ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
ちょっと脱線してしまったが、ようやく会談が始まった。支取さんの所に並んでいた椅子に腰掛け、俺達はサーゼクスさん、セラフォルーさん、アザゼルさん、ミカエルさんの話し合いの様子を黙って眺めていた。
途中、コカビエルの事について、リアスに質問がいくつか飛んで来た。それに淡々と答える彼女だったが、よく見るとちょっと震えていた。寒い・・・わけじゃないだろうな。やっぱり緊張が凄いんだろう。それでもしっかりとした言葉で答えるあたり、流石だと思った。
「アザゼル、今の答えを聞いた上で、堕天使総督の意見を聞きたい」
「先日の事件はコカビエルが俺や他の幹部に黙って単独で起こした事件だ。先程見せてもらった映像の通り、フューリーにやられた後、『神の子を見張る者』の軍法会議で刑を執行した。『地獄の最下層』で永久冷凍の刑だ。・・・最も、そんな事せずとも再起不能な状態だったがな。ま、形だけでも処分しておかないと示しがつかなかったわけだ」
「確認しておきますが、単独という事は、あなた自身は我々と事を起こす気はないと受け取ってよろしいのですね?」
ミカエルさんの問いに、アザゼルさんが当然だとばかりに答える。
「当たり前だろ。俺は戦争なんて全く興味ねえんだからよ。コカビエルも散々俺の事こきおろしてくれてたみたいだしな」
「私からも質問する。キミはここ数十年の間、神器所有者をかき集めていると聞いている。戦争の為に戦力の増強を図っていると思っていたが、そうじゃないとしたら一体なんの目的があるんだ?」
「そうですね。『白い龍』までも手に入れたと聞いた時は強い警戒心を抱いたのですが、あなたはいつまで経っても仕掛けて来なかった」
「そりゃそうさ。俺が連中を集めたのは戦う為じゃねえ。単純に神器の研究がしたかっただけなんだからよ。なんだったら研究の資料も一部くらいくれてやろうか? 宗教への介入も、悪魔の業界へ手を出すつもりも無い。俺は今の世界に十分満足してんだからよ」
「では・・・」
「ああそうさ。お前らもそのつもりでここにいるんだろ? 結ぼうじゃねえか・・・和平をな」
どんどん話が進んでいく。正直ついていけていない。けれど、隣に座るリアスや、その奥に座る支取さんは凄く真剣な顔でアザゼルさんを見つめている。
「次に戦争すれば、今度こそ三すくみは共倒れだ。人間界にも影響するだろう。文字通り世界の終わりだ」
世界の終わり・・・。大袈裟な言葉かもしれないが、堕天使のトップが言うと重みがまるで違う。
「ここにいる者は皆、神がいない事を知っている。・・・だが、神がいない世界は間違いだと思うか? 俺はそうは思わない。何故なら、俺やお前達は神の存在など関係無くこうして生きているのだから。そう・・・神がいなくても世界はこうして回っているのさ」
神がいなくても世界は回る・・・か。大丈夫かな、近い将来、女神が転生するような世界にならないかな。・・・いや、天使や悪魔がいる時点でもうなってるか。マルカジリされる結末を迎えない様に気をつけないとな。
「さて、話し合いも良い方向へ片付いて来ましたし、そろそろお二人のお話を聞かせてもらいましょうか」
なんて事を想像している間に、話題が変わっていた。ミカエルさんが俺と兵藤君にそれぞれ意味深は視線を送って来る。
「あの・・・ミカエル様。俺、聞きたい事があるんです」
「何でしょう?」
「アーシアを追放したのはどうしてですか?」
兵藤君の質問にみんなが目を丸くする。俺も同じだ。え、アーシアを追放したのって教会でしょ? なのに何でミカエルさんに聞いてるの? 悪いのって教会のド腐れ連中じゃないの?
