インフィニット・ストラトス Dark Knight Story   作:DASH君

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皆さんお久しぶりです。
リアルが多忙になり過ぎて書く暇がありませんでしたが
ようやく続きを投稿する事が出来ました。


MISSION 26 紅椿、起動

明け方の臨界学校は誰しもが寝静まっている。

しかし、1人だけ・・・・織斑一夏は現実世界とは無関係に

真っ白な神殿の間、『試練の間』に居た。

彼と『試練の間』に呼んだ者がその場で対話をしていたのだ。

 

「紫炎か・・・・今回は何の用なんだ?」

 

『そうだね、君自身の問題に関してかな?』

 

紫炎がそう答えると一夏は苦虫を噛み潰したような表情になる。

一夏が何か言おうとしたら紫炎はそれを潰すように話しだした。

 

『断言しよう、君は悪くはない。君は良い事をしたんだ。』

 

「そんなのっ!!俺の所為でアイツ等の心の闇を強くしちまったんだ!!」

 

『人には良い心と悪い心が常に闘っていると言っていいだろう。

 君は彼女たちに悪い心と向き合わせるきっかけを教えてあげたんだ。』

 

「だからって、俺は・・・・」

 

『君は彼女たちを見ているのか?』

 

「それは勿論・・・・」

 

『“本当に”見ているのか?』

 

紫炎の質問に一夏は黙り込み、それを見た紫炎は呆れたようにこう言いだした。

 

『君は彼女たちの本心を見ずに逃げている。

 そして彼女たちの責任を背負い込んでしまっているんだ。』

 

「そうすれば、そうしないと俺は・・・・」

 

『一夏、私は雨が嫌いだ・・・・』

 

「えっ?」

 

『君の心が泣いていると、試練の間は決まって雨になる。

 君にはわからないかもしれないが私には今のここは大雨が見えるよ。』

 

紫炎は上を見ながら寂しそうにそう答えた。

一夏は紫炎の言葉を聞いてもその意味までは理解できなかった。

 

『一夏、私と最初に出会った時の言葉を覚えているか?』

 

「ああ、勿論だ・・・・」

 

『“私は君と共にありたい”その言葉の意味を忘れないでくれ。』

 

「紫炎、お前・・・・」

 

一夏が答えようとすると辺り一面が光り輝きだし

気が付くと身に覚えのある景色が見えていた。

 

「ここは・・・・そうか、戻ってきたんだな。」

 

一夏が見えた景色の正体は旅館の天井、今は臨海学校の最中である事を思い出した。

それと同時に一夏はさっきまでの会話を考える。

 

(紫炎がああ言うって事は、俺と紫炎のシンクロ率が下がっているって事か

 だけど俺は自分を許せそうには・・・・)

 

自分自身の罪の意識に一夏は身震いし、布団を掴もうとしたら・・・・

 

「アンッ♥」

 

(うん? 何この柔らかさ、布団ではない気が・・・・)

 

そう思いながら自分が手に持っている物を確認する様に何度も触れて・・・・

いや“揉んで”みた。

 

「アンッ♥ヒャッ♥いっく~ん、大胆だよ~♪」

 

「たっ、束さん!?じゃあ、これって・・・・」

 

「フフフ、そんなに揉みたかった? 私のおっぱい♪」

 

「どわっ!?すみませんでした!!」

 

一夏はそう言って慌てて飛び起きようとしたら後ろから何かに掴まれ

布団に引き摺り戻された。

 

「逃がしませんよ一夏さん。まだまだ休んでもらいます。」

 

「くっ、クロエさんまで!?って、うわっ!!胸を押し当てないで!!」

 

今の一夏の状況は束とクロエの胸でサンドイッチされている状態。

この世の中に生きている男たちが絶対羨む状況に彼は居るのだ!!

しかも束とクロエは寝間着を着ているものの

ほぼ全裸の状態に肌が見えるため、一夏の理性を沸騰させるのに

十分過ぎる状態だったのだ!!

 

「逃がさないよ、いっくん♪」

「逃がしませんよ、一夏さん。」

 

(誰か助けてくれ~!!)

 

こうしたやり取りが起床時間まで続いたのは言うまでもなかった。

生徒全員が朝食を済ませたらISの運用などで時間を取られる。

その中で専用機持ち全員が一般生徒とは違う場所で訓練を行う。

最初に鈴が一夏にこう問いかけた。

 

「一夏、アンタ顔真っ赤にしてどうしたのよ。」

 

「あ~、理性との闘いの後って所かな・・・・」

 

「そっ、そうなんだ・・・・」

 

その時、女性陣全員が一夏に対してこう思ったのは言うまでもない。

 

『絶対に博士が“何か”したに違いない。』

 

女性陣がそう思っている間、春斗は箒がこの場に居る事に対して千冬に質問した。

 

「ちふっ、じゃなかった・・・・織斑先生。」

 

「何だ、織斑兄?」

 

