インフィニット・ストラトス Dark Knight Story   作:DASH君

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MISSION 01 始動の時~The Time Has Come~

鈴side

 

やあ、あたしの名前は凰 鈴音。周りからは“鈴”って呼ばれているわ。

今年の最初に両親の離婚によって日本から中国に戻ってきて

必死の努力で中国の代表候補生まで上り詰める事ができた。

そんなあたしは今、候補生管理官である楊 麗々と一緒にイタリアに居る。

理由は一昨日の記者会見が原因だ。

一昨日、突如日本にISの開発者:篠ノ之 束博士が戻って来たのだ。

その結果、空港は大パニック。

政府の人間やらISの関係者やらがひしめき合う事態になっていた。

記者会見を開く事でその場は一時的に終息できたが、問題はここからだった。

その時の会見の内容は机上の空論と言われる第4世代の完成と

隣にいる男子がISを動かす事が出来たのだと言う報告だった。

実際に記者たちの目の前でISを起動して見せて会場は再び大パニックを起こした。

そこであたしは目を疑った。

何故ならISを動かしていたのは想い人である織斑 一夏であったからだ。

日本で過ごしていた頃に散々な目に遭ってきた彼をあたしは何度も見てきたけど

あたしは彼を助ける事が出来なかった。

その時の状況はあたしもいじめに近い状態になっていて

「助けたら状況が悪化しまうのでは?」と思い込み恐怖で何も出来なかった。

しばらくして第2回モンド・グロッソの日を境に突然学校に来なくなったのだ。

ある程度親しい存在だった一夏の姉である千冬さんに聞いてみたらただ一言。

「私の所為で一夏を傷つけてしまったんだ。」と答えるばかり。

結局最後まで理由を聞かせてもらえずにあたしは日本を去る事になった。

今思えば、あたしは後悔ばかりしている。あの時に助ければ少しは変わっていたかもしれない。

そう思うばかりだった。

そんな最中で久しぶりに一夏を見たんだけど最後に会った時と雰囲気がまるで違っていた。

何があったのか、あたしはわからなかった。

それから会見で篠ノ之博士が第4世代の実戦テストを行いたいと世界中に依頼し

あたしたちは現地に向かったと言う訳だ。

ちなみにテストの相手をするのは中国を含めてイタリア、イギリス、アメリカの4か国。

世界中が“相手になりたい!!”と言わんばかりに相手になる権利を奪い合っていた。

その結果、相手になる国は4つになって他はデータ収集の為に要人と専門家に限定した。

正直、テストなんてどうでもいい。一夏への謝罪と再会の為だけにあたしはここに来たんだ。

そう思ってあたしは会場に入るとそこでは既に慌ただしい状態だった。

何かがおかしい。そう思った矢先、楊候補生管理官が会場のスタッフに質問していた。

 

「この騒ぎは一体何が起こったんですか?」

 

「これですか?世界第2位の操縦者が男性操縦者に一方的にやられたんですよ!!」

 

「世界第2位が!?」

 

「世界第2位ってイタリアの代表の事ですよね!?」

 

「そうですね『テンペスタ』を使っていましたから。ちなみに男性操縦者には

被弾していません。」

 

その言葉を聞いてディスプレイに映った結果を見る。

見ると一夏の名前が映っており“無傷(No Damage)”の文字がはっきりと書かれていた。

世界第2位と言えば、その上の強さは世界最強(ブリュンヒルデ)である千冬さん以外居ない。

一夏は想像以上に強くなっていた事を知り、あたしは嬉しさが込み上げてくる。

あたしの嬉しさとは別に楊候補生管理官は焦りの表情をしていた。

その最中、国際IS委員会のスタッフがこちらにやって来て話しかけてきた。

 

「中国代表候補生の凰 鈴音さんですね。」

 

「ハイ!!そうです!!」

 

「私は中国候補生管理官の楊 麗々と申します。あの、開始時間前に来たのですが

予定が繰り上がったのですか?」

 

「いいえ、イタリアの代表が痺れを切らしたそうで彼に挑戦したそうです。」

 

「何故ですか?」

 

「それは彼がイタリア代表がライバル視している織斑 千冬(ブリュンヒルデ)の弟だからでしょう。」

 

「その結果、ボコボコにされたって訳ね。」

 

「ハイ、本当に一方的の闘いでした。ちなみに篠ノ之博士曰く“彼の実力は4分の1も

出していない”そうで、データにもならなかったそうです。」

 

「半分以下の実力で勝った!?嘘でしょ・・・・」

 

