ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
胸が大きい方の如月さんは二週目にとっておいてとりあえずはストーリーを楽しもうと思います。
あと、アスランはやっぱりアスランでした。
穴(トンネル)を抜けるとそこは雪国……なわけはなく、神殿の様な場所だった。だいぶ金をかけてるんだろうな。柱とか装飾が金ぴかだ。
『ここからはあなたの役目です。余計な助言はしません。私は見守らせてもらいますよ』
博士の言葉に頷きつつ、黒歌達がみんないる事を確認し、俺は周囲を見渡した。
(さてと、フューリー様の邪魔にならない様にRECの準備と映像の送信準備を……)
まず、俺の前方……なんか映画とかで悪い魔法使いが儀式でもやりそうな祭壇の前に、物騒な鎌を持った集団。その中央にはなんとローブを纏った骸骨がいた。
さらに、後方にサーゼクスさん、何故か倒れているアザゼル先生と、そんな先生を介抱している男性。
そして、何故ここにいるのかわからないが、元のサイズに戻っているフェンリルと、その横に並び立つ二人の痴女……もとい、露出過多な衣装を纏った女性達。え、何者!?
「ククク……どうやらみなさんお揃いのようですね」
いや、探す手間が省けたわ。あれだけの情報でキッチリ特定してくれた博士にマジ感謝。
「重力の……魔神……」
惜しいです、サーゼクスさん。正確には重力の魔神を悪ノリで魔改造しまくった挙句、発案者である俺自身をドン引きさせた“ネオ・ラフトクランズ”です。
「俺……この仕事が終わったら浴びるくらい酒を飲むんだ……」
「それ死亡フラグですから総督! ちょっと! 目を開けてください! 魔王様ぁ! 割とマジで総督がヤバいです!」
そんでもって、男性の言う通り明らかにフラグっぽいセリフを口にしたアザゼル先生に何があったのよ。
≪き、貴様等、何者だ!?≫
≪今の穴は……!? 一体どうやってここに現れた!?≫
俺達の登場にお鎌集団が騒ぎ出す。向こうからしたら不審者なのだからその反応は正しい。
≪―――静まれ≫
たった一言。それだけで喧騒がピタリと治まる。今声を発したのは……間違い無くあの骸骨さんだろう。何となく読めた。あの骸骨さんこそがグレイフィアさんの言っていたハーデス神なんだろう。
≪また羽つきどもが増えおった。それで、貴殿がその羽つき共を率いておるのかな?≫
「彼女達は私の眷属です。一人、厚意で同道してくださった方もいますけれどね」
「はい! 好意なら満ち満ちておりますわ!」
「今シリアスシーンだからアンタは黙ってなさい」
「な、何をするだぁ・・・!?」
≪不敬な! 冥府の王であるハーデス様の御前であるぞ! 今すぐその鎧を脱ぎ素顔を見せよ!≫
「いいでしょう」
俺は言われた通り元の姿に戻った。同時に後ろから「その髪は……!?」というサーゼクスさんの驚きと戸惑いの声が届いて来た。
「あなたがこの世界のハーデス神ですか。初めまして、私の名前は神崎亮真。以後お見知りおきを」
≪この世界……まるで私が複数いる様な言い方をするではないか≫
「少なくとも、あなたと同じ様な存在を私はあと三柱知っています」
神様の数え方って柱だったよな。原作とOVA、そしてリメイク版。前者二つのは少し違うかもしれないが、リメイク版の方の絶望感は半端じゃなかったっけ。
≪ファファファ、なるほど。貴殿のいた世界というのは随分と混沌に満ちているようだ。それで、異世界からの異邦人である貴殿がこの様な場所に何ようかな? よもや、羽つき共におだてられ、次は冥府に自分の名を広めよう等というおつもりか?≫
「いいえ、その様な無意味な事をしに来たわけではありません。私はただ―――」
「ボォォォォォォォォォスゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
報復に来た……と言おうとした俺の背中に誰かがはね飛ばす様な勢いで抱きついて来た。何事かと確認すると、そこには快活そうな褐色美女がいた。
「なんだよなんだよなんだよボスゥ! 帰って来てたんなら言ってくれよ! そしたらこんな辛気臭え所になんか来ずにアンタの所にすっ飛んで行ったのによぉ!」
「……視覚、及び聴覚にて確認。99パーセントの確率でマスターと判断。残り1パーセントの検証の為、嗅覚による照合を開始」
今度はもう一人の色白美女が正面から抱きついて来た。しかも何か胸元でめっちゃ深呼吸してる!
