ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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サブタイを見て「お?」と思った方。この後に『※ただし成功するとは限らない』とつけた上で読んでみてください。


第九十二話 一世一代の告白

撮影用フィールドからの転移先は例のテレビ局だった。はてさて、オーディンさんの話とは何だろう・・・と思ったら、普通にさっきの撮影についての感想やら世間話だった。

 

「なかなかの見応えじゃったぞ。ウチのヴァルキリーもすっかりご満悦のようじゃ。のうロスヴァイセ?」

 

「・・・」

 

「ロスヴァイセ殿? いかがされた」

 

「え? あ、は、はい! そうですね! あそこの百均は品ぞろえが豊富ですよね!」

 

バラキエルさんに呼ばれ、熱に浮かされた様な表情のロスヴァイセさんが慌てて返事をする。なんか、さっきからずっとこの調子だけど、体調が悪いようならオーディンさんに言った方がいいと思うのだが。

 

「誰が百円均一の話をしとるか。・・・まあよい、ともかく見に来てよかったぞぃ。これは人気が出そうじゃな」

 

「うふふ、北欧の主神様にお墨付きをもらえるなんて嬉しいな! 新プロジェクトの第一弾としていいスタートが切れそう!」

 

「新プロジェクト? という事はもしかして、この作品の他にまだあるんですか?」

 

「そうだよフューリーさん。まだ企画の段階なんだけど、次は赤龍帝君を主役にしたヤツを作ろうと思っているの」

 

赤龍帝・・・ひょっとしなくても兵藤君の事だよな?

 

「魔装騎士~THE KNIGHT OF FURY~は大人が楽しめる作品。それとは逆に、赤龍帝君の作品は子ども達が楽しめる作品にしようと考えてるんだ。ほら、前にソーナちゃんとリアスちゃんがレーティングゲームした時、結構派手な戦いをしたでしょ? どうもそれが子ども達に気に入られちゃったみたいなの」

 

俺、見て無いんでわからないです。それと、特撮って基本子ども向けなんじゃ・・・いや、でも前の世界でも特撮好きな大人って珍しくなかったし、別に変じゃないか。

 

「タイトルはもう考えてあるの。『それいけ! せきりゅーてー』なんてどうかな?」

 

「ッ・・・!?」

 

咄嗟に吹き出しそうになったのを何とか抑える。俺の頭に、究極の自己犠牲ヒーローの顔が浮かびあがった。

 

「どうしたの、フューリーさん? ・・・ひょっとして、今のタイトル変だった?」

 

「い、いえ、そんな事は無いです。・・・ちなみに、まだ企画の段階との事ですけど、主人公の友達は愛と勇気だけだったりしますか?」

 

「友達というか、仲間は何人か作ろうと思ってるけど・・・」

 

そうか、ボッチにはならないんだな。まあ、厳密にはあのフレーズには滅茶苦茶深い理由があるそうなんだけど。どんな内容だったかは忘れてしまったが。

 

「でも、愛と勇気だけか・・・。中々に深い言葉だね。OPの歌詞に盛り込んでおこうかな」

 

おおう、ますます“彼”に近付けてしまったぞ。いやでも、“彼”の事を知ってるのは俺だけだし、俺がこれ以上余計な事を言わなければ問題無いよな。

 

「ふむ、どうもワシ等は邪魔者の様じゃし。そろそろ帰るとするか」

 

「えー、もう帰っちゃうの? もう少しゆっくりしていってもいいのに」

 

「ほほほ、可愛らしいお嬢ちゃんに誘ってもらえるとは嬉しいのぉ。その気持ちだけ受け取らせてもらうぞ。さあ、二人とも参るとするぞ」

 

「はっ」

 

「私はどうすれば・・・。って、あれ!? オーディン様!?」

 

「二人なら先に出て行きましたよ」

 

「そ、そうですか。で、では私も失礼します! オーディン様! 置いて行かないでくださいよ~~~!」

 

二人に続いてロスヴァイセさんも去って行った。さてと、これで解散か? なら俺もそろそろ家に戻ろうかな。

 

「セラフォルーさん。俺はどうすればいいですか? 特に問題無いようでしたら、俺もこの辺で・・・」

 

「あ、待ってフューリーさん! もしもまだ時間がある様なら、もう一つお願いがあるの!」

 

可愛らしい上目使いでそう言って来るセラフォルーさんに、俺は素直に頷いた。・・・単純だなとか思ったそこのお前。代わってみろ。そしてその破壊力に爆死してしまえ。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

