インフィニット・ストラトス Dark Knight Story   作:DASH君

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MISSION 03 波乱のIS学園

箒side

 

今、私は高等学校の教室内に居る。その高校はただの学校ではなくISの為の国立高校だ。

この教室に居る殆どのクラスメイトは自分の意思でこの学校に入学している事だろうが

この際だからハッキリ言おう。

私の場合は自分の意思ではなく、政府から強制的に入学されたに過ぎない。

私の姉がISを開発した結果、家族は離散してしまった。

私も1人になって政府の都合で各地を転々として過ごしていた。

そんな最中、姉さんから連絡が入ったのは丁度第2回モンド・グロッソ後の出来事だった。

「しばらくの間、いっくんを私の所で匿うことにした。」

最初に聞いた時は意味がわからなかったが、続く様に姉さんは一夏の詳細を教えてくれた。

「千冬さんが一夏を守れなかった、だから心が壊れてしまった。」と・・・・

一夏・・・・彼と出会ったのは千冬さんの紹介で2人が道場に入門した時がきっかけで

第一印象はただの優男・・・・いや、優しすぎる男だったと思う。

だが、一夏の兄である春斗が彼を徹底的に蔑ろにしていたが一夏は文句を1つも言わずに

耐えていたのを何度も見ていた。

その様子は私の父:柳韻が「真の強者」と褒め称える程だった事は鮮明に覚えている。

しかし、春斗が道場に多くの門下生を呼び込んだことで事態は一変する。

春斗は門下生を多く入れる事で道場が活気に満ち溢れる程まで成長させた。

だが、その連中たちも一夏を蔑ろにし続けて一夏の居場所は殆ど無くなってしまった。

その結果、一夏は剣道を辞めてしまい父さんは一夏の才能を潰してしまったと後悔していた。

それからの私は春斗に対して苦手意識を持っており

一夏に対しては私でもよくわからない感情を持っている。

2人とどう接したいのか、私自身がどうしたいのかよくわからない。

姉さんの連絡から1~2年近く経過した頃に事態は更に一変する。

一夏がISを動かし、公開実戦テストで対戦相手を打倒した事がニュースで公になったのだ。

その結果このクラスどころか、IS学園全体が一夏の事で話題が持ち切りだ。

私が一夏の闘いを映像で見て感じた事は「一夏は変わってしまった。」ただそれだけだ。

IS学園に入学するであろう一夏に是非とも聞いてみたい。

「千冬さんと何があったのか?」、「どうしたらその様な強さを持つことが出来たのか。」と

私は純粋に知りたいと思ったのだが、入学式当日・・・・

 

「何故、一夏が居ないのだ・・・・」

 

そう、当の本人はまだこの教室に来ていないのだ!!

教卓の目の前に“ポツン”と空席がある、そこが一夏の席なのだが何故か居ない。

入学式の時も居なかったので単純な遅刻なのか、それともボイコットなのかわからない。

少し離れた席に一夏の兄:春斗が居るのだが相変わらず猫を被った様な笑みを浮かべている。

それを見た私は思わず目を逸らしてしまう、私自身まだ春斗に対して苦手意識がある様だ。

 

「一夏・・・・」

 

声ともならない声で呟く私、これから先どうなっていくのだろうか・・・・

 

 

一夏side

 

俺は今、日本のタクシーでIS学園に向かっており、束さんの手違いで絶賛大遅刻中だ。

束さんのラボの存在を知られる訳にはいかず、この方が都合が良かったと言うのも事実だがな。

運賃に関しては束さんから小遣いと同じ様に大目に貰っているから問題ない。

まあ、束さんと過ごしていた日々も束さんがISなどの特許のおかげで金に困る事はなかったし

束さんから小遣いを貰っていたのも事実だった。

正直、世話になり続けていたから気が引けていたのは内緒だがな。

今の俺の容姿は制服の上着がロングコート状にカスタマイズされている。

まあ、カスタマイズが許されているし、好みで選んだから問題ないか。

IS学園前でタクシーは止まり、運賃を払う。そして荷物を持って正門に向かうのだが・・・・

 

