砂原。昼間は、はるか上空に燦燦と太陽が輝き続け灼熱地獄と化す。だが、夜はその姿を変貌させ、寒冷に覆われた大地となる。どちらもクーラードリンク、ホットドリンクが必需品となりハンターの頭脳と腕が試される。寒暖の差が激しい砂漠特有の過酷な自然の脅威に容赦なく叩きのめされるハンターは数多い。
ヴァイスたちが砂原を訪れたのは太陽が最も高くなる昼時。同時に気温が最も高くなる時間帯だ。
拠点(ベースキャンプ)に覆いかぶさるように隆起した岩肌が日差しを遮ってくれてはいるが、それでも身体中から噴出してくる汗は止まることを知らない。
「暑っ……」
澄み切った青空を見上げながらクレアは呟く。
クレアの装備には変化はない。元々、ウルクシリーズには暑さ倍加のマイナススキルが付く。それを、装飾品で調整してあるため暑さ倍加は打ち消されている。
「仕方ないさ。ここは、砂原だからな」
「わかってますけど、やっぱり暑いものは暑いんですよ。この暑さに慣れればいいんですけどね」
「そんなことできる奴は相当図太い神経の持ち主だな。できる奴がいるなら、俺も尊敬するよ」
道具の整理をしていたヴァイスは肩をすくめて言った。
普通の人間ならこの暑さに慣れるということはまず不可能な話だ。この暑さの中で暮らしている人間がいるとするなら別の話だが。
「図太い神経の持ち主って、例えば誰ですか?」
何やら考え込んでいるような表情をしたクレアがヴァイスに尋ねてきた。その質問にヴァイスはため息を付く。
「……お前だよ」
「はいっ!?」
心底驚いたのか、クレアは大きく身体を仰け反らせる。
「ハハッ、冗談さ」
涼しい笑みを浮かべながらヴァイスはギルドガードフェザー蒼を被りなおす。呆気に取られているクレアを放置し、近くに立てかけてあった太刀を掴む。
「ヴァイスさん、お遊びもここまででいいでしょう。そろそろ話してもらえませんか」
準備を整えたグレンがヴァイスの掴んだ太刀に視線をやりながら言う。
全てヴァイスの予想通りだ。
この狩猟にグレンは同行することになった。『答え』を求めているからという理由が大半を占めているだろう。だが、本当にそうだろうか。
グレンは、答え以外の何かも求めているような気がする。それが強さなのか、それとも別の何かなのかはわからないが漠然とした強い彼の想いは確かにヴァイスには伝わってくる。村を発ってからその想いは日に日に強くなっていったようにも思える。
依然として彼の心のうちは理解できない。しかし、これだけは言える。この狩猟を終えたとき、彼の漠然とした想いが理解できる、と。
「そうだな」
手に持った太刀をしばらく見つめた後「ヴァイスは話してもらいたいもの」の内容を話し始めた。
「コイツはアトランティカと呼ばれる太刀だ。グレンが知らないのも無理はない。旧大陸……、ドンドルマ地方の技術で作られたものだからな」
金色の縁取りを施した斬新なデザインの太刀だ。というのも、この太刀の剣身には厚みがあり太刀特有の反りがない。だが一方で、どこか神秘的な雰囲気を感じさせる一品でもある。
一説によれば、このアトランティカは古代技術で作られたというものらしい。まさに、謎が謎を呼ぶ太刀だ。
「グレンが一番聞きたいことはわかっている。この太刀の属性だろ」
「ええ。俺にはどう見てもその太刀がボルボロスに対して威力を発揮するとは思えませんからね」
はっきりとした物言いでグレンは言い切った。だが、当のヴァイスはそんなことを気にしている様子は窺えない。
「さすがだな。コイツはボルボロスに対する威力は期待できない。何故なら、アトランティカは水属性だからな」
「なっ、水属性!?」