「はーい。次の人どうぞ~~」

 

セラフォルーさんの合図で、新たに一人の女性悪魔が俺の前にやって来る。

 

ここはテレビ局一階にある大広間。本来はイベントや記者会見の為に使用されるらしい。そんな場所を使って俺がやっているのは、撮影を見に来た人達への握手会だった。

 

ここで明らかになったが、今回の撮影を見学に来た人達の数はなんと二百人。しかも、その二百人も凄まじい倍率の中から見学権を勝ち取った人達なのだとか。

 

「外れちゃった子達には残念なんだけど、人数制限しないと撮影どころじゃなくなっちゃうところだったから」

 

俺としては二百人も来た時点で予想外なんですけど。ちなみに、内訳は女性が八割の男性二割だった。すでに四人くらいと握手したが、その中の一人にいきなり「兄貴と呼ばせてくだせえ!」なんて言われて思わず尻がキュッとなった。いやね、別にあの人はそういう意図で言ったんじゃないとはわかってるんだけど、なまじ余計な知識がある分変な想像をしてしまった俺が憎い。

 

「あの・・・」

 

おっと、いかん。女性悪魔さんがどうすればいいか困っている。俺は彼女に向かって手を差し出した。

 

「今日は来てくれてありがとうございました」

 

「は、はひ! こ、こちらこそ助けて頂いてありがとうございましゅ!」

 

あ、まただ。うーん、どうもさっきから礼ばかり言われているけど、俺なんかしたか? それとも、このお礼はアクションシーンが楽しめた事に対するお礼なのか? だとしたら、ちょっと嬉しいな。まさか、Dとの勝負の為にした特訓がこんな場所でも役に立つとは思わなかった。

 

「握手が終わったらこちらから出てね。はい、それじゃ次の人どうぞ!」

 

続いて姿を見せたのも女性だった。黒いショートヘアに、同じく黒い瞳、胸元が大胆に開かれた黄色いワンピースを纏い、頭からたなびく赤くて長いリボンが目を引く。

 

何故容姿について触れたかというと、この女性がどことなく他の人達と雰囲気が違うからだ。

 

「お初にお目にかかります、フューリー様。私はイライザと申します。この度は、こうしてあなた様にお会い出来る機会を得た事に大変感激していると共に、やはり私・・・私達の選択は間違っていなかったと確信いたしました」

 

射抜く様に俺を見つめて来るイライザさん。当然初対面なのだが、その瞳の感じはどこかで見憶えがあった。このキラキラ加減は・・・そうだ、カテレアさんだ! カテレアさんが俺に向けて来る瞳にそっくりなんだ!

 

「イライザ」

 

と思っていたら、カテレアさんが姿を現した。救護室に運ばれたって聞いてたが・・・どこも悪そうには見えない。これで安心・・・

 

「あ、お帰りカテレアちゃん」

 

「セラフォルー・・・! 何故このイベントの前に私を呼ばなかったんですか! おかげで出遅れてしまったではありませんか!」

 

「ゴメンねー。てっきりまだ救護班のお世話になってると思ったから」

 

「はっ! フューリー様の御為ならば、あの程度の出血五秒もかからず止めてみせますわ!」

 

出来なかった! 出血ってホントに何があったんだカテレアさん!?

 

「久しぶりね、カテレア」

 

その時、イライザさんが突然カテレアさんの名前を呼んだ。そして、カテレアさんもそれに応えた。

 

「そちらも変わりないようで何よりです。ところで、今日はあなた一人ですか?」

 

「ええ。見学権を得たのは私だけだったから」

 

「そうですか。・・・連中から聞きましたよ。あなた達、ついに例の計画を実行したらしいですね」

 

「ええ。だけど本格的な活動はもう少し先になりそうだわ。まだ“経典”と呼ぶべき物が無いのよ」

 

「“経典”ですか。こればかりは私が用意するわけにもいきませんね」

 

「別に難しい物は必要無いわ。そうね・・・どれほどの偉業を成したか、どれほどの戦いを乗り越えて来たのか・・・とにかく、救世主様である事が書かれてあれば十分だと思うわ」

 

「わかりました。私の方でも探してみましょう」

 

「それは助かるわ。お願いね」

 

長年の友の様に仲睦まじく会話するカテレアさんとイライザさん。内容自体は込み入った話のようだけど、何なんだろうな。

 

「案外、何もしなくてももう少し待てば出て来そうな気もしますけどね」

 

「ふふ、あなたの勘は鋭いから、ひょっとしたら本当にそうなるかもしれないわね」

 

