何をされても反応しない。
けれどそれが気に食わないと罰を受ける。
その生活が変わることはないと、私は知っている。
でも、どんなに諦めていても、変わってほしいと願ってしまうのは人の性だ。
願ってしまうのも、期待してしまうのも、全部…。
―だけど、その願いも期待も、すべて無意味なものに変わった。
だってあの人達は、私を殺そうとした。
4階から窓の外を見ていた私の背中を、あの人達は思い切り押したんだ。
転落防止の手すりは故障中で、上にあげられていた。
だから押された私の体は、窓の外に向かって思い切りつんのめった。
足も少しだけれど浮いていた。
もしかしたら、本当に落ちていたかもしれない。
なのにあの人達は、驚き戸惑う私の姿を見てクスクスと笑っていた。
「早く死ね」とでも言わんばかりの笑顔で…。
気付けば私は、屋上のフェンスを越えた先に立っていた。
数センチメートルの床が、私の命をつないでいる。
目の前に広がる風景は、とても美しかった。
先ほどまでは見えていた太陽も黒い雲に隠れ、光は遮られる。
私が飛び降りようとしているのを後押しするかのように、強い風が吹き付ける。
「…よし」
私は覚悟を決めて、飛び降りようと下を見た。
その時、不意に頭をあの「ある日の雀」がよぎった。
あの雀は、命の果てまで黒猫に反抗し続けていた。
その雀が、なぜか自分と被ってしまった。
私は思わず笑う。
私は空へ踏み出し、勢いづけて飛び出す。
身体の降下が始まり、私は目を閉じた。
最後まで生きようとしたあの雀と自分が被るだなんて、そんなこと。
―生の途中であきらめて死ぬ私は、あの雀よりも弱いのに。
Fin.
いかがでしたでしょうか。
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