そして相変わらずの展開の遅さ……
でも5月中にはALO編を終わらせたいという目論見がありまぁす!
それでは第24話です!どうぞ!
大空を自由に飛び回れる。これを売り文句にしたALOにおいて飛行時間が設定されているということは致命的である。
しかし、それでも飛行という要素は移動、戦闘において重要な手段であった。
特に移動に関しては歩くよりも数十倍の効率の良さを発揮する。ならその効率の良い方法をどれだけ長く持続させるかがミソと言えるだろう。
「風の塔はかなり高いからな。高度もそれなりに稼げそうだ」
高いところから飛行を始めれば距離を稼げるというシンプルかつ真理な意見により、装備を整え終えた俺たちはシルフ領で最も高い建造物、風の塔まで来ていた。
「うん!それに何度見ても綺麗だよねー」
そびえ立つ翡翠の塔を見上げながら感嘆の声を漏らすユウキ。シルフであるリーファも何度も見る塔に改めて美しさを感じているのだろうか、黙ったまま眺めていた。
「……うへぇ」
そして情けない呟きを漏らすのはキリト。一人だけ嫌そうな顔をしながら塔を眺めていた。視線の先は塔の中腹あたり、昨夜激突したポイントだ。
「出発する前に少しブレーキングの練習しとく?」
「……いいよ。今後は安全運転することにしたから」
リーファの提案を憮然とした表情で断るキリト。本当にー?と聞き返しながら、くるりと身体を塔に向けたリーファはキリトの背中を押して歩き出した。
「じゃあ行こ!夜までに森は抜けておきたいね」
「俺たちはまったく地理がわからないからなあ。案内よろしく」
「任せなさい!」
トンと胸を一回叩いてからリーファはもう一度翡翠の塔を見上げた。
塔に入ってからは何事もなく……という風には進まなかった。一悶着あったのだが言ってしまうと未練たらしい男の戯言だ。特に表記することなし。哀れなりシグルド。
強いていうならシグルドが最後に放った捨て台詞と出発前にレコンから告げられた警告が気になったってところか。
「まあ、今考えることでもないか」
頭の中に残る懸念を振り払うべく、目の前にいるモンスターに意識を集中させる。
羽の生えた単眼大トカゲの名前は<イビルグランサー>。<古森>と呼ばれる現在地でエンカウントした初mobでリーファ曰く厄介な相手らしい。単純な戦闘力もさることながら特筆すべき点はカース系の魔法を攻撃に組み込んでくることだ。要するにこちらのステータスを一時的にダウンさせてしまう攻撃方法。ゲームを始めたばかりのプレイヤーなら苦戦することは必至なのだが――
「うん……不遇だな」
魔法が放たれる直前に大トカゲの目玉を斬りつけて魔法をキャンセル。それに伴って大きく怯みをみせたトカゲに下段から剣を滑らせる。
「ユウキ!」
「うん!スイッチ!」
剣を振りぬいた勢いで後ろに跳び、ユウキとその攻撃ポイントをチェンジ。
俺とユウキ、放たれる剣撃を間髪入れず浴びた爬虫類の巨体は戦闘開始から数分と立たずにポリゴンの欠片となって消えることとなった。
馴れ親しんだ金属音と共に剣を鞘にしまい、ユウキに向かって右手を上げる。
「お疲れ。ナイスタイミングだったぞ」
「カエデもお疲れ様!」
ぱしんとハイタッチをして、笑みをかわす。
「相変わらずの剣技だな」
思わず見とれてたよ。と付け加えながらユウキの頭をなでる。
「えへへ、ありがとうカエデ」
目を細めながらふにゃ~と表情を緩めるユウキ。そのまま猫のようにすりすりと身体を寄せてくるまでは習慣となっている。かわいい。
「おーい、そっちは終わったかー?」
同じく戦闘を終えたキリトが身の丈に迫る巨剣を背にしまいながら近づいてくる。
そのすぐ横にはリーファもいるのだが表情はどこか呆けたままだ。
「ばっちりだ。もう少し戦いたいくらいだな」