「そろそろお話はいいかな? 後ろの子達がつかえてるから」

 

「あ、そうですね。ごめんなさい、私ったら。フューリー様。よろしくお願いします」

 

イライザさんとガッチリ握手をする。ちょっと冷たかった。

 

「うふふ、本当に今日は素敵な一日でした。では、私はこれで失礼します。またいつか、お会いできる日を楽しみにしています」

 

イライザさんの背中を見送る。何となく気になる人だったが、今は握手会に専念しよう。

 

「はい。それじゃ次の人!」

 

緊張した様子で俺の前に立つ女性に、俺は手を差し伸ばすのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

ひたすらにやって来るお客さんと握手する時間が過ぎて行く。その中には実に多種多様な反応をする人達がいた。

 

顔を真っ赤にして握手どころじゃなくなる人・・・。

 

握手した俺にまで振動が伝わって来るほどに震える人・・・。

 

握手と同時に大粒の涙を流し始める人・・・。

 

それぞれに反応は違った。だけど、一つだけ共通していた事もあった。それは、みなさん本当に俺との握手を喜んでくれた事だった。

 

そんなみなさんと触れ合っていれば、嫌でもわかる。この人達は俺を・・・フューリーという存在を心から受け入れてくれているのだと。

 

思えば、お披露目会の時もそうだった。あの時も、俺に話しかけて来てくれたみなさんは俺に対して好意的な態度だった。もっと言えば、今まで出会って来たほとんどの悪魔のみなさんがそうだった。

 

それに気付いた時、ちょっとだけ恥ずかしく。そして・・・凄く嬉しかった。みなさんの抱くフューリーと自分は別物。だけど、今なら少しだけ受け入れられそうな気がする。

 

「・・・こういうのも、悪くないのかもしれないな」

 

「フューリー様。何かおっしゃいましたか?」

 

「いえ、ただの独り言です。さあ、次の人をお願いします」

 

「りょーかい! 次が最後だよ。どうぞ~~!」

 

「し、失礼いたしますわ!」

 

握手会最後の一人・・・それはレイヴェルさんだった。

 

「やあ、レイヴェルさん。先程以来だな」

 

「え、ええ。フューリー様にはなんと感謝申し上げればよいか。フェニックスであるわたくしにはあのような物は意味が無いはずですのに、わたくしは動けなかった。情けない限りですわ」

 

いやいや、あそこはアレが正解でしょ。人質だったキミがリーダーボコッたら俺がいた意味なかっただろうし。

 

「そんな事は無い。突然あんな目に遭えば誰だってそうなるさ」

 

あ、だからスタントの人もギャラリーから人質役を選んだのか。うーん、演技の世界はやっぱり奥が深いな。俺には役者は一生無理だろうな。

 

「フューリー様・・・」

 

レイヴェルさんの頬に朱が差す。と思ったら、何やら決意の込められた表情を見せ、震える声でこう言った。

 

「フュ、フューリー様! 身の程知らずなのは重々承知しております! ですが、それでもお伝えしたいのです! わた、わたくしは、あなたの事をお、おし、お慕・・・おひたししております!」

 

どこからかひゅ~~~と風が鳴く音が聞こえて来た。ええっと・・・おひたし? おひたしっていうと茹でた野菜に醤油をかけて食べるアレの事だよな・・・?

 

「レイヴェルさん。何故ここでおひたし・・・?」

 

固まってしまったレイヴェルさんへそう声をかけると、彼女は最早赤どころか紅蓮といってもいいくらいの顔色を見せ、出口へ向かってもの凄い速度で走り始めた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!! 肝心な所で噛むなんてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! 馬鹿ぁ! わたくしの馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

こうして、最後の一人とは握手が出来ないまま握手会は終了し、今度こそ俺は家へと帰るのだった。

 

(むむ、これはまた競争相手が増えちゃったかな)

 

(小娘が身の程を知りなさい。ですがまあ、妾でよければ認めてあげてもよろしいですわよ。ふふ、これぞ正妻の余裕!)




原作十巻を読んで、サイラオーグさんは『鋼の救世主』を読んだ後、独力でヘルアンドヘブンを習得しそうだと思いました。見た目も心もイケメンなキャラなので、オリ主とも今後色々絡ませたいです。・・・いっそのこと、次回のレーティングゲームではオリ主の弟子の座をかけて戦わせるのもありかも・・・。

しかしまあ、寄り道し過ぎた。なので次回から本編に戻ります。

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