これから闘う人を「ひょっとしたら同姓同名の別人ではないか」と疑ってしまっていた。

いくら何でも半分以下の実力で勝つなんてあり得ないと思っているからだ。

しかし、ディスプレイに映っている彼は間違いなくあたしが知っている織斑 一夏だった。

その後、国際IS委員会のスタッフの案内でようやく先に進むことができた。

案内された部屋では各国の代表と要人たちがそれぞれの思念を持っている事がよくわかる。

特に相手になるイギリスとアメリカは一夏とイタリアの闘いの映像を基に

次の戦略を模索している様子だった。

まあ、イタリアの関係者たちは葬式みたいな雰囲気を醸し出していたけど・・・・

スタッフの案内でアメリカとイギリスの関係者に挨拶を行う事になった。

この瞬間でも外交問題に発展しかねないから言葉を慎重に選ばないといけない。

 

「おっ、中国の代表か。私はイーリス・コーリング、アメリカ軍所属だ。」

 

「わたくしはイギリス代表候補生であるセシリア・オルコットと申しますわ。」

 

「あたしは中国代表候補生、凰 鈴音よ。時間までに集合出来なくてゴメンなさい。」

 

「いや良いさ、イタリアの連中が勝手に喧嘩を吹っ掛けたからな。それと堅っ苦しくしなくて

いいぜ、私は気にしないから。」

 

「ありがとう、来たばかりで申し訳ないけど闘いはどんな状況だったの?」

 

「ハッキリ言って映像を見る方が早いと思いますわ。」

 

そう言ってセシリアは映像を見せてくれた。

見てもわかる様にイタリアの人は相手になっておらず、一方的に叩きのめされた感じだ。

一夏の方は余裕の表情で全ての攻撃を回避し、更には挑発を行うなど遊んでいる様子だった。

真剣に映像を見ている間、イーリスが解説をし始めた。

 

「イタリアの奴は“織斑 千冬(ブリュンヒルデ)”を想定して闘っていたらしいが結果はこの通りだ。」

 

「博士も“織斑 千冬(ブリュンヒルデ)を想定していたら彼に勝てっこない。”と申してましたし・・・・」

 

「全ての攻撃を寸分で躱して余裕があれば挑発か攻撃に回しているのね。」

 

「多分、挑発でイタリアの奴のペースが乱れたんだろうな。目の前でエアギターを始めた時は

思いっ切りブチ切れてたし。」

 

「挑発を無くしても、序盤で実力の差が出ていたと思いますし。第4世代の機能を

一切出していませんでしたわ。」

 

「これって一人称視点でも記録されているのね。」

 

「特にイタリアの一人称視点を見てみな。なあ、オルコット。」

 

「どっどっどっ!?どうしてわたくしに振るのですの!?」

 

「そりゃな、映像を見て顔を赤くしていたからな。」

 

「だからと言って!!」

 

そう言われて一人称視点の映像を見てみて、イーリスの言い分は終盤の所で理解した。

最後の接近する瞬間の一夏の表情、強い意志を持った表情をしていてカッコよくなっていた。

多分、セシリアはこの表情に惚れたんだと思う。あたしはまあ、どう反応していいのやら・・・・

 

「そう言えば、次の相手は決まっているの?」

 

「私が出るよ、博士は一対多のデータも欲しいらしいからな。2人は来年度にIS学園に

入るんだろ?その為にタッグを組んだ方が良いって。」

 

「わたくしはそうですけど・・・・」

 

「あたしはまだ決めていないかな。」

 

正直、IS学園に行く気が無かったのがあたしの本音だ。

一夏の件もあるし、日本はあまり良い思い出が無いから気乗りがしないのだ。

 

「とりあえずIS学園に行って青春をエンジョイした方が良いぜ。それじゃあ、あたしは行くから

連携とか打ち合わせしておけよ。」

 

そう言って、イーリスはアリーナに行ってしまった。

正直、あたしは一夏の事をどう思うのかで頭が一杯だった。

 

 

イーリスside

 

私は愛機である『ファング・クエイク』を身に纏いアリーナに立つ。

アメリカが開発した第3世代のISで「安定性と稼働効率」を重視した設計になっている。

最大の特徴はスラスターを4基搭載して個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)が可能と言う点だ。

ファング・クエイクは換装する事でどんな戦地でも対応できるようになっているのも特徴で

私は接近戦主体にチューンアップしている。

機体の紹介はここまでにして相手に目を向けると余裕の表情で待機していた。

 

