インフィニット・ストラトス Dark Knight Story   作:DASH君

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今回の話は仕事の都合もあってかなりの難産でした。



MISSION 11 内なる闇と向き合え~鈴編~

鈴side

 

あたしは夢を見ている、あたしは教室の様な場所を“上”から見ている。

中学時代のあたしは一夏と春斗の仲の悪さを目の当たりにして、怯えていた頃だ。

でも今、目の前に居るのは一夏と春斗ではない。1人はあたし、もう1人は・・・・

 

「楓。」

 

「鈴。」

 

そう、あたしに気を遣ってくれた親友の女の子:西川 楓だった。

楓は学校では珍しく春斗に対して真正面から反論を言える女の子

そして一夏の味方になっていた数少ない女の子だった。

 

「ゴメンね、鈴。今日は先生に呼び止められて一緒に帰れないの。」

 

「そっか、用事が終わるまで待とうか?」

 

「ううん、大丈夫。すぐに済むから。」

 

懐かしいやり取りだ、楓はクラス委員をやっていたからよく先生に呼ばれて

仕事を手伝っている。

しかし、何か忘れている様な・・・・

 

「鈴、私ね。今日こそやってみようと思うの。」

 

「何を?」

 

「御手洗君に告白するの。」

 

「そう言えば、数馬の事好きとか言っていたわね。」

 

そう、楓は数馬の事が好きだった。

数馬本人は「モテない」なんて言っているけど、楓から見れば「魅力的な人」らしい。

でも実はあたしは知っていた、2人は“両想い”なんだって。

数馬は楓が好きだし、楓も数馬が好きだった。

そんな2人の関係を見ていると嬉しくもあれば羨ましく思う。

でも確か、楓が告白をやろうと宣言した日に何かあった様な・・・・

 

「それじゃあ、行ってくるね。」

 

そうだった!!この日は確か!!

 

「行かないで、楓!!」

 

“バッ!!”

楓を追いかけようと駆け出した瞬間、あたしは周りを見て今の場所を確認する。

 

「ここは寮の部屋・・・・じゃあ、さっきのは夢?」

 

その場所はIS学園の寮のベットの上だった。

あたしが叫んだせいか、隣で寝ていた同室の人が起き上がる。

 

「鈴またなの?どうしたのよ?」

 

「ゴメンね、ティナ。また、夢を見てたわ。」

 

同室人:ティナ・ハミルトンがあたしの騒ぎ声で起きてしまう。

ティナは髪色と瞳の色を除けば、楓そっくりの女の子。

ティナが悪いと言う訳では無いけど、見ていると楓の事を思い出すばかりだ。

あの夢を見る日は決まって気分が最悪になる。

自己嫌悪に陥っていたらドアからノック音が聞こえた。

あたしが出ようと思ったらティナが先にドアに向かって応対した。

 

「おはようございます。鈴は居ますか?」

 

「鈴は居るけど、何か用があるの?」

 

ノック音の相手は簪だった。

簪の様子を見るとどうも機嫌が良さそうで、どこか落ち着いた雰囲気だった。

軽い挨拶をした後、簪がここに来た目的を言う。

 

「鈴を朝食に誘いに来たの、一夏も一緒だから。」

 

「そっか、鈴どうする?」

 

簪があたしを朝食に誘うなんて珍しい、しかも一夏が一緒ときたものだ。

本来なら喜んで行きたい所だけど、今は・・・・

 

「ゴメン、ちょっと目覚めが悪くてね。別の機会で良い?」

 

「そっ、そっかゴメンね。」

 

「なら私が代わりに行っても良い?」

 

ティナが突然、そう言いだす。当然、簪は困惑するばかりだ。

 

「良いんですか?」

 

「良いでしょ?鈴。」

 

「良いわよ、あたしはしばらく1人で居たいから。」

 

「じゃあ、決まりね。早速行きましょう。」

 

「あっ、ハイ。」

 

そう言って2人はこの部屋を出る、あたしはとにかく心を落ち着けるので精一杯だった。

 

 

ティナside

 

