ソードアート・オンライン~死変剣の双舞~   作:珈琲飲料

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一か月のサボりを挽回するかのごとく投稿
読者様によっては一部ゲロ甘につき珈琲を推奨。壁ドンの危険性もあり
それでは8話です!どうぞ!


8話 うわっ・・・わたしのステータス、低すぎ・・・?

第一層<はじまりの街>を転移先に指定したのは久しぶりだった。

普段は声に出すことのない単語を転移門の前で発音、転移が完了すると俺は転移先である広場から街並みをぐるりと見渡した。

 

上層にいくにつれてフロアの面積が狭くなるアインクラッドでは<はじまりの街>が面積、機能ともに最大の街ということになる。しかしハイレベルなプレイヤーになればなるほどここをベースタウンにするものはいない。この街を独占している軍の横行を理由のひとつだが、それ以上にこの街に立ち、空を見上げると、どうしてもあの日のことを思い出してしまうのだ。

 

―――――すべてが終わり、すべてが始まったあの日を―――――

 

「カエデ?」

 

俺の手を握りながら心配そうに見つめるユウキ。

 

「なんでもないよ」

 

感傷を振り払うように深呼吸しながらユウキの手を握り返す。

もう一度上空に広がる石の蓋――第二層の底を見たときに感じた痛みは、横にいる少女のおかげかほんのわずかなものになっていた。

 

「なあユイ、見覚えのある建物とかあるか?」

 

キリトに抱かれるユイの顔を覗き込み、聞いてみる。もし該当するものがあったらなにか思い出すためのきっかけになるかもしれない。

 

「うー・・・・・・」

 

ユイは難しい顔で広場から見える建物を眺めていたが、やがて首を振った。

 

「わかんない・・・」

 

「まあ、はじまりの街はおそろしく広いからな」

 

キリトがユイの頭をなでながら言った。・・・・・・ああ、親子や。

 

「あちこち歩いてればそのうちなにか思い出すかもしれないさ。とりあえず、中央市場に行ってみようぜ」

 

「そうだね」

 

頷き合い、ユイを連れて俺たちは南に見える大通りへ歩き始めた。

 

 

 

ユイを抱きながらキリトとアスナが先行している。傍から見たら親子で遊びに来ているようにしか見えない光景を見ていると

 

「ねえ、カエデ!」

 

俺と同じくキリトたちのピンクな空間を眺めながら唐突にユウキが話しかけてきた。

 

「どうした?」

 

いつになく真剣な面持ちなので何かあったのかと思い、心配になる。

 

「結局SAOって子供はつくれるのかな?」

 

心配した俺が馬鹿だった・・・

 

「落ち着けってユウキ。ユイはキリトたちの子供じゃないから」

 

どうにかしていつものユウキに戻ってもらおうと言葉をかける。

 

「それはそうだけど・・・でもまだできるかどうかは分かってないじゃん!そうだ!カエデ、確かめてみようよ!カエデがいいんなら今ここでも―――」

 

「だから落ち着けって!ユイちゃんがいるから!子供に悪影響だから!」

 

結婚してから急に元気を増したというか暴走したというか・・・

ユウキを落ち着かせるのに数分のロスとキリトとアスナからの冷ややかな視線をいただいたのは仕方ないよね・・・

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

場所は変わって現在、はじまりの街、東五区。

あのあとマーケットのほうにいって男のプレイヤーに聞き込みをしたら教会で大勢の子供が保護されているという情報を得ることができた。

そこでキリトたちとはいったん別行動。キリトたちはそのまま教会へ向かい、俺とユウキは周辺に聞き込みを行っているわけだ。

 

「うぅ・・・なんであんなことを・・・」

 

俺の隣でユウキが顔を赤くしながら先ほどの発言を悔やんでいる。まあユイを連れてるキリトとアスナを見て、思うところがあったのだろう。

 

「気にするなって」

 

そんなユウキをなだめるために頭をなでながら声をかける。

 

「カエデ・・・ボクのこと嫌いになったりしてない?」

 

目に涙を溜めて心配そうに聞いてくる。

 

「そんなこと万に一つ、天地がひっくりかえってもないよ」

 

だから言ってやる。

 

「暴走気味のユウキもいつものユウキも全部大好きだ。もしまだ違う面があったとしてもそこだって好きになってやる」

 

ユウキを抱き寄せながら落ち着かせるようにゆっくり声にだす。

 

「カエデ・・・」

 

そしてどちらからともなく顔が近づく。徐々に顔を傾け、唇が相手のそれへと触れようとした瞬間。

 

「誰か助けて!」

 

近づいてくる声に思わず体を離した。せっかくいいところだったのに・・・

声からして子供か?