「どうして箒がここに居るんでしょうか?」

 

「それはだな、篠ノ之が『ちーちゃ~ん!!』束。」

 

「こっちはこっちで作業しても良いよね?」

 

「ああ、ただ作業場所は山田先生からの指示を貰ってくれ。」

 

「ハイ、こちらです。」

 

「ハ~イ、それじゃあ、いっくんと箒ちゃんおいで。」

 

「わかったよ、姉さん。」

 

「わかりました、束さん。」

 

「それじゃあ、早速紫炎にケーブルを接続してっと・・・・ハイ、箒ちゃん。」

 

「これが・・・・『紅椿』。」

 

「えっ?箒にも専用機!?」

 

「その通りだ。」

 

「装着してから紫炎のデータ取得と紅椿のフォーマットを同時にやるよ。

 さらにいっくんの紫炎にも完成版の展開装甲に換装させるからね。」

 

「わかりました。」

 

そう言うと、束は奥のディスプレイを出して恐ろしく速いタイピングを開始した。

そしてタイピングしながらクロエに指示を出す。

 

「それじゃあ、くーちゃんはセシリアちゃんと鈴音ちゃんのISの方をお願いね。」

 

「わかりました。ではオルコット様、凰様、こちらへ・・・・」

 

「ハイハイ、わかったわ。」

 

「わかりましたわ。」

 

「御二方のパッケージデータの分が多い為

 御三方は後回しになってしまい申し訳ございません。」

 

「いえ、私は大丈夫です。」

 

「優先順位は博士たちに任せますから、僕たちはその指示に従います。」

 

「しかし、パッケージデータは機密の筈だが、どうやって入手したのだろうか。」

 

「それは我々が政府に直接赴いて事情を説明した上でデータを入手

 第4世代に適したデータに変えたのです。」

 

「えっ!?」

 

「姉さんが、直接話し合った!?」

 

「あ~、そうしないと流石に出来ないか・・・・」

 

クロエの言葉にそれぞれ反応が異なっていた。

束の事をよく知っている箒・千冬・春斗の3人は驚き

それ以外のメンバーは納得した様子で話を聞いていた。

そんな中、1人空気を読まず束に話しかける奴がいた。

 

「束さん!!お願いが・・・・」

 

「あ~、その願いは無理だよ。はるくん。」

 

「何故っ!?」

 

そう、織斑春斗が束にお願い事をしようとしたのだ。

しかし束はその願いを最後まで聞かずに却下する。

 

「まだ、最後まで言っていないのにどうして却下するんですか束さん!!」

 

「どうせ『僕のISも第4世代に改修して欲しい。』って言うんでしょ?」

 

「そうです!!でも何故ダメなんですか!!」

 

「第4世代はね、今使っている白式以上にやる事が多過ぎる代物なんだ。

 白式を完全に使いこなせてないのなら余計な醜態を晒すだけだよ。」

 

「コイツに出来て、僕に出来ない道理なんて・・・・」

 

春斗は一夏を指差してそう言う。

女性陣全員が一斉に春斗に対して睨み付けたが、春斗はそれを無視していた。

春斗の要求を止めたのは千冬だった。

 

「もう止めないか馬鹿者。

 その願いをどうしても叶えたいなら1時間でも多くISを動かせ。」

 

「千冬姉!!」

 

「“織斑先生”だ馬鹿者、束たちの作業の邪魔になるから

 私たちは私たちでやる事をやるぞ。」

 

そう言って、千冬は春斗の首根っこ掴んで連れて行く。

そうしたやり取りの中、束は今行っている作業を終了した様だった。

 

「よし!!これで終わりだよ!!2人とも試しに飛んでみて。」

 

「「ハイ!!」」

 

2人は指示されるがまま飛び出し、自由に飛び回っていた。

 

「早っ!?」

 

「あれが正式採用の展開装甲なんだね。」

 

「2人とも、どんな感じかな?」

 

「実験用と比べると“軽い”感じかな?負担が軽く感じます。」

 

「まるでISと一体となった気分です。」

 

「そっか、それじゃあ箒ちゃんにはそのまま武器の実験を行おう。

 日本刀型の武器で左側が『空裂』、右側が『雨月』だよ。」

 

「わかりました。それで、2本の使用方法は・・・・」

 

「まず、雨月からやっていこう。大量のミサイルを出すから突きの要領でやってごらん。」

 

そう言って束は大量のミサイルを箒に向けて発射させる。

その数は度が過ぎるぐらい大量だった。

 

「ちょっ!?あれは流石にやり過ぎでしょ!!」

 

「鈴さんの言う通りですわ!!」

 

「いえ、大丈夫です。」

 

鈴とセシリアが叫ぶがクロエは大丈夫と言った感じでなだめる。

箒は束の言われた通りに突きの要領で雨月を振った。

 

「はぁあああ!!!!」

 

その瞬間、雨月から大量のレーザーが照射され

大量のミサイルを瞬く間に破壊してしまった。

 