ミカエルさんが答える。神が残した『システム』を守る為だと。その為に、『システム』に影響を与える神器を持つアーシアを教会から遠ざける必要があったと。救済出来る者を一人でも増やす為には仕方無かったのだと。
「アーシア・アルジェントの神器は悪魔も堕天使も回復出来てしまう。それは周囲の信仰に影響を出す恐れが・・・」
「けど、それっておかしいですよね」
「おかしい?」
「はい。前にゼノヴィアとイリナ。えっと、俺の幼馴染なんですけど・・・。同じ様な事言って来たんです。けど、その時神崎先輩がこう言ったんです。神器は神が作った物。だったら、アーシアの神器が悪魔にも堕天使にも効くのは神が設定したからじゃないのか。神を蔑ろにしてるのは今の教会の連中じゃないのかって」
「ッ・・・!」
ミカエルさんが僅かに目を見開く。えー。まさか、天使のトップともあろう方まで気付いてなかったの? うっかりじゃ済まないでしょ。その所為でアーシアが辛い目に遭って来たっていうのに。
「くはははは! こりゃ一本取られたなミカエル! ああそうだ。言われてみればその通りだ。見ろよミカエル。お前の答えにフューリーもムカついてるみたいだぜ」
いえいえ、誤解ですよアザゼルさん。ただ驚いてるだけですから。だからミカエルさんもそんなに焦らなくていいですよ。
「・・・そうですね。確かにその通りです。ですが、それでもそうするしか・・・『システム』を守るしか、我々には出来なかったのです。信徒を救う為に・・・」
そこへ、アーシアが口を開く。
「あ、あの、ミカエル様。私の事でしたら気にしないでください。たった一人と大勢の人々・・・どちらを重きに置くかなんて考えるまでもありません。それに、私は今、リョーマさんや他のみなさんと一緒にいられて凄く幸せなんです」
気休めでもおべっかでもない。アーシアの心からの言葉を受け、ミカエルさんの表情が明るくなる。
「・・・ミカエル。逃がした魚はでけえぞ」
「そうですね。本当にそう思います。そして、ゼノヴィア。あなたにも謝罪を。何一つ落ち度の無かったあなたを、神の不在を知ったが為に異端としてしまいました」
「いえ、ミカエル様。私もアーシアと同じ気持ちです。教会に仕えていた頃には出来なかった事や、封じていた事を堂々と行えて、私の日常は非常に華やかに彩られています。私は今の自分に満足しています」
「そうですか。アーシア、そしてゼノヴィア。あなた達の寛大な心に深い感謝を。そして赤龍帝殿とフューリー殿にも、大切な事に気付かせて頂き感謝いたします」
ミカエルさんが深々と頭を下げる。立場ある身なのにこうやって躊躇い無く頭を下げられるって凄いよな。ちょっと尊敬するわ。
「い、いえいえ、そんな! 俺、余計な事言っちゃったみたいで・・・」
「そんな事無いです。私、嬉しかったですよ、イッセーさん」
「アーシア・・・。はっ! これはまさかフラグが・・・!」
「フラグ?」
「あ、ああっと、何でもないよアーシア」
「そっちの話は終わりか? なら今度はフューリーに聞きたい」
「何でしょう?」
「お前、今の所悪魔に肩入れしているみたいだが。この先もその姿勢を崩す気は無いのか? さっき和平を結ぼうと提案した俺が言うセリフじゃねえが、もしもその和平に亀裂が入ったら・・・その時、お前はどの陣営につくつもりだ?」
「別に俺は悪魔に肩入れしているつもりはありませんよ? ただ、困っている友人を助けただけで、それが悪魔だっただけですから」
うん、ただそれだけだ。リアス達が悪魔でも堕天使でも、はたまた天使だったとしても、俺がやる事に変わりはなかっただろう。
「困ってたから助けましたか。へ、まるで子どもの答えだな」
呆れたように苦笑いするアザゼルさん。
「ですが、それはとても尊いものだと思いますよ」
純粋に感心した様子のミカエルさん。
「・・・という事は、キミは状況によっては我々にも牙を剥く可能性があるわけか」
サーゼクスさんの呟きは俺には聞き取れなかった。
