インフィニット・ストラトス Dark Knight Story   作:DASH君

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MISSION 15 受け継がれる規範

一夏side

 

ボーデヴィッヒのISが突然変形したと思ったら今度は千冬姉の姿をした闇になりやがった。

束さんが見ればブチ切れる事間違いなしだが、そんな冗談を言っている暇はない。

まずはやる事をやってしまわないといけない。

 

「簪、シャルを安全な場所に運んでもらって良いか?」

 

「良いけど、一夏はどうするの?」

 

「こいつを引き付ける、その間にシャルを運んでくれ。」

 

「良いけど・・・・無理しないでね。」

 

「当たり前だ、先生たちが来るまでだ。」

 

そう言って俺たちは行動を開始する。

スパイラルを構えて千冬姉擬きに攻撃して誘う。

 

来いよ、ノロマ(C'mon, wimp)!!」

 

「グオオオオオッ!!!!」

 

誘いに乗ったのか、千冬姉擬きは俺に向かって進んで行く。

簪はその隙にシャルの所へ急ぎ救助に向かう。

相手の脚部がゲル状になっている為か動きが恐ろしく鈍い。

だが、その分攻撃速度は恐ろしく早い為、付かず離れずの距離を保ち続ける。

 

「ありがとう、簪。」

 

「良いよ、元はと言えば私がシャルルをあそこまで飛ばしちゃったから。」

 

そんなこんなで簪はシャルの救助に成功し、それと同時に先生方が入って来た。

 

「これで一件落着だな。」

 

「あとは先生方に任せる事になるけど私たちはどうすれば良いかな?」

 

「念の為に通信を入れた方が良いと思うよ。勝手に帰投するのはマズいと思うから。」

 

「シャルの言う通りだな、早速連絡を入れよう。山田先生俺たちはどうしたら良いですか?」

 

『ハイ、デュノア君を連れてそのまま帰投してください。』

 

「了解、それじゃあ俺たちは帰投s『たああああ!!!!』、よっと!!」

 

突然乱入してきた奴をスナッチで簡単に捕獲、そしてそのままこっちに引き寄せた。

 

「はぁ・・・・何してんだよ、春斗。」

 

「邪魔をするな!!あれは千冬姉の刀なんだぞ!!真似して良い訳ない!!」

 

「優れているものや強い奴の技術を真似するのは昔からある事だろう。

ここで熱くなっても仕方がねえよ。」

 

「プライドが無い出来損ないの屑にはわからんだろう!!千冬姉の誇りを!!」

 

「俺たちが居ても邪魔になるだけだっての。それに鈴との闘いで白式のダメージレベルはCを

超えてんじゃねえか、ここに来るなよ。」

 

「うるさい!!僕はお前たちとは違うんだ!!」

 

俺が何とかなだめようとするが春斗は聞く耳持たず。

しかし放っておくと何をするかわかったものじゃないのも確かだ。

どうしたものかと悩んでいる内に簪とシャルがこっちにやって来た。

 

「一夏、私に任せて。」

 

「どうする気だ?」

 

「良いから任せて。」

 

そう言って簪は春斗の胸倉を掴んだ。

 

「何だよ!!更識家の出来損ない!!」

 

「私は貴方の言う事にうんざりしているの!!」

 

“ドカッ!!バキッ!!ボコッ!!ドガンッ!!”

 

「ぐあっ!?」

 

「これで一件落着。」

 

「あとは僕が抑えておくからね。」

 

「おっ、おう・・・・」

 

シャルは春斗を回収して安全な場所まで下がった。

にしてもさっきの簪は怖かったな、春斗の顔面に拳を3発叩き込み

最後はブルーローズのチャージショットで白式を強制解除しやがったから。

あの時の春斗の暴言を余程深く根に持っていたみたいだった。

これから簪を怒らせるのは止めよう・・・・殺される。

にしても春斗も言うな、確かに千冬姉の誇りを守りたくないと言ったらそれは嘘になる。

そうなると俺が考えている事は1つだけだった。

 

「簪・・・・」

 

「どうしたの?」

 

「ちょっと俺の我儘に付き合ってくれないか?嫌なら嫌で良いけど・・・・」

 

「良いよ、私だって一夏に迷惑をかけていたからこれくらい付き合う。」

 

「すまねえな。」

 

『あの~、一夏君。一体何をするつもりで・・・・』

 

「俺たちでボーデヴィッヒを止めるんですよ。」

 

『ええ!?一夏君たちがやらなくても私たち教師陣が・・・・』

 

「こいつは織斑家の問題だ、教師陣たちに迷惑をかける理由はねえ。」

 

『止めろ、一夏!!』

 

