あれだね。半年振り運転は逆に緊張しすぎるとコケやすいですね。
まぁ、久しぶりに救急車で運ばれやした。詳しくは言えないけど(恥)
皆さん、信号が変わったからといって急ブレーキはお気をつけください。
それが20年ものの年季ものバイクや原付きなら尚更です。
久しぶりだから場面展開が多いかもです。
衛宮切嗣は英雄が嫌いである。
英雄とは旗印であり、栄光であり、憧れであり、そして幻想であるからだ。
世界は英雄譚のように綺麗でもない。
英雄という灯りに飛び込む蛾の様に、数え切れない若者が戦場に身を投じ、そして命を落とす。
悲劇は最短でなければならない。
被害は最少でなければならない。
しかし衛宮切嗣の思想と真逆に、戦場は、戦争は泥沼だ。
嘆きと哀しみに満ちた、どうしようもない人の作り上げた地獄の具現。
だが英雄は、その事実を脚色し本来最大限忌避しなければならない戦場の在り方を勘違いさせている。
衛宮切嗣は英雄が嫌いである。
英雄は切嗣のできないことをやってのける。
悲劇を英雄譚に、切嗣が思い続ける大団円を引き寄せる。
人を殺して、後味の悪い結末しか得られない自分と違って。
そんな強烈な羨望と嫉妬と、犠牲になっている人間がいるにも拘らずそれを覆い隠し続けることに対しての圧倒的な吐き気すら催す嫌悪。
故に世界平和を成就させるだけの道具として喚び出されたサーヴァントは、切嗣にとって嫌悪の対象でしかなかった。
しかも召喚した名高き騎士王は、彼にとって見れたものではない。
国によって捧げられた生け贄。
民にその責務を押し付けられ、漸く得た理解者も喪い守った騎士達に滅ぼされた。
過去の時間に戻る────と、騎士王は己の願望についての問いについてそう答えたらしいが、あの暗い瞳を見る限りそれすら本音か怪しい。
あれは断罪を求める罪人の眼だった。
繰り返す。
衛宮切嗣は英雄が嫌いである。
こんな、親とはぐれたただの子供の様な小娘が、英雄をさせられていること自体が腹立たしくて仕方がないのだ────────
第二十夜 ゲイボルグは今作でも心臓に当たらない模様
冬木郊外の森奥、アインツベルン城のテラスで、セイバーはアイリスフィールと衛宮切嗣に己が知る事を語っていた。
エレイン・プレストーン・ユグドミレニア。
その正体がアーサー王伝説に度々登場した女性エレイン────正確には、聖人ヨセフの子孫であるカーボネック城の姫エレインであること。
槍の名手であり、その腕はかの湖の騎士に手解きを受けたものらしいこと。
それが記憶を持ち、新たな生を得てマスターとして聖杯戦争に参加していること。
「
衛宮切嗣にとって難敵とは何か。
先ず言峰綺礼。
戦争前に感じた怖気と、言い知れぬ不安感。
ソレ抜きにしても代行者という戦力。
そして追加された脅威。
エレインに対して感じた恐怖は、底知れないモノ。底の見えない暗闇を覗き込んだかの様にすら感じた。
それはアイリスフィールの服に仕込んだ盗聴器から聴いた会話からでも、切嗣は十二分に身に染みている。
「イリヤの事を彼女は知っていたわ。それはつまり、切嗣のことも調べあげている可能性が大きい」
「十中八九調べられているだろうね」
アイリスフィールはあの時の底知れない怖気を思い出し、両腕で自身の体を抱き締める。
イリヤスフィールは、今回失敗した時にアインツベルンが用意する次回の聖杯の器。
即ち彼女はアインツベルンにとって間違いなく最重要機密だ。
それを敵の魔術師が知り得るなどあってはならない。
故に、イリヤスフィールよりも何倍も調べやすい切嗣の経歴も調べ上げられていると考えるのが妥当である。
「じゃあ、切嗣の戦術は通じないの?」
「いや、逆だ。彼女は必ず僕の戦術に乗ってくる」
エレインは魔術師である前に、武人。
サーヴァントならいざ知らず、魔術師相手に引くなど彼女自身が許しはしない。
「どんな手段を用いたか知らないが、人間であるならば僕でも殺せる。魔術師であるというなら尚更だ」
サーヴァントに現代兵器は通用しない。彼等の神秘は現代兵器を寄せ付けない程に高純度であるからだ。
切嗣の切り札は、魔術師であれば命中した時点でほぼ確殺可能だ。
問題はどう当てるか。
だがそれは切嗣がこれまでやって来た事をすればいい。
切嗣がテーブルの上のPCで、アインツベルン城に設置した罠を確認している─────その最中だった。
「ッ──────!」
「アイリ?」
「……キリツグ、来たわ」