(くすぐったい! というか、この人達誰よ!?)
『おや、自分のペットもわからないようでは飼い主失格ですよ』
ペット!? 何言ってるんですか博士!? ぼかぁ女性をペットにする様な鬼畜じゃないですし、そもそもそんな度胸もありません! 黒歌? あれは知らなかったんだからノーカンだろうが!
『いるじゃないですかあなたの家に。神殺しの刃である三頭のペットが』
「……え?」
いやいやいや。まさか、そんなはずは。よく見たら褐色美女さんの方に
『ククク。ならば、名前を呼んで確かめてみたらいかがですか』
……わかりました。
俺は心の中で深呼吸し、その名を口にした。
「あなた達は……スコルとハティなのですか?」
「おう! オレがスコルで!」
「ハティ……」
何という事でしょう。元気印なスコルとのんびり屋なハティが、少し見ない間に俺っ子とクールビューティーへ大変身しているではありませんか。…誰か匠を連れて来い!
「なあなあボス。あんなヤベェ姿でこんな所に来てどうしたんだよ。アレか? あの死神共をヤリに来たのか? そういう事なら手伝うぜ?」
煽らないで! 誤解されるから! ……仕方無い、ここは心を鬼にして、大人しくしておくよう注意しないと。
「スコル、ハティ、私は今ハーデス神と話をしている最中なので邪魔しないで頂けますか?(今お話中だから静かに後ろで待っててねー)」
いかん、どうしても子犬の姿を思い出して強く言えん。怒る時はちゃんと怒らないと……。
「「ごめんなさい!」」
と思ったら、いきなりその場で仰向けに寝そべるスコルとハティ。何ぞコレ?
(仰向けは“服従”や“降参”の意味を持つ。もう完全に犬ねアイツ等。まあ、今のご主人様にあんな声色であんな事言われたら逆らえるはずもないにゃ)
「わかってくれればいいのです。さあ、黒歌達の所まで下がっていなさい」
「「はい!」」
慌てて走り出す二人。うんうん、素直な所は変わって無いみたいだ。
「さて、邪魔が入ってしまいもうしわけありませんでしたね」
≪……まさか、あの神殺しが人間に従う時が来ようとは。一体どのような方法を使ったのか興味があるな≫
「ククク、前の飼い主が躾も出来ない人物でしたからね。引き取らせて頂いただけですよ」
≪では、改めて聞かせてもらおうか。不遜にも我が冥府に土足で乗り込んで来たそのわけを≫
さて、ここからだ。何とかして答えを聞きださなければ。……その内容次第で、このハーデス神も“対象”になるかもしれないのだから。
「私がお聞きしたいのは一つだけです。これにお答え頂けたら、私はすぐにここを去りますよ」
SIDE OUT
イッセーSIDE
先輩やグレイフィアさん達と別れて数分、俺は背中にオーフィスを乗っけて禁手状態で空を飛んでいた。眼下に広がる街の至る所から煙が昇っている。人気が無いって事はみんなちゃんと避難出来ているって事なんだろうか。
―――相棒、西の方を見てみろ。
西? ……ッ!? な、なんだありゃ!? 街の一角が真っ黒になってるじゃねえか!
―――あのヴァンパイアの小僧の力だろう。急いだ方がよさそうだぞ相棒。
ギャー助の力だって!? あれが!? くそ、何がどうなってんだよ!
“練成”でブースターを増やし全開でぶっ飛ばす。闇に染まった場所の中心部に佇む複数の人影。いた、部長達だ! それに会長や匙達も! おお、サイラオーグさんとレグルスまでいるぞ!
「ッ! アイツ等までいんのかよ……!」
曹操とゲオルクが何とも形容しがたい生物に襲われている。そしてその生物に指示を出しているのが全身を闇で包んだギャー助っぽい人物だった。マジでアイツに何があったのさ! とにかく下りてみよう!
