ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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UAが2000000を越えました。夢じゃないかと結構な力で頬を殴ったら口の中切りました。けど嬉しいから痛くありません!

それと、今回は捏造オンリーですのでご注意を。



幕間その五 もう一度やり直す為に

ジャンヌ・ダルク・・・神の“声”に従い、イングランドからフランスを守る為に戦い続けるも、最期は異端者の烙印を押され、炎の中へ消えていった悲劇の聖女である。彼女の生涯は僅か十九年であったが、その短い人生の間に、彼女は多くの偉業を成し遂げ、また多くの人々に希望を与えた。その生き様は、まさしく聖女・・・英雄であった。

 

そんなジャンヌ・ダルクの魂を継ぎし女もまた、その命を終わらせようとしていた。だが、ジャンヌ・ダルクが民衆の見つめる中で火刑に処されたのとは違い、女を見つめる者、助けようとする者は周りにはいなかった。女が真の英雄であれば、もしかすればそういった者が現れたかもしれない。しかし、女は決して英雄等では無い。女は人々に希望では無く、混乱や悲しみをもたらすテロリストだった。

 

「ふう・・・ふう・・・」

 

弱々しく呼吸を繰り返す女の名はジャンヌ。英雄の魂を継いだにも関わらず、これまで英雄とは程遠い生き方をしてきた彼女は、四肢を奪われ、一人地面に倒れていた。両手両足を付け根の部分から無くし、血だまりに沈む彼女を見れば誰もが最早手の施しようが無いと判断するだろうし、ジャンヌ自身、自分の命がもうすぐ尽きる事を自覚していた。

 

自らの愚行が招いた最期・・・“神殺し”の怒りに触れてしまったのがジャンヌの運命を大きく変えてしまったのだ。気が狂いそうなほどの激痛。それでも狂えず、ただ泣き叫ぶしかなかった彼女を、仲間であるはずの英雄派の者達は見捨てて逃げた。―――それが“神殺し”を越える存在から必死に逃げる為の行動だとしても、彼女が見捨てられた事実は変わらない。

 

永遠に続くと思われた地獄だが、やがてその痛みすら感じられなくなった。それは、痛みを以ってこの世に留まっていた彼女が、ついに死出の旅路を歩み始める直前まで来てしまった事を意味していた。

 

この世との別離までの僅かな時間、ジャンヌの脳裏にふと懐かしい光景が蘇り始めた。自らの人生を、そして、自らの生き方を決定づけたある人物との出会いまで彼女の意識は遡った。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

五歳・・・それは、ジャンヌが親に捨てられた歳だった。直接的な理由はついぞわからなかったが、一つだけ確かだったのは、彼女は両親にとって不要な存在だという事だった。

 

五歳の少女が一人で生きていく等、普通に考えれば不可能である。その例にもれず、ジャンヌはその日に食べる物すら手に入れられず、日に日に痩せ衰えていった。

 

そして、ついに限界の日を迎えたジャンヌが、道路の片隅でひっそりと死んでいこうとしたその時・・・彼女の運命を変える人物が姿を現した。

 

「可哀そうに・・・どうしてこんな小さな子がこんな目に・・・」

 

朦朧とする意識の中、ジャンヌの体がゆっくりと持ち上げられた。暖かい何かに包まれたのを感じたのを最後に、ジャンヌの意識は途切れた。

 

次に目を開けた時、ジャンヌは見知らぬベッドの中にいた。何で自分はこんな所にいるのだろうか。混乱するジャンヌの鼻に、とても美味しそうな匂いが届いた。その匂いに釣られる様に、ジャンヌはのそのそとベッドから出ると、ふらつく足取りで匂いのする方へ歩き始めた。

 

ベッドのあった部屋を抜け、短い廊下を抜けた先、そこが匂いの発生場所だった。足を踏み入れたジャンヌの目線の先で、一人の老女が鍋で何かを煮込んでいた。

 

この老女が自分をここに連れて来たのだろうか? 何故自分を? ひょっとして人攫い? だったら逃げなければ!

