ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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大変お久しぶりでございます。死亡説が流れてたりしたみたいですが、私は元気です。



第百七十三話 Guardian(Fallen)Angel

イッセーSIDE

 

 ―――So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS(その体は、きっと剣で出来ていた).

 

大型ビジョンの向こう。大量の死神に囲まれながら、神崎先輩は全く臆する様子もなく詠唱を始めた。それを聞いた俺は全身の震えが止まらなかった。

 

(おいおいおいおい! 何だよ今の詠唱めちゃくちゃカッケェじゃねえか!)

 

 英語かー。本当は俺も入れたかったけど、単語並べるだけ並べて終わりになりそうだしなぁ……じゃなくて!

 

「部長! みんな! ほら、俺が言った通りだろ?!」

 

 これでみんなも一安心ですわ。そう思い、ビジョンから安堵の表情を浮かべているであろう部長達へと視線を移す。

 

「……」

 

 あ、あるぇぇぇぇ? 思ってた反応と違う。無言でビジョンを凝視してるだけ……じゃない! 目に! 目にハートマークが浮かんでる!? 思いっきり見惚れてるじゃないですか部長! 漫画でしか見たことないですよそれ!

 

「あ、あら、あらあらまあまあ」

 

「な、何だ……下腹部が熱い……」

 

 壊れたロボットみたいに「あら」と「まあ」を繰り返す朱乃先輩。そしてゼノヴィア! へその下辺りを摩るのは色々まずいから止めれ! てかよく見たら女性陣全滅かよ! 会長達まで同じような反応してるじゃねえか!

 

「木場祐斗。神崎殿は味方の強化まで出来るのか?」

 

「いえ。怪我の手当てだったりは僕も何度か見たことがありますが、あれほどのものは初めてです」

 

「フッ……あの御仁は何度俺達を驚かせれば気が済むんだろうな」

 

「最近じゃ、楽しくもありますけどね。今度は何をして僕達を驚かせてくれるのかって」

 

 俺の横で会話してる木場とサイラオーグさん。冷静に見えるけど、目がキラキラしてるよ。憧れのヒーローに会った子どもみたいになってるよ。木場はまだいい。サイラオーグさん、あなたもか!

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! カッケェ! めっちゃカッケェッス先輩! 兵藤! おい兵藤! 先輩が! 先輩カッケェ!」

 

 興奮しまくりの匙が俺の背中をバンバン叩いて来る。あれ、なんだろう。こいつの反応が一番安心できるわ。

 

「な、何だあの力は!? 魔法……いや、何なんだ……。わからない。何なんだあの男はぁ!」

 

 ゲオルクの野郎が頭を抱えながら叫ぶ。奴も魔法が使える分、先輩のヤバさがより理解できるんだろうな。

 

「……キミは……キミはどこまで……神崎君……」

 

 絞り出したような声で先輩の名を呼ぶ曹操。俺達の事など気にした様子も無くビジョンを凝視しながら、その顔は今にも泣き出しそうなものだった。

 

イッセーSIDE OUT

 

IN SIDE

 

さて、保険もかけまくったし、そろそろ始めるか。報復対象は神殿の最奥に逃げたサマエル。そして、ハーデス神。及び死神が複数。

 

「みなさん、私はサマエルの元へ向かいます。ですから……」

 

警戒しているのか、襲ってこない死神達を前に簡単な打ち合わせを行う。

 

「みなまで言わなくていいぜボス。雑魚の掃除はオレ達にやれってんだろ?」

 

 スコルが死神達に目線を向ける。確かに、一直線にサマエルを目指すとなると、必然的にみんなに他の相手をしてもらわないといけないけど……。

 

「スコル。無理だけはしてはいけませんよ?」

 

「おいおいボス。オレが不死にあぐらをかいたイキリ共にやられるわけねえだろ。……つーか、心配すんならそいつらじゃねえの?」

 

 そう言ってスコルが指したのはレイナーレさん達だった。

 

「そこの雌猫とババアはギリギリ使えそうだが」

 

