ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
アザゼルSIDE
俺のストマックがブレイクするまで・・・残り三十分。
「ふんふんふ~ん」
鼻歌交じりに職務をこなす俺に、真耶ちゃんが声をかけて来た。
「何だかご機嫌ですね、アザゼル先生」
「お、真耶ちゃんわかっちゃう? 聞いてくれよ。昨日ようやく医者から酒を飲む許可が下りてな。帰ったら知り合いからふんだく・・・もらった酒で一杯やろうと思ってんだよ」
今から夜が待ち切れねえぜ。仕事のスピードだってほら、いつもの三倍増しだぜ。普段からそれくらいしろって? わかってねえな。たまに見せる本気な姿に女は弱いモンなんだぜ?
「お医者様って・・・体調を崩されてたんですか?」
聞いてくれるか真耶ちゃん。なら、教えてやるよ。今まで病気らしい病気にかかる事の無かった俺を襲ったものの正体をな。
「胃だよ。流石に市販の薬(と自作分)だけじゃヤバいと思ってな、検査してもらったら穴が空く寸前まで来てたらしい。知ってるか真耶ちゃん。胃の表面の胃粘膜は胃粘液に覆われてるんだ。それが胃酸から胃を守ってんだけどな、過労や精神的なストレス・・・そう、精 神 的 な ス ト レ スの所為で胃酸と粘液のバランスが崩れちまう時がある。その結果、増えすぎた胃酸が胃を傷付けちまう事で胃潰瘍になっちまうんだぜ」
最近得た知識を即席の解説図つきで真耶ちゃんに披露する。うむ、我ながら良い形の胃が書けたな。
「(なんで二回言ったのかしら)へ、へえ、お詳しいんですねアザゼル先生」
「・・・調べたんだよ。そりゃもう胃に関するありとあらゆる事をな。今の俺なら専門医相手でも存分に語れると思うぜ」
いや、むしろ論破してやるね。胃炎についてだろうが、逆流性食道炎についてだろうが、なんでもかかって来な。
「そ、そこまでですか・・・。でも、それだけ生徒達の為に頑張ってたって事ですよね。尊敬します。私もそれくらい頑張らないと!」
(むしろその生徒の所為でこうなっちまったんだが、真耶ちゃん感動してるみたいだし、ここは黙って評価を上げておこう)
それと真耶ちゃん。頑張るのはいいが、体調崩すまで頑張る事はねえよ。特に胃の調子はストレスで簡単に変わっちまうから気をつけないと駄目だぜ。
俺の胃があぼんするまで・・・残り十分。
「アザゼル先生」
「何か用かロスヴァイセ?」
「何か用かって、オカルト部の手伝いに行かなくていいんですか?」
「いいんだよ。俺は生徒の自主性に任せる主義なんでな。そういうお前こそ行かなくていいのか? 差し入れの一つでも持っていけばフューリーの心象も良くなるんじゃねえの」
「な、何を馬鹿な事を。いいですか、そもそも差し入れというのは頑張っている人にちょっとした息抜きを与え、さらに頑張れる様にする為に渡す物であって、そういった不純な気持ちで渡すものでは・・・」
「メンドクセエ考え方してんなぁお前。だから行き遅れるんだよ」
「か、関係ないでしょうがそれはぁ! もう知りません! 代わりに私が手伝いに行ってきます!」
俺のこれまでの頑張りが全て台無しになるまで・・・残り五分。
「うーっし、そろそろ帰る準備でもして・・・」
「せ、先生! アザゼル先生ぇぇぇぇぇぇぇ!!!