「随分と余裕な表情をしてるんだな。」

 

「そりゃそうだ、最初の相手は準備運動すらならなかったからな。」

 

「言うね、あれでも世界第2位の実力者だぜ。」

 

「なら、世界最強もその程度と言う事だな。」

 

「まあ、余裕ブッコいているのも今の内だと思うぜ。」

 

その瞬間、開始のブザーが鳴ると同時にあたしは瞬時加速(イグニッション・ブースト)で突撃する。

 

「こいつは挨拶代わりだ!!」

 

完璧なタイミングでの奇襲を行い対応できないと確信していたがその自信が大きく崩れた。

 

「ハアッ!!」

 

「グアッ!?」

 

男性操縦者は長剣を使ってバットスイングで私を吹っ飛ばした。

気が付けば私はアリーナのシールドに激突し、地面にキスをしている態勢になっていた。

もう一度相手に目を向けると長剣の刃を地面に付けて余裕の表情を崩していない。

そして彼は口を開いた。

 

焦るなよ・・・(Not so fast...)試合は始まったばかりだぜ。」

 

「くっ、本当に言うじゃないか。」

 

まだ闘いは始まったばかり、まだまだこれからだ!!

 

 

一夏side

 

突然の奇襲にリベリオンで対応したが相手はそのまま吹き飛ぶ。

すぐに立ち上がる所が最初に闘った奴との違いだったが、そんな事はどうでもいい。

追撃を行う為にスタイルチェンジの合図である声と指を鳴らし、手元に二丁拳銃を用意する。

 

ガンスリンガー(Gun Slinger)!!(パチンッ!!)エボニー、アイボリー、行くぜ!!」

 

銃口を相手に向けて高速連射技『ハニカムファイア』で追い詰めるが

相手は軍人、簡単に回避されてしまう。

アリーナの端で周りながら様子を見ているようだが、遠距離攻撃を仕掛けてこない。

おそらく、近接戦重視のセッティングなのだろう。

しばらくしたらもう一度仕掛けてきた。

 

「これでどうだ!!」

 

「甘いな。」

 

その言葉と同時に俺は対戦相手をもう一度吹き飛ばす。

その手にはショットガン『レヴェナント』を持っていた。

 

それで本気か(Is that all you got)?」

 

「挑発しやがって今度はショットガンかよ、いつの間に変えたんだ?」

 

「これも技量の差って所かな?今のはフランスだと高速切替(ラピット・スイッチ)と呼ぶらしいが・・・・」

 

「くっそ~、気づかなかったぜ。」

 

「今度はこちらから仕掛けるか、ソードマスター(Sword Master)!!(パチンッ!!)はあああ!!」

 

リベリオンを片手に突き技『スティンガー』で急接近する。

相手は完全に復帰しきれていない為、回避は不可能。まともにダメージを受ける。

スティンガーでダメージを与えてから連続突き『ミリオンスタブ』へ繋ぐ。

連続突きでどんどんダメージを重ねていきそして・・・・

 

砕け散れ(Break down)!!」

 

その台詞と同時に相手は再び吹き飛んだ。

そのまま追撃の為に瞬時加速(イグニッション・ブースト)で急接近する。

だが、相手も黙ってはいない。

 

「そう何度も喰らうかよ!!」

 

「っ!?」

 

突然相手が複数回のブースト音と共に目の前から消えて背後に移動し、拳を構えていた。

 

「貰ったぞ!!」

 

ガード(Guard)!!」

 

防御態勢をとって今度は俺が吹き飛ぶが、すぐに態勢を立て直した。

 

「ふぅ~、危うくカウンターを取られると思ったぜ。」

 

「何言ってんだよ、カウンターを取ったんだよ。」

 

「バ~カ、よく見てみろよ。」

 

「えっ?なっ!?ノーダメージだと!?確かに直撃した筈だ!!」

 

「ロイヤルガードのスタイル技『ロイヤルブロック』は直撃する瞬間(ジャストタイミング)にガードする事でどんな攻撃も無傷で済むのさ!!」

 

「何だと!?」

 

「まだまだ行くぜ!!」

 

俺はリベリオンを片手に再び攻撃に入る。

 

 

イーリスside

 

圧倒的の強さを持った相手に私は防戦一方だった。

よく見ると、声とポーズに合わせて機体装甲の形状とラインカラーが変わっている事がわかった。

情報によると「リアルスタイルチェンジシステム」と呼ばれる物が搭載されているらしいが

おそらくそれだろう。

これが第4世代相当機体の力であり、操縦者の力量なんだと言う事だ。

私はそれに気づくのが本当に遅すぎた、これでは勝てない。

だが、ただ負けるのも悔しい。せめて一矢報いる覚悟だ。

さっきのカウンターで個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)を使用した時は上手く攻撃できたと思う。

これを繰り返せば相手だってただじゃおかない筈だ。

ならやる事は1つだ!!