 

「どうした?」

 

走ってくる子供になにがあったのか聞く。パッと見、小学生高学年か・・・

俺の言葉を聞いてその少年が息をきらせながら叫ぶ。

 

「ギン兄ィたちが、軍のやつらに捕まったんだ!!」

 

「―――場所は!?」

 

さっきまでの態度はどこへやら。戦闘中もかくやという表情でユウキが少年に場所を訊く。

 

「すぐ近くの道具屋裏の空き地。軍が十人くらいで通路をブロックしてる。」

 

「わかった。お前はすぐにほかの助けを呼んで来い」

 

「わかった!」

 

それだけ聞くと、俺もユウキも武装をして風のように通路を駆けた。

 

 

最短距離をショートカットするためにNPCショップの店先や民家の庭を走り抜ける。

そのまま進んでいくと。前方の細い通路を塞いでいるプレイヤーの集まりが見えた。

装備の配色からみて軍で間違いないだろう。

 

「ユウキ」

 

「うん!」

 

敏捷力と筋力補正全開で地面を蹴る。軍の連中の頭上を軽く飛び越え、そのまま四方を壁に囲まれた空き地に着地した。

 

「ユウキ、子どもたちはまかせた」

 

着地と同時にユウキに小さく囁くと俺はまだ呆然としている軍の連中に話しかける。

 

「子どもにカツアゲして恥ずかしくないの?」

 

「人聞きの悪いことを言うなよ。社会常識ってもんを教えてるだけさ」

 

「そうそう。市民には納税の義務があるからな」

 

悪びれる様子もなくゲラゲラ笑う軍。まあこんなんじゃ怒らないか。

 

「いや俺が悪かった。お頭の弱い連中には難しすぎたな。馬の耳に念仏だったわ」

 

「はぁ!?なに言ってんだてめぇ!」

 

・・・・・・かかった。やっぱこういう連中はやりやすい。

 

「なんだ図星か?本当のことを言われ怒る。バカのやることだ。まったく話にならん」

 

こうなってしまえばこっちのものだ。あとは相手の怒りを誘う言葉を選んでしかけさせる。

もうひと押しってとこか。

 

「単純、沸点が低い、感情制御をろくにできず。年端もいかないガキに図星を突かれ怒る。

これが軍(笑)という組織なら弱体化も納得だな」

 

「黙って聞いていればっ・・・!!」

 

怒りが臨界に達したのかリーダー格の男が剣を抜いて斬りかかってくる。

訓練しかしていないのかその動きは遅く、お粗末なものだった。

 

「・・・そっちからだから正当防衛な」

 

攻撃を避けて通り過ぎざまにつぶやく。

 

「お・・・お・・・?」

 

あっさり避けられたのが信じられないのか口を半開きにしたままの男に向かって、全力の剣撃をたたき込む。

 

爆発のような衝撃音。それを阻む紫色のウインドウ表示。いかつい装備をした男は大きく仰け反り、数メートル先に吹っ飛んでいった。

 

今相手に放ったソードスキルは<アーマー・ピアス>。短剣スキルにおいて最もはやく習得可能な技でなおかつ威力が低い技でもある。普通あそこまで飛ばないはずなんだが、相手のステータスが俺の予想していたものより低かったのだろう。

なにが起こったのか分からず、男は呆然と目を見開いたままその場に尻餅をついた。

 

「理解する必要はない。どうせダメージもないし・・・ノックバックはあるか」

 

男の前まで近づくともう一度、剣を閃かせた。再度の衝撃。轟音。男の体はさっきよりも遠くに飛んだ。

 