それから、また兵藤君の方へ話が移った。兵藤君は自分が悪魔になったのは堕天使の所為だとアザゼルさんに詰め寄ったが、あっけなくダンガンなロンパされていた。
「フューリー殿、これは純粋な興味なのですが、二天龍との戦いから消えた後、あなたはどうしていたのですか?」
ッ!? ま、まさか、ここでそれを聞かれるとは!? うわ、まずい。サーゼクスさんとアザゼルさんまで食いついて来た。
「ほほお、そりゃ俺も聞きたいねぇ」
「私もだ。よければ教えてくれないかな」
さ、流石に答えないわけにもいかないか・・・。仕方無い、さらっと記憶喪失だって言っておこう。
などと軽く考えながら発言したら、なんかアザゼルさんにめっちゃ疑わしい目で見つめられました。
「記憶喪失ねぇ・・・。それは本当なのか?」
「ど、どういう意味だよ、アザゼル」
「おいおい赤龍帝。まさかお前そのまま信じてたのかよ? どう考えてもおかしいだろうが。記憶が無いくせに自分の力や能力だけはバッチリ憶えてるって都合が良すぎると思わねえか?」
「ッ・・・!」
「それによ、俺はフューリーが復活して、その正体が人間だと知ってから色々調べてみたんだよ。あの時代、人間界に二天龍を圧倒するヤツなんか存在していない。あれだけの力を持つ者が有名にならないわけがないだろうに、何もかもが謎のままだった。・・・突然この世界に誕生したって言われた方がまだ信憑性があるかもな」
当たってる! 当たってますよ思いっきり! ヤバい・・・堕天使のトップともなると洞察力が半端無い! そりゃね、嘘なんていつかバレる物だけどさ! 今の状況はマズイよ!
「フューリー。今さらお前の口から何が語られようが驚きはしねえよ。お前の存在そのものが冗談みたいなもんなんだからよ。だから話してくれよ。伝説の騎士様の秘密ってヤツをよ」
ニヤリとするアザゼルさん。話してくれなんてお願い風味だが、俺にはわかる。彼は命令しているのだと。
・・・はあ、しょうがない。覚悟決めるか。信じてもらえないだろうが、本当の事を話そう。
俺は一度深く深呼吸し、静かに口を開いた。
SIDE OUT
アザゼルSIDE
「・・・流石、堕天使の総督を任されているだけはありますね」
ヤツの様子が一変する。さっきまでの穏やかさはどこへやら。俺ですら若干緊張するほどの雰囲気を醸し出しながら神崎亮真が語り始める。
「あなたの言う通りです。俺は記憶喪失などではありません。以前、リアス達に同じ質問をされた時に吐いた嘘です」
「ッ!? リョーマ!?」
サーゼクスの妹達が酷く驚いている。友人を大切にするこいつと、その友人に嘘を吐くこいつ。どちらが本当のこいつなんだろうな。何にせよ、俺はとんでもない蓋を開けちまったようだ。
「すまないリアス。本当の事を言っても信じてもらえないと思ったんだ。・・・いや、違うな。俺は怖かったんだ。真実を聞いたキミ達から見放される事が・・・」
自嘲の込められた微笑みを浮かべる神崎亮真。だが次の瞬間には再び真剣な顔に戻る。
「アザゼルさん。あなたはさっき、突然この世界に誕生したと言われた方がまだ信じられると言った。実際その通りです。俺はあの戦いに乱入する直前にこの世界にやって来ました」
俺以外の全員が驚愕する。なるほど、もしかしたらその可能性もあるとは思っていたが、当たりだったとはな。
「やって来たとは妙な言い方をするな。その言い方だと、世界は複数あるかのようじゃねえか」
「その通りです。俺は別の世界で死んだ。そして、ある人の手でこの世界に送られたんです」
「何だと!?」
今度ばかりは俺も驚いた。異世界など所詮空想の産物に過ぎない。だが、その存在を証明するヤツがこうして目の前に存在している。嘘・・・ではないだろう。嘘を吐く人間にあんな目が出来るわけがない。
「キミほどの力を持つ者が死ぬ世界・・・。いったい、どれほどの強者達が存在する世界なのだろうな」
サーゼクスの言う通りだ。万が一、こいつのような規格外が他にも大勢やって来たとしたら・・・確実にこの世界は終わる。世界最強の“あいつら”でもおそらく止める事は出来ないだろう。
「教えろフューリー。お前を送ったのは何者だ? そいつは他にも誰か送って来たのか?」