身を固めたアイリスフィールが取り出した、水晶体による透視に不敵に笑いながら此方を視ている、蒼い装束を纏った槍兵が映っていた。
◆◆◆
アイツベルンの城を囲む郊外の森。
ソレには結界が張り巡らされており、侵入した者を即座に探知する。
故にランサーの侵入は容易く知られ、そうなれば対抗するためにセイバーを投入しなければならない。
そして衛宮切嗣が罠を張り巡らせた城内に陣取り、聖杯の器であるアイリスフィールをランサー達とは別方向に逃がすのは道理。
「だが結界といえど、所詮人の編んだ魔術。掌握すれば、逆に私に誰が何処に居るのかを知らせる結界に成り下がる」
エレインは、神代の時代とまでは言わないものの、それでもこの時代の魔術師とは比べ物にならない力量を持った魔術師だ。
加えてキャスター適性も持つクー・フーリンの手を借りれば、現代の魔術師が作った結界を掌握するなど容易い。
「さて、場所の把握も済んだことだし……少し派手にいくか」
エレインは手元の『槍』に眼を向ける。
彼女の切り札。
『彼』の槍と混ぜ合わせる事で漸くエレインでも使うことが出来るようになった究極の一。
しかしまだ、巻かれた聖骸布を解くことは無い。
これは『もう一押し』の時にのみ使うと決めていた。
故に別の、もう一つの奥の手であり、主兵装を振るう。
魂を────燃やせ。
エレインの異質さを理解できる人間が、一体何人居るだろうか。
少なくとも彼女の知り合いの中では、優れた魔術師でもあるランサーか、今尚幽閉されている世界全てを見通す瞳を持った花の魔術師だけだろう。
掌を掲げ、エレインの魔術回路がうねりを上げる。
星の魔力たるマナを結晶にする要領で収束、圧縮を繰り返し、
「さぁ────第二幕、開戦の号砲だ」
解き放たれた魔力の奔流が、城壁を粉砕した。
◆◆◆
「!」
轟音が切嗣のいる部屋にまで響く。
仕込んだ場内のクレイモア地雷や銃も根刮ぎ吹き飛ばす程の暴風が城で駆け巡った。
「……チッ」
手元のノートパソコンに目を向けるも、仕掛けたカメラを丸ごと吹き飛ばされれば、精密機器はひとたまりもない。
彼はサロンを出ようとし、ドアノブに手を掛けようとして────背後に跳んだ。
「!」
ドア付近の空間が、ゴガッ!!! と魔力砲によって削り取られる。
サロンが崩壊し下の階に落とされた切嗣を、銀色の戦姫が見下ろす。
「どうした? アーサー王や妻を囮に、マスターを討ち取るのだろう? その様ではただの魔術師しか殺せまい」
「…………」
切嗣の返答は無い。
そんな事をしている余裕は一切無く、全霊を以て観察してなお隙がない。
成る程。確かにセイバーの言った様に、魔術師というよりかは武人だ。
正面から突っ込んでも、刹那の間に心臓を穿たれるのは必定だろう。
だが、元より切嗣は闘うものでは無い。
切嗣の本領は狩人。
成る程確かに時には正面から戦うこともあるだろうが、本来は暗殺が基本だ。
しかも英霊御墨付きの武人相手に、馬鹿正直に正面から戦う様な蛮勇さを切嗣は持ち合わせてはいない。
「『
「ぬ」
切嗣が取った戦法は、一時撤退であった。
「……まさかあぁも堂々と姿を隠すとはな。それに場所が悪かったか」
彼は常人からしたら信じられない速度で疾駆し、エレインの視界から消え去った。
その仕掛けのタネは知っている。
──────固有時制御。
衛宮家の家伝であり、切嗣の父衛宮矩賢が封印指定されるまでに至った『時間操作』の魔術。
それを切嗣が戦闘用に応用したものだ。
本来儀式が煩雑で大掛かりである魔術であるのだが、「固有結界の体内展開を時間操作に応用し、自分の体内の時間経過速度のみを操作する」ことで、たった二小節の詠唱で発動を可能とする。
それによって切嗣は己を加速、減速することが可能だ。
尤も、体内に固有結界を展開するだけなら兎も角、時間を操作した為に世界の世界足らんとする修正力によって凄まじい負担が掛かるのだが。
それを見て、エレインの目を細める。
「ふむ、知っていたが────成る程。『混沌』然り、
一陣の風が、城内を走る。
それだけで、切嗣の居場所をエレインは特定した。
「まぁ良い。貴様には、万策尽きて貰わねば困る」
衛宮切嗣は己が狩られる側に回っているのに、まだ気が付かない。
そしてエレインは、結界を傍聴して複数の侵入者を知覚した。
一人は聖杯戦争の管理者であるルーラー。
そしてもう一人は、エレインにとって本命。
「さて、頼むから心臓は壊してくれるなよ? 流石に直すのは手間だ」
◆◆◆