「「雌猫(ですって)!?」」

 

その言葉に黒歌とカテレアさんが同時に反応し、続いて互いの顔を合わせあった。

 

「何でアンタが反応するのよ。どう考えても雌猫って私の事でしょ」

 

「ああ、言われてみれば……って誰がババアだコラァ!」

 

「真面目な会話シーンだから黙ってなさい」

 

青筋を立ててスコルに詰め寄ろうとするカテレアさんを羽交い絞めする黒歌。その間にもスコルは挑発するようにレイナーレさん達に問いかける。

 

「三人揃ってやっと……ってところだろお前ら。オレは別にどうでもいいけどよ。ボスの手を煩わせるようだったらこの場からさっさと失せな」

 

 瞬間、レイナーレさんが神器を構え、躊躇い無く発砲した。発射された光弾は一直線にスコルに迫り……そのまま顔の横を通り過ぎ、彼女の背後で鎌を振り上げていた死神に直撃した。

 

「―――油断しすぎよ神喰狼」

 

してやったりとばかりに笑みを浮かべるレイナーレさん。それに続くとばかりにカラワーナさん、ミッテルトさんも神器を手に一歩前に出る。

 

「確かにあなたに比べれば私達の力は数段劣るものなんでしょう。……けれど、それが何だと言うのかしら?」

 

「以前の……神崎様に出会うまでのウチ等だったら、恥も外聞のかなぐり捨てて逃げ出してたっす。けど、今のウチ等は神崎さまの眷属っす。眷属が『王』を置いて逃げるわけが無いっす」

 

「『王』の敵は私達の敵。ならば、相手が何者であろうと私達は戦い、そして必ず勝つ」

 

「私達は生半可な覚悟で眷属にさせて頂いたわけじゃない。だから……」

 

「「「私達を舐めないで(ちょうだい)(もらいたい)(欲しいっす)!!!」」」

 

やだ、俺の眷属格好良すぎ!?

 

「へっ。口でならなんとでも言えるわな」

 

「だったら、その目でしっかり見てなさい。私達の戦いを」

 

「やだよ面倒くせえ。……お前らは上の連中をやれ、下はオレと親父、ハティでやる」

 

広大なハーデス神殿はすでにおびただしい数の死神で溢れている。その勢いは地上だけではなく、上空にも及んでいた。

 

「行くわよカラワーナ、ミッテルト。私達の力をあの女に見せ付けてやるわよ!」

 

「承知!」

 

「やってやるっす!」

 

堕天使の羽を羽ばたかせ、上へ舞い上がるレイナーレさん達。それを合図に死神達も一斉に俺達に襲い掛かってきた……のだが。

 

「ぎゃあ!?」

 

「も、燃える!? 私の体がぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

突如として立ち上る炎の壁に数十の死神があっけなく飲み込まれた。

 

「さーて、それじゃ掃除を始めるとすっかぁ。雌猫、テメエもしっかり働けよ」

 

「言われるまでも無いわよ。あと、どうでもいいけど、アンタ励まし方下手すぎじゃない?」

 

「はあ? オレが誰を励ましたってんだよ?」

 

「いやいやいや。バレてないとでも思ったの。ま、意外と言えば意外だけどね。アンタ、そういう気遣いとかしそうになかったのに」

 

「スコル。何故あの場面で死神の攻撃に対処しなかったのか理由を知りたい」

 

「そりゃあ、わざと気づかないふりをしてレイナーレ達に助けさせたからよハティ」

 

「適当吹かすな雌猫! あとハティ! くだらねえ事気にしてねえでテメエも働け! それと親父、んな生暖かい目でオレを見んじゃねえ!」

 

「ぐるるる」

 

 ……なんだかさっきから置いてきぼりな気がするが。仲がいいならそれでよし! 俺もみんなに遅れないようにしないとな!

