ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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酒呑引けた勢いのままに余った石で三蔵ちゃんもゲットしてやる! と調子に乗ったら見事に爆死しました。でも、おかげでイベント用の礼装がそろったのでよかったです(血涙)

七月三日、後半部分を少しだけ追記しました。そして、二周年を過ぎていた事に気づく。


第百六十六話 騎士(笑)と魔人

「・・・どこだ、ここは?」

 

どこまでも広がる闇の中、俺は一人ポツンとその場に立っていた。おかしい。たった今、俺は復活した兵藤君と言葉を交わして、それで・・・それでどうしたんだっけ? まさか、あんな場面で気絶して絶賛夢の中とかいうわけじゃないよな?

 

『いいえ、ここは間違い無く現実ですよ』

 

突如として聞こえて来た何者かの声。今のは・・・フェニックスさん? ・・・いや、違う。あの人の声はもっとワイルドだ。こんな・・・こんな胡散臭い声じゃない。

 

目の前に現れる紫色の光。それは少しずつ人の形へと変わって行った。その変化をただ呆然と観察していた俺だったが、光が治まりその人物の顔が露わになった瞬間、俺は息を呑んだ。

 

『少々強引ではありますが、対話の場を設けさせて頂きました。あのまま“あの力”を発現させるわけにはいきませんでしたからね』

 

紫色の髪、整った顔立ち、そして白のロングコートを身に纏うその人物を、俺は嫌というほど知っていた。

 

“ラスボス”、“天才”、例える言葉はたくさんある。だが、俺がこの人を例えるならばやはりこの言葉以外に無い。

 

“魔神を駆る魔人”。即ち・・・。

 

『クク、どうしました。ハイファミリアを切り払われたマサキの様な顔をして』

 

「シュウ・・・シラカワ・・・」

 

俺の前に立ち、ニヤリという擬音が相応しい笑みを向けて来る人物・・・それは間違い無くシュウ・シラカワ博士その人だった。

 

 

 

シュウ・シラカワ・・・おそらく、スパロボ好きならば一度は聞いた事のある名前だろう。作品によって味方だったり敵だったり立ち位置が忙しないキャラクターだが、総じて言えるのは、このシュウ・シラカワという男は間違い無くスパロボにおける最強キャラの一人であるという事だろうか。その実力は、彼の愛機「グランゾン」及び「ネオ・グランゾン」と合わせ“スパロボ界のジョーカー”と称されるほどである。

 

一部では最近のスパロボでは設定的にもっとヤバい奴がいっぱいいるとか言われてたみたいだが、スパロボシリーズ古参の俺にとって、やはり最強のラスボスはこの人であると断言出来る。設定ではなく、性能的な話でな。

 

なにせ、グランゾンはHP回復やEN回復はあたりまえ。ダメージ半減バリアにビーム吸収。高威力かつ長射程武器に広範囲MAP兵器完備。その他諸々、挙げていけばキリが無い。あ、ヤバい。こうして振り返るだけで第三次や第四次のトラウマががががが。

 

とりあえず、最近のスパロボしか知らない子はウィンキー時代のスパロボを一回遊んでみるべきだ。そうすれば、俺のこの気持ちをきっと理解してくれるだろう。そして、“理不尽”という言葉の真の意味も!

 

『・・・何やら遠い目をしていますが、そろそろ話をさせて頂いてよろしいでしょうか?』

 

「は、はい!」

 

背筋を伸ばし返事をする俺に、博士(呼び捨てしたらヤバそうなのでこう呼ぶ事にする)はまたしてもニヤリとする。

 

『クク、そう緊張する必要はありません。私はただあなたと“お話”したいだけですから』

 

あなたのOHANASHIとか嫌な予感しかしないんですけどぉ!

 

『さて、本題に入る前に、まずはあなたが抱いているであろう疑問について答えていきましょう。最初に私という存在についてですが、私はシュウ・シラカワであってシュウ・シラカワではありません。あなたの記憶、イメージの中にあるシュウ・シラカワという人物を素に創りあげられた疑似人格とでも思って頂いて構いません』

 

「は、はあ・・・」

 

『では、何故私という存在が創りだされたのか。それは、“あの力”を発現させる前にあなたの意思を確認する為のいわば最終安全装置としての役割を与えられたからです』

 

あの力? 最終安全装置? それが何を意味しているのか理解出来ず首を傾げる俺に博士は問いかけて来た。

 

『確認ですが、あなたは自分に何が起きたかちゃんと理解していますか?』

 