「織斑先生?」

 

突然、千冬姉が通信を割り込んで話しかけてきて俺は驚いてしまった。

 

『行くな、一夏!!危険すぎるぞ!!』

 

「何もしない方がもっと危険だと思いますが?」

 

『それでもだ!!もう私はお前を・・・・家族を失いたくないんだ!!』

 

「・・・・・・・。」

 

らしくないくらい取り乱す千冬姉。

多分モンド・グロッソの時を思い出しての発言だろうな。

だが、俺は引き下がる訳にはいかない。

 

「千冬姉・・・・アンタがそう言うのは俺の事を信じられないのか?」

 

『何?』

 

「俺が“織斑家の出来損ない”だからか?それとも俺が“面汚し”だからか?」

 

『違う!!お前の事が大事だからだ!!大事な家族だからなんだ・・・・』

 

『織斑先生・・・・』

 

千冬姉の声を聴くと多分泣いていて、山田先生が困惑している様子が目に浮かぶ。

この際だから俺の本音を言っても良いだろう。

 

「千冬姉、アンタにこれだけは伝えたい。」

 

『何だ?一夏・・・・』

 

「俺はアンタの事が嫌いだよ。」

 

『っ!?』

 

「一夏!?」

 

「シッ!!」

 

「シャルル。」

 

「今は黙っておこうよ。」

 

「うん。」

 

シャルが騒ぐけど簪がすぐに静かにしてくれた。

 

「俺たち兄弟を見ている様で全く見ていない所も、今日まで余所余所しくしていた所も全部な。」

 

『・・・・・・・。』

 

「だけど、アンタを本気で嫌っている訳じゃない。本気で嫌っていたら絶縁状なりなんなり

叩きつけているからな。」

 

周りは静かに俺の話を聞く、それでも俺は言葉を止めない。

 

「それでも俺はアンタとの繋がりを切り離したくはない。むしろ、本当の意味で分かり合いたいと思っている。何故なら束さん経由で俺はアンタの規範(ミーム)に感染しているからだ。」

 

『私の・・・・規範(ミーム)だと?』

 

「ああ、俺はアンタの規範(ミーム)に感染してそれを糧にして今まで生きてきた。そうすればアンタの事を知る事が出来ると思ったからだ。」

 

『私の事を?それに私の規範(ミーム)とは・・・・』

 

「ああ、『誰かに助けられたヤツは誰かを助けたくなる』って言う規範(ミーム)をな!!」

 

『一夏・・・・』

 

「それが俺が闘う理由であり、束さんと千冬姉から受け継いだ俺の規範(ミーム)だ!!簪!!」

 

「うん、ターゲットは既にロックしている。多分チャンスは一瞬だけど・・・・」

 

「一瞬あれば十分だ、頼む!!」

 

「うん!!山嵐・・・・『マルチロックショット』!!」

 

“ドドドドドドドドドッ!!!!”

そう言って簪は山嵐本来の機能+ガンスリンガーで発展強化した技

『マルチロックショット』を暴走したボーデヴィッヒに向けて放つ。

剣先から体全身までくまなくミサイルの嵐が降り注ぎ

俺はその嵐を避けながらボーデヴィッヒに接近していく。

“ドガガガガガガガガッ!!!!”

山嵐のミサイルが全弾ボーデヴィッヒに命中し、怯んだ。

 

「俺たちがお前を守ってやる!!だから独りで闘うな!!ボーデヴィッヒ!!」

 

そう言って俺はリベリオンを使い縦一閃でISのアーマーを切り裂く。

切れ目からボーデヴィッヒが現れては抱きとめて一気に後退する。

 

「おり・・・・むら・・・・いち・・・・か・・・・」

 

「喋るな、もう大丈夫だからな。」

 

安心しきった顔をして気を失うボーデヴィッヒ。

簪やシャルを見ると同様に安心した様子だった。

これで一安心かと思ったその時だった。

 

“ゴゴゴゴゴゴ・・・・”

 

「っ!?一夏!!あれ!!」

 

「ボーデヴィッヒさんが居ないのにまだ動いて・・・・」

 

「全く・・・・お灸を添えてやるか。」

 

俺はそう言ってエボニー&アイボリーをISだった物に向ける。

だが、すぐに俺の前にもう立って銃口を敵に向けた奴が居た。

 

「私も付き合うよ。」

 

「簪・・・・まあ、それもまた一興だな。」

 

「一夏、こう言う時の合言葉を知っているよね?」

 

「俺が言おうとしているのは簪のとは違うかもしれないぞ。」

 

「でも、こう言う場だったら一夏が言う台詞は1つしかないよ。」

 