「一夏・・・・」

 

「千冬姉か・・・・」

 

実姉:織斑 千冬が正門で待ち構えていた。

その表情は俺に気を遣っているのかどこかぎこちない。

少しばかりの沈黙の後、千冬姉から沈黙を破った。

 

「一夏、あの時は本当に済まなかった!!」

 

「何故謝る?謝られる理由なんてないぞ。」

 

「しかし・・・・」

 

「モンド・グロッソの件なら束さんから聞いたよ。日本政府が黙っていたんだろ?」

 

「・・・・・・・。」

 

「頭では理解しているし、千冬姉は何も悪くない事は知っているんだ。だけど

まだ心は追いついていない。だから時間をくれ、じっくり話し合うまでよ。」

 

「ああ、わかった。」

 

ふぅ、とりあえず千冬姉と話せたな。

先に千冬姉が謝らなかったら殴りかかる所だったが助かった。

 

「まあ、ここでは“生徒と先生”なんだろ?だからそれに従うよ“織斑先生”。」

 

「ああ、それじゃあ付いて来るんだ“織斑弟”。」

 

「“織斑弟”?ひょっとして春斗と同じクラスか?」

 

「ああ、だから春斗とも・・・・」

 

「わかっている、それを含めて時間をくれ。」

 

「わかればそれで良い、では行くぞ。」

 

千冬姉に付いて来る形でIS学園に入り、クラスやその他の情報は千冬姉から聞く。

教室は1年1組、クラスメイトには春斗の他に箒とセシリアが居る点が挙げられた。

セシリアは実戦テスト、箒は6年ぶりの再会となるから多少は気が楽だ。

鈴は残念ながら2組に所属しているが、休み時間とかなら会えるだろう。

教室前に来て千冬姉の指示で待機する。

時間は午前10時半で入学式当日から授業があるから現在は3限目に突入している。

流石に緊張するな、入学式当日に大遅刻する様な奴に周りは興味を抱くだろうか?

いや、この時点でもう興味を抱くに違いない。

そう考えている内に千冬姉から指示が来て教室に入って自己紹介をする。

 

「織斑 一夏だ、入学式当日に遅刻しちまって申し訳なく思っている。まあ、見世物にされるよりは積極的に話しかけてくれた方が良いから、そこの所を含めてよろしくな。」

 

“シーン”・・・・この擬音が相応しいくらい沈黙が続く。

これは失敗か?こうも沈黙が続くのは恥ずかしさに穴を掘って埋まりたいってレベルじゃねえ。

何かを言わないといけないと思い俺は再度全体に言おうとする。

 

「あ~、紹介簡単すぎ『きゃあああ!!!!』うおっ!?なんだ!?」

 

「本物よ!!本物の織斑 一夏君よ!!」

 

「映像で見たのより実物の方がカッコいい!!」

 

「こっち向いて!!笑って!!そして付き合ってください!!」

 

「我が生涯に一片の悔い無し!!」

 

オイオイ、これはどう言う事だ? 俺が想像していた以上の反応だぞ。

俺はすぐさま、教卓に居る副担任であろう人物に質問してみた。

 

「あの先生、これはどう言う事ですか?」

 

「えっとですね、実は実戦テストの報道後から学園内ではこの様な有様でして・・・・」

 

「もう良いです、大体理解しました。」

 

束さん、公開実戦テストはある意味失敗だったみたいです。

何故ならここの女子たちがいつ襲い掛かってもおかしくないからです。

だけど、暇にならずに済みそうで良かったよ。

その後、千冬姉が生徒全員を黙らせて授業が開始されるが

周りからの視線が常にあった事は言うまでもない。

授業終了後、俺に話しかけてきたのは以外にも俺の兄:春斗だった。

 

「やあ一夏、久しぶりだね。何年ぶりだったかな?」

 