 

「今度こそ貰った!!」

 

個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)を使用して再びカウンターを狙う。

ガードされても追撃を繰り返せばボロが出ると踏んだからだ。

しかし、突然相手からも複数回のブースト音と共に目の前から消えて後ろを取っていた。

気づいたときはもう遅い。私は長剣の一撃を喰らってしまった。

 

個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)だと!?」

 

「へぇ~、これってそう言う名前があるんだな。初めて見て真似したら出来ちまったぜ。」

 

「まさか、さっきのを一目見て真似したって言うのかよ!?」

 

「ああ、コツを掴めば意外と簡単だった。」

 

何て事だ、私たちが苦労して習得した技術を一目で完璧に真似されるとは・・・・

さっきの攻撃でシールドエネルギーも雀の涙、これではもう手も足も出ない。

それに対して彼はノーダメージで彼の恐ろしさを認識せざるを得なかった。

そして彼は二丁の銃口をこちらに向けている。

 

「ありがとう、アンタのおかげで俺はもう一段階強くなれた。」

 

「そうかい、闘いの中で成長するとは羨ましいぜ。」

 

「そろそろフィナーレだ、大当たりだ(Jackpot)!!」

 

その声と同時に試合終了のブザーが鳴り響いた。

 

 

鈴side

 

試合は終わった、それも一夏の完勝で幕を閉じた。

圧倒的の強さを会場全体はこの目で見る事になったんだ。

あたしは一夏に「もう弱いあたしじゃない。今度はあたしが一夏を守る。」と言うつもりだったが

この試合を見てそんな言葉を言える状態じゃなかった。

まるで、競争1位だったあたしがビリの人に一気に追い越された気分だった。

目の前の計測器に白衣を着たウサギの様な人が通信を入れている。

 

「流石いっくんだね、おかげで紫炎の良いデータがとれたよ!!アメリカの人に感謝だね。」

 

『それで束さん、次はどうしますか?』

 

「ちょっと休憩しよう、疲れたでしょ?」

 

『いや、別に疲れては・・・・』

 

「や~す~む~の!!それにようやく実験に付き合ってくれる人が揃ったみたいだからね。」

 

『ハイ、わかりました。対戦相手を回収して帰投します。』

 

「おっけ~!!じゃあ、待っているよ。」

 

この時初めて知った事だけど、あの人が篠ノ之博士なんだ・・・・人は見かけに寄らないね。

するとこちらに気づいたのか近づいて来た。

 

「えっと、君たちが一対多の実験に参加する人だね。私は篠ノ之 束だよ。」

 

「いっいっいっ、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットと申しますわ。」

 

「中国代表候補生の凰 鈴音です。」

 

「よろしくね!!それとイギリスの人、緊張しなくて良いのに。」

 

「あっ、ハイ、申し訳ございません。」

 

「あの博士、質問したい事が・・・・」

 

「いっくんの事?一言で言うなら今のいっくんは君が知っているいっくんじゃないね。」

 

「えっ!?まだ何も言っていないのに・・・・」

 

「事前に調べさせてもらってね、君は日本に居た時にいっくんのクラスメイトでしょ?」

 

「そっ、そうです・・・・」

 

既に知られている事に驚いてしまう、天才科学者ってこう言う事も得意なのかな?

 

「君は事情を知っているみたいだから一言で言うけど“いっくんは溜まっていたものが弾けて今の状態になった。”って言えば説明が付くかな。」

 

「やっぱり・・・・」

 

いつかそうなるんじゃないかと思っていたが、実際に事実を目にすると悔しさを感じる。

セシリアは状況を理解しきれていないのか、ポカンとしている様子だった。

 

「まあ、これから休憩だから話しかけてみれば良いよ。」

 

「あっ、ハイ・・・・」

 

一応、一夏と話せる許可を得たけどあたしは何を話せば良いかわからなかった。

彼はあたしの事をどう思っているのか、わからない状態。

再会の瞬間が迫っていく最中、あたしは怖さと嬉しさが入り混じった状態で彼を待っていた。

 

≪To be continued…≫

 


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