「ねえリーファ、もっと強い敵はいないのー?」
「無茶言わないで。今のでもかなり強敵のほうよ」
ほんとに何者なの……と頭を抱えるリーファの肩をぽん、とキリトが叩く。
「あの二人にいちいち驚いていたらきりがないぞ」
『お前が言うな』
三人のフルシンクロしたツッコミにキリトは一人「解せぬ」と呟いていた。
……いや、解せよ。
大トカゲとの戦闘後はモンスターと出会うこともなく、四人は<古森>を抜けて山岳地帯に入った。そこでちょうど飛行限界を迎えたらしく、山の裾野を形成する草原の端に降下する。
数秒早く着地したリーファは凝った筋肉をほぐすように大きく伸びをしながら俺たちのほうを向いた。
「さてと……しばらく空の旅はお預けよ」
「ありゃ、何で?」
リーファと同じように腰に手をあてて背筋を伸ばしていたキリトは首を傾げる。
「見えるでしょう、あの山」
指を指すほうへ視線を移動させると雲に届きそうな位置に頂を構える山脈が見えた。先刻飛び出した風の塔もなかなかの高さだったがこの山には及ばない高度だと一目で判断できる。
「あれが飛行限界高度よりも高いせいで、山越えには洞窟を抜けないといけないの。シルフ領からアルンへ向かう一番の難所、らしいわ。あたしもここからは初めてなのよ」
「へえ……長い洞窟?」
「かなり。中間地点に鉱山都市があって、そこで休めるらしいけど……三人とも、今日はまだ時間だいじょうぶ?」
画面端に表示されている時計を確認し、ユウキもキリトも頷く。
「俺はまだまだ平気だよ」
「ボクも全然オッケーだよ」
「カエデ君は?」
「俺も大丈夫。それにしてももう夜の7時か……」
ゲームに限らず楽しいことをしていると時間経過が早くなるのはお約束である。もちろんそれは体感的で実際は変わったりしないのだが。
「とりあえずここでローテアウトしよっか。そのあとにまた再開しましょう」
「ローテアウト……?」
「ああ、交代でログアウト休憩することだよ。中立地帯だから、即落ちできないの。だからかわりばんこに落ちて、残った人が空っぽのアバターを守るのよ」
「なるほど、了解」
「お先にリーファとユウキからどうぞ」
女性を置いて先に休むわけにはいかないから、という俺たちの言葉にそれならと頷いたリーファとユウキはそれぞれ左手を振った
「じゃあ、お言葉に甘えて。二十分ほどよろしく!」
「カエデ、ボクのこと守ってね」
「任せろ、指一本触れさせん」
親指を立てて宣言する俺。それを見て満足そうに笑みを浮かべると、ユウキはログアウトボタンが表示されている空を押した。
「なるほど、フィールドでログアウトしたら自動的に待機状態になるのか」
「みたいだな。それにしても20分暇だな……」
デュエルでもするか?と提案するキリトに首を横に振る。
「それは今度にしよう。それよりも大事なことがある」
「大事なこと?」
久しぶりの真面目な空気に眉を上げるキリト。神妙な面持ちになった影妖精に俺は口を開いた。
「……俺たち魔法覚えないとやばくない?」
Side リーファ
待機姿勢をとった二人のアバタ―の近くに腰を下ろすと同じく隣に座る闇妖精の女の子に声をかけた。
「ねえ、ユウキ」
「どうしたのリーファ?」
「えっと……その……カエデ君とはどういう関係なの?」
気になった話題を振ってみる。スイルベーンから醸し出す甘い雰囲気に耐えかねて、というのが主な理由であるがなんとなく二人を繋げているものが普通のものではないと感じていたからだ。友達という枠を完全に超えて恋人――いや、それ以上にも見える何か。
「カエデはボクの旦那様だよ」
「……はい?」
聞き間違いだろうか?いや聞き間違えだ。そうに決まっている。
「えっと……もう一回言ってくれるかな?」
「うん!カエデは旦那様でボクはカエデのお嫁さんだよ!」
