ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第百三十九話 悪魔よ!これが騎士(笑)だ!

「おうお前等、そろそろ会場に向かうぞ」

 

どれくらいの時間を控室で過ごしただろう。アザゼル先生からようやくの出番を言い渡された俺達は、先生の案内で会場へと移動した。今歩いているこの通路が、俺達に用意されたゲスト席まで直通になっているらしい。

 

それにしても、こうして歩いているだけで、会場の熱気やお客さんの声が届いて来ていてヤバい。俺、今からあの大観衆の中に突撃せにゃならんのですよね・・・。行く前からもう帰りたくなって来たんですけど。

 

「はうう、心臓のドキドキが止まりません」

 

「あ、あはは。ビビる事は無いっすよアーシア。みんな野菜だと思えばいいっすよ」

 

「こ、声が震えているぞミッテルト。仕方の無いヤツだ」

 

「・・・カッコつけたいのならまずはその額の汗を拭きなさいカラワーナ」

 

「そう言うアンタは右手足と左手足が同時に動いてるわよレイナーレ」

 

「なっ!? こ、これはアレよ! ロボットの真似をしてるだけよ!」

 

「みなさん、一度深呼吸した方がいいのでは?」

 

「ったく、情けねえヤツ等だ。ちっとはフューリーを見習いやがれ」

 

凄く・・・吐きそうです。

 

「お前等はもうフューリーの眷属だ。これから先、嫌でも注目される事になるだろう。いつまでもそんな情けねえ姿を晒してたら舐められるぞ。そして、それはフューリーが舐められる事と同じだと思え。王は眷属を映し、眷属は王を映す。伝説の騎士に相応しい眷属になってみせろ。それが、眷属となったお前達の使命だ」

 

「「「・・・はい」」」

 

「わかってるわよそれくらい」

 

「へ、ならいいんだけどよ」

 

そうこうしている間に、通路の終わりが見えて来た。差し込んで来る外からの光に一瞬だけ目をくらませながら、俺達は会場へと足を踏み入れた。

 

「ッ・・・!」

 

次の瞬間、俺の目に飛び込んで来たのは、どこまでも広がる広大な楕円型のスタジアムと、それを埋め尽くす大勢の人々の姿だった。な、なんちゅう数だ! 人間界でもこれほどの規模のスタジアムなんて無いぞ!

 

「リ、リョーマさん。なんだかみなさんの様子が・・・」

 

アーシアに言われて気付く。たった今まであれだけの歓声を上げていた人達が、俺達が姿を見せた途端に一斉に口を閉じてしまったのだ。それと同時に、ありとあらゆる方向から視線を向けられたのを感じ取った。その様は一言で言えば異様。ぶっちゃければ怖かった。想像して欲しい、千どころか一万でも収まらない数の人達から一斉に見つめられるのだ。これでビビらないヤツがいるだろうか。いやいない!

 

「・・・あまり歓迎されていないみたいだな」

 

「はぁ? 何をどうすっとぼけたらそんな結論になるんだよ」

 

「ですが先生・・・」

 

「そんなに心配なら、手でも振ってやれ。そうすりゃお前も思い知るだろうよ。自分が悪魔にもたらしたものがどれほどのものなのかを・・・な」

 

ニヤリとするアザゼル先生に言われるまま、俺は恐る恐る右手を上げてそれを振ってみた。これで一体何がわかるんだろ――――。

 

「「「「「「「ッーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」」

 

(ウボァァァァァァァァァァァァァ!?!?!?!?)

 

刹那、俺の耳を表現のしようが無い凄まじい大音量の何かが襲いかかって来た。冗談じゃなく、マジで意識が持ってかれそうになったそれの正体が歓声だと気付くのに、俺は数十秒の時間を要した。な、何ぞコレ!? 何が起きてんだ!?

 

「これがお前という存在に対する今の悪魔達の答えだ。伝説の騎士様はその人気もとうとう伝説級になっちまったってか?」

 

「なっ・・・」

 

「くくく、いいぜその呆然とした顔。溜飲が下がるってのは正にこの事だなぁ」

 

「きゅう~~~」

 

「アーシア、しっかりするっす!」

 

「た、大変だわ! どこか寝かせられる所を!」

 

ヤバい、カオスってまいりましたぞ! 何とか収拾つけんとマズイ!

