ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
通りがかったメイドさんにリアスの居場所を聞いてそこに向かうと、彼女は庭外れのベンチに腰掛けて難しい顔をしていた。
「よお、リアス」
「あら、アザゼル先生。リョーマ。帰って来てたのね。イッセーの様子はどうだった?」
「まあ、ぼちぼちって所だ。で、お前はこんな所で何してんだ?」
ふむ、流石のアザゼル先生も野生化の事は黙っておくつもりか。まあ、優しい彼女に言ってしまえば、それこそすぐさま助けに行こうとするだろうし、これが正解だよな。
「ちょっとね、提示された技について考えてたのよ」
「ほお。・・・で、感想としてはどうだ?」
「正解かどうかはわからないけど。魔力の収束、及び遠隔操作による攻防一体の技。・・・それが私の感想よ」
おおっと、ほぼ、というかもう完璧に正解じゃん。流石リアス。まだ何も教えて無いのにそこに辿り着くなんて。
「理解は出来ているようだな。それにしちゃあ浮かない顔だが」
「理解は出来ても実行出来ず・・・。まさか、収束展開がここまで難しいものだとは思わなかったわ」
「まあ、お前の持つ滅びの魔力は、所謂一般の魔力とは根本から違うからな。収束させようにも魔力自身が自らを消しちまうってか?」
「ええ。だから絶えず力を注ぎ続けなければいけない。でも、そうすればあっという間に魔力がゼロになってしまう。そうなればもうどうしようもないわ」
「そこらへんは、魔力の総量を増やすしか無いな」
「やっぱり結論はそうなるのね」
うむむ、二人して何やら難しい話をしている。ピッタリだからという理由で即決したが、もっと色々考えて提案した方がよかったのかも・・・。
「リョーマ、どうしてあなたは私にこの技を覚えさせようと思ったの?」
わっほい!? 今思ってた事をそのまんま質問されてしまった。どうしよう。ここは変に言い訳せずに素直に答えた方がいいよな。
「・・・その技はキミにこそ相応しいと思ったからだ。“悪魔”で“王”であるキミに」
「え?」
「どういう意味だ?」
アザゼル先生まで食いついて来た。俺はリアスの隣に座り、改めて説明する事にした。
「キミに提示した技の元々の使い手は“悪魔王”と称される存在だった」
「「ッ!?」」
「他にも銃神とも呼ばれていたが・・・今はそちらは置いておこう。ともかく、その“悪魔王”はガン・スレイブを巧みに操り、立ちはだかる敵を次々と沈めていった」
悪魔王・・・正式名称をディス・アストラナガン。『負の無限力』というトンデモエネルギーで動く第三次αにおけるチート機体。高スペックな上にHP回復とEN回復を持ち、さらにはバリア、空も飛べて適応は宇宙と合わせてSときたもんだ。
・・・え? スパロボ知らないからわからないって? それならもっと簡単にこの機体がどれほど凄いか教えてあげよう。
味方・・・恐怖の対象。
敵・・・同じく恐怖の対象。
ラスボス・・・勧誘して来る。
以上である。味方にも敵にもガチで怖がられる機体ってこいつくらいじゃね? てか、開発に携わった人物までビビるって普通におかしいよね。
「最初は敵として現れたが、味方となってからはとても頼りになる存在だった」
あの初登場シーンは今思い出しても衝撃的だったな。やっと主人公機強化かーとか思ってたらいきなり襲いかかって来たっけ。てか、ロボットなのに魔術的な演出で出て来るってどうよ。普通に「え、生き物?」とか思ったし。
(負の無限力・・・そんな力が存在するなんて・・・)
(そんな化け物を味方にしてみせたのかコイツは。まさか、使役の為の契約を交わしたのか)
「どうかしましたか?」
何故か戦慄の表情を見せる二人に問いかける。気の所為か冷や汗まで流している様に見える。
「リ、リョーマ、あなた、そんな存在をどうやって従えたの?」
「もちろん倒してだ。そうしなければどうしようもなかったからな」
「「なっ!?」」
まさか、新主人公機初お披露目のシナリオでいきなり沈めるハメになるとは思わなかったな。まあ、すぐにイベントが発生して使えるようになったからいいけど。
「囮にしたり、斬り込み隊長にしたり、色々世話になったよ。敵陣に突っ込ませたらいつの間にか全滅してた・・・なんて事もよくあった」
ぶっちゃけ、ラスボスすらもディストラだけで倒したわ。気力上げの為に本隊で周りのザコを片付けさせながらディストラだけ突っ込ませてたらGONGイベント始まったし。
(囮!? 斬り込み隊長!? 悪魔王と称される存在にそんな事をさせるなんて・・・!?)