「そうかい。」

 

俺はエボニー&アイボリーを簪はブルーローズを構えて銃口を敵に向ける。

そして発砲と同時に俺たちは“合言葉”を言い放つ。

 

「「大当たり(Jackpot)!!」」

 

紫と翠色の弾丸の軌跡が敵に向かって行き、命中と同時に敵は崩れ去ってコアだけになった。

 

 

ラウラside

 

真っ暗闇の場所に私は居る、おそらくこれは夢の中と言った所だろう。

真っ暗で身動き一つ出来ず、助けを求めて叫ぼうが消耗しきっている為それすら出来ない。

真っ暗闇の場所に居ると、教官と出会う前の自分を思い出すが今回だけは少し違った。

突然、一閃の煌めきが見えたと思ったらそのまま光が挿し照らし

人らしき物体が私を抱き留め、人らしき物体が私にこう語りかける。

 

『俺たちがお前を守ってやる。だから独りで闘うな、ボーデヴィッヒ。』

 

「この声は・・・・織斑 一夏?」

 

人らしき物体はそれ以上何も言わなかった。

周りを見ると織斑 一夏とよく一緒に居る者たちがそこに居て、私に何かを語りかけていた。

何を言っているのかよくわからないが、心配している顔、安心した顔など様々な顔が見えた。

不思議とそこに居ると心地の良い感覚に包まれていた。

 

「そうか、これが織斑 一夏の強さの源なのか・・・・」

 

この温もりがヤツを強くして、ヤツはこの感覚の元を守ろうとしている。

かつて教官が言っていた本当の強さとは・・・・“守る”強さなのだと私は今初めて知ったのだ。

目を覚ますとそこはIS学園の病室で窓を見ると既に夕方に差し掛かっていた。

この感覚を忘れてはならない、そう思えてしまうほど私はこの温もりを感じ続けたのだった。

 

 

簪side

 

今回の騒動の後、私たちはいつものメンバーで食事を摂っている。

みんながそれぞれ落ち着いた感じになっていて会話が殆ど無い食事だ。

でも不思議と不快感が無く、このまま静かに過ごしてしまっても良いと思えた。

しばらく経ってこの静寂を崩したのは一夏だった。

 

「そう言えば、今回の学年別トーナメントは中止みたいだな。」

 

「でも、データ取りの為に一回戦は全員するみたいだよ。」

 

「そうなると僕たち一年生は既に終わっている事になるね。」

 

「まあ、俺とシャルから見れば中止になって助かったと思う訳なんだがな。」

 

「そうだね、あの噂は誰が流したんだろう?」

 

そう、実は今回の学年別トーナメントで優勝した人は

一夏かシャルルか春斗の内、1人と付き合えると言う噂が流れていたのだ。

ちなみに、私たちのメンバーできっかけを作った人は誰も居ない。

勝手に噂が流れて、勝手に周りが暴走したと言う訳になる。

噂の話題が終わったら、鈴が次の話題を言い出す。

 

「そう言えば、春斗の処分を聞いた?」

 

「そうですわね。ISのダメージを無視した無断出撃で反省文が出たそうですが・・・・」

 

「まあ、春斗の言いたい事は俺もわかるがな。」

 

「だからと言って、考えも無しに敵に突っ込むなど愚の骨頂だと思うぞ。」

 

「それを言っちゃ、お終いだぜ。」

 

そう、織斑 春斗は今回の件で厳しい処分を言い渡されたのだ。

被害を広げないだけマシだったけど・・・・

そんな他愛もない話をしていると山田先生がこっちにやって来た。

 

「山田先生、どうかしましたか?」

 

「ええ、一夏君とデュノア君に朗報を伝えようかと思ってですね。」

 

「ひょっとして大浴場が使える様になったとか?」

 

「・・・・・・・。」

 

「山田先生?」

 

「一夏君ってエスパーですか?」

 

「いえ、この前山田先生が大浴場の事を言っていたのでもしやと思って・・・・」

 

「だからって先に言わないでくださいよぅ~・・・・」

 

「あ~・・・・すみません。」

 

こう見ると山田先生って落ち込みやすい人なのかな?