「名前はオ・クァーン。彼女は自らを神と名乗りました」
「神!? あなたの世界にも神が・・・!?」
世界すら越える力を持つ神か。・・・確実にこっちの世界の神を上回る力を持っているのだろうな。
そんな存在が人間に目をつけた。その世界において、この男はそれほどまでの価値があったとでもいうのか。
「この世界に送られたのは俺だけです。彼女は俺の願いを叶える為にこの世界を選んだそうです」
「あなたは・・・その神に何を願ったのですか?」
「平穏・・・。俺はただそれだけを望みました」
これほどの力を持ちながら平穏だと? ならばこいつは、この世界にやって来るまで、平穏とは無縁な場所にいたとでもいうのか。どうやら、元の世界も争いの絶えない世界だったようだな。
だからこそ、あの戦いの場に姿を現したのかもしれない。平穏を脅かす敵を排除する為に。滅びを迎えそうになった俺達を救う為に。
「そして、あの戦いで消えた俺は、気付いたら千年の時を越えていました」
「そうか。それで人間であるキミがこうしてこの時代に・・・」
「ええ、そうです。彼女には感謝しています。おかげで、俺はリアス達に出会う事が出来た」
「リョーマ・・・」
こいつさりげなく口説き文句口にしたぞ。いや、まあそれはどうでもいい。それよりも、そのオカン・・・じゃねえ。オ・クァーンとかいうヤツは何を狙ってこいつをこの時代に? こいつはオ・クァーンのおかげと言っているが・・・もしも、オ・クァーンが最初からサーゼクスの妹達と出会わせるつもりでこの時代へ送ったのだとしたら・・・。それはこいつの望みを叶えた事にはならないんじゃないのか?
魔王の妹に関わらせれば、間違いなく平穏からは遠ざかる。神を名乗る者がそれに気付かないはずが無い。それなのにあえて接触させるとは。・・・ええい、くそ。考えれば考えるほどわからなくなって来る。
「・・・わかった。話してくれてありがとよ」
別世界の神、オ・クァーンか・・・。出来る事なら直接会ってみたいものだな。
アザゼルSIDE OUT
IN SIDE
あー、なんか全部吐き出したらスッキリした。やっぱり嘘ってよくないよね。それに、みんなこんな与太話を信じてくれたみたいだし。
「リョーマ・・・。正直、話の壮大さについていけていないのだけれど、これだけはハッキリ言わせてもらうわ。たとえあなたが何者であろうと、私は気にしないわ」
「あなたは私を受け入れてくれた。だから、私もあなたを受け入れる」
「・・・先輩は先輩です」
「私は、ずっとリョーマさんのお傍にいます!」
「そうですよ。例え別の世界の人間だろうと、先輩は俺の尊敬する先輩です」
「僕達にとってはそれで充分です」
「むしろ、あなたの事を知れてよかったよ」
みんなの温かくて優しい言葉に泣きそうになる。こんな事なら最初から本当の事を言えばよかったな。
そんな感動している俺をあの感覚が・・・。ヴラディ君が時を止めた時に感じるあの感覚が襲った。現に、数人の動きが止まっている。
サーゼクスさんとグレイフィアさん。セラフォルーさんにアザゼルさん。さらにミカエルさんと天使の女性はみんな無事だ。それとリアスに木場君、ゼノヴィアさんも動いている。さらに数秒して兵藤君も動き始めた。
「イッセーは赤龍帝を宿す者、祐斗は禁手に至り、イレギュラーな聖魔剣を持っているから無事なのかしら。ゼノヴィアは直前になってデュランダルを発動させたのね。それとリョーマも。確か・・・ラースエイレムキャンセラーだったかしら」
「時間停止の感覚はなんとなく、体で覚えた。停止させられる寸前にデュランダルの力を盾に使えば防げると思ったけど、正解だった」
おおう、それって普通に凄い事じゃないの? ゼノヴィアさんって何気にスペック高いのね。
「な、何が起こったんですか?」
俺の疑問を兵藤君が代わりに口にしてくれた。それに対し、アザゼルさんが窓の外を見ながら答える。
「テロだよ」
テロ? テロってあのテロ? ここ日本だよね? しかも深夜だよ? どれをとってもおかしいよね?