グレンは驚愕した。ボルボロスの弱点は火属性だと最初に言ったのは他でもないヴァイスなのだ。さらに、ヴァイスは火属性以外の属性はあまり期待できないとも言っていた。だからこそ、グレンは火属性の狩猟笛を持ち込んだ。
グレンの纏う防具――ペッコシリーズと同じ鮮やかな色合いに統一されている。特徴的なのは素材に使われたへんなクチバシをそのまま用いていることだ。それはトランペッコと言われる狩猟笛である。
「ますます理解できません。ヴァイスさん、あなたがボルボロスの弱点は火属性だと言った。それがわかりきっているなら飛竜刀【椿】でも十分よかったはずです。何故無意味と言ってもいい水属性の太刀なんかを――」
「俺もそこまで馬鹿な人間じゃないさ」
グレンの言葉を遮りヴァイスは口を開いた。そのタイミングでクレアも割り込んでくる。
「グレンさん! 師匠には何か考えがあるんですよ!」
「そうだとしても、俺は理由が知りたい」
険悪なムードがその場に漂い始めた。だが、それは引き金となったヴァイスによりあっさりと沈静化されることとなる。
「その理由はいずれわかるはずだ。それに、お前は答えを知りたいんだろ? この理由が理解できれば、答えは簡単に求められるはずだ」
その言葉でグレンは黙り込んだ。まるで人が変わったかのような激変ぶりであった。それほど、グレンが答えに対する執念が強いということだろう。
「……すいません。少し、熱くなり過ぎました」
生意気な態度をとったことは反省しているのか素直に謝罪してきた。
「別に気にするな」
「ええ。……少し、一人にさせてください」
そう言い残すとグレンは拠点の近くに止めておいたアプトノスの荷車の方向へと姿を消した。無言で立ち去る背中が、彼の心境を物語っているようだった。
「師匠。私、今回も心配なんですけど……」
いきなりのクレアからの問いかけに「何がだ?」と返す。
「ほら、今のこともそうですよ。この調子だと、私たちとグレンさんの間に大きな亀裂が生まれてしまいます。そんなことになったら狩猟どころじゃありませんよ」
仲間同士が決裂している状況下で狩猟を続けるのは当然危険である。このまま行けばクレアの指摘どおり、三人が決裂する可能性がある。
だが、そんな心配もヴァイスは計算済みであった。
「まあ、あれが普通だろうな。あいつが俺に対して怒りを示すのも無理はない。あいつを否定したのは俺なんだからな。俺も同じ状況だったら怒りを露わにしているさ」
「じゃあ、今回の狩猟はそれも見据えて……」
「そうだ」
たとえ計算どおりであったとしてもグレンが仲間内で孤立しているのは否めない。このまま狩猟を開始しても二人が危険に晒されることに繋がりかねない。
クレアは、グレンが姿を消した方向へと目をやる。
「一つ、質問します。今回の狩猟は、師匠の思惑通り進むと考えていますか」
一瞬の沈黙。しかし、ヴァイスは躊躇うことなくその質問に答えた。
「無論だ。そうでなければあいつを狩猟には同行させない」
ヴァイスの物言いと輝く蒼い瞳がその言葉を裏付けている。彼のその眼からは、揺ぎなき決意が感じられる。
「でも……」
そう言われてもクレアは不安な事に変わりはない。
ギギネブラとの狩猟で、グレンのあの姿を目の前で見せ付けられてはヴァイスの判断であっても気は抜けない。
「心配するな。いざという時は俺が出る」
その言葉はとても重たいことを意味していた。万が一グレンの身に何かが起こっても、ヴァイスは責任を負う必要があるかもしれないからだ。
「……わかりました。くれぐれも無茶はしないで下さい!」
「ああ」
二人は、依然として輝き続けている太陽を睨むようにして仰ぐ。
「さあ、長い狩猟の幕開けだ」
砂原は全11のエリアで構成される狩場だ。その内クーラードリンクを必要とされるエリア数は三つ。一部には迫り出した岩が日差しを完全に遮るエリアも存在している。