一夏も一夏で先読みし過ぎているけど・・・・すると一夏がこんな事を言い出した。

 

「にしても風呂か・・・・俺シャワー派なんだけどな。」

 

「何を言うか、久々の入浴を堪能すれば良いではないか。」

 

「そうですわ、しっかりと汚れを落とさないと女性に嫌われますわよ。」

 

「アンタが風呂派か、シャワー派なのかはどうでも良いとして久々のお風呂でしょ?」

 

「そうなんだろうけどな・・・・」

 

そう言って箒、セシリア、鈴の3人が一夏の発言に対して反論を言う。

それに対して一夏はどうも様子がおかしかった。

もしやと思ってシャルルの方を見ると、どこか顔を赤くしている。

 

「ひょっとしてシャルルって・・・・」

 

私の考えている間に山田先生が2人を強制連行してしまった。

 

 

一夏side

 

学年別トーナメントの一件から一夜が明けた。

いつも通りにHRを開始すると思っていたが今日はいつもと違っていた。

 

「一夏さん、シャルルさんについて何か聞きましたか?」

 

「いや、シャルは“先に行ってて”としか言ってないから何もわからん。」

 

そう、シャルがHRの時間になっても教室に来ていないのだ。

今朝の様子を考えて体調が悪い訳ではない事は確かだが、理由がさっぱりわからない。

少し経って山田先生が教室に入って来る。

 

「み、皆さん、おはようございます・・・・」

 

「山田先生、覇気が無いみたいですけどどうかしましたか?」

 

「色々ありましてね、皆さんに転校生を紹介します・・・・と言っても既に紹介を終えていると

言うか何と言うか・・・・じゃあ、入ってください。」

 

「失礼します。」

 

山田先生はどうにもよくわからない説明をしてクラス全体は困惑してばかり

だけど、さっきの「失礼します。」の声・・・・まさか。

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします。」

 

彼女の姿と名前を聞いた瞬間、全員が騒然として大パニックとなってしまった。

俺もすかさずシャルに訳を聞こうとする。

 

「シャル!?お前何考えているんだよ!!」

 

「えっと・・・・僕なりのケジメかな?」

 

「オイオイ!!俺は隠し通す覚悟を持っていたのに・・・・」

 

俺とシャルの会話をしている最中、クラスメイトたちの話題は大浴場の事になっていて

この時に初めて現在の俺の置かれた立場を理解する。だが、その瞬間だった。

 

“ドカンッ!!!!”

 

「「一夏!!」」

 

「鈴に簪!?」

 

2人を見ると既にISを展開していて今にも銃撃を発砲しそうだった。

すると先に手を出したのは鈴だった。

 

「死ね!!!!」

 

「やばっ!?」

 

鈴が龍砲を放ち俺はISを展開してロイヤルガードを行おうとした。

だが、衝撃砲の弾は俺の所に来ることは永遠になかった。何故なら・・・・

 

「うん?ボーデヴィッヒ!!IS直ったのか!!」

 

「・・・・コアが無事だったからな、予備パーツで組み直した。」

 

ボーデヴィッヒが慣性停止結界(AIC)を使って龍砲を相殺していたのだ。

と言うかよく間に合ったな、明らかに間に合いそうにないタイミングだったのにな。

俺は助けられたのでボーデヴィッヒにお礼を言う事にした。

 

「まあ、何だ、助かったぜ。ボーデヴィ・・・・」

 

『!?!?!?!?!?!?!?!?』

 

「お、お前は私の嫁にする!!決定事項だ!!異論は認めん!!」

 

あ・・・・ありのまま今起こった事を話すぜ!!

ボーデヴィッヒが俺を守ったと思ったら、突然俺にキスをしたんだ。

な・・・・何を言っているのか、わからねーと思うが俺も何されたのかわからなかった。

頭がどうにかなりそうで、催眠術やらなんやらかんやらだとか

そんなチャチなものじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・・

ファーストキスがこんな不意打ちとはな、世の中って不思議な事が起こるもんだな。

それに“嫁”って・・・・“婿”じゃないのか?普通・・・・

ちょっと待て、これってヤバいよな。

 

「い~ち~か~!!!!」

 

「アンタねええええええっ!!!!」

 

「一夏さん!!どう言う事か説明してください!!」

 

「へぇ~、一夏って他の女の子の前でキスしちゃうんだね。僕、ビックリしたな。」

 

「シャルルの件を含めて聞かないといけない事が増えちゃったみたい。」

 

「・・・・・・・。」

 

ハッキリ言おう、こ・れ・は・や・ば・い!!!!

なら、ここでやる事と言ったら・・・・

 

「ハハハハハハ・・・・さらば!!」

 

「待て!!嫁よ!!」

 

逃げるしかないだろ!!ここは!!ボーデヴィッヒの制止を振り切ってでも行くしかねえ!!

俺は迷わず窓から飛び降りてISを展開する事にした。

するとアイツ等も追って来て逆鬼ごっこが開始されるのは当然だ!!

その後、俺たちは千冬姉が来るまで鬼ごっこが続き

鉄拳制裁を喰らったのは言うまでも無かった。

 

≪To be continued…≫

 


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