ハイスクールD×D〜転生したら騎士（笑）になってました〜 作：ガスキン
イッセーSIDE
神崎先輩のカッコいい詠唱から堕天使の皆さんのパワーアップ。かと思ったらフェンリルがヒトみたいな姿になり、最終的に神殿がぶっ壊れて中からとんでもない怪物が現れた。しかもあの怪物の中にハーデスの奥さんが飲み込まれてるらしいし、その原因が三陣営の何者かとかもう情報量が多すぎて頭が追いつかねえ。
ただ一つわかっている事は、あの化物は放っておけばいずれ冥界に現れる事。つまり、冥府で何とかアイツを倒すしかないって事だ。
『黒歌。それにみなさん。ペルセポネさんを助けるために力を貸してもらえませんか』
しかも先輩、あの状況の中でハーデスの奥さんを助け出そうとしてるみたいだ。うん、怒ってもらえた身として言うべきじゃないけど、やっぱり先輩には報復なんて物騒なものより、ああやって誰かに手を差し伸べている姿のほうが似合ってるよな。
『まあ、ご主人様ならそういうと思ってたにゃ』
『私も力を貸そう。アレを放っておくわけにはいかない』
『しゃーねーな。助けりゃ女神のキスでももらえりゃいいが』
『この状況で一人何もしないわけにもいきませんからね。俺も手伝いますよ』
先輩の眷属達にサーゼクス様、アザゼル先生と初めて見る男の人も先輩に力を貸すみたいだ。
≪き、貴様等、何をするつもりだ……！？≫
『既に諦めたあなたには何の関係もないでしょう？』
詰め寄ろうとするハーデスを無視し、先輩は怪物へ目を向ける。
『みなさん、私はあの怪物によく似た存在を知っています』
先輩曰く、あの怪物はサーヴァ・ヴォルクルスという邪神にそっくりだという。てか邪神って……そんな存在とも戦ったんですか先輩……。
『能力までそのまま同じかどうかはわかりませんが、アレは上半身と下半身が分離します。さらに肉片一つから全身を再生するほどの回復力をもっています』
『つまり、下手な攻撃は逆効果だと？』
『いえ、絶えず攻撃を続ければそれほど問題はないでしょう。ですが……そうですね……兵藤君やサイラオーグさん達がいればさらに効率はよくなるでしょう。彼等の一撃の強さは折り紙つきですからね』
「……リアス、シトリー、何とか神崎殿の元へ向かう方法はないだろうか？」
腕を組み、ビジョンを見上げていたサイラオーグさんが静かに口を開いた。……よく見たら闘気が全身を覆っている。すげえやる気だよこの人！
「サイラオーグ？」
「まさか、行くつもりですか？」
「神崎殿直々のご指名だぞ。それに、あの怪物は冥界に仇なす者。ならば全力で『獅子王の戦斧』の力を振るえるではないか。何より……俺が憧れる英雄と肩を並べて戦える機会を逃してたまるものか！」
凄まじい熱の込められた声量でサイラオーグさんが吼える。……うん、わかる。その気持ちすっげえわかりますよサイラオーグさん。
「行きましょう部長！」
「イッセー君！？」
「絶えず攻撃しないといけないなら、人手が多いほうがいいに決まってる！ 木場！ お前だって自慢の速さを存分に発揮出来る機会じゃねえか！ これが最後の戦いだ！ 勝って先輩と一緒に帰ろうぜ！」
心が、体が訴えてくる。行けと！ 戦えと！
木場の目に、いや、ゼノヴィアやイリナ達の目にも炎が宿る。みんな気持ちは一緒なんだ。あの場の乗り込んで先輩と一緒に戦いたいって！
「……そうね。もう、見ているだけなのも、置いていかれるのもこりごりだわ。彼がいなくならないように傍で見張っておかなくちゃ！」
「部長！」
「けれど、現実問題、どうやってあそこまで行けばいいかしら。ソーナ、何か方法は？」
「冥府への転移ですか……」
頭を悩ませる会長。そこへ意外な人物が声をあげた。
「……方法なら、ある」
「曹操？」
「サマエルを呼び出した魔法陣を逆に利用すればいい。そうすれば冥府まですぐに跳べるはずだ。その場合、俺も同行させてもらうがな」
なるほど、冥府から呼び出したって事は繋がってるって事だもんな。けど……。
「信用出来るか。テメエ、今度は何をたくらんでやがる」
提案者がコイツな時点で怪しさ満点だ。俺の問いに、曹操は自嘲するような笑みを見せながら答えた。