「ちわー! 兵藤一誠とオーフィスお届けにあがりましたー!」
「ちわー……」
オーフィスが片手を上げて俺の真似をする。何だかんだでノリがいいんだよなコイツ。
「部長、早速ですが向こうで暴れてるギャー助に何があったか教えてもらえませんか?」
「……」
部長の反応が無い。というか、他のみんなも反応してくれない! ナニコレ。なんか空気読めてないみたいな感じになってるんですけど。
―――お前だと認識されていないんじゃないか。何せ、死んだ事になっていたのだからな。
え、酷くないそれ? 名前も名乗ったのに。
―――あまりに突然過ぎて理解が追いついていないようだ。素顔でも見せてやれ。
「これでも反応してもらえなかったら流石に泣くからな! みんな! 俺ですよぉ!」
禁手状態を解除し、俺は叫ぶように声を上げた。すると……!
『イッセー(君)(先輩)(兵藤(君))!!!』
一斉の俺の名を呼ぶ部長達。よかった……信じてたぞみんな!
「イッセー……本当に、本当にイッセーなのね?」
「はい! 兵藤一誠、帰って参りました!」
俺の元に歩み寄り、何度も頬を撫でて来る部長へ微笑みかけると、部長はそのご立派な胸元に俺の頭を押し付けた。
「……よく、よく帰って来てくれたわ。やっぱり、あなたは私の自慢の眷属よ」
一瞬その柔らかさに鼻の下が伸びそうになったが、震える声でそんな事言われたら浮ついた気持ちなんか一瞬で吹き飛んだわ!
「兵藤! テメエこの野郎! 殺されたって聞いて俺がどんだけ……この野郎ぉ!」
悪いな、匙。お前にも心配かけちまったようだな。けど、全力で頭を叩くのは止めれ。最近のお前のパワー割とシャレになってねえから。
「体を失ったと聞いたが……ふっ、お前は不死身か兵藤一誠」
「次元の狭間で色々あったんですよサイラオーグさん」
そうサイラオーグさんに答えたその時、いつの間にか動きを止めていたギャー助が俺を見つめている事に気付いた。
≪イッセー……先輩?≫
「おう、俺だぞギャー助。少し見ない間にイメチェンでもしたか? 止めとけ止めとけ。お前にゃ似合わねえよ」
≪ナンデ……コイツ等ハ死ンダッテ……。神崎先輩モイナクナッタッテ……≫
「確かに一度体を失っちまったが、こうして無事に復活したぜ? それと、神崎先輩の事も心配すんな。あの人もこっちに帰って来てるからよ」
≪本当ニ……? 本当ニ無事ナノ……≫
「ああ! ピンピンしてるぜ!」
≪……ヨカッタ≫
次の瞬間、周囲に広がっていた闇が呆気無く消滅した。その場に崩れ落ちそうになったギャー助を木場が受け止める。
「ナイス木場」
「ふふ、帰って来るなりギャスパー君の暴走を止めるなんて。やっぱり僕にはキミが必要みたいだよイッセー君」
「そこは僕“達”って言えよ気色悪い!」
「ね、ねえ、イッセー。あなた今さらっととんでもない事を言わなかったかしら?」
「え、俺なんか変な事言い……」
「―――神崎君が帰って来た?」
俺達の会話を遮る第三者の声。それは曹操のものだった。ヤツは色んな感情が混ざった様な複雑な表情で俺達を見ていた。
「よお、卑怯者共。なあ、どんな気持ちだ? 自分達がドヤ顔で披露した計画が呆気無く破綻した今、どんな気持ちだ?」
「貴様……!」
ぐぬぬ顔のゲオルク。いやー、コイツのこんな顔が見れて僕は今とても清々しい気分ですよ。
「兵藤一誠。よければ聞かせてくれないかな。キミはどうして復活出来たのか。そして、神崎君は今どこにいるか」
「別にお前等に教えてやる義理はねえが。部長達も気になってる様だし、教えてやるよ。サマエルの毒を食らい、シャルバにやられた俺を助けてくれたのはグレートレッドだ。この体も、オーフィスの力を借りてグレートレッドの体の一部から作りだしたものだ」
「グレートレッド……だと!? 馬鹿な、あの疑似フィールドに何故グレートレッドが!? ご都合主義なんてレベルじゃない! 常軌を逸している!」
知るか。来たもんは来たんだからしょうがねえだろうが。
―――相棒、その事で俺から話したい事がある。
話したい事? よくわかんねえけど、いいぜ任せる。
―――意識を失いかけていた相棒は憶えていないかもしれないが、疑似フィールドが崩壊する直前、倒れ伏した相棒の周りに突如として小さな人の形をした光が現れた。俺の記憶が正しければ、あの子ども達は木場祐斗……お前のかつての仲間達だった。
「な、何だって!?」
―――イザイヤという名に聞き覚えはあるか?