窓の外から激しい光が見える。しかも微妙に校舎全体が揺れているのを感じる。
「攻撃を受けているのさ。見ろよ、魔法使いまでいやがるぞ。察するに、中級悪魔クラスってところか。まあ、俺達の展開した防壁があるから何をしても無駄なんだがな」
吸血鬼に続いて魔法使いか。益々カオスっぷりが激しくなっていくな。
「な、なあ、さっき、時間が停止した感じがしたんだけど」
「その通りさ。おそらく、力を譲渡出来る神器か魔術であのハーフヴァンパイアの小僧の神器を強制的に『禁手』状態にさせたんだろうさ。一時的なもんだろうが、それでも視界に移したであろう校舎の内部にいる者達にまで効果を及ぼすとはな」
それって、ヴラディ君がテロリストに利用されてるって事か? あんなに自分の力に怯えて、苦しんでいた彼に無理矢理力を使わせているって事か?
―――僕は、こんな神器なんて欲しく無かった・・・!
―――本当に・・・本当に、僕も変わる事が、この神器を制御出来るようになれるんでしょうか?
―――ぼ、僕は・・・えぐ、僕は・・・消えなくていいんでしょうか。
・・・これはキレてもいいですよね? ええ、キレますとも。キレないわけがないじゃないですか。
「・・・おい、フューリー。腹が立つのもわかるが、そのアホみたいな殺気は抑えろ。およそ人間が出せるもんじゃねえぞそれ」
「いいえ、リョーマの怒りは正しいわ。ギャスパーは旧校舎でテロリストの武器にされている。どこで情報を得たのか知らないけれど、私の大切な眷属をよくも・・・! しかも、大事な会談を付けねらう戦力にされるなんて。これほど侮辱される行為はないわ!」
「やれやれ、仕方ねえヤツらだ。なんにしろ、これ以上『停止世界の邪眼』の効果を高められたら、俺達ですら停止させられる恐れがある。それだけはなんとしても阻止しないといけない」
「ここから逃げるとか?」
「逃げられねえよ。逃げる為には結界を解く必要があるが、そうすれば人間界に被害を出すかもしれない。ここは籠城して親玉が出て来るのを待つ」
「アザゼルの言う通りだ。私達は下調べを行う。だが、まずはテロリスト達の活動拠点となっている旧校舎からギャスパー君を奪い返さないとね」
「私が行きます。あの子は大切な眷属です。私が必ず助け出してみせます」
そうだな、キミならそう言うと思ったよリアス。けど、一人で大丈夫なのかな?
