ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
・・・あ、すみません。モバゲーのD×Dのゲームについてついぼやいてしまいました。
第八十四話 最強の矛×最強の盾は矛盾ではなく無敵である
季節は夏から秋に変わりながらも、まだまだ暑い日が続いている。あのD及びペロリスト共との戦いから数日が経ち、俺は普段通りの日常へと戻っていた。・・・といっても、以前と全く同じというわけでは無いんだけどな。
まず俺自身についてだが、あの戦いで新しく得る事が出来たラフトクランズ・セイバー(仮)・・・いいかげん名前をなんとかしないとな。ともかくアレについてだが、あの時以降発動させる事が出来なくなっていた。
オカン曰く、あの力の源は彼女が魔改造した『王』の駒らしい。で、その力を発動させる為には、心の底から強く湧き上がる感情や想いが必要になると言われた。
つまり、あの時の俺の「アーシアを守りたい」という想いをトリガーとして発現したのがあの力だという事だ。さらに補足として、抱く想いや感情、それとイメージによって力そのものも変化すると説明された。もしもあの時、「アーシアを守りたい」ではなく「ペロリストをぶちのめす」という想いに支配されていたら、それに応える様な力が発現していたのだとか。・・・たぶん、セイバー(仮)じゃなく、ネオ・ラフトクランズ(仮)になってたんだろうな。
というわけで、使えなくなったわけではないが、使いたいのなら何かしらの強い想いが必要になるというのが答えだった。駒そのものは俺と完全に一体化しているので、それさえ満たせばすぐに発動させられるらしいが・・・今後、そういう状況が果たしてやってくるだろうか。もちろん、再びペロリストがアーシアを始め、リアスや他の子達に手を出そうとするならば絶対に許さないが。・・・ああ、そういえばサーゼクスさんから出来るだけ使わないで欲しいとお願いされたんだっけ。制限があるから自由に使えないと説明した時のホッとした表情は今でも思い出せる。
それと、アガレスさんには迷惑をかけてしまった。どうもあの時俺が彼女の名前を口にした所為で、彼女があの力に関わっていると勘違いした人達から是非とも自分達も同じ物が欲しいという問い合わせが殺到したとメールが来た。これがきっかけで秘密にしたがっていた彼女の趣味が拡散してしまうかもと心配したが、メールを読んだ限り、そんな事も無かったようだった。
あの力についてはこれくらいだろうか。俺の事については他に語る様な事は無い。・・・まあ、特訓漬けの毎日を過ごしていた所為か、今も時間を見つけては鍛練をしていたりはするんだがな。どこぞのプロテイン先輩みたいにトレーニングが趣味・・・という事になったわけではないが、時間が出来たら行う様にはしている。最近はゼノヴィアさんも一緒だ。なんか、「二度と天井に負けたくない」とか言ってたけど、何があったんだろうな。
さて、次はアーシアとオカンについてだ。最初聞いた時は本当にたまげたが、どうもあの二人、いつの間にか会話出来るようになっていたようだった。
「リ、リョーマさん! 大変です! 私・・・オ・クァーン様とお話出来るようになっちゃいました!」
驚きと興奮の混ざった顔で部屋に飛び込んで来たアーシアにこっちが驚いてしまったが、とにかく事情を尋ねてみると、あの戦いを終えてから、アーシアは毎日オカンに感謝の祈りを捧げていたらしい。そして、この日も同じ様に祈りを捧げていたら、あの時と同じようにオカンの声が聞こえたのだそうだ。
本当かどうか確認する為、俺はすぐにオカンへ呼び掛けた。なに普通に声かけてくれちゃってんですかね。
『せやかて工藤』
俺の名字は神崎ですとつっこみもう一度尋ねると、オカンはすまなさそうな声色で答えた。
『ああ、すまんなぁ。つい最近ハマってる漫画のキャラのセリフが出てしもうた。それはそれとして、そのお嬢ちゃんの事やけど・・・毎日毎日ウチの事を想って熱心に祈ってくれるんよ。アンタにはわからんと思うけど、ウチ等はそんな風に祈りを捧げてもらう事がたまらなく嬉しいんや。しかも、ただ祈るだけやない。その子の心の中はいつもウチへの感謝でいっぱいやった。ウチはもう嬉しゅうて嬉しゅうて、つい・・・』
声をかけてしまったという事か。まあでも見た感じアーシアは嫌そうじゃない・・・というか凄く嬉しそうだけど。やっぱりシスターとしては異世界の存在ではあるけど、神様と話が出来るようになったのがいいのだろうか。
「それだけじゃありません。オ・クァーン様がこの世界を選んでくださったから、私はリョーマさんと出会う事が出来たんです。その奇跡を起こしてくださったオ・クァーン様には心からの感謝の想いを捧げたいです」
『うう、なんちゅうええ子なんやろう! アーシアちゃん! これから先、何があろうともウチが守ってあげるからな!』
ふ・・・。やはりアーシアの天使っぷりは留まる所を知らないようだ。だがオカン、あなただけに任せはしない。俺だって彼女を守ってみせるぞ!
