ソードアート・オンライン~死変剣の双舞~   作:珈琲飲料

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お待たせしました!今回もボス戦なのでまじめな感じです。
次回で完結させるつもりなので最後までお付き合いください!
それでは第13話です! どうぞ!


13話 RPGで即死攻撃ってどうなのよ・・・

七十五層コリニア市のゲート広場には、一目でハイレベルと判るプレイヤーたちがすでに集まっていた。俺とユウキがゲートから出てその集まりに加わろうとすると、皆ぴたりと話すのをやめて緊張した表情で目礼を送ってくる。中には「なに遅れてきてんだよ・・・」とでも言いたげな視線で俺たちを見ている連中までいる。

 

「よう!」

 

強めに肩を叩かれて振り返ると、野武士・・・ではなくカタナ使いのクラインがにやにや笑っていた。後ろにはキリト、アスナがおり、珍しいことにエギルの姿もある。

 

「二人揃って遅れてくるたぁ何かしてたのかい」

 

「残念ながらお前が想像しているようなことじゃないよ」

 

にやにや笑ったまま遅れてきた理由を聞いてくるクラインに呆れ半分で言い返す。

・・・遅れてきた理由が抱き合っていたからとか口が裂けても言えるわけない。

 

「それにしてもエギルまで参加なんて珍しいな。店でもつぶれたのか?」

 

「んなわけないだろう!」

 

憤慨したように斧戦士は野太い声を出した。

 

「今回はえらい苦戦しそうだって言うから、商売を投げ出して加勢にきたんじゃねえか。この無私無欲の精神を理解できないたぁ……」

 

「なるほど、それはすまなかった。ユウキよ、エギルが今日の戦利品を譲ってくれるらしい」

 

「いや、そ、それはだなぁ……」

 

情けなく口籠るエギルを見て笑いが起きる。朗らかな空気は周りにも伝染し、みんなの緊張がいくらか和らいだようだったが、ヒースクリフが血盟騎士団の精鋭を引き連れてこちらにくると再びあたりに緊張が走った。

 

立ち止まったヒースクリフは俺たちを見て軽く頷くと、口を開いた。

 

「欠員はないようだな。よく集まってくれた。状況はすでに知っていると思う。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている。―――解放の日のために!」

 

最強プレイヤーの力強い叫びに集まった攻略組の士気が上昇する。

 

「キリト君、それにカエデ君、今日は頼りにしているよ。<二刀流>と<死変剣>、存分に揮ってくれたまえ」

 

低く、穏やかなその声には一片の恐怖も感じられない。余裕の表情は俺のなかにある疑惑をさらに大きくする。

 

俺とキリトが無言で頷くと、ヒースクリフは集団に振り返り、片手を上げた。

 

「では、出発しよう。目標のボスモンスタールーム直前の場所までコリドーを開く」

 

そう言って腰のパックから濃紺色のクリスタルを取り出すと、周囲のプレイヤーたちから驚きの声が漏れる。

 

ヒースクリフが手に持っているアイテムは任意の地点を記録し、そこに向かって瞬間転移ができる<回廊結晶>というものだ。普通の転移結晶と違いこのアイテムは転移ゲートを一時的につくる便利な代物で希少度の高さからNPCショップでは売られていない。そんな貴重なものをあっさり使用するあたり、このヒースクリフという人物がどれだけ攻略に力を注いでいるのかわかる。

 

「では皆、ついてきてくれたまえ」

 

ゲートを出現させるとヒースクリフは俺たちをぐるりと見渡して、青い光の中へ足を踏み入れた。俺とユウキもそのあとに続き転移をした。

 

 

――――――――

 

まばゆい光から解放され、目を開くとすでにボス部屋前だった。黒曜石が敷き詰められた回廊には冷たく湿った空気が流れ、扉のまわりには薄い靄がかかっている。

 

「・・・なんか・・・やな感じだね・・・」

 

「そうだな・・・」

 

装備を確認しながら首肯する。後ろにいるプレイヤーたちもボス部屋から漂う何かを感じているのかメニューウインドウを覗く顔が険しい。

 

「皆、準備はいいかな。今回、ボスの攻撃パターンに関しては情報がない。基本的にはKoBが前衛で攻撃を食い止めるので、その間に可能な限りパターンを見切り、柔軟に対応してほしい」

 

剣士たちが頷くのを見るとヒースクリフは大扉に歩み寄り、手をかけた。

 

「死ぬなよ」

 

「お前こそ・・・ってまたフラグかよ」

 

