ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第八十九話 その想いを届ける為に

「朱乃のお母様は朱乃を守って亡くなられたの」

 

オーディンさん達が帰り、夕食を済ませた所で、リアスは俺達を再び席に着かせそう切り出して来た。もしかしなくても、俺とバラキエルさんのやり取りを聞いていたのかもしれない。

 

ともかく、リアスは俺達に朱乃とお父さんの確執の理由を語った。その内容の壮絶さに俺達は言葉を失い、ただただリアスの言葉に耳を傾けるだけだった。

 

「襲われた時、朱乃は襲撃者達からさんざん聞かされたそうよ。父であるバラキエルが他の勢力からどれほど恨まれているかを。だからこうなったのは当然なのだと。そして、お母様は朱乃の目の前で・・・」

 

最後まで言葉を紡がず、悲しそうに顔を伏せるリアス。そうか。だから朱乃は自分の中の堕天使の血をあれほどまでに嫌っていたのか。ハーフだからという理由で住む家も追われてしまったのもそれを助長させたのかもしれない。

 

「だから朱乃は今でもバラキエルに対して心を閉じてしまっている。それでも、以前に比べたらずいぶんと明るくなったのよ。冥界での特訓の際、アザゼル先生に堕天使の血を受け入れるよう言われた時だって、あの子は頷いていた。・・・お母様の事も、きっと朱乃自身心の底では理解しているはずなの」

 

だけど、それを素直には受け入れられない。だからバラキエルさんの所為にする事で自分の気持ちを保って来たんだろう。無理も無い話だ。

 

「あの時、バラキエルが間に合っていれば。・・・ううん、せめて、お母様の最期の言葉をあの二人が聞く事が出来ていれば、きっと今もあの二人の仲は・・・。なんて、もしもの話なんてしてもしょうがないわよね」

 

最後にそう言ってリアスは席を立った。俺達もまた同じ様に立ち上がり、それぞれ自分の部屋に戻るのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

さて、事情は理解出来た。なら、次はどう行動すればいいかだが・・・実は既に一つ案は出ている。二人の不仲の理由はお母さんの死。ならば、そのお母さんを精神コマンド『復活』で蘇らせるのはどうだろうか。大破どころか、普通に原子レベルまで消滅したはずのロボットを完全に元の状態に戻せるほどの力ならば、死者の蘇生も可能だと思う。

 

でも、それって本当に正しいのだろうか。別に生と死を神聖視しているわけではないが、死んだ人を生き返らせるというのは命を好き勝手に操るという意味だ。そんな事を、同じ人間がやっていいのか。『友情』で怪我を治すのとはわけが違いすぎる。

 

『ならどうするつもりや?』

 

・・・もういきなり話しかけられても驚かなくなった自分がいます・・・。

 

『アンタがこのまま黙っとるわけないからな』

 

俺ってそんなに読まれやすい性格なのだろうか。・・・まあいい。俺の性格の事なんかよりも朱乃のお母さんの事だ。やっぱり亡くなった人を生き返らせるなんて、良く無い事なんですかね。

 

『そうやなぁ・・・。死者の蘇生なんてやりだしたらキリが無いからなぁ。大切な人ともう一度会えるんやったら誰だってそうするんちゃうん?』

 

もっともな言葉だ。なら、やっぱり蘇生で・・・とそっちに傾こうとした俺の頭に、オカンの沈んだ声が響いた。

 

『せやけど、これだけは言わせてもらうで。蘇生したからといって、必ずしもみんなが幸せになるとは限らへん。アンタが言う様に、命を操るという事はそんな軽いもんやない。ある種の覚悟も必要になるで』

 

なるほど・・・オカンはそうした事例を見て来たのだろう。今の声色から俺はそう察した。駄目だ。やっぱりここはもっと慎重に考えるべきなんだろう。

 

『考えるのもええけどな、元々の目的を忘れたらあかんで。あの父娘の仲を取り戻すのがアンタの願いなんやろ』

 

・・・ああ、そうだ。それが一番の目的であって、朱乃のお母さんを蘇らせるのはその為の手段だ。他に方法があるならば必ずしもそうする必要は無い。

 

ただ、部外者である俺がいくら言った所で、バラキエルさんはまだしも朱乃は聞く耳を持たないだろう。出来れば二人と関わりがあって、なおかつ朱乃を抑えられる人じゃないと。といっても、そんな都合の良い人物が簡単に見つかるわけが無い。リアスが言った様に、お母さんの言葉なら朱乃も素直に聞いてくれるかもしれないがな。

 

『ふむ、ならそうすればええやん』

 

はい? いやいや、だからお母さんは亡くなってるんですって。まさか、魂でも呼び戻して話でもさせるつもりですか? そんな神様レベルの奇跡なんか・・・。

 

『出来るよ。ウチ神様やもん』

 

そうだった! え、いやマジで!? どうやって!?