私の名前はティナ・ハミルトン、1年2組所属で凰 鈴音の同室人。

今日は4組の更識さんからのお誘いで鈴の代理として朝食を摂る事になった。

今、学園の中で話題の中心となっている織斑 一夏に出会えるとはまたとない機会だ。

お近づきになりたい気持ちが半分、もう半分は鈴の事だ。

聞いた所、織斑 一夏と鈴は幼馴染らしく、ひょっとしたら鈴が抱えている悩みの謎を解く事が

出来るかもしれない。

そう言った意味でも私は織斑 一夏と会ってみたかった。

いざ、集合場所に着くと当の本人と1組の専用機持ちたち+αがそこに居た。

 

「かんちゃん、遅刻だよ~。」

 

制服をダボダボに着た人が間延びした台詞を言う。

来ている面子を見ると英、仏の代表候補に開発者の妹、それに1組の人が数人居る。

 

「お待たせ、鈴は今日、調子が悪いみたいで来れないって。」

 

「そうか、それは残念だな。簪よ、隣に居るのは・・・・」

 

「私はティナ・ハミルトン、1年2組所属で凰 鈴音の同室人よ。鈴の代理として来たわ。」

 

「よろしくお願いしますわ、ハミルトンさん。」

 

「ティナで良いよ。それでこっちの2人が噂の男性操縦者ね。」

 

「・・・・・・・。」

 

「一夏?どうしたの?」

 

シャルル・デュノアがそう言うと織斑 一夏は私を見て深く考え込んでいる様だった。

少し経って、当の本人が口を開く。

 

「いや、知人に似ていたから驚いてな・・・・」

 

「それって私が『西川 楓』って人に似ているんでしょ?」

 

「鈴から聞いたのか?」

 

「うん、同居する時の鈴も同じ事を言ったから。」

 

鈴曰く、私は鈴の親友の『西川 楓』って言う人に髪色と瞳の色を除いて瓜二つらしい。

私は彼女の事を聞こうとしたら鈴が暗い表情になったのは記憶に新しい。

少し経ってイギリスの候補生が口を開く。

 

「一夏さん、『西川 楓』とはどんな方ですの?」

 

「西川さんは鈴の親友で俺もある程度世話になった人さ。俺が束さんの元に居てからは何も聞いていないけど・・・・」

 

そう言って再び考え込む織斑 一夏、少し空気が重くなったけど・・・・

“グゥ~~~~”

 

「アハハ、お腹空いちゃった。早く食べようよ。」

 

「本音・・・・」

 

呆れる更識 簪と笑うダボダボの制服の人。

今ので完全に空気がぶっ壊れてしまった様だった。

その証拠にこの場に居る面子の殆どが呆れている。

 

「ハハハ、本音ちゃんの言う通りだな。飯にしようぜ。」

 

織斑 一夏は笑いながらそう言う。

どうも話題から逸れてしまったが今は朝食を摂る方が先決だ。

かなりの大所帯で食事を摂るけど、ここまで多いのは初めてで

1組以外は私と更識さんだけだった。

それでも更識さんや1組の人たちは私に良くしてくれて名前で言い合える位は仲良くなれた。

1組は一夏を中心に専用機持ちたちが集まって、多くの人たちが集っていた。

これが1組の結束なのだと実感できたけど、そんな中、簪は一夏に話しかける。

 

「そう言えば一夏、本音の事“本音ちゃん”って呼ぶけど何故なの?」

 

「そうだな、本音ちゃんはウチのクラスの小動物みたいなマスコットだからな。

それに俺はあだ名で呼ぶのは性に合わねえ。」

 

「そうなんだ。まあ、本音との付き合いは長いからわかるけど・・・・」

 

「かんちゃんの幼馴染って聞いて、いっちーからかんちゃんの事をよく聞いて来るんだよ~。」

 

「え゛っ!?どんな事を話しているの!?」

 

「え~っと、好きな事とか、嫌いな事とか、色々ね。」

 

「安心しろ、全て特訓のメニューを考える為だからな。」

 

「そっ、そうなんだ・・・・」

 