ジャギィ、ジャギィノス、リノプロス、デルクスといった数多くの小型モンスターもこの砂原では脅威の一環の内である。大型モンスターに気を取られている際に不意打ちを喰らってしまうことも多々ある。適切な状況判断と周りへの気配りを気をつけ臨機応変な行動を取らなければならない。
「くっ……。陽炎が邪魔だ」
陽炎による影響もまた厄介だ。砂漠地帯ではエリアが広大になる。遠くにいる大型モンスターの姿でさえもまともに捉えることができない。
今いるエリア4でさえも、そこまで広くないエリアなのだが陽炎による影響が確実に現れている。
「やっぱりエリア3でしょうか」
支給された地図によれば、エリア3には泥沼が広がっている。土砂竜の異名を持つボルボロスは、おそらくそこを好んでいることだろう。それを考えれば可能性は高い。
「よし、行こう」
ヴァイスを先頭にエリア3へと進む。
幾分低地に位置しているエリアのためか、どこからもなく水が流れ込みエリア上に泥沼を形成しているのだろう。
だが、肝心のボルボロスの姿は見受けられない。
「外したか?」
何匹のブナハブラがエリアを五月蝿く低空飛行しているだけで他のモンスターの姿はない。
エリア中央付近まで歩いてきたところでグレン一人が泥沼を目指していく。怪しいものがないか確かめるつもりなのだろう。泥沼自体は浅いものなのか、問題なく足を進めていく。
「あれは……?」
勘違いなのだろうか。泥沼の鉛色とは別の何かが浮かんでいるように見える。土色をした何かだ。いや違う。あれは――、
「退け、グレン!」
「なっ!?」
ヴァイスの言葉が届き、グレンが動き出したのと泥沼からそれが姿を現したのはほぼ同時だった。ヴァイスの言葉がなければ間違いなくグレンは不意打ちを食らっていた。
腕はやや退化しているように見えるが、それに比べて脚の筋肉が目立って発達しているのが一目でわかる。頭部から背中にかけては剥き出しの岩肌のように鋭いつくりをしている。全身に泥沼を纏い、ボルボロスは三人の前に立ち塞がった。
「オオオオォォォアアアアアアァァァァァッ!」
頭上から降り注がれるバインドボイスに堪らずグレンは耳を塞いでしまう。
「来ます!」
モンスターの目の前で行動不能になるのは最大の命取りだ。
ボルボロスが繰り出した頭突きを回避できずに直撃してしまう。さらに、飛び散った泥がペッコシリーズに付着し、それはあっという間に乾燥し身動きが制限されてしまう。
「退避して消散剤を使え!」
「わかってます!」
消散剤は付着した泥を弾き飛ばす効果を持つ。これで泥をペッコシリーズから落せば身体の自由が戻る。
「くっ……、どこにある!?」
手元が焦って肝心の消散剤がポーチから取り出せない。
と、ボルボロスが視界から消えた。
「後ろだ!」
アトランティカを構えていたヴァイスの危険信号が飛んでくる。だが、まともに回避することも難しい今の状況ではなす術はなかった。
数歩後ずさったかと思うと、そのまま猛進して突っ込んできた。必死に回避を試みるが無駄に過ぎなかった。
「うわっ!?」
「グレンさん!」
吹っ飛ばされた衝撃で付着していた泥は弾け散った。すぐさま立ち上がりボルボロスから距離を取る。
この時点で早くも一つ目の応急薬を消費してしまった。グレンのポーチには、回復薬が手付かずで十個、応急薬は五つしか入っていない。このままのペースでは、回復薬が切れるのは時間の問題だ。
「だったらこれだ!」
背中からトランペッコを引き抜く。そして、すぐさま演奏モードだ。
【白】、【緑】、【白】の音の順に演奏していく。それは体力回復【小】の演奏効果だ。さらに、【水色】の音を三連続で繰り返す。この対ボルボロスとの狩猟ではかなりの助けになる耐雪&耐泥無効のスキルだ。