 

などと思いつつ、解決策を思いつけない俺の耳に、誰かの声が届いた。これだけの声が飛び交う中にも関わらず、俺は何故かその声をハッキリと聞き取れた。

 

「流石の人気ですな騎士殿。かくいう私も、あなたと会えるこの時を楽しみにしていた一人なのだが」

 

その声の主は、灰色の髪と瞳が特徴的な男性だった。彼の姿を捉えたアザゼル先生が一歩前に出る。

 

「これはこれは、“皇帝”ディハウザー・ベリアル殿。お会い出来て光栄です」

 

「こちらこそ光栄です。アザゼル総督」

 

ガッチリ握手を交わす両者。ディハウザー・ベリアルさん。その名前には聞き覚えがある。レーティングゲームのランキングの一位で俺と同じくゲストとして呼ばれた人だ。やっぱりチャンピオンにもなると風格が凄い。

 

「そちらの少女の介抱もしないといけないでしょうし、まずは席に移動しましょう。出来れば静かに話でもしたいが・・・これだけの観客を抑えるのは流石に不可能ですし、自然に収まるまで待つしかなさそうだ」

 

という事で、俺達はベリアルさんと一緒にゲスト席へ移動した。豪華な椅子やソファーが並んでいたので、早速アーシアをソファーに横たわらせた。

 

「お待ちしておりましたよみなさん! 私は本日の実況を担当しますナウド・ガミジンと申します!」

 

派手な格好の男性にそう自己紹介をされ、俺は席に着いた。そして、気絶していたアーシアが目を覚ました頃、ガミジンさんのアナウンスでスタジアムの中心に現れたモニターの向こうにリアスとサイラオーグさんが眷属と共に姿を現した。

 

「・・・フューリー殿」

 

その時、ベリアルさんが囁く様な声と共に俺に一枚の写真を見せて来た。その写真には、黒い長髪の日本人男性。そして、ベリアルさんとどことなく雰囲気が似ている女性が並んで写っていた。

 

「この二人、いやどちらかだけでも構わない。見憶えは無いだろうか」

 

「いえ、二人とも初めて見る顔ですけど」

 

「・・・そうか(彼が姿を現して半年ほどしか経っていないと聞く。ならば、やはり二人の前に現れたという蒼の青年は別人か・・・)」

 

「この二人が何か?」

 

「ああ、私の従姉妹とその恋人だ。美人だろう?」

 

ここで身内自慢!? いや、確かに美人なのは間違いないですけど・・・。

 

ベリアルさんはそれ以上何も言わず自分の席へ戻った。なので、俺もひとまずリアス達の方へ集中する事にしたのだった。

 

SIDE OUT

 

 

イッセーSIDE

 

観客達のいるスタジアムの上空に浮かぶ浮島。それが俺達の戦うフィールドだった。既にサイラオーグさんとその眷属達はフィールドに揃っている。そこまで伸びる螺旋階段を上り、用意された陣地へ辿り着く。人数分の椅子と謎の台、そして移動式の魔法陣。果たして今回のルールはどんなものなんだろう。

 

『客席の、そしてテレビの前の皆様、ごきげんよう! 今夜の実況を務めさせて頂きますのは、元七十二柱ガミジン家の私、ナウド・ガミジンです!』

 

設置された巨大モニターにイヤホンマイクをつけた男性悪魔が映し出された。

 

『既に客席のボルテージはマックス! それもそのはず! 今回のゲームは注目も注目! 大注目のカードなのです! そしてそして、この大注目のゲームに相応しい、とんでもないゲストがやって来ているのです!』

 

「まさか、実況までつくとはな」

 

「これがプロ仕様って事だね」

 

『ですがその前に、まずは今夜のゲームを仕切る審判役のご紹介! 元人間の転生悪魔にして、最上級悪魔に位置し、さらにレーティングゲームランキング現在第七位! その名は・・・リュディガー・ローゼンクロイツ!』