簪は安心しているのか、ちょっと残念なのか、何とも微妙な表情になっていた。

周りを見てみると全員の表情がどこか怖い。特に専用機持ちたちの表情は異常だ。

1組全員が一夏を狙っていると言う噂は流れていたけど、この雰囲気は本当らしい。

織斑先生の弟で、世界第2位を圧倒する実力を持ち、家事万能、頭脳明晰

周りを引っ張るリーダータイプの優良物件だ、狙わない方がおかしい。

気のせいなのかわからないけど、シャルルも同じ様な表情をしている気がした。

シャルルはホモなのか?それとも純粋に友情なのか?よくわからない。

食事も終わり、ちょっとした食休みに入った所、私は鈴に関する悩みを打ち明けてみた。

 

「一夏、鈴の事なんだけど・・・・」

 

「ああ、そう言えば今日は来ていないよな。」

 

「うん、今朝夢を見てそのまま気分が悪くなっているみたいだったよ。」

 

「夢を見てか?前も鈴がそんな事を言っていた様な・・・・」

 

一夏がそう言うと、1組の何人かは思い出した様に情報を教えてくれる。

 

「そうだったな、鈴がそう言う事を私たちにも言っていた。」

 

「そうでしたわね、最初はトラウマか何かを抱いている程度だと思いましたが、ここまで来るとそうでない気がしますわ。」

 

「僕もそう思うよ、特にその日は春斗を見る目が明らかに怖いから・・・・」

 

箒、セシリア、シャルルの順番に発言していく。

専用機持ちたちも薄々わかっているみたいだった。すると、一夏は私に質問してくる。

 

「ティナ、何か手がかりか何かないか?例えば夢の内容とか・・・・」

 

「そうね・・・・夢を見る鈴は必ずと言っていい程うなされるわね。そして起き上がるとき必ず

“行かないで、楓!!”って言って飛び起きるもの。」

 

私がわかる範囲で言えることを言った。すると、一夏は再び考え込む。

 

「キーワードは“西川さん”と“春斗”か・・・・俺が束さんの元に行く前の2人の仲は

最悪だったからな。」

 

「一夏、それってどのくらい仲が悪かったの?」

 

「そうだな、シャルル。西川さんは春斗に対して唯一反論できた人だし、春斗もそんな西川さん

に対して毛嫌いしていたからな。ハッキリ言ってお互い気に入らない者同士だった。」

 

「正直に言うけど、このままだと鈴はどうなるかわからないの。多分何とかできるのは

一夏だけだと思うから・・・・」

 

「“何とかしてくれ”か・・・・」

 

私は本心を言い、一夏もそれに対して悩みだす。

鈴は私の友達だし、友達が最悪の方向に行く事だけはどうにかしたかった。

少し経って一夏は口を開く。

 

「何とか出来ない事は無い。」

 

「本当!?」

 

「ああ、多分俺にしかできない方法だろうから。その代わりリスクも出るが・・・・」

 

「一夏、ひょっとして・・・・」

 

「多分、簪が考えている事と同じだと思う。」

 

「“あの場所”に連れて行くんだね、確実だと思うけどリスクは高いよ。」

 

「でも他に方法は無い、他に意見があるなら言ってほしいぜ。」

 

「・・・・・・・。」

 

一夏がそう言うと簪は黙ってしまう、どうやら簪は知っていて他に意見が出ない様子だった。

 

「一夏さん、鈴さんをどこへ連れて行くおつもりですの?」

 

「今は言えねえな、その時になったら話す。それじゃあ、早速鈴の所に行って来るぜ。」

 

そう言うと一夏はみんなや簪の制止を振り払う様に行ってしまった。

でも私にはわかった、“一夏なら必ず何とかしてくれる”って。そう思って私は一夏を見送った。

 

 

鈴side

 

夢を見てからしばらく経った今の時間は午前10時、朝食を摂るのには遅い方だけど

何か食べないといけない気がした。

気持ちを落ち着けて、部屋にある軽い軽食(殆どがお菓子)を摂る事にした。

ティナは「太る太る」と言いながらお菓子を食べているけど

偶に食べるなら良いと思うあたしが居た。

少し経って再びドアからノック音が聞こえる。

今部屋にはあたししか居ないからあたしが応対をするけど・・・・

 