「ッ! その名前は祐斗の……!」
「間違いない……その子達は僕のかつての仲間達だ! ど、どうしてみんながイッセー君の所に……!?」
―――そこまではわからない。だが、その子ども達が祈り始めてすぐ、グレートレッドが姿を現した。どういう理由かは不明だが、あの子達がグレートレッドを呼び寄せたのだろう。
マジで!? 木場の禁手を目覚めさせ、昇天したはずのあの子達が俺を助けてくれたってのか!?
―――それからすぐ『赤龍帝の鎧』に相棒の魂を定着させ、新たな体の作成を始めた。本来であればもう少し時間のかかるはずだったのだが……そこにアイツが、アイツが、アイツガガガガガ……。
「っとお! こっから俺が説明するぜ!」
危ねえ。もう大丈夫かと思ったら全然だったわ。
「俺はグレートレッドの中で目を覚ました。で、目の前にオーフィスと……神崎先輩がいたんだ」
「リョーマは次元の狭間にいたの?」
「いえ、何か気付いたら数年前の駒王町にいたって言ってましたよ」
「馬鹿な! あの時発動させた術式がその程度で済むはずが無い!」
「さあな。お前がミスったんじゃねえの」
「そんなはずは……」
「少し黙れゲオルク。……教えてくれ兵藤一誠。ならば、神崎君はどうやってキミの元へ辿り着いたというのだ」
「気合い」
「……は?」
「だから、気合いで帰って来たって言ってんだよ。本人がそう答えたんだ」
正確には、「時間を制御する力を持ってるけど、あんまり使わないからちゃんと機能する様気合いを入れたら帰って来れた」だけど、敵であるコイツ等にそれを説明する義理は無い。……後で部長達にはこっそり教えてあげるつもりだが。
「……ク、クク……はははははははははは!!!」
いきなり曹操が笑い始めた。目に涙を浮かべ、腹を抱え、心の底から愉快だと言わんばかりに盛大に笑う声をあげながら笑っていた。
「気合い!? 気合いだと!? 時間や空間を気合いで跳び越えるなどと魔王や天使でも不可能だ! 相変わらずキミは俺の想像の遥か上を行くんだな神崎君! やはりキミは最高だ!」
笑い続ける曹操を無視し、俺は部長達に説明を続けた。
「で、ついさっき二人で一緒にこの都市に迫る魔獣をブッ倒して、俺は部長達と合流する様先輩に言われたんでこっちに来たってわけです」
「『超獣鬼』を!? 二人で!?」
「ドラゴンの体になったおかげで本当の『覇龍』を使える様になったんです。先輩に援護してもらって俺が跡形も無くふっ飛ばしてやりましたよ!」
「そ、そう……」
……あれ、何か引かれてる?