「はあ・・・んだよイッセー。つーか、職員室に入る時はちゃんと失礼しますって・・・」
「それどころじゃないんですってば! いいから来てください!」
俺の相棒が逝っちまうまで・・・残り四分。
「おいおい、どこに連れていく気だ。愛しい愛しいお酒ちゃんが俺を待ってんだから帰りてえんだけど」
オデノカラダガボドボドになるまで・・・残り三分。
「先輩が・・・先輩が連れて来たんですよ!」
俺の意識がバランスブレイクするまで・・・残り二分。
「連れて来たって、何をだよ」
俺のブレイザー・シャイニングがダークネス・ブレードするまで・・・残り一分。
「オ、オフィ、オーフィ・・・」
いつしか、俺はイッセーに引っ張られ旧校舎前までやって来ていた。次の瞬間、ヤツの・・・ヤツ等の姿が俺の目に飛び込んで来た。
「アザゼル、久しい」
「お邪魔してるわよ、アザゼル」
「オーフィスです!!!」
「・・・ファッァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?!?!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?!?!?!?」
『禍の団』のオーフィスとヴァーリがあらわれた! アザゼルはストマックがブレイクした! アザゼルはそのばにくずれおちた!
「せ、先生!? アザゼル先生!?」
「イ、 イッセー・・・、どうやら俺(の胃)はここまでの様だ。すまねえ、俺はもうお前等の力になれそうにねえみてえだ」
「な、何言ってるんですか先生!」
「お前等がサイラオーグに勝利するのを、遠い所(病院)から祈ってる・・・ぜ・・・」
「せ、先生ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
そして、俺の意識は深い深い闇の底へと沈むのだった。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「・・・はっ!」
次に俺が目を覚ましたのは保健室のベッドだった。胃は・・・痛くねえ。は、はは、何だ。さっきまでのは夢だったのか。そうだよな、オーフィスがこの学園に姿を見せるわけが・・・。
「アザゼル、目を覚ました」
「・・・まだ夢の中みてえだな」
そうと決まればさっさと現実に戻らねえとな。とりあえず、夢の中で寝たら起きれたりしねえのかな。よーし、今から一眠りしてやるかぁ!
「アザゼル、また寝るのか?」
「・・・」
「・・・つんつん」
「・・・」
「・・・ぐにぐに」
「ッ・・・」
「・・・ぶにょーん」
「ッッッッダァァァァァァァァァ! うっとおしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
ガバッと飛び起きると同時に、保健室の扉が開かれ、イッセーや他の連中が姿を現した。
「ど、どうしたんですかアザゼル先生!」
「誰でもいい! この夢の世界の住人を俺の目の届かない所まで連れて行け! 俺は今から現実の世界に戻るんだ!」
「ここが現実ですよアザゼル先生! でもってこのオーフィスも現実です!」
「あー! あー! 聞こえなーい! 僕には何にも見えないし聞こえないもーん!」
「黙れ」
「「「「「「ッ!?」」」」」」
低い声で紡がれるオーフィスの言葉に、場の空気が一瞬で凍りついた。ちぃっ! 理由はわからんがお冠の様だ!
「・・・そして聞け。我はオーフィス。『無限の龍神』オーフィス。我は『無限の龍神』なり」
「・・・は?」
な、何言ってんだコイツ? しかも、無表情に見えるが微妙にドヤ顔っぽいぞ。説明しろやヴァーリ! あとそのTシャツどこで買った!
「ああ、みんな気にしなくていいわよ。今のはルフェイに見せられたフューリーの特撮ドラマでオーフィスが気に入っているフレーズを口にしただけだから」
「な、何でこのタイミング・・・?」
「しかも、『無限の龍神』が被ってるよ・・・」
空気が一瞬で張り詰めたものから微妙な物へと変化した。おい、どうやって収拾するんだよコレ・・・。
「え、ええっと、とりあえずアザゼル先生も目を覚ました事だし、改めてここに来た理由を話してもらいましょうか。みんな、部室へ移動するわよ」
「わ、わかりました」
リアスの提案でそれぞれが保健室を出て行く。俺はこのまま寝る・・・わけにはいかねえよな。ええい、ちくしょう! 行けばいいんだろうが行けば!
俺は乱暴に布団をどかし、オカルト部の面々の後を追いかけるのだった。
・・・幕間にしてまで私は何を書いているのだろうか。
あ、先生の胃は天使(アーシア)が治しました。