ソードアート・オンライン~死変剣の双舞~   作:珈琲飲料

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まだGWです!セーフです!
今年は5連休でしたが皆さんどう過ごしたでしょうか?わたしは両腕が日焼けして結構つらかったです(笑)お出かけの際はクリームの用意を!

そういえばちょくちょくレコンのことを書いてますが原作を読み返すと、あの子出発前にあんまり重要なこと言ってないんですよね……

まあいっか! ※よくないです

うちのところのレコンはいいこと言ったってことにしよう(笑)


それでは第25話です!どうぞ!


25話 若者の人間離れが心配である

 

「……誰かにつけられてる」

 

<ルグルー回廊>と呼ばれる洞窟に入って2時間、出現するモンスターとの戦闘を終えた俺は他の3人にギリギリ聞こえるボリュームで追跡者の反応を告げた。

 

「やっぱりか」

 

まるで予想していたと言うように頷くキリト。そしてそれとは対照的にリーファは首を傾げる。

 

「つけられてるって……。どうしてそんなことが分かるの?」

 

「勘だ」

 

即答する俺にリーファがズッコケて

 

「いやいや不確定要素すぎるでしょ!」

 

すかさずつっこみを入れる。

 

「いやーこれがなかなか馬鹿に出来ないんだよな……」

 

しみじみと呟く俺にユウキとキリトもうんうんと頷く。勘と言われれば頼りないものに思いがちだが実際は違う。培ってきた経験、踏んできた場数から生み出されるのが勘であって、いい加減な思いつきを勘とは言わない。その辺はSAOで鍛えられたといってもいい。

 

「それに追跡されてるって仮定すれば出発前の警告にも説明がつく」

 

「出発前ってレコンの?」

 

「ああ。ついでに確認をとってみようか」

 

リーファの問いに頷き、キリトの肩に乗るユイに視線を向ける。自然とリーファもユイのほうを向いて――

 

「――はい。にぃの予想通り敵と思われる反応があります」

 

目があったところでそう言った。驚いたままのリーファにさらにユイは続ける。

 

「人数は……12人」

 

「じゅうに……!?」

 

「……小隊くらいの人数だね」

 

絶句するリーファ、そして少し驚いているが楽しそうに笑うユウキ。敵じゃない可能性もなくもないがそんな希望的観測は早めに捨てたほうがいいだろう。

 

「今から全力で走れば逃げ切れそうだけどなー。それだと――」

 

「負けたようで嫌なんでしょ?」

 

分かってるよ、と言わんばかりにユウキが言葉を紡ぐ。

 

「その通り。相手さんに聞きたいこともあるしな」

 

逃げるという選択肢が無くなりつつある雰囲気に、半分呆れながらリーファは口を開く。

 

「はあ……でも戦うなら場所を変えましょ。洞窟を抜けた先が開けた場所になってるはずだから」

 

どこか投げやりなセリフに苦笑しながら答える。

 

「すまんな。でも一応作戦も考えてるから大丈夫。まずは――」

 

申し訳程度の謝罪を混ぜつつ、俺は3人の妖精に打倒レイドの作戦を話し始めた。

 

 

 

 

 

ひんやりとした冷たい空気と水が支配する空間、緊迫した状況を崩すように一人の男が口を開いた。

 

「へえ、逃げずに待ってくれてるとはね」

 

多少の疑問が顔に出ているものの、自分たちが有利な状況にあると判断した赤甲冑のプレイヤーは、にやにやと意地の悪い笑みを浮かべていた。

 

「……セリフと表情が完全に悪役ですよ?」

 

どこのB級映画だよ……と心のなかで悪態をつく俺にサラマンダーの隊長らしき男は笑みを崩さず答える。

 

「いやぁ、あながち間違ってないよ。なにせ4人の君たちを12人がかりで襲おうとしてるわけだから」

 

「罪悪感を感じてるのならここで引いてもらえ――」

 

「それはできないな、上からの命令なんで。さて……」

 

杖を俺に向けて急に黙り込むサラマンダー。それに合わせて周りのプレイヤーも各々の役割を果たそうと構え始めた。

 

「内訳は……タンクが3人とメイジが9人」

 

「予定通りだな」

 

「だな……それじゃあ手筈通りに始めようか」

 

陣形はリーファを後衛、残りを前衛に置いた超攻撃型。持久戦になれば不利になるこの型は短期決戦で戦闘を終わらせること意味している。

 

軽重さまざまな金属音を響かせ剣を抜き、それぞれがこれまで洗練させてきた構えをとる。そして腰を落とし―――

 

