インフィニット・ストラトス Dark Knight Story   作:DASH君

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プロローグ01

世の中は常に不公平だ・・・・

世の中では褒め称えられる人と蔑まれる人が常に居る。

特に俺の場合は酷いなんてものじゃなかった。

優秀な姉と優秀な兄に囲まれて常に比べられて生きてきた。

何の取り柄のない俺は常に周りから蔑まれる日々を送り心をボロボロにしながら生きてきた。

俺がやることを必至で努力しても全てが2人以下の出来しかなく長続きしたこともなかった。

家に居ても兄は俺を蔑み肩身が狭いことが多かった。

『インフィニット・ストラトス』通称ISと呼ばれるパワースーツの存在で

俺の状況は更に悪化させることになった。

姉が第1回IS世界大会(モンド・グロッソ)に総合優勝したことで余計に立場が悪くなり

さらに心をボロボロにして生きる事になった。

そして俺は思った“俺は居ない方が良いのでは?”と・・・・

姉にその事を話したら俺を叱って抱きしめる。

そして姉は俺に『何があっても家族は守る。だからそんな事を言わないでくれ。』と

言ってくれた。

俺は嬉しかった。“俺は居ても良いんだ!!”と思い姉を信じ続けた。あの日が来るまでは・・・・

 

 

一夏side

 

俺は今、廃工場の中で身動きが取れない状態になっている。

姉の第2回IS世界大会(モンド・グロッソ)の応援のために兄弟揃って応援に訪れたが会場に入る

その時に俺だけが捕まってしまったのだ。

テレビの映像を見ると兄は知らない顔をして観戦しているのが見えた。

その様子を見た誘拐犯の1人が俺を問い詰める。

 

「おい!! お前は織斑 春斗か!?」

 

「俺は一夏・・・・織斑 一夏だ。」

 

「なんてこった!?あれだけ苦労して捕まえたのは出来そこないの方だったなんて!!」

 

「そりゃないぜ!!弟を誘拐しちまえば姉が棄権するって言っていたのに!!」

 

「所詮、織斑 千冬も1人の人間。欲を優先するって事だな!!」

 

この時、俺は理解した“俺はいらない人間だったんだ。”と

千冬姉も俺の事が邪魔な存在だったんだと・・・・

そう思うと心の中で何かが砕けた感じで全身から力が抜け、抵抗する気もなくなっていた。

すると誘拐犯の1人が銃口を俺に向けてきてこう言ってくる。

 

「坊主、恨むなら腐った世の中と見捨てた姉を恨むんだな。」

 

“もうどうにでもなれ”・・・・それが心の奥底に眠っていた言葉だった。

俺が居ない方が幸せなら、居ない方が良いに決まっている。

そう思うと不思議と死の恐怖は無かった。

 

「あばよ、坊主。」

 

誘拐犯が銃の引き金に手をかける。ああ、短い人生だったな・・・・

目を瞑り、やっと苦しみから解放される。そう思った矢先だった。

“パスッ!!”

小さな音が数回聞こえたのがわかり、目を開くと誘拐犯たちは呻き声をあげながら倒れていった。

2つの足音がこっちに近づいて来ているのがわかり、1人はそっと俺の頬を撫でた。

頬を撫でた人は長い金髪をした女性で香水か何かを使っているのかとても心地よい香りがした。

 

「可哀想に・・・・世間からも家族からも見捨てられて。オータム、状況は?」

 

「全員麻酔銃で眠らせたぞ。全く“殺すな”って言ったのによぉ~。

それでスコールは何してんだ?」

 

「この子を見ているの、見捨てられたショックで心が完全に壊れてしまったみたい。」

 

「確かに眼が死んでるな。世間から虐げられて、家族から見捨てられて悲惨だな・・・・」

 

「そうね、でも私は彼がここからどう復帰するか楽しみよ。」

 

「あ”あ”ん!?」

 

「良い、坊や?今までは悪かったかもしれないけど、これから貴方がどうなっていくか

また会える日まで楽しみにしているわ。」

 

「スコールに気に入られちまったか、大した小僧だな!!」

 

そう言って2人は去ってしまった。何だったんだろう?

