ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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感想返しをしないと(使命感)


第百五十五話 騎士(笑)の時間旅行

(やべえ・・・吐きそう)

 

ペロリスト達の魔法陣に巻き込まれた俺は、猛烈に込み上げて来る吐き気と必死に格闘していた。周囲の風景がぐにゃぐにゃになり、自分が立っているのかすらわからない。

 

『なのはは・・・一人でも大丈夫なの』

 

『俺は桜ちゃんを救う! その為なら・・・!』

 

『私達で帝国を・・・あの大臣を討つ!』

 

しかも、さっきからひっきりなしにそんな声が色んな方向から聞こえて来ていた。なんか助けて欲しそうな感じの事を言ってるけど、それは俺も同じですわ。

 

『助けて・・・武ちゃんを助けて!』

 

(助ける! 助けますから、先に俺を助けてください!)

 

そう心の中で叫んだ瞬間、俺の視界は閃光に包まれるのだった。

 

SIDE OUT

 

 

イッセーSIDE

 

「・・・以上が、三日前の顛末だよ」

 

嘘だろ・・・。先輩が、コイツ等の罠に嵌って消えちまっただなんて・・・!

 

「第一級禁術“時空転移”・・・この術を受けた者は文字通り時間と空間を越えるらしい。あまりにも複雑過ぎて俺でもそこまでしかわからなかったがな。過去へ遡ったのか、それとも未来へ行ったのか。それすらも確かめようがない」

 

「どういう事だゲオルク。禁術は旧魔王の時代に作られ、その危険性から全て抹消され今の時代に遺されているはずがない。それを、何故お前等の様なテロリストが持っている!」

 

旧魔王時代の遺物!? 先生の言う通り、何でコイツ等がそんなヤバそうな物を手にしてるんだよ!?

 

「決まってるわ。・・・あの男の仕業ね」

 

殺意を全開にしたヴァーリちゃんがゲオルクを睨みつける。たぶん、アイツを通して“あの男”ってヤツに向けているんだろうけど。

 

「ヴァーリの言う通りさ。この術式が記された本はある人物によって俺達にもたらされた。最も、俺は直接目にしてはいないし、本を受け取った仲間も、数日後に変死してしまい、今となっては確かめようがないがな」

 

「そうかよ。だが生憎だったなゲオルク。アイツは時を渡る術を持っているはずだ。例えどんな時代に飛ばそうが、その内戻って来るだろうぜ」

 

あ、そっか! 先輩、二天龍の時代からこの時代に来たんだもんな! それならきっと・・・!

 

そんな俺の希望を、ゲオルクが切って捨てる。

 

「もちろん、俺達もそれは承知していますよアザゼル総督。だが、それは彼が自分の意思で時を渡れたらの話だ。聞けば、騎士殿がこの時代に現れたのは自分の意思ではなかったそうじゃないか。本当に自分の力で時を越えられるのなら、俺達に飛ばされた段階で戻って来ているはずじゃないのかな?」

 

「ッ・・・。テメエ、駒王協定で話した内容を何故知っている」

 

「何処の誰かは知らないが、迂闊な書き込みほど恐ろしいものはないという事だ」

 

「書き込みだと? 何の事を言って・・・」

 

そこまで言いかけた所で、アザゼル先生の顔が一変した。目を見開き、大量の冷や汗を流し始める。

 

「せ、先生? 心当たりが?」

 

「ハ、ハハハハ。ナンノコトカサッパリダゼ」

 

「そして、騎士殿は戻って来ていない。なら答えは一つ。騎士殿単独で時を渡る術は無いという事だ。それはつまり、彼がこの時代に戻って来る確率は・・・限り無くゼロだと言える。理解出来たかな? 騎士殿は、もう二度とあなた達の所へは戻らないという事だ」

 

「嘘・・・嘘よそんなの・・・」

 

「もう二度と、先輩に会えない・・・?」

 

ゲオルクから突き付けられた現実に、仲間達が絶望の表情を浮かべる。くそ、信じねえ! 俺は信じねえぞ! あの人が・・・神崎先輩がテメエ等なんかにやられるもんかよ!

 

「・・・私の所為です」

 

「アーシア?」

 

「私が・・・私があの時リョーマさんを止めていればこんな事には・・・! 私が・・・私が・・・!」

 

何度も「私が・・・」と繰り返すアーシア。違う。それは違うよアーシア! キミは何にも悪くない!

