生存者の、そして脱出の手がかりを求めて其処へ立ち入ったのは半ば必然と言えるだろう。
ゆっくりと、室内を窺いながら扉をあけると真横から銃口を突き付けられた。
「………動くな」
そう、言いながら拳銃を構えて居るのはGパンにYシャツ
その上にパウチやホルスターを提げるベルトと言う軽装の男だ。
自分は人間だ……
そう、弁解しようとした所で既に引き金が引かれていた。
思わず目を瞑るが、カチッ……と言うハンマーの落ちる音がしただけだ。
思わずその男に向き直ると目が笑っていることに気が付いた。
「冗談さ……
しかし、まだこの街に生きている人間がいるとは思わなかったな。」
そういうと、外してあったマガジンを入れるとスライドを引く。
これで先程とは違い拳銃が発射可能となった。
装弾数を一発増やす為だろうか、マガジンを外すと。やはりバラの弾丸をマガジンに込める。
「今日着任予定だったレオン・S・ケネディです、アナタは……」
近くにあったデスクに座るとマシンガンやショットガンを並べて、ベルトに提げて行く。
「多分、名乗るまでも無くあんたは俺の名前を知っているはずだ。」
自分が此処に志願した理由は6月にあったあの事件がきっかけだ。
そして此処はS.T.A.R.S.のオフィス……
なら、この目の前に居る男性は……!!
「クリス・レッドフィールドか?」
男性がデスクからずっこけた。
一気に空気がシリアスからギャグに変わった気がする。
「違う!! 俺はブラッド・ヴィッカーズだ!!」
クールに決めていたイメージがガラガラと崩れ、親しみやすいアンちゃん。
と言った感じに成る。
「それで、この街は一体どうなっているんだ。」
「さて……ね、気が付いたら街中化け物だらけ、さ。」
隊長用のデスクを漁るとサングラスを取り出してかける。
なんと言うか、ノリノリだ……
「ラクーン森林地帯にあった洋館で研究していたクレイウィルス、そん中でも完成度が高いT‐ウィルスと呼ばれる物だ。
それに感染すると知能の極端な低下、新陳代謝活発化によって成長と細胞壊死のサイクルが早くなってるから、外見はぱっと見腐乱死体みたいになる。
動きは鈍いが、並みの人間より遥かに頑丈だ、倒すには普通の人間と同じ、生命機能を失う程の出血させる、脳の機能の破壊。
要は弾丸ぶち込めば良い。
感染すれば治療方法は……今んとこ無い。
ゾンビになったら人間には戻れないよ。
空気感染は……俺達には殆ど無い。
高濃度のウィルスが充満してたりしない限り無事。
……ここら辺が俺の察してる所だな……」
洋館以来、伊達に蝙蝠してないよ。
肩を竦めるように手を上げるとデスクから立ち上がった。
「それで……? あんたはどうするんだ?
俺はこの街と心中するのは真っ平御免だ。脱出するつもりなら付いて来るといい。」
「脱出……?」
この状況でどうやって逃げるのだろうか……
「地下の下水道を通って、脱出しようとした奴が居るらしい。
開けた空間で四方八方から押し寄せるゾンビをなぎ倒しながらよりは多少視界が悪くても限定して戦える地下の方が良いからな。」
そう言いながらオフィスから出ようとした所で足を止める。
「そうだ……
こいつを持って行け。」
そう言って投げてきたのはインカムマイクだ。
「チャンネルは弄るなよ、署内のハンズフリーモードになってる。
バッテリーは十分に溜めて有るからちょっとやそっとじゃ切れないハズだ……
それと……署長には気を付けろよ。」
そう言って今度こそオフィスを後にした。
さて……
ここからどーしよ……
一人で地下駐車場に行った所で、なぁ……?
かといって署長wと厄介事&Gとの遭遇は嫌だ。
とりあえず、自分のオフィスにある荷物でも拾えないかなー
っと軽いノリでリッカーやゾンビをクルツで蜂の巣にしていく。
その時とてつもない騒音が響く。
二階……か……?
って!! 今の音タイラントのヘリ投下じゃねぇの!?
まずい、まずいって。
ネメシスみたいにS.T.A.R.S.抹殺がプログラムされてるか知らんが、Gウィルス回収を命じられてるあれと出会うのは相当まずい。
とりあえず、逃げ道が無くならない程度に逃げ回るか……
【改ページ】「助けて」
そんな声が聞こえたのは偶然だった。
自分のデスクからペットボトルのドリンクとスナック菓子を回収した後。
美術館時代は入場口だった外来受付を通って会議室前を抜ける。
赤い宝石は回収しない、下手にレオンやクレアに会い損ねて宝石が手に入らず詰み。
というオチは勘弁だったからだ。
そして石像の置かれた廊下を通り過ぎ……ようとした所で、壊れたドアの隙間から少女が生えてきた。
「何やってんだ……?」ぽつりと、呟いた言葉に少女は顔を真っ赤にしていた。