だけど、今はそんな事はどうでも良かった。

これからどうなるのかわからない、ただ身動きがとれないまま時間だけが過ぎていく。

しばらくして、爆音と共にある人物が俺に声をかける。

 

「いっくん!!」

 

ISの生みの親である篠ノ之 束、その人だった。

 

「いっくん、無事だった!?大丈夫だった!?」

 

「・・・・・・・。」

 

「いっくん? どうしっ!?」

 

流石に束さんも今の俺の状態を見て驚きの表情をしていた。

 

 

束side

 

私はいっくんの顔を見て、怒りと悲しみと後は何て表現したら良いかわからなかった。

とにかく今はいっくんを安心させないといけない。私はすぐにいっくんを抱きしめる。

 

「辛かったよね、苦しかったよね。遅れてゴメンね。」

 

「・・・・・・・。」

 

私はこの時にはっきりした。まるで人形になったかの様に反応がない。

この状態はいっくんの心は完全に壊れてしまったんだと知ってしまった。

私と彼の付き合いは親友である“ちーちゃん”こと織斑 千冬と出会った頃からだった。

当時のいっくんはまだ活発な男の子だったがちーちゃんや“はるくん”こと織斑 春斗と

常に比べられて日に日に元気がなくなっていくのがよく分かった。

ちーちゃんにこの事を言っても「家族の事を口出しするな。」の一点張り

誰もいっくんの事を見ようとしなかった。

このままだといっくんの心が壊れてしまう

そうならない為に私は何があっても彼の味方でいようとしていた。

そして今、恐れていた事態に直面してしまった。

いっくんの心を守れなかった・・・・そう思うと私は悔しさで涙が止まらなかった。

彼の心に届くかどうかがわからない励ましを私は送り続けていた。

少し経ってようやく救助の人がやってくる。

 

「一夏!!」

 

やってきたのは私の親友ちーちゃんこと織斑 千冬だった。

でも今の私はちーちゃんに対する怒りも抱いていた。

 

「束!?束なのか!!」

 

「ちーちゃん・・・・私前々から言ったよね?“いっくんの事をちゃんと見て”って。」

 

「ああ、ちゃんと見ていたぞ。だから・・・・」

 

「“ちゃんと見ていた”?ちゃんと見ていたらどうしていっくんがこうなるのさ!!」

 

「っ!?」

 

「いっくんはずっと辛かったのに、誰にも言えなくて、ボロボロになりながら我慢して

それなのに周りはいっくんを傷つけて・・・・」

 

多分、過去にちーちゃんにも見せた事が無い表情になって自分でもわかるくらい涙を出しながら

ちーちゃんを批難していると思う。

自分らしくないくらい、ちーちゃんに言いたい事を言いまくって只々怒りをぶつけていた。

ちーちゃんも私の言い分を聞きながら変わり果てたいっくんに近づき嘆いていた事がよくわかる。

その様子を見てちーちゃんだって必死になっていっくんを探していた事がよくわかった。

しばらく沈黙が続いたけど、ちーちゃんが沈黙を破った。

 

「一夏、済まなかった。家に帰ってゆっくり休もう。」

 

「ちーちゃん、私思う事があるんだけど。」

 

「なんだ束?」

 

「いっくんをこんな風にしたのは世間だから家に連れ帰ると余計に酷くなると思うんだ。」

 

「なんだと!?」

 

「だって、私が覚えている限りじゃあいっくんが安心できる場所なんてどこにもないもの。

それにはるくんもいっくんの事を邪魔者扱いしていた訳だから尚更だよ。」

 

「ならどうする気だ?」

 

「しばらく、私のラボで匿うよ。一応、世間から遮断されていて何言われようと届かないから

ゆっくり休める。」

 

「しかし・・・・」

 

「それに今のちーちゃんにいっくんを任せられない。もう少しいっくんと

真剣に向き合うべきだよ。」

 

「・・・・・・・。」

 

「私はそろそろ行くね。ちゃんと向き合えるように覚悟を持ってね、ちーちゃん。」

 

「あっ!?束!!」

 

ちーちゃんの言う事を無視して私はいっくんを連れ帰る事にした。

多分、私とちーちゃんはお互い後悔の念といっくんの事を考えている。

これからどうなっていくのか誰にもわからないけど

少なくともいっくんの心を休めることだけでも出来る筈だと私は思った。

 

≪To be continued…≫

 


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