 

『もちろん、色々制限はあるんやけどな。まず、時間はアンタらの感覚で言うと約三十分だけ。そして、呼び戻した魂はそのままじゃ何も出来へんから、それを受け入れる器が必要や』

 

その器っていうのは・・・ひょっとして生きている人間とかですか?

 

『正解や。憑依と言った方がわかりやすいかな。ともかく、呼び戻した魂は憑依した者を通じて言葉を発したり動いたり出来るんや』

 

ならお願いします! 俺に朱乃のお母さんを憑依させて話をさせてあげてください! そうすればきっとあの二人の仲も・・・!

 

一拍の間も無くそうお願いすると、オカンは呆れたような、それでいて嬉しそうな声で答えた。

 

『ふふ、デメリットや危険性の確認もせんと自分に憑依させろ言うなんてな。アンタらしいというかなんというか・・・』

 

あ、す、すみません。新しい方法が見つかってつい・・・。

 

『まあ、そんなもん無いんやけどな』

 

ないんかい!?

 

『当たり前や。他の神は知らんけど、ウチがアンタに危険な事をさせる思うたんか?』

 

それは無いな。うん、即答できる。だってオカンだもん。

 

『ただなぁ、アンタのやる気を削ぐ様で悪いんやけど、アンタには憑依させられへんで』

 

WHY!? 何故に!?

 

『女性の魂は女性に、男性の魂は男性にて決まっとるんや。せやないと色々都合が悪い所が出て来るからな』

 

なら朱乃のお母さんを憑依させる為には女性でないといけないという事か。くそ、せっかくの良い案だと思ったのに。

 

『勝手に完結してもらったら困るわ。ちょっと待っとき』

 

その言葉を最後にオカンの声が聞こえなくなった。待てと言われたのでそのまま五分くらい待っていただろうか。俺の部屋の扉が勢い良く開かれた。

 

「リョーマさん、お話はオ・クァーン様から窺いました! 私なんかでよければお役に立たせてください! 私も、あんな辛そうな朱乃さん見たくありませんから!」

 

そう言って、天使は見るだけで浄化されそうな笑顔を俺に向けて来るのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

それから数日後。ちょうど冥界での撮影を翌日に控えた今日、俺とアーシアは朱乃の神社へと足を運んだ。

 

「こんにちは、朱乃さん!」

 

「あらあら、リョーマにアーシアちゃん。突然やって来るなんてどうしたのかしら?」

 

「キミに少し話があってな」

 

「まあ、そういう事ならここじゃなくお家で・・・」

 

「待ってくれ。そろそろ来るはずだから」

 

「え?」

 

たった今上って来た石段の方へ目を向ける。同じ様にそちらへ顔を向けた朱乃の目が大きく見開かれた。

 

「ッ!? な、何であの人が・・・!?」

 

現れたバラキエルさんの姿に驚く朱乃。オーディンさんの連絡先を知らなかったので、アザゼル先生の方からこちらへ来てくれるよう連絡してもらった。

 

『そもそもの原因である俺が言える義理じゃないのは十分承知している。だが、それでも言わせてほしい。・・・頼む、アイツ等を解放してやってくれ』

 

電話口でのアザゼル先生の言葉には、俺にはわからない大きな何かが込められているのを感じた。

 

・・・さあ、役者は揃った。ここまで来たらもう引き返せない。この作戦が失敗すれば、おそらくもう俺には何も出来ない。だからこそ絶対に二人の仲を修復させてみせる。

 

(朱乃、恨むんなら、俺なんかと出会ってしまった自分の不運を恨んでくれよ)

 

こちらへ近づいて来るバラキエルさんへ視線を向けつつ、俺は横にいる朱乃へ向かってそう心の中で呟くのだった。




最初は普通に復活させようと思ったんですが、なにをトチ狂ったのかこんな事になってしまいました。

にしても、これでもう完全にアーシアはオカンの巫女になってしまった感が否めない。

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