「よしっ! これで泥は無視して行ける!」
背後からレムナイフを構えたクレアが斬りかかる。
取り決めどおり一撃離脱を行う。いくら耐泥無効だとしてもボルボロスには、まだ隠された攻撃手段があるかもしれない。油断することはできないということだ。
ボルボロスは尻尾で周囲をなぎ払う。三人とも尻尾が及ぶ範囲外にいたため無傷だ。
「リーチはそこまで長くないか」
同じような攻撃を繰り出してくるリオレウスなどは、尻尾自体の長さがあるため一度になぎ払う範囲は大きい。しかし、ボルボロスの尻尾はそれほど長くはない。
ただ気をつけたいのは、ボルボロスの尻尾は高い位置にあることだ。片手剣のクレアでは狙うのは難しく、打撃攻撃が主となるグレンにも尻尾切断は不可能だ。
ならば、残るはヴァイスだ。
リーチの長い太刀なら容易に届く距離だ。アトランティカの刃がボルボロスの尻尾を貫く。
「グオオオオォォォォォォォッ!」
破壊力のある一撃にボルボロスはヴァイスに照準を合わせる。目の前にヴァイスを捕らえるやいなや突進の体勢に入る。
「遅いな」
しかし、ヴァイスの方が上手であった。移動斬りによる立ち回りによりボルボロスの正面から一瞬で逸れてみせる。突進は空振りに終わりボルボロスは無人の区間を突っ切った。
突進を終えた瞬間は無防備になる。その瞬間を狙ったのはグレンだ。トランペッコを振り回し上段から叩きつける。それは、確かにボルボロスの左脚に命中した。だが、
「炎が効かない!?」
もう一度、今度はトランペッコで殴りつける。命中と同時に炎が上がるが、それにはボルボロスはまるで無反応である。
「火属性が弱点じゃないのか!?」
グレンは一旦後退して様子を窺ってみる。
特殊な睡眠属性を持つクレアのレムナイフは論外だ。重要なのはヴァイスのアトランティカである。あの太刀は確かに水属性だ。それも、ボルボロスの前には効いていない様子である。
「どういうことなんだよ……」
グレンの嘆きが虚しく風に流されていく。
突進を繰り出し続けているボルボロスだが、それは一向に命中していなかった。浅く斬り込んでいるヴァイスとクレアは余裕を持って動いているためボルボロスを翻弄している。
「グオオォォォッ」
ボルボロスが短く吼える。異変を感じ取った二人はすぐさま散開する。
全身を身震いさせるようにボルボロスはする。その影響でボルボロスの身体に付着していた泥が周囲に撒き散らされた。これを浴びれば、泥だるま状態は間逃れないだろう。
「師匠」
「ああ、わかっている」
互いに頷くと二人は大胆にも、ボルボロスに接近していく。
そう、対泥無効のスキルの加護を受けた二人にはこの攻撃は無意味に近いのだ。つまり、多少のダメージは覚悟して攻撃を試みようというのだ。
「なら、俺は援護だな!」
【水色】、【水色】、【緑】、【白】の音を奏でる。これは、耳栓スキルと同等の効果を発揮するものだ。万が一のことを考慮したグレンの行動である。
その援護に応えるるような動きを両者は見せていた。
クレアは左脚、ヴァイスは右脚をそれぞれ狙う。片手剣のクレアは一撃一撃を着実に命中させていくが、ヴァイスは違った。様子見の段階でも斬撃を多く叩き込むことも時には必要なことだ。
「りゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
すでに溜まっていた気を放出し気刃斬り。続いて気刃大回転斬りを繰り出す。凄まじい威力の斬撃の猛攻にあったボルボロスの右脚は、それを覆うように守っていた泥が弾け飛び土色の甲殻が姿を表した。
「アアアアァァァァァァァァァッ!?」
水属性が効かないとしても、アトランティカ自体が持つ高い攻撃力はボルボロスには通用しているらしい。一度斬り下がり、再び様子見に専念する。