 

ジャンヌの頭に様々な考えが浮かんでは消えていく。それに集中していたせいか、近くにあった棚に手が当たってしまった。その音に反応した老女がジャンヌへ振り返る。

 

「あらまあ! 目が覚めたのね! よかったわ。ずっと目を覚まさないから心配していたの」

 

「あ、あの・・・」

 

「さあさあ、お腹が空いているでしょう? 丁度今スープを作った所なの。一緒に食べましょう」

 

動けないジャンヌを、老女は半ば強引に席に着かせた。そして、所どころ欠けている器に鍋からスープを移し、それをジャンヌの前に置いた。

 

「どうぞ、遠慮しないでおあがりなさい」

 

老女の優しい声、何よりずっと空腹に苦しんでいた事もあり、ジャンヌは迷う事無くスープに口をつけた。具らしい具などほとんど入っていない。味だって薄い。それでも、ジャンヌにとっては正に命を繋ぐスープだった

 

「お口に合うかしら?」

 

「・・・美味しい。う・・・ぐす・・・美味し・・・ひぐ・・・」

 

心配するように覗きこんで来る老女に対し、ジャンヌは大粒の涙を流しながら答えた。それを見た老女は嬉しそうに微笑んだ。その微笑みに、ジャンヌはスープ以上の温かさを感じるのだった。

 

「うふふ、それはよかったわ。お代わりはまだまだあるからね」

 

結局、ジャンヌはその後、スープを六杯お代わりし、老女も嬉しそうにそれに応えて器にスープを注ぎ続けるのだった。

 

そうしてようやく飢えから解放されたジャンヌは、おずおずと老女に尋ねた。

 

「あ、あの、おばあさんはだあれ?」

 

ジャンヌの問いに、老女はアンヌと名乗った。さらに、倒れていたジャンヌに気付き、このままではいけないと思い、自宅まで連れて来たと続けた。

 

「あそこは普段通らない道だったのだけれど、どうしてか今日はあの道を通りたくなってねぇ。うふふ、気まぐれで行動するのもたまにはいいのかしらね」

 

「そう・・・だったんだ」

 

「あなた、お名前は?」

 

「・・・ジャンヌ」

 

「ねえ、ジャンヌ。答えたくなかったら答えなくていいわ。・・・あなたはどうしてあんな所に倒れていたの?」

 

老女の問いに、ジャンヌは先程とは違う理由で涙を流し始めた。

 

「わ、私・・・いらない子だって。お父さんとお母さんがもうどこかへ行ってしまえって・・・」

 

実の親から放たれた残酷な言葉は、ジャンヌの心をズタズタに切り裂いた。涙と鼻水で顔がグシャグシャになってしまったジャンヌを、アンヌは優しく抱きしめた。

 

「・・・ねえ、ジャンヌ。ここで私と一緒に暮さないかしら?」

 

「え・・・?」

 

あまりにも予想外の言葉に、ジャンヌは泣く事も忘れて顔を上げた。アンヌは尚もジャンヌを抱きしめながら言葉を続ける。

 

「ウチは貧しいけど、二人くらいならなんとか生活出来るわ。こんなお婆さんと一緒でもよければ、好きなだけいてくれていいわよ」

 

「・・・どうして? 私はいらない子なんだよ?」

 

「私にもね、娘がいたの。でも、あの子は病気で死んでしまった。ちょうどあなたと同じくらいの歳だったわ。あなたによく似て、とても可愛い子だったの。だから、あなたをあの場所で見た時、あの子が私の元へ帰って来たんじゃないのかと思ってしまったわ。・・・あなたにとってはいい迷惑でしょうけど」

 

「う、ううん、そんな事・・・」

 

「優しいのね、ジャンヌ。それで、どうかしら? 私と家族になってくれるかしら?」

 

「家・・・族・・・?」

 

「そう、家族。血のつながりは無くても、愛さえあれば家族になれるわ。私はあなたを愛する。あなたは・・・私を愛してくれるかしら?」

 

ジャンヌは少しだけ悩み、決断した。この人は不必要だとされていた自分を求めてくれている。たとえ誰かの代わりだとしても構わない。

 

「・・・なる。私、おばあさんの家族になる!」

 

「嬉しいわ、ジャンヌ。あなたは今日から私の娘よ!」

 

互いに抱きしめ合う二人。こうして、ジャンヌは新たな家族と居場所を得たのだった。

 

それから五年の月日が経った。アンヌはひたすら優しく、時に厳しく、ジャンヌに愛情を目一杯注いだ。その愛に応える様に、ジャンヌもまた清らかな心を育みながら成長していった。

 

アンヌの家は街から少し離れた場所にあり、人との関わりはそれほど多くは無かったが、一度用事で街に出れば、ジャンヌの愛らしさに誰もが振り返った。

 