 

SIDE OUT

 

 

ハーデス神殿……荒地ばかりが広がる冥府において唯一の建造物にしてオリュンポス三柱神の一柱、”死”を司る神王ハーデスの根城である。不毛の大地に不釣合いな豪奢なその神殿はハーデスを主とする死神達にとってもまた特別な場所であった。神殿全体がハーデスの『加護』に覆われており、神殿内のどこにいても偉大なる主の慈悲を賜る事が出来るのだ。死神達にとってこれに勝る喜びはない。

 

 死神達にしか効果のない『加護』……彼等の力を高め、不死という特性さえ与えてしまうその『加護』はギリシア神話でも最強クラスの神に相応しい力なのだろう。

 

―――故に侮る。

 

―――故に慢心する。

 

―――故に油断する。

 

 偉大なる神、ハーデスの下において、我等死神に勝てるものは存在しないのだと。自分達は”死”の体現者であるのだと。それが、この冥府における絶対的なルールであるのだと。

 

―――故に気づかない。

 

―――故に理解しない。

 

―――故に認識できない。

 

 目の前に存在する敵が、そんなハーデスの『加護』を鼻で笑うようなとんでもない『加護』を与えられているのだと。侮りも慢心も油断も無く、確固たる覚悟を持って挑んできているのだと。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()彼等には信じる事ができなかった。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 カラワーナの槍による渾身のなぎ払いが死神達を紙くずの様に吹き飛ばし……。

 

「残念! そこはウチの距離っす!」

 

 運よく逃れた別の死神の腹にミッテルトの放った結晶状の拳が容赦無く突き刺さり……。

 

「馬鹿みたいに動きを止めて、まるで案山子ね!」

 

 それならばと遠距離から攻撃しようとする死神達がレイナーレの神器による強力無比な砲撃によって飲み込まれる。

 

≪お、おのれ。まるで隙が無い……!?≫

 

 近づけばカラワーナに斬られ。中途半端な位置ではミッテルトに殴られ。離れればレイナーレに撃たれる。近距離・中距離・遠距離。どこにいようがこの三人の前では安全な場所は存在しない。

 

≪何故こうもしてやられるのだ! 奴らは連中の中では最低戦力のはずなのだろう!?≫

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

「ふん、最低戦力だからってお前らより弱いなんて理屈があるわけねえだろうが」

 

 狼狽して叫ぶ死神に、安全圏から見ていたアザゼルが呆れたようにため息を吐いた。

 

「どういう意味ですか総督?」

 

「レベル100のラスボスやレベル70の大ボスに比べりゃ、レベル50の中ボスが弱えのは間違いないが、だからといってレベル30程度の雑魚にやられるのかって話だ」

 

「なるほどー。中ボスがあの三人。雑魚が死神達って事ですね」

 

「もともとあいつ等は俺が鍛えて上級堕天使クラスの実力になってんだ。()()()()()()使()()()()()()()()()、フューリーの強化もある。何より……今のあいつ等には『誇り』が、『覚悟』が、『意志』がある。『加護』ごときでいい気になっている連中にあの三人が負けるわけがねえよ」

 

 アザゼルの脳裏に、数週間前の出来事が思い出される。その日、レイナーレ達は神器のメンテナンスとデータ収集のためにアザゼルの元を訪れていた。そこで彼は三人からある相談を受けていた。

 

『で、話ってのは何だ?』

 

『アザゼル様……私達は神崎様の眷属として何をすればいいのでしょうか?』

 

『……どういう意味だ』

 

 問いただすアザゼルにレイナーレは答える。神喰狼という自分達を余裕で上回る実力を持つ者が三頭も加わり、果たして自分達の存在意義は何なのだろうかと。

 

『以前アザゼル様は私達の評価がそのまま神崎様の評価に繋がる。だからその自覚を持って普段の言動だったりを心がけろとおっしゃいましたよね』

 

『ならば、我等の今の実力は神崎様の眷属としてまるで足りないのではないかと』

 

『もちろん、日々の鍛錬は欠かして無いっす。けど、あんなとんでもない存在が近くにいるとやっぱり気になっちゃうというか……』

 

『……んだよ、そんな事か』

 

 拍子抜けだとばかりにソファに倒れこむアザゼルの姿にレイナーレ達はムッとなった。

 