 

(予想はしてたが、アーシアが一番ヤバそうだな。罪悪感でろくに思考が働かない状態になってやがる)

 

「饒舌だなゲオルク。神崎君に一矢報いた事がそんなに嬉しいか」

 

「元々はキミが考えた事じゃないか曹操。直接戦えば勝ち目は無い。ならば倒すのではなくどこか別の時代で天寿を全うしてもらう。人間である騎士殿唯一の弱点ともいえる“寿命”を利用してな」

 

「ふん、やっぱりお前には外道がお似合いだな曹操。それでよくフューリーに挑戦するだなんて口に出来たもんだ」

 

「違う! 俺は、俺は英雄の答えを・・・神崎君に俺の覇道を認めさせたかっただけなんだ・・・!」

 

曹操が絞り出す様な声で先生に反論する。・・・わかったぞ曹操。どうしてお前がそこまで先輩に拘るのか。

 

(お前は先輩に認められたかったんだ。自称じゃなくて、本物の英雄である先輩からお前も英雄なんだって認められたかったんだろう?)

 

その気持ちは・・・俺も何となくわかるよ。だがな・・・。

 

「・・・先輩がお前を認めるもんかよ。テロリストなんかになって、九重や八坂様を傷付けて、たくさんの人に迷惑をかけたお前を、先輩が認めるわけがねえ。お前は最初から間違ってるんだよ曹操!」

 

「よく言ったイッセー。その通りだ。曹操、今のお前は所詮テロリスト。そんなお前が今さら正道を歩めると思うなよ」

 

ほんの少し。もうほんの少しだけ先輩と早く出会っていたら、コイツもテロリストなんかになってなかったかもしれない。でも、それはどこまでいってもIFの話だ。コイツ等がこれまでやって来た事は、決して許されるもんじゃないんだから。

 

「お前等、オーフィスの事はひとまず置いとけ。まずはコイツ等を・・・」

 

アザゼル先生が指示を出す為に振り向いた瞬間、口を噤む。その視線の先では、全身からどす黒いオーラを発している小猫ちゃんのお姉さんがいた。危険な色に染まったその目は、見つめるだけで人を殺してしまいそうなほど恐ろしさを秘めていた。

 

「・・・そっか。そうなんだ。アンタ達が私からご主人様を奪ったのね。にゃはは。なーんだ。そういう事なら早く教えなさいよ」

 

「ね、姉様・・・?」

 

「―――殺す」

 

刹那、疾風の如く飛び出した小猫ちゃんのお姉さんが、曹操の顔面に向かって気で覆った拳を全力で叩きつけた! すげえ、木場並みのスピードだったぞ。

 

攻撃自体は聖槍で防がれた。それでも曹操の体は十メートル以上後退していた。直撃していたら、間違い無く死んでいただろう。お姉さんもそのつもりで攻撃したんだ。

 

「おかしいな。ねえ、何で死なないの? アンタの所為でご主人様はいなくなっちゃったのに、何でアンタはのうのうと生きてるの? 死になさいよ。今すぐ死んでご主人様に謝りなさいよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「―――馬宝」

 

お姉さんが追撃しようとしたその時、曹操の背後の球体がお姉さんでは無く小猫ちゃんの方へ飛んで来た。そして次の瞬間、お姉さんの眼前に小猫ちゃんが現れた。

 

「え・・・?」

 

「白音っ!?」

 

無理矢理に攻撃を逸らせたお姉さんがロビーの床に突っ込む。おかげで小猫ちゃんは無傷だったが、溜めていた気の余波を受けたのか、お姉さんはダメージを負っていた。

 

「任意の相手を転移させる力だ。あの時、この力が使えれば・・・」

 

「御託はいい! テメエ! お姉さんに小猫ちゃんを攻撃させようとしたな!」

 

「はは、外道らしいだろ? もう、何をしようとしても躊躇いが微塵も湧かない。だからこういう事も出来るのさ」

 

「くそ、捨て鉢になった事で逆にめんどくせえヤツになっちまったみてえだな」

 

先生の言いたい事はわかる。曹操のヤツ、京都で戦った時よりずっと不気味な感じがする。

 

「曹操。もう十分だ。四分の三は喰えた。これ以上はサマエルがもたない。俺達も撤退するぞ」

 

「逃がさないわ。あの男の事、話してもらうわよ。我、目覚めるは―――」

 

ッ!? ヴァーリちゃん、まさかここで『覇龍』を!?