「覚えてないな、こう言うの“感動の再会”って言うらしいけどな。」

 

「それもそうだね。」

 

「全くだ・・・・それで?いつまで猫を被っているつもりだ?」

 

「フン!!どの面下げてのこのこやって来たんだい“面汚し”?」

 

「“どの面”って言ってもこの面としか言いようがないがな。」

 

「僕よりも優遇されていると思っていたら大間違いだよ。」

 

「へぇ~、アンタの性根も変わらないね。ある意味安心した。」

 

「どう安心したのかな?」

 

「アンタの性根は多分死んでも治らないんじゃないかって事。」

 

「言うね。まあ、精々頑張るんだね。ハハハ・・・・」

 

そう言って春斗は俺の席から離れてしまい、その直後にセシリアが近づいて来る。

 

「大丈夫ですか、一夏さん?」

 

「ああ、さっきの会話を聞いていたのか。それでアイツの本性はどうだった?」

 

「正直な感想を申しますと、接したくはない人種ですわ。」

 

「そうかい。まあ、そう言わずに対等に接してくれよ。あれでも良い所があるだろうから。」

 

「良い所なんてあるのでしょうか?」

 

「さあ?俺は見た事が無いから何とも言えないがな。」

 

それから教室に居たクラスメイト達は近づいて来て俺とセシリアに質問をし始める。

何でも公開実戦テストで有名になったのは俺だけではなくセシリアと鈴もそうらしい。

まあ、内容を話す事に躊躇いはなかったし、クラスに打ち解けれるなら万々歳だ。

セシリアの事を“戦友”と説明した時は何故か本人が膨れっ面になっていたのは謎だったが。

それから昼休みに入り食事を摂る為にセシリアと鈴を誘うが、ある人物から声がかかる。

 

「一夏・・・・」

 

「箒か?久しぶりだな。相変わらずポニーテールが似合っているぞ。」

 

「そっ、そうなのか!!それならこの髪型にしていた甲斐があったものだ・・・・」

 

「つもる話があるだろうけど、食堂に行かねえか?一緒に食べる奴がいるけど

セシリアと鈴もそれで良いよな?」

 

「あっ、ああ・・・・それでも良い。」

 

「ええ、構いませんわ。篠ノ之さんと話したい事がありますし・・・・」

 

「あたしも大丈夫よ。」

 

「ありがとう、じゃあ行くか。」

 

公開実戦テストのメンバー+開発者の妹と言う4人で食堂に向かう。

 

 

箒side

 

今の私の状態はかなりの緊張と嬉しさが支配していると思う。

原因は一夏ではあるが私の髪型の事を覚えてくれたのが嬉しくてたまらない。

髪型の理由は一夏からの誕生日プレゼントでリボンを用意してくれて

髪型を一夏に褒められたのがきっかけで、それからこのリボンを大切に使い続けていた。

緊張の方は対面して何を話せば良いかわからなくなっている状態だ。

多分、これがパニックと言うものだろう。

何を言おうか迷っている時に一夏から話しかけてくる。

 

「それにしても6年ぶりだな、元気だったか?」

 

「ああ、一応元気だったぞ。そっちはどうだったか?」

 

「ああ、束さんに世話になったからな。」

 

「そうか、姉さんはどんな様子なのだ?」

 

「お前の事、滅茶苦茶心配していたよ。」

 

「そうか・・・・」

 

「箒、束さんの事は・・・・」

 

「わかっている、だけど今は許せそうに無いんだ。」

 

「そうか、でもゆっくり考えれば良いさ。俺もそうだし。」

 

「一夏も?」

 

「ああ、頭で理解できても心が追いつかない事なんて誰にでもあるからな。」

 

一夏がそう言うと何故か寂しそうな表情をしていた。

何故だかわからないがそんな気がしたのだ。

 

「まあ、ゆっくり考えようぜ。どうせ人生は長いんだから。」

 

「一夏、アンタが雰囲気を壊してどうする?」

 