そして、この年になって、ジャンヌは自分がジャンヌ・ダルクの魂を継いだ者であると自覚した。知らないはずの場所、知らないはずの人物、それらが知識となって流れ込んで来たのだ。

 

自分が英雄の生まれ変わりとでも言うべき存在だと判明し、その事実に衝撃を受けるジャンヌ。そんな彼女の異変にアンヌが気付かないわけが無かった。

 

事情を訪ねるアンヌに、ジャンヌは意を決して自らの正体を明かした。世迷いごとだと切って捨てれる様な内容だったにも関わらず、アンヌはただ優しく微笑むだけだった。

 

「まあまあ! あのオルレアンの乙女の生まれ変わりだなんて凄いじゃない!」

 

「え? そ、それだけ・・・?」

 

「あなたが何者であろうと、私の娘に変わりないもの」

 

あっけらかんと答えるアンヌに、勇気を出して告げた自分はなんだったのかと思うジャンヌだった。けれど、その答えが何よりも嬉しかったのも事実だった。

 

ジャンヌは、この二人だけの貧しくても幸せな生活をずっと続けばいいと心から願っていた。・・・だがその願いは、裏の世界の住人によって残酷にも引き裂かれる事となった。

 

その日、街から戻ったジャンヌが目にしたものは、上半身が人、下半身が蛇の異形。そして、その異形の腕に胸を貫かれているアンヌの姿だった。

 

「あ、ああ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そこから先の事はジャンヌは覚えておらず、気付けば右腕に持っていた輝きを放つ剣で異形の首を斬り飛ばしていた。床に転がる首をそのままに、彼女はアンヌへ駆け寄った。

 

「母さん! アンヌ母さん!」

 

「ジャ、ジャン・・・ヌ。う、うふふ・・・さすが、オルレ・・・ア・・・ンの乙・・・女ね・・・。あん・・・な・・・怪物・・・を・・・やっつけちゃうなん・・・て・・・」

 

「ま、待ってて! すぐにお医者様を・・・!」

 

「いい・・・の・・・。私は・・・もう・・・助からな・・・」

 

「いや! 嫌よ! また一人になるのは嫌だよぉ! 死なないで! 死なないでアンヌ母さん!」

 

「ジャンヌ・・・ああ、ジャンヌ・・・。もっと、もっと・・・顔をよく見せ・・・て・・・」

 

「母さん!」

 

「あなたは・・・あの子の生まれ変わりなんかじゃ・・・無い。あなたは・・・ジャンヌは・・・私のもう一人の娘・・・」

 

「母さん! 私の母さんだって母さんだけだよ! だからお願い! 死なないでぇ!」

 

「愛してるわ・・・ジャンヌ・・・あなたの力・・・大切に・・・。私みたいな人・・・増やさな・・・」

 

「母さん! 母さん! アンヌ母さん! うう・・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

それがアンヌの最期の言葉だった。家の中に、愛しき母の亡きがらを抱いたジャンヌの慟哭だけが悲しく響き渡るのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

アンヌを埋葬したジャンヌは一人家を出た。アンヌの最期の望みを叶える為に。自分の力で誰かを助ける為に。

 

その旅の最中、ジャンヌはあの異形の正体がはぐれ悪魔だという存在、そして、自らの力が神器と呼ばれるものだと知った。この瞬間、ジャンヌの中に悪魔に対する憎しみ、そしてこれ以上アンヌの様な悲しみを増やさないという誓いが生まれた。

 

それから数年。ジャンヌがはぐれ悪魔狩りを続ける日々を送る中、ある人物が接触して来た。その人物は自らを英雄、曹操の子孫だと名乗った。

 

「俺と一緒に超常の存在へケンカを売ってみないか?」

 

「・・・あなたと一緒に行けば、悪魔を殺せるの?」

 

「もちろん。他にも堕天使やドラゴン、よりどりみどりさ」

 

「いいわ。私はあなたについて行く」

 

こうして、ジャンヌはより多くの悪魔を殺せると信じ、英雄派への参加を決意した。参加当初こそ、悪魔への憎しみ、そしてそれに苦しめられる人々の為に活動していたジャンヌだが、いつしか敵を殺す事が楽しくなり、ついには悪魔、人関係無く、弱者をいたぶる事が楽しみとなっていった。既にその心からは、アンヌと共に暮らしていた頃の純真さは失われていたのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

(・・・きっとバチが当たったのね)

 

あの神喰狼は、アンヌの言葉を忘れ、自らの為に他人を傷付ける様になってしまった自分を罰する為に現れたのだとジャンヌは思った。

 