だが、その心配は無用だったようだ。なんか、『キャスリング』っていう技を使えば『王』と『戦車』の位置を一瞬で入れ替えられるらしい。『王』がリアスで、『戦車』の駒が部室に保管してあるらしい。だから、その技なら彼女は部室へひとっ飛び出来るんだと。さらに、それをサーゼクスさんの力で複数人移動させられる事が出来るそうだ。リアスともう一人。
「俺が行きます!」
立候補しようとしたら、先に兵藤君に手をあげられてしまった。なんか、もの凄い気合いの籠った顔をしている。彼がこういう顔をしている時はマジだ。
「先輩! ギャスパーは俺にとっても大切な後輩なんです! だから、今回は俺に任せてください! 絶対に部長と一緒にアイツを取り戻してみせます!」
そんな熱いセリフを言われたら頷くしかないじゃないか。
「わかった。キミに任せるよ」
俺の分までヴラディ君を利用した連中を殴って来てね。
「なら、こいつを持って行け」
アザゼルさんが兵藤君にリングを投げ渡した。
「それをはめれば神器をある程度抑える事が出来る。あの小僧を見つけたらそれをはめてやれ。多少は役に立つはずだ」
「わ、わかった」
「お前の禁手は対価を支払わなくてもいい代わりに時間制限がある。使うとしてもタイミングを間違えるなよ」
「え、そうなの?」
―――当然だ、相棒。俺の宿主には俺の誓いを果たす手伝いをしてもらわなければならん。それなのに、対価だなんだと払わせて無駄に消耗させるわけにはいかないからな。
おっと、ここでドライグさんの登場だ。前にも言ってたけど、その誓いってなんなんだろうね。
「では、すぐに準備します。お嬢様、しばしお待ちを」
「お願いね、グレイフィア」
グレイフィアさんの準備が進められる中、アザゼルさんとミカエルさんが何やら話している。
「アザゼル。あのような物まで作れるほど神器の研究は進んでいるのですか? あなたはその研究の先に何を求めているのですか?」
「神器を作りだした神はもういない。少しでも神器を解明出来るヤツがいた方がお前にとってもいいんじゃねえのか? それと・・・まあ、備えていたっていうのもあるかな」
「備えていた?」
サーゼクスさんも話に加わる。いけないと思いつつ、俺も聞き耳を立てていた。
「お前らに対してじゃねえ。連中の・・・『禍の団』への備えさ」
『禍の団』か。・・・中々に痛いネーミングだなぁ。
「何の組織だ?」
「名前と背景が判明したのはつい最近さ。最も、それ以前からウチの副総統であるシェムハザが目をつけてたんだがな。連中の目的は破壊と混乱。その為に三大勢力の危険分子を集めているそうだ。簡単に言えばテロリストさ。しかも、最大級に性質の悪い」
「では、今回のテロも」
「『禍の団』によるものだろうさ。さらに悪い事に、そいつらの頭が危険過ぎる。あの強大にして凶悪なドラゴンだよ」
「ッ・・・! そうか、彼が・・・『無限の龍神』であるオーフィスが、神すら恐れた最強の存在がついに動いたのか・・・」
オーフィス? それって、生前の友達がprprしたいって言ってたキャラの名前じゃないか。そんなキャラをトップにするって。・・・まさか、『禍の団』ってペロリストの巣窟なのか!?
おいおい、テロリストでペロリストって最悪じゃないですか! ちくしょう! 教会という変態共を退治したと思ったら第二の変態集団が現れるとは!
しかも、サーゼクスさん、今“彼”って言ったよね? アカン。もう手遅れや。教会なんて足元にも及ばないよ。そしてあの友達も変態だったのね。
『・・・そう。オーフィスが『禍の団』のトップです』
妖艶な声と同時に、会議室の床に魔法陣が浮かびあがる。以前見たリアスやグレイフィアさんの物とは違う。見た事の無い形だった。
「なるほど、そういう事か! グレイフィア! リアスとイッセー君をすぐに飛ばしてくれ!」
「了解しました!」
グレイフィアさんが叫ぶと同時に、リアスと兵藤君の姿がかき消えた。二人の消えた室内で、俺達は先程出現した魔法陣へ目を向けた。一体、何が出て来るんだろうな・・・。
SIDE OUT
サーゼクスSIDE
「レヴィアタンの魔法陣・・・」
最早疑いようが無い。やはり“彼女”か
「え? ですが、僕が知るレヴィアタン様の紋様とは違う気がするのですが」
木場君の疑問は最もだ。彼はセラフォルーの魔法陣しか知らないはずなのだから。だけど、これは間違い無くレヴィアタンの物だ。
「・・・ヴァチカンの書物で見た事あるぞ。あれは旧魔王のレヴィアタンだ」