「そうですわ、篠ノ之さんだって真剣に悩んでいらっしゃるのに。」

 

「シリアス過ぎるのは嫌いでな、明るい方が良いさ。」

 

重い空気を壊す一夏だが、一夏なりの気遣いだと言う事はわかった。

そう考えると雰囲気が変わっても昔と変わらなかったのが何よりもうれしかった。

人生は長い。今、深く考えたって何もならない事は目に見えている。

 

「ありがとう一夏、おかげで少し気分が楽になった。」

 

「そうかい、そいつは良かった。」

 

「あと、2人は私の事は“箒”と呼んでくれ。その方が私は良い。」

 

「なら、わたくしは“セシリア”とお呼びください。」

 

「あたしも“鈴”で良いわよ。そう言えば一夏たちはクラス代表決まった?」

 

「いいえ、まだですが・・・・」

 

「どうせ、見世物にされて俺か春斗が推薦されるのがオチだな。」

 

「私としては一夏が良いと思うぞ、クラス代表。」

 

「えっ!?」

 

「同感ですわ、わたくしも一夏さんがクラス代表に相応しいかと。」

 

「オイオイ、この場合はセシリアの方が良いんじゃないのか?」

 

「一夏さんには正当な理由がありますし、わたくしでは力不足ですわ。」

 

「あたしもそう思う。」

 

「マジかよ、なら仮にそうなったら理由を言ってくれないと納得しないぞ。」

 

「わかりましたわ!!任せてください!!」

 

こうしていつもよりも楽しい昼食が過ぎていく。

 

 

一夏side

 

昼食からしばらく経って今は夕方、場所は寮の1026室で1人部屋なのだが・・・・

 

「面倒なことになっちまったぜ・・・・」

 

クラス代表決定の際、俺か春斗かで候補が真っ二つになったが

セシリアの演説でこちら側に呼び込んで大きく差を開けた。

しかし、春斗が納得いかない様子で織斑先生の提案により決闘で決定されることになった。

それについて春斗は・・・・

 

「どちらが上なのか見せつけてやるよ。」

 

何て言って、やる気満々。ああ言う奴ほど後々が面倒なのだ。

正直、起動して300時間にも満たない相手は俺から見てハッキリ言えば雑魚同然。

負けフラグは確定なのだが、だからと言って油断するつもりは全くない。

挑んでくるなら完膚なきまで叩き潰すのみだ。

 

「そう言えば、隣には箒と春斗が居るんだよな・・・・」

 

箒の奴は大丈夫だろうか?春斗から酷い目に遭わないか心配だが今はどうしようもない。

そう思いに更けていると扉からノックが聞こえる。

 

「一夏、居る?」

 

「ああ、居るぞ。」

 

扉を開けると鈴だけではなくセシリアも一緒に居た。

 

「2人してどうした?」

 

「“どうした?”と申されましても夕食に誘ったのですが。」

 

「ああ、もうそんな時間かすぐ準備するよ。」

 

簡単な準備をして3人で寮の廊下を歩く。

 

「アンタが思い更けるのは珍しいわね、何か悩みでもあるの?」

 

「箒の事でな、春斗から酷い目に遭わないか心配なだけだ。」

 

「ああ、春斗の奴ね。あたしが一番関わりたくない奴だわ。」

 

「鈴さんがそこまで嫌悪するなんて、そんなに酷い人なのでしょうか?」

 

「酷いなんてレベルじゃないわね、被害者は現にここに居る訳だし。

そう言えば聞いたけどクラス代表の事は大丈夫なの?」

 

「なる様になるさ。」

 

「それだと不安ですわ。」

 

「過度な自信で自分を潰したくないからな、それに俺は負けないよ。」

 

「それを聞いて安心したわ、遠慮なく潰しちゃいなさい。」

 

「おう、勿論そのつもりだ。」

 

そう言って俺は決意を固める。運命の一戦まで刻々と近づいているのだから・・・・

 

≪To be continued…≫


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