『――ッ!』

 

地面を蹴った。加速していく3人の剣士は音を置き去りにするかの如く運動エネルギーを増大させていき、敵との距離を縮めていく。

 

「――セイッ!」

 

剣の間合いに入った瞬間、津波、あるいは閃光のような勢いで刃が炎妖精に襲い掛かる。しかし先手必勝を体現した攻撃は相手の体力ゲージを2割ほど減らすだけで勝敗を分ける決定打になりえなかった。

 

「やっぱり盾が邪魔だ――っ!?」

 

厄介だなと呟くよりも先に、相手タンクの背後からオレンジ色の火球が弾幕となって飛んでくる。攻撃を終えたばかりの完全な硬直時間を狙って放たれた魔法は俺を含むキリトとユウキの身体を包み込み、いくつもの爆発を巻き起こした。薄暗かった洞窟を真っ赤に染め上げる爆炎はHPバーを一瞬で緑色から黄色まで消し飛ばす。

 

「うぅ……なんか変な気分だよ」

 

魔法の直撃という味わったこととのない不快感に感想を漏らすユウキ。表示されているHPバーは俺と同じく危険域に達していた。

 

「たしかにこれはそうそう食らいたくないな……っと回復か」

 

顔をしかめるユウキに苦笑しながら同意していると身体が柔らかい光に包まれる。現れた光は数秒ほど身体を覆い、危険域に落ち込んだHPを安全域まで押し戻す。後衛でリーファが回復魔法を唱えてくれたのだろう。

 

「あれを凌ぐなんてやっぱりやるねぇ……」

 

声の主は敵タンクの背後から、戦闘前にB級の悪役を演じたサラマンダーの隊長だ。

 

「でももう一杯一杯でしょ。シルフの後衛ももうマナが尽きかけてるみたいだし」

 

「……否定はできませんね」

 

危険域からあそこまでHPを回復させるにはよほどの高位回復魔法じゃないと不可能だ。

そしてそれを連続で3人に使用……相手の言う通りリーファのマナはおそらく空っぽに近いはず。

 

「というわけでそろそろ大人しくやられてくれないかな?」

 

勝利を完全に確信したのか、優しく諭すような声で俺たちに話しかけるサラマンダー。傍に控えるメイジたちもにやにやと笑いながら俺たちが降参するのを待っている。

 

「素直に従ってくれるならアイテムまでは――」

 

「おじさんたち、右」

 

突然、左方向を指さしながらサラマンダーたちに話しかけるユウキ。それに従って小隊の視線も動き――

 

 

 

「……なにもないじゃねーかお嬢ちゃん」

 

右に広がる、特に変化もない湖面を見つめて再び視線を戻そうとするサラマンダー。

 

「へへっ、嘘はよくな―――」

 

言いきろうとした直後に反対方向――ユウキから見て右の方角からまばゆい閃光が迸る。事前に話していた通りのタイミングで放たれた強烈な光は、瞳を手で覆い隠す時間を与えずサラマンダーの小隊に視覚的負荷ととなって襲い掛かった。

 

「くそっ、これ、は……目くらまし……か!?」

 

「目が、目がぁ~!」

 

突然視覚という情報源を失った12人は突如現れた暗闇を振り払うように、持っている武器を振り回しながら暴れる。十人十色の反応をするサラマンダーたちに短くごめんねー、と棒読みもいいところのトーンで謝るユウキ。

 

「あーボクたちから見て右だったよー」

 

「ナイスだユウキ。でもなかなかに鬼畜だな……」

 

「えへへ、カエデみたいだったかな?」

 

悪戯が成功したように笑うユウキを見て成長が嬉しいような、悲しいような、複雑な気分に包まれる。……てか俺の戦い方ってそんなに鬼畜だっけ?

 

「とりあえず話はあとだ!カエデ、ユウキ!」

 

これまでの戦い方を軽く振り返っていると、次の一手を打とうとキリトが駆け寄ってくる。

 

「考えるのは後回しだな。ユウキ、キリトの魔法に合わせるぞ!」

 

「うん!」

 

スペルワードを詠唱しながら剣を掲げるキリト。その剣に重ねるように俺とユウキも剣を掲げ、呪文の詠唱に入る。

 

『―――――――』

 