『そんな事って……私達は真剣に……!』

 

『わあってるよ。ならまずハッキリ言ってやるが、お前等は強い。それは俺が保障してやるぜ』

 

『『『え……?』』』

 

『これを見な』

 

 ポカンとする三人を尻目に、アザゼルは先ほどまで操作していたノートPCを開きあるファイルを開いた。

 

『これはお前等の神器の稼動効率……わかりやすく言えばどれくらい神器を上手く使いこなしているかを数字で表したものなんだが、それぞれ自分の名前のところをチェックしてみろ』

 

言われるままに覗き込む三人。その目が一斉に見開かれる。

 

『ひ、102.3パーセント!?』

 

『101.6……だと!?』

 

『ウ、ウチも103.1パーセントになってるっす!』

 

『驚くのはまだ早いぜ』

 

 アザゼルの操作で画面が切り替わる。

 

『今のはそれぞれが単体で運用した場合での数字。……そしてこれが、お前等が連携して運用した時の数字だ』

 

 そこには大きく163、7パーセントという数字が表示されていた。信じられないという表情の三人にアザゼルは楽しげな顔を向けた。

 

『お前等は神器を自分の物にした。いずれ『禁手』にも至る事ができるだろう』

 

『じ、人工神器も『禁手』するのですか!?』

 

『当たりめえだろ。神器なんだから。……で、どうだ? お前等の悩みは解決できたかよ? 神喰狼は確かに一匹だけでもとんでもねえ戦力だが、一人で100の力を出せる奴と、一人で50でも三人合わされば300以上の力を出せる奴らなら俺は後者を取るね。お前等は実力が足りねえから三人なんじゃねえ。実力以上の力を出せるから三人なんだよ』

 

 アザゼルの言いたい事が理解できたのか、三人の顔から険が取れた。

 

『お前等は既に上級堕天使レベルの実力をつけている。加えて神器も使いこなせている。だから、俺からお前等に言う事はただ一つ……プライドを持て』

 

『プライド……ですか?』

 

『フューリーと出会い、心を入れ替えたお前達は俺の課題や注文もきっちりこなし、実力をつけていった。決して驕らず、ひたむきに真っ直ぐにな。それ自体は素晴らしい事だ。だがな、過ぎる謙遜は卑屈と同じだ。お前達は、お前達の努力、経験と同じだけの自信を持ってもいいんだ。だから周りに何を言われようが、神喰狼が傍にいようが迷う無くこう言ってやればいい。自分達はフューリーの眷属なのだ。文句があるならかかって来やがれ! ってな』

 

『アザゼル様……』

 

『レイナーレ、カラワーナ、ミッテルト。お前等は強い。そして……惚れた野郎に尽くそうとするいい女達だ。やれやれ、こんな事ならヤツと出会う前にモノにしときゃよかったぜ』

 

 そう言っておどけるアザゼル。けれどその目にはどこか嬉しさと優しさが込められていた。まるで少し前から世話を焼いているある教え子達に向けるもののように……。

 

「私達は偉大なる騎士、神崎亮真様の眷属!」

 

「我等が主の怒りに触れし愚か者どもよ!」

 

「神崎様の分も併せてウチ等がぶっ飛ばしてやるっす!」

 

 最早揺るがない。自分達はあのお方の眷属として使命を全うしてみせる。その誇りが、その想いが、主が施した力と合わさり()()()()()()()()()

 

「……あいつ等は俺の言った事を正しく理解した」

 

 突如としてレイナーレ達の体が光に包まれる。何をするつもりだと近づこうとした死神が光から発せられた波動に吹き飛ばされる。

 

「だから、こうなる事も必然ってわけさ」

 

 確信を持って呟くアザゼル。そして光が収まった時、そこには美しくも勇壮な鎧に身を包んだレイナーレ達の姿があった。

 

『暴食王の外套(ベルゼルート・ブリガンディ)』……これが、私の『禁手』なのね」

 