「で、では、神崎君はどちらに? 何故兵藤君と一緒じゃないのですか?」
「あー、それがですね会長。先輩、俺が殺されたって聞いて今までにないくらいブチ切れちゃいまして。『超獣鬼』と一緒にノコノコやって来たシャルバをフルボッコにして、次はサマエルに報復するって冥府の方へ眷属のみんなと一緒に……」
「はあ、そうですか……って、ええ!?」
ああ、そりゃビックリするよね。みんな驚き過ぎて目が飛び出そうになってるし。
「報復だと……。まずいぞ曹操。もしかすると俺達も対象に」
「ああ、安心しろ。先輩の口からお前等の名前は全く出て来なかったからな。よかったな曹操。お前等は
「ッ……!」
ゲオルクの顔が屈辱に歪む。狙われたらマズイとか言いながら相手にされないのが不満とか面倒臭いヤツだな。
「……俺達が彼にした事を考えれば当然と言えば当然だな」
一方、曹操は是非も無しみたいな反応だった。
やけにものわかりがいい曹操を不審に思ったその時、突如として俺の耳に先程分かれたはずの人物の声が聞こえて来た。
『私がお聞きしたいのは一つだけです。これにお答え頂けたら、私はすぐにここを去りますよ』
「ッ!? ね、ねえ、今の声って……!?」
「あそこ! あのビルのビジョン!」
花戒が指差した方向に一斉に目を遣る俺達。そこに映し出されていたのは、鎌を持つ死神達の前に一人立つ神崎先輩の姿だった。
イッセーSIDE OUT
IN SIDE
≪はて、この老人に答えられる事ならな≫
「ならばお聞きします。ハーデス神、サマエルの居場所を教えて頂きたい」
≪……ほう。何故貴殿がその名を?≫
ハーデス神の纏う空気が変わったのがわかる。眼に空いた穴から不気味な光を放ちながらそう問いかけて来た。
「私の後輩が教えてくれたんですよ。自分はシャルバ・ベルゼブブ。そしてサマエルの毒によって命を奪われたのだと。……最も、その後輩は無事に復活しましたけれどね」
「イッセー君が!? 本当なのか神崎君!?」
「ええ。死ぬ直前、運よくグレートレッドに助けてもらったようです。私も少しばかりお手伝いさせてもらいましたがね。今頃リアス達と合流しているでしょう」
「そうか……イッセー君が……」
安堵の表情を見せるサーゼクスさん。きっとこの人も気に病んでいたんだろう。魔王様にまで心配してもらえるなんて羨ましいぞ兵藤君。
≪サマエルの居場所か。それを聞いて貴殿はどうしたいのだ?≫
「私はただ、私の大切な後輩を奪おうとしてくれた相手に最大限のお礼をしたいだけですよ」
≪報復すると言いたいのか?≫
「有り体に言ってしまえばそうですね」
オブラートに包もうとしたら向こうから言われてしまった。ならば取り繕う必要は無い。正直に打ち明けるとハーデス神は愉快そうに笑い声をあげた。
≪ファファファ! 神の悪意を体現した原初の罪である『龍喰者』に報復するだと! ……それは流石に蛮勇が過ぎるのでないかな騎士殿≫
身の程を知れ……そう言われている気がした。だけど、ここまで来た以上、止まるつもりは無い。
「そうですね。周囲の方々に配慮もせず、自分の感情を優先させる私の行為は確かに蛮勇と呼ばれても仕方ありません」
≪ほお、自ら認めるか。その潔さは認めるが、正義の騎士とは思えん発言ではあるな≫
正義? 正義と言ったか? 俺が?
「ククク……」
≪……何がおかしい≫
「失礼。……ハーデス神、あなたは勘違いされている様だ。私は決して自らが正義などと思ってはいませんよ」
俺は、自分が正しいと思って来た事を、俺に出来る方法で実行して来ただけだ。教会の人間を叩きのめした時も、コカビエルをボコった時も、“D”をぶちのめした時も、ペロリスト共に鉄拳制裁かました時も、クレーリアさん達を助けるために仮面つけてはっちゃけ時も、俺がそうしたいからそうしただけだ。
