雲は低く、陰鬱な心境を映しているようだ。
「見つかりませんね」
左のシートに座るジョセフがヘリの運転をするクリスに言う。
確かに、先程からヘリから見える光景は不気味に広がる広大な森ばかりだ。
「クリス!! アレを見て!!」
気付いたのはジルだ。
かすかに、灰色がかった黒い煙がたなびいて居る。
「傍に寄せろ、クリス」
隊長であるウェスカーが即座に指示を出す。
徐々にだが煙に近付き、煙の発生源である“ナニカ”が次第に見えてくる。
「………………!!」
正面に座るジルが息を呑むのがわかる。
それも当然だ、そのヘリはS.T.A.R.S.ブラヴォーチームの乗っていたヘリだから。
原作通り、一端メンバーを降ろした後、ヘリを上空に待避させて様子を見るようだ。待機するのは後方の俺。
こう言う視界の聞かない場所では接近戦になる場合が多く、後方支援は邪魔になるからだ。
「すまん………ジョセフ…………っ!!」
ジョセフの持っていた無線機を通して聞こえた、
犬の吼える声………ショットガンの銃声
そしてジルの叫ぶ声、そう、バイオハザードのオープニングムービーの再現である。
知って居るからこそ、怖くなる。
“救えない”とイウコト…………
ヘリにいる以上、何の手出しをすることは出来ない。
突如通信が声を拾う。
ウェスカーだ………!!
「聞こえるか…緊急事態だ……ヘリを至急待避させろ………ヘリを待避させろ!」
やっぱりクリス達を洋館に連れて行く気ですか。
さらに言えば流石に原作ブラッドとは言え味方を置いてけぼりにするか?
と思ってたけど、隊長命令だったのな。
「了解、一端離れて指示を待ちます。」
なるべく動揺が声に出ないように、ウェスカーに返答すると、ヘリの操縦桿を引いて離脱させた。
「…ぉぉ……っ…………ぃ………ぉ…………………」
ヘリのローター音に混じって聞こえるか声はクリスの物だ。
原作通り下で叫んでいる。
…………?
何か、違和感を感じる。
しかし、その違和感を確かめる間も無くクリス達が走り出した、暗闇の中、マズルラッシュが点々と光り、追跡を楽にする。
そして、見えたのは…………
“洋館”………!!
しばらく思巡した後、帰還時に
“燃料がギリギリ”
だった事を思い出し、ヘリを研究所のヘリポートに着陸させた。
ヘリから降りると、ファストロープ用のワイヤーを使い、停止したエレベーター・シャフトを降りて行く。
軍に研修受けてて良かった、昔の“俺”じゃあ、まず降りられんだろ。
カーゴの上に降りると、天井に立つとハッチを開け、脇に予め用意されていた縄梯子を下ろしカーゴ内に降りる。
エレベーターは電源が落ちているものの、ドア自体は手動だ、ゲームでも見た、細長い通路を抜ける、ゲートのロックは掛かっていたが内側からなら簡単に開いた。
「さーって、ぼちぼち始めますか……」
研究施設はスルー、まずは洋館を目指して歩き出した。
エレベーターを動かすと噴水の真下に着いた、噴水自体は開いていないので真っ暗だが、オイルライターに火を灯すと、眩しさに目が眩むが、それも一瞬で、次第に馴れるとむしろ薄暗い。
中から噴水を開く“何か”が有る筈だ、
ライターの薄暗い灯りの中では視界はあまりきかない。
エレベーター正面の石壁を押すと狭い通路が開いた、肩幅ギリギリ、少し体を斜めにしないと歩くのは大変だ。
狭く、細い通路の突き当たり。
そこは回転扉になっており、出た先はクランク通路だった。
こっちにはエンリコが居るから………
梯子を上ると中庭に出た。
クリス達が貯水池開けてないから滝は無い。
ワン公にはブローニングで弾幕を張りつつ左手に持ったサムライ・エッジを頭に撃ち込んだ。
エレベーターが上がって居るから出られない。
とりあえず野外は危険だ、寄宿舎へと足を運んだ。