何が? ええっと・・・曹操さんと勝負してたら、彼の仲間が出て来て、そいつ等の所為で過去の世界に飛ばされて、クレーリアさん達を助けて、・・・兵藤君が死んだと聞かされて、気合いとシュウゾウの力で戻って来て、兵藤君とオーフィスちゃんに再会して、それで・・・。

 

『そこまでで結構です。では、そもそもこの様な事態を招いてしまった原因については?』

 

それはもちろん、俺を罠に嵌めたau派と兵藤君をあんな目に遭わせたっていうシャルバ・ベルゼブブやサマエルとかいうヤツ等の・・・。

 

『そうですね。確かに直接的な原因は彼等なのでしょう。・・・ですが、これはあなたの認識の甘さが招いた事でもあります』

 

「・・・え?」

 

冷たい声で言い放つ博士に、俺はそんな間抜けな声しか返せなかった。それってつまり、俺の所為で兵藤君は死んだって事なのか?

 

『あなたは自らに与えられた力の強大さをまるで理解出来ていない。英雄派を名乗る者達から襲撃を受けたあの場面、時間兵器「ラースエイレム」で彼等を停める。もしくは空間跳躍機能「オルゴン・クラウド」で魔法陣から離れる。切り抜ける手段はいくらでもあったはずですよ?』

 

「それは・・・」

 

『ですが、あなたは何もしなかった。あまつさえ、敵であるあの男を助けた。その結果、あなたは一人過去に跳ばされ、あなたの仲間達はあなたを欠いたまま敵に襲われ・・・あなたの後輩は死んだ。あなたがその場にいれば防げた悲劇です』

 

その過去で別の悲劇を防ぐ所はあなたらしいですが。博士は呆れと感心が混ざった声色でそう続けた。

 

『人外達が蔓延るこの世界において、あなたはあまりにも甘過ぎる。あなたに比べれば、まだあのアーシアという少女の方が現実を知っていると言えるでしょう。・・・そういえば、あの少女が攫われた時も、あなたは棒立ちでそれを見送るだけでしたね。あの戦いで覚悟を決めたつもりなのでしょうが、それでもまだあなたには足りない物が多すぎる。もう一度言いましょう。この事態を招いたのは、あなたの所為でもあります』

 

「俺の・・・所為・・・」

 

俺はその場に崩れ落ちた。俺が兵藤君を殺した。俺の所為で兵藤君が死んだ。俺が・・・俺が・・・。

 

『・・・それでいいのですか?』

 

胸の中でグチャグチャになった感情が暴れ回り、最早まともな思考すら出来なくなりかけていた俺の意識を、博士の声が繋ぎとめた。

 

「博士・・・?」

 

顔を上げる。博士は真っ直ぐに俺を見つめていた。侮蔑するでもなく、見下す事も無く、ただ真っ直ぐに。

 

『そうやって過ぎた事をいつまでも悔やみ続けていたいのならば止めはしません。どうぞ好きなだけそうしていてください。ですが、こうしている今も、あなたの仲間達は戦っています。絶望的な状況であるにも関わらず、誰一人として諦めていません。その理由があなたにわかりますか?』

 

仲間達っていうと、リアス達の事か。・・・そんなの考えるまでもない。彼女達は自分の大切な物を守る為ならどこまでも強くなれる子達だ。簡単に絶望なんかするはずがない。

 

『確かにそれもあるでしょう。ですが、一番の理由はあなたですよ』

 

「俺・・・?」

 

『あなたは必ず戻って来る。それを信じて彼女達は今も戦い続けています。・・・もう一度お聞きしましょう。それでもあなたは何もせずここで悔み続けるだけで終わるつもりですか?』

 

俺が答える代わりに立ち上がると、博士は満足そうに微笑んだ。

 

『どうやら、意思は固まったようですね』

 

「はい。俺はみんなの所に戻ります。・・・博士の言う通り、俺には足りない物が多すぎる。それでも・・・もう二度と間違えたりしない。今度こそ、俺の大切なものを守る為に!」

 

『ふっ。それでこそあなたです。ここでまだ愚図るようならば催眠術でも使わせてもらおうかと思っていましたよ』

 

それってまさかヒーロー戦記の時の・・・いや、これ以上は止めておこう。

 

『さて、だいぶ話が逸れてしまいましたが、そろそろ本題に入りましょうか』

 

え!? 今のが本題じゃなかったの!?