「よっ!!」

 

「いっ、一夏!?」

 

突然の想い人登場に驚くあたし、絶対に変な声を出していた。

 

「う~ん、やっぱり顔色が悪いな。まだ落ち着かないのか?」

 

「うん、まあね。それにゴメンね、簪が折角誘ってくれたのに来れなくて・・・・」

 

「いや、良いさ。一緒に飯なんていつだって出来るからな。」

 

「ヘヘヘ」と笑う一夏、その笑顔を見るとあたしは安心する。

それから一夏はあたしに一言声をかけてきた。

 

「鈴、時間はあるか?」

 

「あるけど・・・・どうしたのよ?」

 

「ちょっと屋上に行こうぜ、話はそれからだ。」

 

そう言って一夏は強引にあたしの手を取って部屋から連れ出す。

久々に一夏の手を握ったけどやっぱり男の子、大きくてどこか温かい。

一夏に付いて行き、屋上に到着する。

 

「そう言えば、鈴。今、甲龍と対話できるか?」

 

「出来るけど・・・・どうして?」

 

「対話する時の状態になってほしいんだ、でなければ話が進まない。」

 

「わかったわ、そこまで言うのなら・・・・」

 

そう言って両目を瞑り、対話の為に精神を集中させる。

甲龍と対話出来る様になってからわかったけど、甲龍はのんびりとした性格を持っていて

対話中はいつもゆ~~~~~っくりとした口調なのだ。

集中力が高まっていつでも対話が出来る様になったその時に・・・・

 

「よし!!」

 

一夏が突然、待機状態の甲龍がある右手に触れたのだ。

 

「ちょっ!?いきなり何を・・・・」

 

突然の出来事に目を見開くあたし、すると待機状態の甲龍と紫炎が光輝きだして

あたしは意識を手放した。

 

 

一夏side

 

鈴の甲龍に触れてやって来た試練の間、周りに白い扉が存在する中

簪が通った証である翠色の扉がそこにある。

今はとりあえず、鈴を起こすところから始める事にする。

 

「鈴、起きてくれ。」

 

「う~ん、何よもう・・・・」

 

鈴は起き上がって周りを見渡す、見終わった後に出た声が・・・・

 

「何処なのよ、ここ!!」

 

「やっぱりそう言うよな、簡単に説明するから聞いてくれ。」

 

そう言って俺は鈴に簪と同じ様にここがどこなのか、そして何をすべきかを説明をした。

最初は信じられないと言った雰囲気を出した上

鈴は『The Legendary Dark Knight』を知らなかった為この先、不安がある事がわかった。

簪がここに訪れた時の話になると少しばかり活発になる。

 

「成程ね。だとしたら簪に出来て、あたしに出来ない道理は無いわ。」

 

「その意気だ、それにお前をここに連れてきたのはお前自身の為でもある。」

 

「あたしの為?」

 

「ティナ・ハミルトンからの頼みもあるが、お前が最近暗いからどうにかしたかったからな。」

 

「そっか・・・・」

 

「とにかく、準備をしてくれ。先に進むぞ。」

 

「オッケー、やってやろうじゃないの。」

 

そう言って俺たちはISを展開する。

それと同時に白い扉の1つが桃色に変わり、そこが鈴の部屋である事がわかった。

扉の目の前に立ち、準備を整える。

 

「準備は出来ているか?」

 

「当然よ。」

 

「それじゃあ行くか!!」

 

扉を開くと同時に俺たちは駆け出す。

最初に現れた敵は『スケアクロウ』で腕や足の刃物を使って襲い掛かる雑魚敵だった。

最初、鈴は怯えるのではと思っていたが・・・・

 

「こんのお~~~~!!!!」

 

果敢に斬り込んで行く様子を見る事で俺の不安は思い過ごしだと言う事がわかった。

それからは『メガ・スケアクロウ』や『アサルト』、『キメラシード』など一癖や二癖もある敵を

簪の時よりも早いペースで倒して先に進んで行く。

特に『キメラシード』の寄生行動を見た時の鈴はゲテモノを見る様な目で見ていたのは

当然の反応と言った所か・・・・

部屋を突破して行き、俺個人の目的地である“ある部屋”に到達する。

 