肩をすくめて返事をした直後、扉が重々しい音を響かせながら動き出した。

 

「――戦闘、開始!」

 

ヒースクリフが剣を掲げ、叫ぶと全員が一斉に扉の中へと走り出した。

 

 

 

 

ボス部屋はドームの形をした造りだった。全員が部屋の中央に到着すると、轟音を立てて背後の大扉が閉まる。ボスを倒すか、俺たちが全滅するまであの扉を開けることは不可能だろう。

 

扉が閉まってから数秒の沈黙が続いた。感覚を研ぎ澄ませ、部屋を見渡すがボスが姿を現す気配はない。プレイヤーの一人が耐え切れないというふうに「おい―――」と声を上げた、その瞬間。

 

「上よ!!」

 

少し離れたところでアスナが鋭く叫んだ。その声を聞いて頭上を素早く見上げるとドームの天頂部に張り付いていたそれを見つけた。

 

百足か・・・?全長は十メートルほどでいくつもの関節と鋭い脚が伸びていた。横に長いその体を視線で追っていくと、徐々に太くなる先端に凶悪な頭蓋骨があり、頭蓋骨の両脇からは鎌の形をした巨大な骨の腕が突き出している。

 

<The Skullreaper>――――骸骨の刈り手という名前がイエローのカーソルと共に表示され、それと同時に巨大な百足はレイド目掛けて落下してきた。

 

「固まるな!距離を取れ!」

ヒースクリフの叫び声を聞いてプレイヤーたちが我に返ったように動き出す。俺とユウキも落下地点から飛び退くが、落下地点の真下にいた三人の反応が遅れた。

 

「こっちだ!」

 

キリトが叫び、三人に避難を促すが骸骨の落下で発生した地響きによって三人ともたたらを踏む。そこに向かって、骸骨の右腕――巨大な骨の鎌が横薙ぎに振り降ろされた。

 

三人は切り飛ばされてHPが猛烈な勢いで減っていく。

緑色から黄色、黄色から赤色――――そしてあっけなく0になった。三人のアバタ―が立て続けに無数の結晶に変わり、発散していく。

 

「・・・おいおい・・」

 

一撃で死亡かよ・・・目の前で起こった出来事に驚きを隠せなかった。SAOのようにスキルやレベル制のゲームではそれらが上昇するほど死ににくくなる。理由は簡単でステータスがそれに比例して高くなるからだ。ましてや今回のメンバーは攻略組。レベルもスキルの高さも折り紙つきの連中だ。にも拘わらず三人は即死した。考えられるのは・・・

 

「鎌の攻撃にはおそらく即死効果が付いてる!絶対に当たるな!!」

 

推測の域を出ないが俺は考えられる可能性を全員に聞こえるように叫んだ。

 

百足は上体を起こして轟く雄叫びを上げると、新たに見つけた獲物に向かって突進を開始した。

 

「わあああ―――!!」

 

ターゲットにされたプレイヤーたちが悲鳴を上げる。骨鎌が振り上げられた瞬間、俺は両者の間に割り込んでいた。左右に持った剣をクロスさせて鎌を受け止める。

 

「っ・・・!」

 

爆発にも似た衝撃に思わず声を漏らしそうになる。だが鎌は止まらない。徐々に俺を押しながら眼前に迫ってくる。

 

だめだ、重すぎる・・・!

 

その時、後ろから黒い閃光が駆け抜け、鎌を押しのけるように命中した。百足の勢いが緩んだ隙に筋力値全開で押し返す。

 

俺の隣に立ったユウキは一瞬だけこちらを見ると言った。

 

「カエデ、ボクたちならできるよ!」

 

「・・・だよなっ 頼む!」

 

俺は頷いた。さきほど感じた不安も恐怖もどこかへ消えていた。ユウキが傍にいるかぎり・・・誰にも負ける気がしない。

 

「団長さん!あんたは側面からの攻撃を指揮してください!キリトとアスナはもう片方の鎌を!」

 

その声に、プレイヤーたちは雄叫びを上げ、武器を構えて突撃する。側面からの攻撃を受けたボスは初めて怯みをみせた。わずかだがHPも減少している。

 

直後に複数の悲鳴が上がったが俺とユウキにも、離れた位置で左鎌を迎撃しているキリトとアスナにも手助けをする余裕はない。プレイヤーたちの絶叫を無理やり頭から追い出し、即死の鎌を捌くことだけに神経を集中させる。ボスが振り降ろす鎌の衝撃でHPが減少していくがそんなことさえも意識から外れて行った。