「以前、ある方に言われた事があります。私は私欲で戦う様な人間ではないと。ですが、私ほど私欲にまみれた人間などいませんよ」
自分の意志を押し通す。それは決して正義ではない。正義ならば、押し通そうとしなくても受け入れられるはずだ。だから、俺の行いはむしろ悪と言ってもいい。俺のやって来た事だって、誰かからしたら悪だったはずだ。それでも、俺は後悔しない。
「大切な後輩を傷付けられたにも関わらず、何もせず我慢する事が正義ならば、私は悪で構いません。サマエルに報復する……それが私の意志です」
≪その後輩とやらにそれだけの価値があると? 私には理解出来んな≫
価値と来たか……。そういう問題じゃないんだがな。
「ハーデス神、あなたは“死”というものをどう考えていらっしゃるのですか?」
≪ファファファ。冥府の王である私にそれを問うか。いいだろう。笑わせてくれた褒美に答えてやろう。我等にとって“死”とは与えるものである。それが我等の役目だからな≫
死神の役目は“死”を与える事。その役目に従っているだけだとハーデス神は言う。
「では、あなた方によって“死”を与えられた方やその周りの方の想いを考えた事はありますか? もっと生きたかった。あるいはもっと一緒にいたかった、そういった本人や遺族の方々の想いを受け止める覚悟があなた方にはあるのですか?」
≪くだらん。その様な
……ああ、そうか。ハーデス神は……いや、ここにいる全員、“痛み”を知らない側なんだな。知っていれば、くだらない細事なんて言えるはずが無い。
「そう切り捨てられるあなたは、きっと大切な方を失った経験がないのでしょうね。一方的に命を奪い、それに心を痛めない。その様な方がよく王を名乗れますね」
≪言葉に気をつけよ人間!≫
≪ハーデス様のお気持ちも知らず好き勝手に言いおって!≫
≪そうだ! あの時、あの悪魔があの様なモノを持ちこまなければぺルセポネ様は今もハーデス様と……≫
≪その名を口にするな!≫
次々に罵声を浴びせて来る死神達をその一喝で黙らせるハーデス神。
≪部下が余計な事を言った。許すがいい≫
謝罪を口にするハーデス神だが、その声には隠しきれない苛立ちが込められているのを感じた。どうやら、ぺルセポネという存在が彼にとっての地雷なのだろう。
≪さて、これでも私は忙しい身でな。あまり悠長に話している時間は無い。ここで失礼させてもらうぞ≫
「お待ちください。まだサマエルの居場所を教えてもらっていません」
≪サマエルならばコキュートスにて厳重に封印されている。これで満足か?≫
「ほお、封印ですか。ならば、その封印されたサマエルが何故表に出たのです?」
≪先程そこにいる魔王殿からも同じ様な事を聞かれたが、そちらの勘違いではないのかね?≫
「嘘吐くんじゃないわよ。あんな化物が何体もいてたまるもんですか。アレは間違いなくサマエルだったわよ」
黒歌の援護射撃が入る。そういえば、彼女もその場にいたって兵藤君も言ってたな。
≪何と言われようと知らんものは知らんな≫
「知らない? ククク、知らないと来ましたか。聞きましたよ。サマエルの封印はあなたが施していると。自らが管理しているものをキチンと把握していないとは。……世間ではそういう方は“無能”と呼ばれるそうですよ?」
≪……私が無能だと言いたいのか≫
「さあ、私は一般的な意見を口にしただけですから」
魔神に肖っている今の俺は、普段では思いつきもしない皮肉や嫌味がどんどん頭に浮かんでくる。もし肖るのを止めたらその時点で土下座一直線だわ。
≪……いいだろう。そこまで言うのならば会わせてやろうではないか≫
しかし、ハーデス神には効果はてきめんだったようだ。プライド高そうだもんな。
「ありがとうございます。それで、サマエルはどこに?」
≪慌てるな。案外貴殿の近くにいるかもしれんぞ。例えばそう……貴殿の真上とかにな≫
え?