『よう言った! ならたった今からウチとアンタで“アーシアちゃんを守る会”を結成するで!』
上等! ならばオカン! アーシアは!?
『天使! 天使は!?』
アーシア!
『アーシアちゃんに手を出す輩は!?』
ガンホー! ガンホー!! ガンホー!!!
『アーシアちゃんを泣かせる輩は!?』
デストロイ! デストロイ!! デストロイ!!!
『アーシアちゃんを傷付けようとする輩は!?』
ジェノサイド! ジェノサイド!! ジェノサイド!!!
『よっしゃあ! ええか! 今の合い言葉を決して忘れるんやないで!』
イエスオカン!
「あ、あれれ? オ・クァーン様の声が聞こえなくなっちゃいました」
『おおっと、アカンアカン。つい熱が入り過ぎてアーシアちゃんをほったらかしにしてしもうた。ではでは、ウチはアーシアちゃんとのお話に戻るとするかな』
了解。・・・ところで、アーシアとの会話もその口調なんですか?
『ちゃうよ。ゴッデスモードの時の口調にしとるで。この子の中の神のイメージを壊したくないからな』
そう言う割には俺との初対面時にはそのまんまでしたよね。
『うふふ、アンタだけ特別やで』
どうしてだろう。特別扱いされてるはずなのにあまり嬉しく無い。
「・・・あ、またオ・クァーン様の声が聞こえました! え? お部屋に戻ればいいんですか? はい、わかりました!」
ぺこりと頭を下げ、アーシアは部屋を出て行った。うん、さっきはオカンのノリに合わせた所為で変なテンションになってしまったが、守るという気持ちに嘘は無いぞ。
こうして、俺は改めて彼女を守るという思いを強くするのだった。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「・・・君。神崎君」
「ん・・・?」
気付けば目の前に支取さんがいた。あれ、俺は何してたんだっけ。
「時間切れです。さあ、駒を動かしてください」
・・・ああ、そっか。支取さんに付き合ってチェスをやってたんだったな。どれを動かすか悩んでいたはずなのに、なんであんな回想してたんだろう。
うーむ、しかし完璧に追い込まれている。ぶっちゃけもう逆転は無理だなこれじゃ。既に九回勝負して全部負けている。これで負ければめでたく十連敗だ。
「チェックメイトです」
で、案の定負けてしまいました。いやホント強いわ支取さん。以前の一勝はマジで奇跡だったんだなぁ。
「ふふ、これで以前の借りを返せましたね」
「アレは運がよかっただけさ。本来の俺の実力なんてこんなものだよ」
それなのに支取さんてば手加減もしてくれないんだから。容赦無さ過ぎて泣きそうだよ。
「・・・やはり、あなたは守るべきものの為に強くなれる人なんですね」
「ん?」
「何でもありません。では、次はあの時と同じ様に私の『王』をディオドラ・アスタロトと思ってみてください。そして、あなたの『女王』をアーシアさん・・・では無く私に置き換えて・・・」
俺の脳裏に支取さんを抱きかかえて高笑いするDの顔が浮かびあがった。野郎・・・イメージの中とはいえ、許せん!
「(私は何を言って・・・)すみません、今の言葉は忘れてくださ・・・」
「・・・始めよう、支取さん」
「ッ・・・!?」
何か頭の中が妙にクリアになって来たぞ。これなら少しはやれるかもしれん。
(・・・自惚れるなソーナ・シトリー。例え神崎君の顔つきがあの時と同じだとしても、彼はディオドラ・アスタロトの名前に反応しているだけ。『女王』を守るように駒を動かしているのも、きっとアーシアさんを重ねているだけ。・・・でも、もしそうじゃなかったら? いや、そもそも何で私はこんな事を気にして・・・)
「支取さん。キミの番だぞ」
「え? あ、は、はい」
そんなに悩ませる様な手を打ったつもりは無いんだがな。・・・まあいいか、おそらくこれが最後の勝負になるだろうし、頑張ろう。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
それから数十分後、勝負は俺の勝利で幕を閉じたのだが・・・これってもしかして、Dのおかげか? だとしたら最悪だ。今後支取さんとの勝負の度にあの野郎の顔を思い浮かべないといけないとか何の嫌がらせだよ。
(いや、まだ決めつけるのは早い。また今度勝負して、その時の結果で結論を出そう!)
さて、そうと決まればDの事なんかさっさと忘れよう。ええっと、次の予定は・・・真羅さんと一緒に生徒会の備品の買い出しだな。確か今度の土曜日に駅前で待ち合わせだったか。こんな簡単な事でお世話になったお礼になるとは思えないが、存分にこき使ってもらう事にするかな。
帰り道、予定の書かれた手帳を確認しながら、俺はそんな風に思うのだった。
七章のスタートです。なんか、最終的にこの作品で最強になるのはアーシアかもしれない・・・。
それにしても、そろそろ更新速度を戻さなければマズイな。