「そうだな……。あの時の弁解がしたいのか、どうして転移から助けてくれたのか。話したい事、聞きたい事はたくさんあるが……いや、そんなものはいい。ただ……神崎君に会いたい。彼の顔が見たいんだ」
＼ホモォ...／
「ッ……！？」
「どうしたんだいイッセー君？」
「今そこに四足歩行の変な生き物が……」
「生き物？」
「いや、何でもない」
止めとこう。追求したらやばそうだわ。
「どうしますリアス？」
「今から方法を探るもの時間がかかるわ。曹操の提案に乗るしかないわね」
「いいのか？」
「上手く言えないけど、リョーマの事に関して言えばこの男は信用できる気がするのよ」
「……感謝する」
「してもらわなくて結構よ。それで、私達はどうすればいいの」
「ああ、今からゲオルクが魔法陣を展開する。キミ達はその中心に立っているだけでいい」
「勝手に決めるな曹操！ 俺は……」
「頼むよゲオルク。これが最期のお願いだ」
「ッ！ 曹操、死ぬつもりか！？」
「それだけの事をしたんだ。そうなるならば黙って受け入れるよ。英雄派のみんなを頼んだぞ。お前なら俺よりよっぽど上手くあいつ等を導けるはずだ」
「そんな事……！ いや、もう止めても無駄なんだな」
「覇道ではなく外道。その道を選んでしまった時点でこうなる事は必然だったのかもしれないな」
それ以上語る事無く、曹操はその場から離れ、ゲオルクは魔法陣の準備を始めた。
「ソーナ、後はお願いね。それと、ギャスパーを預かっていて欲しいのだけれど」
「ええ、任せてください。それと、代わりにサジをあなた達につけます」
「会長！？」
「あなたも行きたいのでしょう？ こちらの事は私達に任せなさい。シトリー眷属の力、存分に発揮してくるのですよ？」
「ッ～～～～～！ はい！ 任せてください！」
「準備出来たぞ。座標はフューリーの所に指定しておいたからな」
地面に広がる巨大な魔法陣、その中心に立つのは俺達グレモリー眷属にサイラオーグさん。そしてイリナと匙にロスヴァイセ先生。最後に曹操だ。
「（先輩、今行きますからね！）」
「跳ばすぞ！」
ゲオルクの合図と共に、周囲の景色がぶれ始める。そして次の瞬間、俺達の目の前に神崎先輩達が立っていた。
「先輩！」
イッセーSIDE OUT
IN SIDE
「先輩！」
うおう！？ ひ、兵藤君……だけじゃねえ！？ リアスに朱乃、サイラオーグさんや匙君……ファッ！？ そこにいるのは曹操さん！？ 曹操さんじゃないか！？
「お前等、どうしてここに！？」
「こちらの状況は全て把握しているわ。今すぐリョーマを抱きしめたいけれど、それはあの怪物を止めてから存分にさせてもらうわね」
「何故？ まさか……カテレア、キミか？」
「ああ、さっきあなた達にお願いした撮影映像を見たんでしょう」
え、撮影って何の話！？
「神崎殿。貴殿と並んで戦えると思うと血が沸き、肉が踊る。俺の力、存分に使ってもらいたい！」
「そうね。あの邪神についてあなたが一番詳しいんだし、ここはあなたに指示してもらうのが一番よさそうね」
気づけばみんなが期待に満ちた瞳で俺を見つめていた。え、何これ。これだけの人数に俺が指示するの！？
「フフ、魔王になってから誰かに命令されるのも久しぶりだね。神崎君、どのような指揮をしてくれるか楽しみだ」
「俺も普段部下に指示してばかりだからな、たまにゃされるのも悪くねえか」
ひええ！ サーゼクスさんやアザゼル先生までそのつもりになってる！
「リョーマ、今はあなたが私達の”王”よ。私達はあなたを信じる。だからあなたは私達を導いて頂戴」
『ククク、これは責任重大ですねぇ』
すぅーーーーーはぁーーーーーーー（クソデカ深呼吸）
……よし、こうなったらもうやるしかねえ。俺の持つ力の全てを使ってこの場にいるみんなを守りきって見せるぞ。
さて、そうなると最後に気になるのは曹操さんだ。兵藤君達と一緒に来たという事はこの人も力を貸してくれると思っていいのだろうか。
視線を向けると、曹操さんは気まずそうな顔で近づいてきた。
「神崎君、俺は……」
「曹操さん。あなたも戦力としてカウントさせてもらっていいんですか？」