 

「させんぞヴァーリ」

 

ゲオルクが新たな魔法陣を展開する。それに反応してサマエルの右手を包んでいた拘束具が弾け飛ぶ。

 

『オォォォォォォォォォォ!!!』

 

おぞましい声を発しつつ、その右手をヴァーリちゃんへ向けるサマエル。刹那、彼女の体が黒い塊に包まれる。その塊は数秒も経たずに四散したが、解放されたヴァーリちゃんは全身を血に塗れさせながら床に倒れ込んでしまった。

 

「う、うう・・・」

 

「ヴァーリちゃん!?」

 

「悪いが、ここで『覇龍』を使わせるわけにはいかない。さて、ご苦労だったなサマエル。そろそろ戻るがいい」

 

見ればサマエルの下の魔法陣の光が少しずつ弱くなっていた。同時にオーフィスを包んでいた黒い塊も弾けるように消える。

 

そして、究極の龍殺しサマエルは呻き声だけを残し魔法陣の中へ消えていった。オーフィスは・・・別に変わった所は見られない。だとしたらあの塊の中で何が・・・?

 

「我の力、奪われた。これが目的?」

 

オーフィスの言葉に驚く俺達だったが、直後、ゲオルクから語られた話にさらなる衝撃を受ける。―――オーフィスから奪った力で、『禍の団』にとって都合のいい存在として、新たな『ウロボロス』を作りだす。それがコイツ等の目的だと。

 

「既にオーフィスから奪った力は研究施設へと流してある。今回の勝負・・・俺達の勝ちだな」

 

「そこまで聞かされてさようなら・・・なんてわけねえだろうが。その研究施設とやらの場所、吐いてもらうぞ」

 

「人間ごときに出し抜かれてご立腹なのはわかるが、俺達ばかりに気を取られている場合じゃないと思うぞ。もうすぐここに死神(グリム・リッパー)の一行が到着する。冥府の神、ハーデスに命じられ、力を奪われたオーフィスを回収するために。・・・曹操も限界みたいだからな。代わりにジークフリートも呼ばせてもらおう」

 

曹操の足下に魔法陣が出現する。野郎・・・逃がしてたまるかよ!

 

「曹操ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

俺は怒りを込め、曹操に向けて特大のドラゴンショットを放った。だが・・・。

 

「―――珠宝」

 

ドラゴンショットが曹操の眼前に出現した渦に飲み込まれる。そして次の瞬間、俺達に向かって飛んで来たのは、俺がヤツに向かって放ったはずのドラゴンショットだった。

 

「結界を張れるヤツは前に出ろ!」

 

「くそ、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

そして、俺達はドラゴンショットの中へと飲み込まれるのだった。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

IN SIDE

 

気付くと、俺は夜の公園のベンチに横たわっていた。何だろう、なんか妙な夢を見ていた気がする。

 

たとえば・・・家族の為に一人ぼっちでも我慢する女の子にまとわりつく、正義感が強すぎて周りが見えて無い男の子と、やたら人の事を「雑種」とか「踏み台」とか言って来る男の子とお話したり。

 

たとえば・・・気持ち悪い虫で溢れた家をオルゴンソードで掃除して、何故か喋れなくなった上にラフトクランズモードが解けない状態で住人の男性と無表情な女の子と暮らしたり。

 

たとえば・・・名前を聞いてるのに「Sです」と性癖を暴露してくる美人とその部下の人に追いかけ回された挙句、その美人さんが放った攻撃をよけたら、それが近くにいたマンガ肉を持った偉そうな男性に当たったり。

 

たとえば・・・ラフトクランズに乗ってスケスケパイロットスーツな方々の乗るロボットと一緒に、某サンプラザの「走る人」を歌いながらグロい化物達をオルゴンクローでちぎっては投げちぎっては投げしたり。

 

うーん、見事なまでに一貫性が無い。所詮夢だし、深く考えても仕方ないとは言えるが。ところで、何で俺こんな所で寝てたんだ? ・・・ええっと、確か、曹操さんとペロリスト達と一悶着あって・・・。

 

周りには誰もいない。みんな帰ってしまったのだろうか。流石鬼畜ペロリスト共。こうやって俺に風邪をひかせようとしたってわけだな。あーあ、何で助けたりしたんだろう、俺。でも、何でかわからないけど、あの時はそれが正しかったって思えたんだよな。

 

ま、ここでウダウダしててもしょうがないし、とりあえず家に帰ろうかな。アーシアが美味しい料理を用意して待っててくれてるだろうし。

 

公園を出た俺は最後まで気付かなかった。俺の知る公園にあったはずの遊具や施設が・・・この公園には存在していなかったという事に。




次回、オリ主ホームレスになる。

そしてアザゼルは自分がやらかした事に気づいて自らストマックにダメージを与えたとさ(何をしでかしたのかは騎士(笑)の日常の冥界掲示板を読んで頂いたらわかると思います)

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