「ッ! ご主人様、上!」
黒歌の叫び声を受けて上を見上げる。
「これは……!」
眼前に広がる巨大な口。俺はそれに飲み込まれるのだった。
SIDE OUT
サーゼクスSIDE
「神崎君!」
神崎君を飲み込んだ捕食口。そこから伸びる触手の先に浮かぶ呪われし存在。龍喰者サマエルがいた。
≪ファファファ。だから言っただろう。貴殿の近くにいると≫
「ハーデス殿! やはりあなたはサマエルを解き放っていたのか!」
≪いたのではない。今封印を解いたばかりだ。あの人間があまりに会わせろと言うものだからそれに応えてやっただけの事≫
あくまでも神崎君の願いを聞いただけ。そうする事で今封印を解いた事にする。それが狙いか! これでは封印術式の色から問い詰める事が出来なくなってしまった。
僕達の見つめる先で触手が不気味にうごめき、サマエルの元に何かが運ばれて行く。考えるのは後だ。まずは神崎君を救出しなければ。
滅びの魔力を手に溜めようとした刹那……。
「―――なるほど。こうやってあの子の力も奪ったのですね」
『オ、オォォ……!?』
「どうしました? もっと遠慮せず吸ってごらんなさい。吸えるものならね」
『オォォォォォォ!?!?!?』
「な、何が……!?」
サマエルの体が急速に膨張を始めた。皮が裂け、全身から血を噴出させながらもその体はなおも膨らみ続け、そして……。
『オォォォォォォォォォォォォォ!?!?!?!?』
ついに限界を迎え、その体が爆発した。周囲に肉片を撒き散らしながら落下してくるサマエル。
「……これで終わりですか。拍子抜けもいいところですね」
消失した捕食口の中から姿を現す神崎君。その姿は冥蒼色の鎧に包まれていた。
無言で右手を突き出す神崎君。その右手が光ったと思った次の瞬間、信じられない出来事が起こった。爆発したはずのサマエルが全くの無傷の状態で復活したのだ。
「ククク……ようやく会えましたねサマエル。これでようやく始められますよ。あなたへの報復をね」
『オォ……オォォォォ!』
サマエルから恐怖の感情が伝わって来る。サマエルにとって、今の神崎君は全く未知なる存在に見えているのだろう。そして理解しているのだろう。自分は決して怒らせてはならない相手を怒らせてしまったのだと。目の前の蒼き魔神には絶対に勝てないのだと。
神殿奥の祭壇へ逃げるサマエルと入れ代わる様に死神達が神崎君の前に立ちはだかった。
「どいてください。邪魔をするならば命までは奪いませんが容赦しませんよ」
≪それは宣戦布告と受け取っていいのだな? ならば、冥府の王として命じる。そこにいる狼藉者達を排除せよ≫
≪≪≪ハーデス様の御命令のままに!≫≫≫
鎌を掲げ、高らかに声を上げる死神達。しかし、彼等は理解しているのだろうか。神崎君は決して一人ではないと。
「やっと出番ね。待ちくたびれたにゃ」
「神崎様、露払いはお任せください」
「死神の鎌は一撃一撃が致命傷だ。気をつけろよミッテルト」
「了解っす!」
「よくわかんねえけど、ボスはあの臭えドラゴンをボコりたいんだろ? ならやる事ぁ一つだ」
「任務更新。マスターの援護及び死神の排除。なお、先程の発言から殺害は許可されず」
「グルルル……!」
「撮影を続行しつつ死神を無力化して神崎様のお役に立つ。あぁ、妻の辛い所ですわね」
背後に並ぶ眷属と神喰狼+αへ、神崎君は振り返る事無く声をかけていった。
「黒歌」
「にゃ!」
「レイナーレさん」
「はい!」
「カラワーナさん」
「ここに!」
「ミッテルトさん」
「いつでもいけるっす!」
「スコル」
「おう!」
「ハティ」
「命令を、マスター」
「フェンリル」
「ガウッ!」
「カテレアさん」
「何でも言ってくださいあなた!」
一拍置き、神崎君は神殿内に響かせる様に声を張り上げた。
「懲らしめてあげなさい!」大激励×10
「「「「「「「了解(にゃ)(っす)!!!」」」」」」
「アオォォォォォォォォォォォォン!!!」
こうして冥府、そして後に神崎勢力と呼ばれる者達の戦いの幕が切って落とされるのだった。
さーて! 次話のハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜は!
「ど~も、今回全く出番のなかった『御使い』のデュリオッス。とりあえず、これから始まるスーパーフルボッコタイムに戦々恐々ッス。せっかくだから騎士殿と色々話がしたかったのにそんな空気じゃないので魔王様や総督と一緒に観戦する事にしますわ。さて次回は「涙の別れ~ストマックよ永遠に~」「立ち上がれ冥府の戦士達(強制)」「僕はただ仕事をしただけなんです!byサマエル」の三本でお送りするそうです」
途中で映し出された映像は、カテレアから送られた映像を本部が受け取り、街中で活動しているフューリー教の信者達の居場所を確認しそこに近いビジョンに映しだしたものです。偶然、イッセー達のすぐ近くに信者がいたのでイッセー達の目に入る事になりました。