「ようやく、ここに辿り着いたか・・・・」

 

「と言うと、ここが一夏が言っていた、あたしのドッペルゲンガーと闘う部屋なのね。」

 

「そうだ、お前の事だからどんな闇を持っているのかわかるだろう?」

 

「ええ、そして一夏から貰ったあたしの猶予をここで使うって事ね。」

 

鈴がそう言うと俺は黙って首を縦に振った。

ここなら鈴が春斗に対して何故怒りを抱いているのかが丸分かりで隠すことが不可能。

その上、ここで起こる事は俺以外の人間が知る事などあり得ないからだ。

最初は他の方法で聞き出そうと思っていたが、時期的にそうも言っていられない。

それに春斗が関係しているのなら俺も必然的に関係している為、尚更聞かなければならない。

俺はそうした意味を含めて鈴をここへ呼んだのだ。

騙している様で申し訳ない気持ちがあって、殴られても仕方がないと感じていた。

だけど、鈴は俺の考えている事をお見通しの様にこう言い出す。

 

「別にアンタが気負いする理由なんてないわよ。いつかアンタに話さないといけないから

それにこの方が都合が良いくらいだからね。」

 

「鈴・・・・」

 

「それじゃあ、行ってくるわ。」

 

そう言って鈴は檻の入り口に向かい、奥へと進んで行く。

鈴の瞳は怒りや悲しみではなく、覚悟で満ち溢れていて既に答えは見えている様な気がした。

 

 

鈴side

 

檻の入り口を潜って、その先にある鏡と対峙する。

すると、不気味な笑い声と共にあたしのドッペルゲンガーと対面する。

 

「へぇ~、これがもう1人のあたしか・・・・薄暗いだけで瓜二つなのね。」

 

「そうね、それがあたしと言う存在だから。」

 

「この際だから一夏に言ってあげなさいよ。あたしが何故春斗を憎んでいるかを。」

 

あたしがそう言うとドッペルゲンガーは少し悩んだ様子で恐る恐るあたしに問いかける。

 

「良いの?言うと一夏の心が傷付くかもしれないのよ?」

 

「良いわ、一夏はそれを受け入れる覚悟があると信じているから。」

 

「わかったわ、なら聞いて一夏。あたしが春斗を恨んでいる理由を。」

 

「ああ、聞かせてくれ。鈴の心の闇を・・・・そして春斗を憎む理由を。」

 

ドッペルゲンガーは深呼吸をしてそのまま理由を言い出す。

 

「春斗を憎む理由・・・・それは楓を殺したのが春斗だからよ!!」

 

「何っ!?西川さんを・・・・殺した!?」

 

「正確には、楓は自殺したのよ。ある事件をきっかけにね。」

 

「何があったんだ、教えてくれ。」

 

突然の事実に動揺を隠せない一夏、それでも真実を知ろうと身構えていた。

 

「ある事件、それは春斗の手先になった不良たちを楓に襲わせようとしたの。あたしはその事実を偶然知ってしまって楓を守ろうと必死になっていたわ。でも・・・・」

 

「守れなかったのか、西川さんを・・・・」

 

「そう、楓が数馬に告白を実行しようとしたその日に楓は強姦に遭って警察に保護されたわ。

それから少し経って楓はその事件を苦に自殺したわ。」

 

ドッペルゲンガーが言う事実にあたしも一夏も苦虫を噛み潰したような表情になる。

特にあたしは守れなかった事による悔しさで今にも涙を出しそうだった。

それでもドッペルゲンガーは話を止めない。

 

「しかも、楓を救助したのがよりにもよって春斗の奴だった。アイツは楓と不良たちを

自分の名声の為の道具に利用したのよ!!」

 

「この事は千冬姉は・・・・」

 

「知る訳が無いわ、千冬さんがドイツに行っていた時期だったもの!!