(契約なんて生温い方法なんかじゃねえ。こいつ・・・力ずくで屈服させたってのか!?)
ありゃ? また二人の様子がおかしくなった。リアス、震えてるけどひょっとして体調でも崩したのかな? アザゼル先生、今の説明、そんなに睨むほど不満なんですか?
「そういうわけで、俺はリアスに合う技を考えた時、真っ先にこれを思いついたんだ。・・・最も、そんなにも難しいものになるとは思ってもいなかったが。キミが望むのなら、今からでも別の技を・・・」
「いえ、それには及ばないわ」
言葉を被せるようにして俺の提案を拒否するリアス。先程までの震えは止まり、今は何かを決意した表情で俺を見つめて来ている。
「正直、分不相応だと思う。私は一生その悪魔王のレベルには辿りつけないと思う。・・・でも、それでも、あなたがそう言ってくれるのなら、私は逃げたくない。あなたが私にこの技を託してくれた信頼を裏切らない為にも・・・!」
そうか・・・。この表情。前回のレーティングゲーム終盤、フェニックスさんに追い込まれてなお戦い続けようとした時のものと同じだ。決して諦めようとしない強い意思。・・・はは、これなら確かに余計な気遣いは必要無さそうだ。
「キミなら出来る・・・なんて無責任な事は言わない。だから代わりにこの言葉を送る。・・・頑張れ」
「ッ・・・ええ!」
ベンチから立ち上がり、リアスは堂々とした足取りで去って行った。結局、具体的なアドバイスは出来なかっけど、リアスなら大丈夫。彼女の背中を見て、俺は何故かそう思った。
「行ってしまいましたね。それでは次は誰の所に・・・」
「フューリー」
「はい?」
「予定変更だ。ここからは二手に別れる。朱乃と木場、ゼノヴィアの所には俺が行く。お前は小猫とギャスパーの方を頼む」
いきなりの変更に目を丸くする。てか、俺いなくていいの? まあ、説明する事に関しては俺よりアザゼル先生の方がよっぽど上手だから問題無いかもしれないけど。
「それは構いませんけど、どうしてですか?」
「サーゼクスに話さなければならない事が出来たんでな。その為には別れた方がいい。三人に話をしたらすぐにヤツに会いに行く」
サーゼクスさんに話? なんだろう。何か特訓に関係する事かな? ひょっとして、必殺技の習得に役立ちそうな機材とか頼むつもりなのかも。
うん、そう言う事ならしょうがない。むしろお願いしますって感じだ。よし、それじゃあ早速塔城さんとヴラディ君を探しに・・・。
「・・・フューリー」
歩きだそうとした俺を、アザゼル先生の低く固い声が止める。思わずドキッとしつつ振りかえると、そこには今まで見せた事の無い表情を浮かべるアザゼル先生がいた。
「お前は私欲で動く人間じゃない。少なくとも、俺は・・・俺やリアス達はそう思っている。その信頼・・・裏切らない事を祈る」
え? え? どういう意味? よ、よくわからんが、何か答えないといけない空気だし・・・。
「ええ。あなた達がそう思っていてくれる限り、俺は俺であり続けますよ」
いや待て、意味わかんねえし。俺は俺であり続けるってなんだよ。聞く人が聞いたらナルシストに思われるじゃねえか。何でこんなセリフ言っちゃうかな俺!
「・・・信じてるぜ」
そう言い残し、アザゼル先生も去って行った。残された俺は一人、先程の発言を後悔していたが、このままここにいてもしょうがないので、改めて塔城さんとヴラディ君を探しに行くのだった。
オリ主にかかれば、“悪魔王”も思うがままに操れる!(嘘は言っていない)
てか、これならスパロボに登場した全ての機体を操れるって意味になるよな。これって、オリ主こそが全てを従える“王”なんじゃないの?
・・・などとくだらない妄想を垂れ流してもうしわけありません。今回の勘違いはどうしても入れたかったので。次回こそは終わらせてみせます。