「はははははッッ! やるなセイバー!!」
「ほざけランサー! 今度こそ決着を付けるぞ!」
閃光が奔る。
その光は、赤と銀の二つ。
赤き魔槍と風に隠された聖剣が音速を超えてぶつかり、火花が散る。
セイバーとランサーの戦いは既に始まっていた。
倉庫街での戦いでは双方ともに互角の戦いを演じ、ライダーの乱入で勝負はつかなかった。
だがこの勝負、ランサーは初めから勝つ気は無かった。
彼の宝具────『
それを逃れるには、因果の逆転を超えるだけの幸運とそれを察知する高ランクの直感が必要だ。
直感のみなら、このセイバー────アーサー王は申し分無い。
未来予知にすら届くAランクの直感を持つ彼女は、正史における五度目の戦争においてこの槍を凌いだ実績を持つ。
だが、此度の聖杯戦争。この第四次聖杯戦争に限って彼女はランサーの魔槍を躱せない。
サーヴァントのステータスはマスターの素養と魔力によって変動する。
その点において、彼女のマスター衛宮切嗣はかなり優秀であり、そして悲しいほどに運が無かった。
起源から愛した女性を悉く死に至らせた魔術師殺しの不運は、そのサーヴァントであるセイバーにも振りかかる。
出来損ないの半人前ですらBランクだった本来A+の幸運は、最低に最も近いDランクにまで落ち込んだ。
故に、本来の幸運と聖剣の鞘を持たないこのセイバーは、ランサーの宝具から逃れる為に令呪でも使わない限り不可能だった。
そしてそれを、ランサーのマスターであるエレインは知っている。
かの
それは彼が前世の知識を忘れない様にと、彼の有する知識全てを己が血を使って記された日記。
本来、それを見ることは、間違いなく抑止力が動く程の知識の貯蔵庫。
そしてその圧倒的な神秘性と1500年の歳月で概念武装に至り、知識を常に更新するにまで至った魔書。
らんすろ日記、相応しい名は────―『
エレインは、アカシックレコードすら上回りかねない世界の知識の山を得ている。
そこには正史と呼ぶべき世界の、第四次聖杯戦争の全てが記されている。
仮にセイバーが宝具を、黄金の聖剣を使おうものならすぐさま全力で回避に徹するだろう。
何より平野なら兎も角、ここは森。
ランサーはセイバーの能力の情報全てを、マスターから得ている。
撃ち合おうなどとは考えず、構えた途端森の中へ姿を消すだろう。
通常時ですらA+の敏捷性は、彼のルーンの強化も合わされば更に一ランク向上する。
面攻撃の龍殺しの黄昏の宝剣なら兎も角、直線上への破壊であるアーサー王の聖剣では仕留めるのは至難の技だ。
また宝具の件を除いても、セイバーはランサーに勝てないだろう。
ステータスはほぼ互角。
技量はランサーが僅かに上で、しかしセイバーのその直感が彼女をランサーと互角せしめた。
しかしランサーのサーヴァント、クー・フーリンは生還にこそ優れたサーヴァント。
肉体面に於いて最強のサーヴァントである、大英雄ヘラクレスと令呪で弱体化した状態で戦って尚、生還。
加えてかの英雄王ギルガメッシュと不利な閉鎖空間で戦い、半日以上持ちこたえた英霊だ。
そして今回、彼は「戦いを楽しみつつ、
故にこの戦いは、又もや第三者によって中断されるだろう。
それこそが、エレインの策とも知らずに。
『
正式名称「らんすろ日記」。
らんすろが残した原作知識or漫画ゲーム知識満載の、本来抑止力によって誰の手にも渡らない筈の日記。
しかし、とある方法で抑止力の対象外となったエレインが手に入れた。
千五百年の年月によって概念武装化。TYPE-MOONが新作を出したりして新たな情報を作者が認識次第更新される()。
抑止力が全力で働く為、実質らんすろとエレイン以外が読むこと処か、手に取ることすら不可能である。
シリアスばっかりで物足りないでゲス。
真面目に戦争してる最中にらんすろブチ込んで、何もかも台無しにもしたくなる衝動に襲われますわぁ。
まぁ台無しにするのはこの後だけども。
という訳で、別作品で描いた絵が好評につき感想でらんすろのイラストを希望する声があったのでちまちま描きました。
らんすろというより、外見イメージのパンドラハーツのオズワルド描いてるイメージでした。
オリ主とは一体……{IMG10294}
それと、衝動的に書いた為ひどく杜撰な出来だった続編候補は削除しました。
ぶっちゃけstay nightの二次は別案が浮かんだので。
その内短編集に投稿するかもですね。
軽くプロット書いたら10話いかなかったんで。
次回、ケリィフルボッコ予定。