(馬鹿みたい。なんで・・・なんでこんな大切な事を忘れてしまっていたの。こんな姿、アンヌ母さんには絶対に見せられない)

 

・・・見せられない? そもそも、地獄へ行くだろう自分の姿を、天国のアンヌ母さんにどうやってみせるのだ? ジャンヌは自分のバカバカしい考えがおかしかった。

 

(ゴメンね、アンヌ母さん。天国に行ったら、どれだけの人を助けたか自慢しようと思っていたのに・・・)

 

いつ、どこで自分は間違ってしまったのだろう。ジャンヌはそう考えようとして、止めた。

 

(・・・もういいか。今さら何を言ったって、私の過ちは消えないんだもの)

 

そして、ジャンヌが意識を手放そうとしたその時・・・。

 

「これは・・・!?」

 

(だ・・・れ・・・?)

 

最早目を開ける事も出来なくなったジャンヌの耳に、男性らしき声が届いた。その声には怒りが滲んでいた。

 

「外道だ外道だと思っていたが・・・まさかここまで腐っていたとはな・・・!」

 

声が近づいて来る。誰かが隣にいるのをジャンヌは感覚だけで感じた。

 

「友情? いや、愛か? ともかく、全てを使ってでも治してみせる・・・!」

 

瞬間、ジャンヌの冷え切った体を暖かい何かが包み込んだ。その暖かさに、ジャンヌは亡き母親の笑顔を浮かべ、意識を手放すのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

ジャンヌが目を覚ました時、そこは天国でも地獄でも無く、京都駅近くの公園だった。

 

「私、どうしてこんな場所に・・・」

 

怪訝に思いつつ、“立ち上がる”ジャンヌ。瞬間、彼女は自らの動きに愕然とした。

 

「・・・え!?」

 

バッと下を向く。そこには失ったはずの足がしっかりと存在し、地面を踏みしめていた。しかも、足だけでなく、両腕まで存在し、毎日手入れを欠かしていなかった爪が街灯に照らされて輝いていた。

 

「・・・夢だったの?」

 

あえて口に出すが、すぐさまその線を捨てるジャンヌ。あの痛みも、あの恐怖もしっかり覚えている。あれが夢であるはずが無い。だったら・・・。

 

「誰かが助けてくれた・・・?」

 

おそらく、意識を失う直前に現れた人物だろうが、その意図がわからない。英雄派のメンバー? いや、あの中に欠損部すら元に戻せるような神器を持つ者は存在しない。というか、そんな強力な神器等が存在するなど聞いた事も無かった。

 

いくら考えても答えは出て来なかった。なので、ジャンヌは一旦その疑問を放置し、これからどうするべきかを考える事にした。

 

「とはいえ・・・もうあそこには戻れないわよね」

 

曹操達は自分を助けるつもりだったようだが、それ以外の者達は死にかけた自分を見捨てたのだ。いくらなんでも、そんな連中のいる所へ戻るほどお気楽な性格はしていない。

 

「最近のノリにはついていけてなかったし、そろそろ潮時かもね」

 

この瞬間、ジャンヌは英雄派からの離脱を決めた。

 

(・・・アンヌ母さん。私、もう一度やり直してみるよ。英雄派のジャンヌじゃなく、あなたの娘のジャンヌとして。・・・そんな資格無いかもしれないけど、今度こそ道を間違えない為に・・・)

 

どこへともなく歩き始めるジャンヌ。行先は決まっていない。手元には何も無い。だが、不安も無かった。

 

 

「とりあえず・・・バイト先でも探そうかしら」

 

かつて、弱者をいたぶって悦に浸っていた時の様な歪んだ笑顔ではなく、新しいものに挑戦する時の様なワクワクした笑顔を浮かべながら、ジャンヌは夜の京都へ消えていくのだった。

 

「・・・」

 

そして、そんな彼女を陰から見守っていた者もまた、一人静かにその場を後にした。

 

その顔に、満足そうな笑みを浮かべながら・・・。

 

 




スパロボってHPで表現するからわかりにくいですけど、実際に戦闘でダメージ喰らったら、ACみたいにカメラアイが壊れたり、腕が吹っ飛んだりするのって当たり前だと思うんですよ。で、それを回復させるって事は壊れた所や失った部分も直せちゃう。つまりはそういう事です。

・・・え? ヘラクレスさんも救済しろって? だが断る。

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