「すっ、スゴイ。」

 

「上々だね、次は空裂だね。これは斬撃をそのまま飛ばす武器だよ。

 リベリオンの『ドライブ』を参考にしてみたんだ。」

 

説明終了と同時に雨月と同様に大量のミサイルを一斉に照射する。

箒はそのまま空裂をミサイルに向けて大きく振った。

 

「たぁあああ!!!!」

 

その瞬間、空裂から巨大な斬撃を放ち大量のミサイルを瞬く間に破壊してしまった。

 

「フム、これは厄介な武装だな。」

 

「だね、完全に使いこなせたら箒は間違いなく・・・・あれ?どうしたの箒?」

 

簪は箒を見て異変に気付いた。

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・」

 

「箒、疲れちゃったのかな?」

 

「違う、私はISを・・・・紅椿を使って良いのかわからなくなってしまった。」

 

「どうして?」

 

「紅椿がスゴイ力を持ったISなのは十分にわかった。

 だが、それは周りを傷つけかねない物でもある事を知ってしまったんだ。」

 

「そうだね、ISって使う人によっては大量破壊兵器に匹敵する代物

 でも使う人の心によって変わるものだから正しい事に使うなら問題ないと思うよ。」

 

「それだけじゃない、簪たちは苦労した上で専用機持ちになり今に至る。

 だが、私は“何の苦労も無し”にISを渡されたんだ。

 そんな私がISを使っても本当に良いのかわからんのだ!!」

 

箒の言葉に地上に居る仲間たちは考えた。

確かに箒以外の少女たちは多くの訓練等を通して今の地位に立っている。

その為に多くの人たちを踏み台にしていてもおかしくなかった。

だが、箒だけはその過程を“一切行わず”に専用機を持ってしまっている。

簪たちは箒が専用機持ちとしての重圧に苦しみだした事を知ったのだ。

それを踏まえた上で箒に対して簪は答えを言う。

 

「箒は紅椿を持っていても良いと思うよ。」

 

「何故だ、何故そう言える。」

 

「箒は専用機持ちの重圧を知ったから苦しんでいると思うの。

 さっきも言った様に問題は使う人の心によって変わるものだよ。」

 

「誇りある行い、善行を行えば、きっと皆さんは認めてもらえますわ。」

 

「そうね、アンタが正しい事にISを使えば問題ないんじゃない?」

 

「もしも、間違った事に使うようなら私たちが止めてやれば良い。」

 

「だからその苦しみを独りで抱え込まないで、僕たちにもその苦しみを分けてほしいよ。」

 

1人1人の言葉が箒の心に響かせる。

すると箒は落ち着きを取り戻し、安心した様子になった。

 

「ありがとう、みんな。私もみんなが言う様に認めてもらえるよう努力する。

 だから、間違った使い方をしたら止めてくれ。」

 

『うん!!(わかりましたわ!!)(わかったわ!!)(心得た!!)。』

 

(良かったね、箒ちゃん。こんなに素晴らしい友達に出会えて。)

 

束は少女たちの様子を見てそう思った。

これならきっと「妹は大丈夫だ。」と言える環境がそこにあったからだ。

しかし、いつまでもこの雰囲気にする訳にもいかず次の実験をしなければならない。

 

「それじゃあ、次は・・・・っていっくん?どうしたの?」

 

今度は一夏の様子がおかしい事に束は気付く。

モーション的にデビルブリンガーを出そうとしている事はわかったが出てきていない。

 

「出ない・・・・」

 

「何が?」

 

「デビルブリンガーが出ないんです。」

 

「えっ?あれ?でもシステム側は正常だよ。」

 

「多分俺と紫炎のシンクロ率が落ち過ぎているかもしれません。

 だからデビルブリンガーが出ないんだと思います。」

 

「そう言えば、最初の模擬戦でもそんな事を言っていたわね。」

 

鈴は一番最初の模擬戦の事を思い出す。

確かに一夏は『デビルブリンガーはシンクロ率が高くないと使用できない。』と言っていた。

今、まさにその欠点が出ていると知ったのだ。

その原因は恐らく、少女たち全員が考えているのと同じ事だと知った。

それと同時に山田 真耶が焦った表情で騒ぎだす。

 

「たっ、た、大変です!!おおお織斑先生っ!!」

 

「どうした?」

 

「こっ、これを!!」

 

そう言って真耶は千冬に小型端末を見せて、千冬はそのまま表情を曇らせる。

そして真耶と会話しながら千冬は専用機持ちたちを見ながら考えていた。

最終的に千冬は全員にこう言いだす。

 

「全員注目!!現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。

 今日のテスト稼働は中止!!各班、ISを片付けて旅館へ戻れ。

 連絡があるまで各自室内へ待機する事、以上だ!!」

 

この発言により事態は良くない方向へ進みだしてしまったのだ。

 

≪To be continued…≫

 


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