そう尋ねると、曹操さんは目を丸くした。そして震える声で俺に聞いてきた。
「俺を……信じてくれるのか？」
「兵藤君達と一緒に来たという事はそういう事なのでしょう？ それとも違うんですか？」
「いや……いや、そんな事はない。俺も手を貸すよ。キミの為に」
「ありがとうございます。ただ、あまり無理はしないでくださいね」
さて、そうなるとどういう作戦を立てるべきか。
SIDE OUT
曹操SIDE
魔王やリアス・グレモリー達が神崎君と話をしている。その輪の外から俺はその様子を見ていた。俺は彼の仲間ではない、ただ彼に会いに来た部外者なのだから。
ふと、神崎君がこちらを向いてきた。心臓が鼓動を早める。彼は何を言うのだろう。罵倒か、皮肉か、それとも言葉ではなく刃を向けてくるか。それだけの事を俺はやったのだ。
「曹操さん。あなたも戦力としてカウントさせてもらっていいんですか？」
ただ淡々とそう確認してきた彼の目には怒りも憎しみもなかった。だからこそ、その問いに答える声が震えてしまった。
「俺を……信じてくれるのか？」
キミをだまし討ちしてしまった俺が。ただ助けられるしかなかった俺が、キミと共に戦ってもいいのか？
「兵藤君達と一緒に来たという事はそういう事なのでしょう？ それとも違うんですか？」
―――その信頼は兵藤一誠を通してのもの。俺自身はまだ信じてもらっていないのだろう。だが……。
「いや……いや、そんな事はない。俺も手を貸すよ。キミの為に」
十分、それで十分だ。なら、俺はキミの為に戦おう。この場にいる誰でもない、神崎亮真という”英雄”のために。
曹操SIDE OUT
『超獣鬼』が倒され、残された魔獣達もほぼ全てが討伐され、冥界にもようやく落ち着きが取り戻されて来た。避難していた者達もまたテレビからの情報に安堵の息を漏らす。
「よかった。もう少しで家に帰れそうだ」
「これも魔王様方が懸命に戦ってくださったおかげだな」
その時、突如としてテレビ画面が大きく乱れ始めた。それが落ち着いた時には映っていたのは先ほどまでのリポーターではなく、見知らぬ蒼装束の女性だった。
「何だ？ 何が起きたんだ」
「しっ！ 何か話すぞ」
『ごきげんよう皆様。突然ですが、現在冥界の全ての電波をジャックさせて頂きました』
「電波ジャック！？」
『ですが、私達は皆様に害をなすつもりはございません。私達の目的はただ一つ。今、こうしている間にも私達の為に戦っているお方のお姿を皆様にも見て頂きたかったのです』
女性がそういうと同時に映像が切り替わる。そこに映っていたのは見た事もないような醜悪な怪物の姿だった。先ほど倒された『超獣鬼』と同等。もしくはそれ以上の存在に見えた。その姿を見てしまった子ども達の何人かが泣き始めてしまう。
『この怪物はいずれ冥界に迫ってきます。ですが、皆様。決して希望を失わないでください。何故ならば、既にあの怪物の元へあのお方がいるのです』
さらに画面が切り替わる。そこに映った人物達の姿に悪魔達の顔が綻ぶ。
「フューリー？」
「フューリーだ！」
「騎士様がいるわ！ あの方ならきっとあの怪物をやっつけてくれるわ！」
「それだけじゃねえ！ 見ろ！ サーゼクス様もいらっしゃるぞ！」
「ママ！ ママ！ せきりゅーてーがいるよ！」
「サイラオーグの兄貴がいるぞ！」
怪物に立ち向かおうとする勇者達の姿に歓声すら上がり始める。魔獣とは違う新たなる脅威も、きっと彼等なら勝てる。それは確信であった。
そんな中、とある男性悪魔はふと思った。年齢も立場も、種族すらもバラバラな者達が、ある一人の青年の下、力を合わせ巨悪に立ち向かう。そんな
「……鋼の救世主」
その呟きは瞬く間に伝染していく。やがて、その映像を見ていた全ての者達の意識が一つとなる。
蘇る伝説。自分達はその瞬間に立ち会っているのだと。
オーフィス「コソコソ」
はい、というわけで鋼の救世主ごっこのスタートです。
２０２０年９月１９日「騎士の日常」に短編をUPしました。なぜあちらを更新したのかは向こうに理由があります。お待たせしておりますお詫びにもありませんが読んでいただけるとありがたいです。