それに春斗が仕向けたと言う証拠が無いからアイツは無罪放免のまま逃げられたのよ!!」

 

そう言って、ドッペルゲンガーは拳を地面に叩きつける。

悔しさの表れで地面は陥没するくらいの衝撃がこの部屋に響く。

 

「あたしは悔しかった、楓を守る事が出来ず、数馬の心を傷付けたことを

そして楓と数馬は両想いだったのに手に入る筈の幸せを奪われたことを・・・・

アイツは楓を殺した様なものなのよ!!」

 

ドッペルゲンガーを見ると泣いた様子で地面を叩きつけ続けていた。

それからあたしからその後の事を話し始める。

 

「それからあたしは力を求め続けたの、一夏や楓の様な人を守れるようにね。

でも、それは一夏のせいで出来なくなったわ。アンタがあたしよりも強くなったから。」

 

「それに一夏は春斗との仲を修復したいと思っているから怒りをぶつける事も出来ないもの。」

 

「そうか・・・・」

 

あたしの本心を全てこの場にぶつける。一夏はその事実を知り、罪悪感に陥っている様だった。

でもあたしたちはすぐに一夏にもう1つ考えている事を話す。

 

「でも一夏、あたしは一夏を見てこうも思っているのよ。」

 

「例え、春斗を復讐で殺したとしても楓は戻ってこないし、喜ばないわ。」

 

「だからこそ・・・・」

 

「あたしたちは・・・・」

 

「「この悲しみを味わう人を1人でも多く無くしたいの!!」」

 

「それが・・・・あたしたちの答えだから。」

 

「この部屋に来て、それを再確認出来たから一夏には感謝しているわ。」

 

「それが鈴の心の闇に対する答えか?」

 

一夏が尋ねるとあたしたちは即座に首を縦に振る。

この答えがあたし自身の答えで、きっかけを与えてくれた一夏に対する感謝の念だった。

しばらくしてドッペルゲンガーがあたしに話しかける。

 

「答えを言った所であたしの胸に触れなさい。」

 

「なんでよ?」

 

「新しい力を与えるの、もっと多くの人を救えるためにね。今ならアンタを信じられるから。」

 

ドッペルゲンガーがそう言うとあたしはすぐに胸を触れる。

するとドッペルゲンガーが光り輝きだし、2つの武器がこの手に揃っていた。

 

「籠手と大斧?名前は・・・・『イフリート』と『アービター』か。」

 

どうやらこれがドッペルゲンガーが言っていた新しい力らしい。

『イフリート』を試しに使ってみると装備した瞬間、籠手から炎が激しく燃え始めて

そのまま、拳を振るい始める。

普通にストレートを3発出した上、アッパーを仕掛ける。

構造上、チャージが出来るみたいで試してみると明らかに威力が上がっている事がわかった。

次に『アービター』を使ってみると、非常に重く使い勝手が難しい。

だけど、武器の説明で衝撃波を放つ事や盾を持つ敵や重装甲の敵への攻撃には

貫通性能を持っている事を知った。

これならゴーレムの様な相手が来ても対抗可能である事を知ったのだ。

キリの良い所で檻が部屋の床に収納されていき、一夏が近づいて来る。

 

「鈴、すまなかった。」

 

「なんで謝るのよ。」

 

「今回の件と西川さんの件さ、俺のせいで・・・・」

 

「そんな事ないわよ。さっきの言葉に嘘は無いし、楓もきっと天国からあたしを応援してくれると思うから・・・・」

 

「そうか、一応スペックデータを確認するが・・・・やっぱり同じ現象が起こるか。」

 

スペックデータを見ると第3世代とは思えないデータになっていて

「リアルタイムスタイルチェンジシステム」や「チャージショット」も使える様になっていた。

簪の打鉄弐式も同じ現象が起こり、結果同じ様にオーバースペックになっていた。

 

「まあ良いわ、その時はその時だし。あたしはあたしの闘いをするだけだからね。

その前に新しく入手したものを教えなさいよ。」

 

そう言って一夏を安心させる。

この部屋での出来事、楓の事を胸に刻み、あたしは前に進み続ける。

あたしの闘いを行う為に・・・・

 

≪To be continued…≫

 


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