 

『最初に言いましたよね。私は“あの力”を発現させる前にあなたの意思を確認する為の最終安全装置だと。間違ってもこんな説教まがいの事をする為にここにいるわけではありません』

 

「あの、さっきから口にしている“あの力”というのは一体・・・」

 

『あなたが身に宿す“オ・クァーンの駒”の力はあなたの想いや感情に左右されます。後輩を傷付けられたあなたの心に満たされた「怒り」が“あの力”・・・あなたがネオ・ラフトクランズと呼ぶあの力の発現させる事となったのです』

 

ネオ・ラフトクランズ? ・・・げっ! そ、それってまさか、以前アガレスさんのお家にお邪魔した時にテンション任せでネオ・グランゾンをベースに他の機体を混ぜて設計したあのラスボス機体の事か!?

 

『まさか、私の半身とも呼べる存在をあの様に好き勝手弄られるとは思いませんでしたよ。・・・まあ、疑似人格である私が言ってもしょうがない事ではありますが』

 

あばばばば! やばい、博士が怒ってらっしゃる!

 

『別に怒ってなどいませんよ。あれはあくまでもあなたが設計したもの。グランゾンとは別の存在なのですから。何をどうしようとあなたの自由です』

 

すぐさま土下座しようとしたら博士は気にしていない様にそう言ってくれた。

 

『あのネオ・ラフトクランズの力はあまりにも強大です。悪魔や天使、堕天使はもちろん、神を名乗る者達すらネオ・ラフトクランズの敵では無いでしょう。これが誇張でも何でも無い事は、設計したあなたが一番わかっているはずです』

 

・・・確かに、あのチートを通り過ぎてバグ・・・いや、最早“仕様”レベルのスペックが本当に再現されているなら、本気でヤバいけど。

 

『神崎亮真。あなたは、この強大過ぎる力を以って何を為すつもりですか? 自分を嵌めた者への報復ですか? あなたの後輩の命を奪った者達の命を逆に奪いますか? あなたにはそうするだけの理由、そしてその為の力があります。あなたを止められる者はいません。全てあなたの自由です』

 

博士は囁く。報復しろと。全ては俺の自由だと。俺を止められるものはいないと。それでも、俺は首を横に振ってそれを否定した。

 

「・・・博士。俺は誰も殺すつもりはありません」

 

『何故です? あなたの大切な人間を傷付けた相手が憎くは無いのですか? ・・・それとも、復讐は何も生まない。命までは奪わなくとも・・・などとくだらない事を言うつもりではありませんよね?』

 

明らかに落胆した様子の博士。だけど、彼は誤解している。俺は決してそんな事を考えているわけではない。

 

「・・・憎いですよ。俺の大切な後輩である兵藤君をあんな目に遭わせたヤツ等を許せるわけないじゃないですか」

 

『では・・・』

 

「アイツ等は“痛み”を知らないんです」

 

博士の言葉に被せるように俺は声を出した。

 

『どういう意味です?』

 

「大切な人を理不尽に奪われる“悲しみ”、“痛み”。それを知らないから簡単に人の命を奪える。・・・俺の両親を殺したあの男がそうだったように」

 

あの男は俺を含め多くの人達に“痛み”を与えた。その辛さを知っている俺が、それを撒き散らす側になっていいはずがない。殺した瞬間、俺はあの男と同じになってしまう。あのクソ野郎と同じになるくらいならば死んだ方がマシだ。

 

「だから、俺は絶対に命は奪いません。・・・その代わり、思い知らせてやります。自分のしでかした事の重大さを。理解出来るまで何度も、何度でも・・・」

 

『・・・そうですか』

 

それっきり博士は口を閉じる。ついさっき甘いと言われたばかりなのに、今の発言で呆れられてしまったのかもしれない。

 

『あなたの意思はわかりました。では、そろそろ力の解放を始めましょうか』

 

「え・・・!?」

 

『何か?』

 

「いや、あの、てっきりまた甘いと言われるかと・・・」

 

『私はあなたがどうしたいのかを確認したかっただけで、甘い、甘くない等と議論する気はありませんから』

 

あ、そうですか。

 

『そもそも、他人に甘いだのなんだの言われて簡単に翻してしまうほど、あなたのそれは軽いものなのですか?』

 

・・・いや、なんと言われようとこれだけは譲れない。これは決して甘さから来た思いじゃない。カッコつければ“信念”。悪く言えば“エゴ”みたいなものだ。どれだけ憎くても、どれだけ許せなくても、俺は絶対に誰かを殺したりはしない。

 

『あなたが何を考え、何を為すのかは、全てあなたの“自由”。私にはそれを妨げる権利はありません』

 

それは、ひたすらに自由を求めて戦い続けた男の言葉だからこそ、俺の胸に深々と突き刺さった。

 

『とはいえ、あなたが未熟なのもまた事実。・・・ここはやはり当初の予定通りに行きましょうか』

 

そう言って博士は俺の方へゆっくり近づいて来た。な、何? 何が始まるんだ?