ゼノヴィアがそう言った直後だった。魔法陣から一人の女性が姿を現す。
「ごきげんよう、現魔王のサーゼクス殿」
「やはりキミか。先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタン」
旧魔王の一族。まさか、彼女達まで動き始めていたとは。
「旧魔王派の者達はほとんどが『禍の団』に協力する事に決めました」
「何だと!?」
「おーおー。新旧魔王サイドの確執が本格的になったわけか。悪魔も大変だな」
く、アザゼルめ、他人事みたいに言ってくれるな。まあ、実際他人事なんだろうけど。
「ならばカテレア、キミも『禍の団』に?」
確信しつつもあえて尋ねる。だが、カテレアはまるで心外だとばかりの表情で反論して来た。
「まさか! どうして私がテロリストなどに加担しなければならないのですか」
どういう事だ? ならばどうしてこの場に現れたのだ? 戸惑う僕を尻目に、セラフォルーが彼女に声をかける。
「カテレアちゃん! どうしてあなたが・・・!」
「あなたがそれを言うのセラフォルー・・・! 私からあれを奪ったあなたが・・・!」
そうか。彼女の目的は、レヴィアタンの座を奪ったセラフォルーへの復讐・・・。
「許さない! 『魔装騎士フューリー』のヒロインの座を私から奪ったあなたの事を、私は絶対に許さないんだから!」
「・・・え?」
固まる僕の前で、セラフォルーとカテレアの言い争いが始まった。
「まだそんな事を! あれはちゃんとした審査によるものだったんだから仕方ないじゃない!」
「いいえ! あれは絶対に出来レースでした! でなければ、あなたみたいな見た目お子ちゃまな人が選ばれるわけがありません! 私の様な顔もスタイルもいい女こそがヒロインに相応しかったのです!」
「子ども向けの特撮ドラマにお色気を求めてもしょうがないでしょ! それに、第二期からはもう一人ヒロインが追加される予定だったんだよ!」
「な、なんですって!? どうして教えてくれなかったんですか!」
「あなたが姿を消しちゃったからでしょ!」
ヒートアップする両者。最早完全に蚊帳の外だ。だけど、めげてはいけない。どうしても確認しておかないと。
「あ、あの、カテレア?」
「なんですか! 私は今セラフォルーとの話で忙しいんですよ!」
「いや、キミとセラフォルーに親交があった事にも驚いてるんだけれど、そもそも、キミは何をしに来たんだ?」
「そんなの、本物のフューリー様に会いに来たに決まってるじゃないですか。審査に落ちて、いつかセラフォルーを見返してやろうと色々やってたら、いつのまにか旧魔王派に組み込まれてて。けど、私は他のみなさんと違います。今回の会談にフューリー様も参加されると聞いたからこうして足を運んだだけに過ぎません」
「で、では、キミ個人はこちらに敵対するつもりは無いと?」
「ええ。正直、魔王が誰であろうと私としてはどうでもいいのです。あの二天龍との戦いでフューリー様のお姿を拝見したその時から、私はあの方の虜。彼を思い、何度自分を慰めた事か・・・。ですが、それも今日でお終いです。さあ、フューリー様はどこです!」
・・・なんかもう、色々残念な女性だな。憧れというより最早心酔レベルだ。しかし、これは嬉しい誤算だ。上手くいえば彼女をこちらに引き込めるかもしれない。僕はそっと神崎君に耳打ちした。
「神崎君。どうやら彼女のお目当てはキミのようだ。キミから彼女に投降するよう説得してくれないか」
「わ、わかりました」
流石の神崎君も戸惑っているみたいだ。一歩進み出た彼をカテレアが捉える。
「あ、あなたがフューリー様ですか!?」
「え、ええ」
「お会い出来て光栄ですわ! ああ、なんと凛々しいお顔なんでしょう。正に私の想像通りのお方でしたのね!」
「カテレアさん。俺達はあなたと戦いたくないです。ですから、どうか投降してくれませんか?」
「もちろんですわ! どうして私がフューリー様に敵対しなければならないのです! 望まれるのなら、このまま外にいる旧魔王派の連中を私が片付けて来ますわ!」
こうして僕達は、戦う事無くカテレアを確保する事が出来た。結果は上々。だがしかし、ここはあえてこの言葉を口にさせてもらおう。
「・・・どうしてこうなった」
というわけで、オリ主ぶっちゃけました。余計勘違いされてますけど。
そして、第二の残念美女、カテレアさん登場! ヴァーリさんとは違う方向で頑張ってもらいます。
セラフォルーとの関係や二天龍との戦いに彼女がいた設定は私のオリジナルです。