 

 

――――――――

 

それから先はよく覚えていない。何度も振り降ろされる鎌を受け止め、怯んだ隙にソードスキルを放ってダメージを与える。もう何日も戦ったのではないかと思える激戦の果てに、ようやくボスがその巨体を爆散させた。

 

しかし誰一人として歓声を上げる奴はいなかった。俺とユウキも倒れ込むようにその場に腰をおろす。

 

「・・・なんとか・・フラグ折れたな・・・」

 

「・・・生き残れたね」

 

背中合わせに座り込みユウキと無事を確認していると、不意にクラインが訊いてきた。

 

「何人――やられた・・・?」

 

「・・・十四回・・・俺が聴いたアバタ―の・・爆散回数・・・」

間違いないだろう・・・だが信じられなかった。皆、百戦錬磨の剣士だったはずだ。RPGでいうなら命令は<いのちをだいじに>・・・それなのに十四人も。

 

アインクラッドはまだ四分の一も残っている。今日ほど強いボスはあまりいないだろうが楽な敵ではない。死者の数は増えていき、百層に到達するころには果たして何人のプレイヤーが残っているだろうか。

 

俺は部屋の奥へと目を向ける。今この場で平然と立っているのはヒースクリフだけだ。カーソルを合わせるとHPはギリギリだがグリーン――安全域に留まっている。

 

最強プレイヤーの表情は穏やかだった。視線は疲労困憊で床に突っ伏している仲間たちに向けられている。暖かいその視線は言わば――――

 

 

実験動物を観察する学者のような視線だった。その瞬間、俺の中で大きくなり続けていた疑惑が確信へと変わる。

 

―――失敗すれば取り返しのつかないことになる。だが油断している今しかチャンスはない

 

「カエデ・・・?」

 

「ユウキ・・・俺のこと信じてくれ」

 

隠蔽スキルを発動させてユウキの視界から消えると俺は返事も聞かずに地面を蹴っていた。

 

俺が地面を蹴るのと同時にキリトも飛び出していた。加速する景色の中で一瞬だけキリトと目があう。

 

――――ちゃんとタイミング合わせろよ?

 

ヒースクリフとの距離は十メートル、その地点でキリトは片手剣の突進技<レイジスパイク>を発動させた。剣先はペールブルーの尾を引きながらヒースクリフに迫る。それを見たヒースクリフはさすがの反応速度で気づき、驚愕の表情を浮かべながら盾を掲げる。

 

盾に阻まれ、剣はヒースクリフに届くことはなかったが―――

 

「本命はこっちだっ!」

 

隠蔽スキルを使ってヒースクリフの背後に回った俺はそのまま背中に短剣の単発技<アーマーピアス>を放った―――

 

しかし攻撃は寸前で目に見えない障壁に激突した。突如、腕に激しい衝撃が伝わる。そして俺とヒースクリフの中間地点に紫色のシステムメッセージが表示された。

 

<Immortal Object>。不死存在。

 




珈琲「最後まで閲覧ありがとうございます!第13話いかがだったでしょうか?」

カエデ「・・・」

ユウキ「・・・」

珈琲「悪かったって!だからそんな目でこっちを見ないでよ!」

カエデ「ユウキ、次回でSAO編は終わるみたいだけどなんかここまでくると感慨深いものがあるよな」

ユウキ「うん!カエデと出会ってから毎日が楽しくて・・・」

カエデ「向こうに帰ったら真っ先に会いに行くからな」ナデナデ

ユウキ「うん・・・待ってる////」

珈琲「無視からの惚気ですか!?君らほんとに何なの!?」

カエデ「・・・あ、まだいたんだ」

ユウキ「帰ったかと・・・」

珈琲「すでに存在すら危うい!?」

カエデ「そういえば閲覧数が10000を超えたみたいだな」

ユウキ「こんな駄文なのにすごいね!」

珈琲「褒めてるの?貶してるの?・・・まあいいや。飽きっぽい作者がここまでやれているのは読者様のおかげです!ありがとうございます!」

カエデ「期待を裏切らないためにも頑張って完走させろよ?」

珈琲「分かってるよ。でもちょっとくらいは遊んでも――」

ユウキ「えいっ!」

珈琲「ぐぁぁあああ!」

カエデ「ご意見ご感想いつでもお待ちしております!」

ユウキ「なるべく早く書かせるから待っててね!」

珈琲「次回もよろしくお願いします!」

カエデ・ユウキ「「復活早い・・・」」

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