 

『気を楽になさい。そして、私に続いて詠唱するのです。・・・オン・マケイシヴァラヤ・ソワカ』

 

それは、博士が蒼き真なる魔神を呼び出す際に口にする呪文だった。俺は深呼吸し、その呪文を口にした。

 

「オン・マケイシヴァラヤ・ソワカ」

 

その瞬間、俺の周囲に広がっていた闇が俺の体に纏わりつく。それは蒼く冥い装甲へと姿を変え、俺の全身を包み込んだ。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

目の前に広がる穴。ここを通れば冥界へ戻れる。兵藤君とオーフィスちゃんを乗せたグレートレッドさんが立った今この穴に飛び込んだばかりだ。なので、ここにはもう俺しか残っていない・・・わけではない。

 

『呼びましたか?』

 

はい、そうです博士です。姿を消したと思ったら俺の中に居座っちゃってました。なんでも、未熟な俺がヘマをしない様に、ネオ・ラフトクランズの状態の時限定でサポートしてくれるそうです。

 

『ネオの名を冠する以上、無様な戦いは私が許しません』

 

との事ですハイ。しかし、今のこの状況。魔装機神風に例えるなら・・・一体化してるから精霊憑依(ポゼッション)

 

『ククク、マサキが聞いたら怒りだしそうですね』

 

ああ、確かに。「精霊憑依じゃなくてコイツの場合魔人憑依だろ!」とかツッコミそう。

 

『そういえば、戦場に出る前にもう一つだけあなたに尋ねておきたい事があります』

 

なんですか?

 

『自分達の犯した罪の重さを思い知らせる・・・とあなたは言いましたが、具体的にどのようになさるおつもりですか?』

 

具体的に? ええっと・・・反省するまでぶん殴るとか?

 

『・・・足りませんね』

 

足りない?

 

『中途半端な報復に意味はありません。報復するのならば、二度とあなたに歯向かう事が無い様、徹底的にやるべきなのです。あなたと、あなたの身内に手を出せばどうなるか・・・それを理解させるいい機会です。その為の生n・・・相手もいる事ですし』

 

今、生贄って言いかけましたよね? 絶対言いかけましたよね? 

 

言っている事は物騒極まりない。それなのに、博士のその言葉を、俺は不思議と受け入れていた。それは、怒りによるものか。それとも、俺の中に博士の考えに通じる様な何かがあるのか。

 

『目には目を、歯には歯を。そして・・・理不尽には理不尽を。暴虐は、それを上回る暴虐によって潰されるのが常なのです』

 

理不尽には理不尽を・・・。暴虐には暴虐を・・・。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

『さて、ここまで私の話を聞き続けて、あなたの中で決心はつきましたか?』

 

ハイ。ハカセタダシイ。オレガンバル。ミンナシアワセ。

 

『ククク。いい返事です。ではおしゃべりはこのくらいにして、そろそろ行きましょうか』

 

『ちょぉぉぉぉぉぉぉっと待たんかぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!』

 

・・・はっ! 俺は何を・・・? 何か博士の“マサキでもわかる正しい暴虐”の講義を聞いている内に意識が・・・。というか、今の声ってオカン?

 

『ちょっと目を離してたと思ったら、アンタなんちゅう物騒な力を・・・!』

 

『やれやれ、邪魔しないで頂きたいのですがね』

 

『だ、誰やアンタ? ・・・その子の中におるんか?』

 

『答える義理はありません。少し黙っていてもらいましょうか』

 

『はあっ!? ちょ、待ち・・・!』

 

それっきり、オカンの声は全く聞こえなくなってしまった。

 

『話が長引きそうだったので、強制的にシャットダウンさせて頂きました』

 

ファッ!? シャットダウンって・・・何でそんな事出来るんですか!?

 

『神ごときに邪魔をされる筋合いはありません。・・・そうでしょう?』

 

アッハイ。

 

・・・これ以上蒸し返すのは止めよう。精神的にロクな事にならなそうだし。

 

『さあ、報復を始めましょう』

 

・・・博士、あなたが言うとガチで心臓に悪いんで勘弁してください。




Q:何で先生じゃなく博士なの?

A:ネオ繋がりです。

Q:博士ってこんなキャラだったっけ?

A:あくまでもオリ主のイメージによって生み出された疑似人格です。なので本物とは違う部分があります。

Q:博士優し過ぎない?

A:あくまでも(ry

Q:SEKKYOUが唐突すぎない?

A:気にするな。

Q:結局、オリ主はどうするつもりなの?

A:「キミがッ泣くまで殴るのを止めないッ!」もしくはフェンリルの悲劇再び。

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