恨むような視線でヴァイスを睨みつける。圧倒的なモンスター特有の威圧感。全身にビリビリと伝わってくる。
ヴァイスがアトランティカを鞘に収めるのと、ボルボロスが動き出したのは紙一重の差だった。ヴァイスは走って回避するのではなく横っ飛びで回避した。ボルボロスとの距離感が微妙だったことが要因でそう判断したのだ。
逆に、クレアとグレンにしてみれば好機である。
泥が消え、露わになった甲殻目掛けトランペッコをぶん回す。左、右と交互に振るうと攻撃の手を一旦休めボルボロスの様子を窺う。
念のため一度距離を取る。グレンの抜けた穴にヴァイスが入れ替わるようになった格好だ。
「……気のせいか? さっきよりも、炎は効いていたようにも感じたんだよな」
別に属性強化の演奏をしたわけでもなく、防具のスキルが発動したわけでもない。だとしたら、最初に感じた手応えは単なる勘違いだったのだろうか。
直後、ガキンッ、と金属が擦れる乾いた音が響く。クレアが盾でボルボロスの攻撃をガードじた証拠だ。しかし、片手剣の小さい盾ではそう何回も攻撃を凌げるわけではない。
「クレア、援護する!」
「お願いします!」
ボルボロスの真横から、頭部目掛けてトランペッコをぶん回す。基本的にほとんどのモンスターは頭部が弱点となっている。が、ボルボロスの場合は弱点どころか肉質がとにかく硬かった。トランペッコは弾かれ握っていた手に電撃のような痛みが走る。
「硬い!」
しかし、ボルボロスの注意を引きつけるにはそれでも十分だったらしく、追い回していたクレアを見逃す。新たな標的となったのはグレンであった。
「さぁ、俺に突いて来いよ!」
トランペッコを肩に背負い、ボルボロスに背を向け走り出す。人間が全速力で走る分なら、ボルボロスの歩くスピードより速い。見る見るうちにグレンとボルボロスとの距離が開けていく。
そして、安全圏までたどり着くとポーチに手を突っ込み閃光玉を取り出す。
投擲された閃光玉は見事にその役目を果たし、ボルボロスの視界を潰すことに成功した。
「オオオオアアァァァァァァァッ!?」
悲鳴交じりの咆哮を上げている時には、既にクレアが真っ先に駆けつけていた。遅れて、グレンとヴァイスも続く。
クレアは、片手剣でも比較的狙いやすい腕を狙う。グレンは泥が消えた右脚。ヴァイスは頭部だ。
「グオオオォォォォォォォォ!」
ボルボロスが直感に任せて尻尾を振り回す。狙った攻撃ではないが、不意を突かれやすいこの手段はどんなにベテランであっても避けることができない。ヴァイスもその一人で、運悪く尻尾に引っ掛かる形になってしまった。
「二人とも大丈夫か?」
受け身を取って素早く立ち上がっているところを見ると、ヴァイスも掠った程度なのだろう。残りの二人の身を案じる。
「はい。私はガードに成功しましたし、グレンさんはボルボロスの足元にいましたから」
「そうか、わかった」
敵が動きを止めたのを確認してから、ヴァイスは再び頭部へとアトランティカを振り下ろす。高い切れ味を誇るアトランティカの刃は弾かれることなく狙った部分へと命中する。連続して突き、斬り上げ、斬りつけてから気刃斬りをもう一度繰り出す。
ボルボロスが閃光玉の影響から回復するのと、ヴァイスが気刃大回転斬りを繰り出したのは、ほぼ同時のタイミングだった。しかし、明らかな深手を負ったのはボルボロスでこの狩猟で初めて大きく体勢を崩した。
「まだこの段階での深入りは禁物だ。集中して行くぞ!」
この言葉に二人は頷き一層気を引き締める。
今はまだヴァイスの予定通りに狩猟を組み立てていけている。
これが一体いつまで持つか。それこそ、今回の狩猟の大きなポイントの一つになることは間違いなかった。