街の中、つまるところ圏内では犯罪防止コードが働いて武器によるダメージが通らない。

しかし、攻撃者のステータスやスキルが高いとそれに伴って警告ウインドウの発光とノックバックが大きくなる。慣れない者にとっては耐え難い恐怖と苦痛になるだろう。

 

「ひあっ・・・や、やめ・・・」

 

地面に打ち倒されるたびにリーダーは情けない悲鳴を上げた。

 

「お前らっ・・・見てないで・・・なんとかしろっ・・・!!」

 

リーダーの声に、ようやく我に返った軍のメンバーが、次々と武器を抜いた。

通路を塞いでいたブロック隊も緊急事態を察して走り込んでくる。

ちょうど十人だろうか。周りを囲むようにして武器を構える男たちに、俺は眼を向けた。

地面を蹴り、集団に斬りかかる。

たちまち空き地には轟音と軍メンバーの悲鳴が響いた。

 

およそ数分後

我に返ってあたりを見ると空き地には数人の軍のメンバーが放心して転がるのみだった。

謝罪の言葉をブツブツ呟いているやつもいる。

 

「おい」

 

「ひっ・・・!」

 

「次に子どもたちに手を出したら容赦しない」

 

すでに容赦してないような気がするが釘はさしておくべきだろう。

一番近くに転がっていた男を無理やり起こして睨みながら警告しておく。言葉が終わるのと同時に軍の連中は全力で走りながら逃げていった。

 

「ふう・・・」

 

大きく息をついて、剣を鞘に収めると―――――そこには絶句して立ち尽くすキリトとアスナ、子どもたちとその保護者らしきプレイヤーの姿があった。

 

「・・・・・・」

 

先ほどの光景はさぞかし子どもたちを怯えさせただろうと思い、どうしたものかと頭をかく。

 

だが子どもたちの先頭に立つ少年が目を輝かせながら叫んだ。

 

「すげぇ・・・すっげぇよ!あんなの初めて見た!!」

 

「カエデはすごく強い、って言ったでしょ」

子どもに笑いかけながらユウキが進み出てきた。右手には剣を持っているので何人かはユウキが相手をしたらしい。

 

「お疲れカエデ」

 

「おう、ユウキもお疲れ」

 

俺の言葉を皮切りに、子どもたちが歓声を上げて一斉に飛び込んできた。その時

 

「みんなの・・・みんなの、こころが・・・」

 

か細い声が空き地に響いた。ユイの声だ。宙に視線を向け、右手を伸ばしている。明らかに様子が変だ。

 

「ユイ!どうしたんだ、ユイ!!」

 

キリトが叫ぶがユイはきょとんとし

 

「ユイちゃん・・・何か、思い出したの!?」

 

アスナも慌ててユイに駆け寄る。

 

「・・・あたし・・・あたし・・・あたし、ここには・・・いなかった・・・。ずっと、ひとりで、くらいとこにいた・・・」

 

何かを思い出そうとユイが顔をしかめる。突然

 

「うあ・・・あ・・・あああ!!」

 

ユイの体が激しく揺れ、悲鳴が迸った。

 

「にぃに・・・ねぇね・・・ママ・・・!!」

 

こちらに伸ばしてくる手を握り必死に声をかける。

アスナはキリトからユイを抱き上げ、ぎゅっと抱きしめる。

 

「しっかりしろ!ユイ!」

 

「しっかりしてユイちゃん!」

 

数秒後、怪現象は収まり、ユイが力なくアスナに倒れ掛かる。

 

「なんだよ・・・今の・・・」

 

キリトの呟きが静寂に満ちた空間に響いた。

 




カエデの煽っていくスタイル(笑)
どうしてこうなった・・・
ユウキの暴走もあれだしカエデの言葉もくさい・・・書いていて体中がかゆくなったり口から砂糖が出たりしてました。

ども作者の珈琲飲料です。
最後まで閲覧ありがとうございます!第8話、いかがだったでしょうか?
わたしが感じたのは上述のとおりです。はい(笑)
なんかあの二人結婚してからイチャつき過ぎだと思うんです←おい、書いてる本人
展開としては若干原作とは変えたつもりですがまあ・・・お察しください(汗
ご意見・ご感想お待ちしております!それではまた次回お会いしましょう!

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