 

アナウンスと同時に魔法陣が宙に展開し、そこから銀髪のイケメンが現れた。あの人も元は人間・・・。しかも最上級悪魔で第七位とか凄過ぎだろ。俺からしたら眩し過ぎる存在だ。

 

「案の定、グレイフィア様ではありませんわね」

 

「これも大王家が絡んでいるのだろうか」

 

『さあ! 続いてゲストの紹介です! 一人目は、グレモリー家のアドバイザーにして堕天使の総督! アザゼル様!』

 

瞬間、画面一杯に映し出されるアザゼル先生。おい、なにちゃっかりゲスト出演してんだよあの人ぉ!

 

『初めまして、アザゼルです。今夜は素敵な夜になりそうですね』

 

「・・・見事な営業スマイルね。あんな笑顔、今まで見た事無いわ」

 

「い、違和感ありまくりですぅ」

 

「つーか、今の口説き文句誰に言ったつもりなんだろう」

 

何だか見てはいけないものを見てしまった気分になる俺達だった。

 

『続いては、バアル家のアドバイザーにしてレーティングゲームランキング第一位! 我等が王者にして“皇帝”! ディハウザー・ベリアルさんです!』

 

『ディハウザー・ベリアルです。今日は解説としてこの場にいます。どうぞよろしくお願い致します』

 

「・・・あれが皇帝か」

 

「いつかは、彼と戦う日が来るのだろうか」

 

「今は雲の上の存在かもしれないが、いずれは必ず・・・」

 

俺は“皇帝”の姿を目に焼き付けた。

 

『そしてそしてそしてぇぇぇぇぇぇぇ!!! ついにこの方のご紹介です! 私、まさか本当に来てくれるとは思ってませんでした! かつて二天龍より悪魔を救い、こうして今私達の前に蘇った生ける伝説! レーティングゲームで見せた姿は正に大いなる怒り(フューリー)! 鋼の救世主、神崎亮真氏とその眷属の皆さんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

『『『『『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』』』』』

 

アザゼル先生、そして“皇帝”の時以上の凄まじい叫声があがる。離れているはずの会場の振動がこっちにまで伝わって来そうな勢いだった。

 

『さあ、それでは神崎氏より一言・・・』

 

『フューリーーーーーー!』

 

『神崎様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

『兄貴ぃぃぃぃぃぃ! 掘ってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』

 

『『鋼の救世主』読んだぞぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

『妾でいいからもらってくださーい!』

 

『アーシアちゃーん! 俺だ! 契約してくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!』

 

『黒歌姐さんこっち向いてくださーい!』

 

『レイナーレェェェェェェェェ! あなたに合う鞭作ったからもらってくださーい! そしてその鞭で俺を! 俺をー!』

 

『カラワーナ様ぁ! 私女だけどあなたとならイケますぅぅぅぅぅ!』

 

『ミッテルトちゃんprpr!』

 

『ええい! 静かにしてください! 神崎氏がしゃべれないでしょうが!』

 

「ふふ、まるでアイドルね」

 

「先輩ならいけるかもしれませんね。シトリー眷属の子から聞きましたが、歌声も凄いらしいですよ」

 

「それは音痴的な意味で?」

 

「少なくとも、歌で泣いた事の無い子を泣かせるくらいの腕前はあるそうだよ」

 

「・・・聞いてみたいです」

 

「なら、勝利の打ち上げはカラオケにしましょうか」

 

「いやいや! それよりも、所々に聞こえる危ない声援を気にしましょうよ! ええい、こんなんだから冥界は変態の巣窟だって言われるんだよ!」

 

『ゴ、ゴホン! 神崎氏へのインタビューはアザゼル総督とベリアルさんへの見所についての質問と合わせて後ほど改めてという事で、先に今回の試合のルールについて説明させて頂こうと思います!』

 

お、ついにルールの発表か。聞き逃さない様にしないとな。

 

俺は実況の声にしっかりと耳を傾けるのだった。




次回はオリ主とアザゼル先生によるありがたいお言葉(笑)です。

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