蕩けるような笑顔をこちらに向けてはっきりと答えるユウキ。聞き間違えてないようである。
そしてさらにカエデ―――旦那様の話が始まった。そのほとんどが惚気もいいところの内容で胃がきりきりしていたのは正常な反応であると信じたい。
姿からみてもまだまだ結婚できる年齢ではないというのがわかる。大目に見ても同年代くらい。そして女性の最低結婚年齢は16歳、現実では不可能だ。しかしそれがリアルではないとしたら……
「あー、もしかしてゲームでの話?」
そう現実ではダメでもこの世界、ゲームの中でなら可能なことである。実際ALOにも結婚システムは導入されていて結婚しているプレイヤーを数人だが見たことがある。
大方、前にやっていたオンラインゲームでそういう関係になっていたのだろうとあたりをつけて質問してみる。
ところが質問を聞いた途端、さっきまでだらしなく緩んでいたユウキの顔は驚くほど真面目なものになっていた。そして口を開く。
「たしかにゲーム世界で、っていうのは否定できないけど、あれはボク……いやボクたちにとってもう一つの現実だったから」
そしてさらに続ける。
「ボクのことを一番に考えてくれて、愛してくれているカエデをボクも愛している。だからあの世界での結婚は現実世界のそれと何一つ変わらないもの。そう考えているんだ」
たとえゲームのなかでもね!と笑顔を見せるユウキにおもわず呆気をとられる。
嘘はついていないしはぐらかされてもいない。それだけははっきりわかった。二人の闇妖精を結ぶもの、その強固な思いに。
これ以上は聞いてはいけない。頭では分かっているのに。それとは反対に言霊は口から出てこようとして
「君たちって……それにあの世界って――」
そこまで発した途端――
「二人して何を話してるんだ?」
「わっ!!」
いきなりカエデが顔を上げて、文字通り飛び上がってしまった。
「お帰りカエデ!」
「おう、ただいま……何かあったのか?」
きょとんとした顔のまま待機姿勢から立ち上がるカエデ。それに答えるようにユウキが言った。
「あのね、今リーファと――」
「わあ、なんでもないなんでもない!!」
慌ててユウキの言葉を遮りながら自分も立つ。
「さあ、出発よ!さっさと洞窟を抜けちゃいましょう」
思考を振り切ろうと大きな声を出して歩を進める。今は分からなくてもいい、知らなくてもいいんだと自分に言い聞かせながら。
「あっ、おーい!キリト忘れてるって!」
「……」
遠くから聞こえる声にもう一人の妖精の存在を思い出したのは秘密である。
第24話、お読みくださってありがとうございます!いかがだったでしょうか?
前回よりは早く投稿することが出来ましたがそれでも遅い(確信)。
GW中にもう1話は投稿したいところ……まあ期待しないで待ってくだちい(汗)
今回はリーファ視点を挿んでの進行でしたがなかなか挿入が難しい……原作だとさらっと切り替わったりするんですがそれを横並びする文字でやったら
ん?急に視点変わったな
ってことになるから読みにくくなると思うんですよね。皆さんはどう思います?
ユウキはいい子、そしてカエデにゾッコンである。カエデまじ爆発しろし
哀れ!カエデ=サンはしめやかに爆発四散!サヨナラ!みたいな感じに
カエデ「ドーモ=コーヒーサン。カエデです」
珈琲「アイエエエエ! カエデ!? カエデナンデ!?」
カエデ「とりあえずいっぺん死んで来い」
珈琲「ぐああああ!サヨナラ!」
ユウキ「作者のほうが爆発四散したね」
カエデ「これで少しは懲りるだろ」
前回までに評価をしてくださった素敵な読者様のご紹介
夜見 様 倉木遊佐 様
榛野 春音 様 成瀬草餅(草庵) 様
こまー2 様
評価ありがとうございました!
ご意見ご感想お待ちしております!それでは次回またお会いしましょう!
サヨナラ!