ぎこちなく発声されていくスペルは徐々に重なっていき、詠唱が終盤に差し掛かるにつれて三人の妖精を黒い煙が覆う。少し遅れて視力を回復したサラマンダーが魔法のキャンセルを試みようと火球を放ってくるが、リーファが最後のマナを振り絞ってそれらを防ぐ。黒煙に火炎が混ざり合い、地獄を思わせるような煉獄の渦が巻き起こる。そしてそれがゆっくりと静まっていき―――

 

 

「キシャァァァァァァ!!」

 

雄叫びと共に死の鎌を携えた骸骨百足が火炎の中からあらわれた。

 

 

 

 

 

―☆―☆―☆―

 

 

「12人のうち、おそらく大半はメイジだろうな。割合は3:1ってところか」

 

「それって……」

 

黙り込むリーファにキリトが声をかける。

 

「たぶんリーファが考えてるのであってるぞ。対人用じゃなくてボス用のパーティ構成。それも物理特化タイプのボスを相手取るときの人選をしてくる」

 

「どうしてそこまでわかるの?」

 

信じられないといったふうに聞いてくるリーファにひとさし指を立ててキリトが説明する。

 

「敵は俺たちが接近戦に強いことを知っているからだ。狩りをする以上、敵の情報を知るのは基本的なことだからな」

 

そしてそのままキリトの言葉を引き継ぐ

 

「だからこそ白兵戦はおそらくしてこない。勝てない接近戦より、遠距離から魔法を撃ってるほうが効率がいいから」

 

前衛はガッチガチのタンクで固めてくるだろうな、と締めくくると今度はユウキが心配そうに声を上げた。

 

「でもカエデ、どうやってそんな人たちに勝つの?」

 

不安そうな声色。そんなユウキに大丈夫だよ、と安心させるように言い聞かせて3人に作戦を告げる。

 

「作戦は不確定要素、精神面に揺さぶりをかける」

 

『精神面……?』

 

これはSAO時代に俺がよく使っていた戦法だ。挑発による感情の高ぶりで相手の攻撃を単調化させ、自分に有利な戦局に持ち込む。使っていたのは喜怒哀楽の怒にあたる部分だが、今回は違う。そもそも怒り狂われて魔法を連射されたら本末転倒である。

 

「相手は自分が絶対的な勝利にあると思い込んでるからな。ボス用のパーティー編成をしてるのも狙いどころだ。相手は人間だけ、戦うのはモンスターじゃないって固定観念が根付いてるはずだ。今回はこの2つを揺さぶる。使うのは――」

 

後から聞いた話だがこの時の俺の顔はかなり怖いものになっていたらしい。

……なぜだ?

 

 

 

 

 

―☆―☆―☆―

 

 

「キシャァァァァァァ!!」

 

「うわああ――――!!」

 

轟くような雄叫び、空間が震える大音量に凍りついたように動きを止めていたサラマンダーたちが悲鳴を上げる。武器を投げ出して逃げ惑う者や、湖に安息を求めて飛び込もうとするもの。獄炎から突如として現れた死神にサラマンダーの小隊は完全に瓦解していた。

 

「ひっ!ひいっ!!」

 

恐ろしいスピードで動き回っては両手の鎌を振るい、一振りで命を刈り取っていく。

一人、また一人とエンドフレイムを散らしていく仲間を見て冷静な判断を下せるものはもういない。

 

「た、退却!たいきゃ――」

 

言い終わらないうちに死神は大きく跳躍。地響きを立てて着地したのは集団の真っ只中、退却命令を出そうとしていた隊長の目の前だった。

 

「あ……あ……」

 

そこから先は戦闘とよべるものではなかった。

 

 

 

 




第25話、お読みくださってありがとうございます!いかがだったでしょうか?

カエデ「今回はスッキリしたな」

ユウキ「楽しかったよね!」

珈琲「いやいや、自重しなよ君ら。さすがにやり過ぎでしょ……」

カエデ・ユウキ「自重したら負けかなって思ってる」

珈琲「原作だと回廊のところでグリームアイズに変身する伏線が書かれてたのに」

カエデ「俺たちが変身したのも十分悪魔だろ」

ユウキ「反省も後悔もしてないよ!」

珈琲「反省くらいはしなさいよ……(困惑)」



前回までに評価をしてくださった素敵な読者様のご紹介

コーラメントス 様         龍雄 様

ユーキリス 様           こみる 様

山ちゅう 様            西宮鶫 様

評価ありがとうございました!
不備がないようにこちらで確認しておりますが、もしかしたら抜けがあるかもしれません。評価したのに名前がないよ!という方がおられましたらお手数ですがご報告よろしくお願いします。

ご意見ご感想お待ちしています!それでは次回、またお会いしましょう!


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