 青、白、そしてオレンジ色に彩られたアーマーを身に纏うのはレイナーレ。背中のバーニアから激しく光を噴出させながら両腕から伸びるライフルを死神達に向ける。

 

「見るがいい! これが我が 『玉座龍の剣鎧(グランティード・ドラコデウス)』なり!」

 

 三人の中で一番堅牢な姿となったカラワーナが吼える。すると、そんな主に応えるかの様に彼女の背後から四頭の龍の首が伸び、高らかに咆哮した。

 

『幻影守護の闘衣(クストウェル・ブラキウム)』! 今のウチは誰にも止められないっす!」

 

 格闘を主とするミッテルトの動きを阻害しない様に装着された鎧。他の二人に比べて覆われている箇所が少ないが、当たらなければどうということは無い。それだけの速さが彼女にはある。

 

《こ、この……行けぇぇぇぇぇぇぇぇ!》

 

 これ以上調子づかせてなるものかばかりにレイナーレ達に殺到する百を超える死神。しかし、当の三人は冷静に、しかしその胸に闘志の炎を燃やしながらそれを迎え撃つ。

 

「落ちなさい!」

 

 大型バーニアを噴かせ、滑る様に移動しながら、レイナーレは背面と脚部のハッチを開く。次の瞬間、そこから無数のレーザーが発射された。

 

《なっ!? ぐあぁぁぁぁぁぁ!?!?!?》

 

 まるで意思を持っているかのように、ありえない軌道を描きながらレーザー群が死神達を貫いていく。

 

「流石お姉さま! ウチも負けてられないっす!」

 

《はっ! 馬鹿め! 貴様の攻撃なら落ち着いて見切れば回避など容易……》

 

 そう発言した死神の顔が数秒も経たずに凍りついた。

 

「「「「「「「「「「へえ、ならこれも避けれるもんなら避けてみなっす!」」」」」」」」」」

 

 拳を引くミッテルトの周りに同じく拳を引く()()()()()()()()が現れ、一斉に拳を突き出した。放たれた結晶拳の雨が死神達を襲う。

 

≪こ、こんな物ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!≫

 

 無謀にも破壊しようと鎌を叩きつける死神がいたが、逆に鎌の刃が甲高い音と共に砕け散った。そして、愕然とするその顔に拳が叩き込まれた。

 

「退けミッテルト!」

 

 背後からの警告に振り返る事もせずその場から飛び去るミッテルト。それを確認した声の主がその力を解き放った。

 

「吹き飛ぶがいい! ドラコ……スレイブーーーーー!」

 

 胸部に装飾された龍の頭。その顎から膨大なエネルギーが迸る。なす術も無く飲み込まれた死神達が悲鳴もあげる事もなく地へと落ちていく。

 

 一撃。三人がそれぞれにたった一撃放っただけ。時間にして一分も満たないその短い攻防の結末は、死神達の完全敗北だった。

 

「「「さあ、次の相手は誰(かしら)(だ)(っすか)!!!」」」

 

 新たな力と誇りを胸に突き進む彼女達を、もう誰にも止める事はできない。

 

「うひゃあ。とんでもない暴れっぷりですね彼女ら。……ところで、さっきから黙って何をしてるんですか魔王様?」

 

「いや、カテレアからカメラを預かったんだが、どう扱ったものかと思ってね」

 

「カメラですか?」

 

「ああ、そりゃ俺があいつに作ってやった神器の一つだ。何だ、フューリーの姿でも録画してろってか?」

 

「あ、ああ。そんな事を言っていたよ」

 

「寄越せ。俺が撮ってやるよ。どうせやることねえしな」

 

「なんていうか、ここだけ本当に緊張感ないですね」

 

「いいんじゃねえの。すでにここの主役はあいつ等なんだしよ」

 

 いそいそとカメラ型神器を操作するアザゼル。サーゼクスとデュリオは少しだけ顔を見合わせると、諦めた様に戦場に目線を戻すのだった。




 色々思い出しながら書いたので難産でした。次回はフェンリル親子にスポットを当てようと思います。

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